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公事宿は、役所と町村の公事訴訟の手続きが円滑に行われるよう、仲介・取次をする役割も担っていた。 |
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2012年5月10日 (木) 12:36時点における版
公事宿(くじやど)は、公事訴訟や裁判のために地方から来た者を宿泊させた江戸時代の宿屋。公事人宿・出入宿・郷宿・御用宿とも呼ばれた。
概要
「公事宿」という名称は主に江戸の宿屋に用いられ、地方の城下町や代官所の陣屋近くにあった宿屋は「郷宿」(ごうやど)と呼ばれることが多かった。両者を総称して「御用宿」(ごようやど)ともいう。また、江戸の公事宿は旅人宿と百姓宿に分けられるが、両者をまとめて江戸宿と呼ぶこともあった。大坂では、大坂町奉行所の御用を勤めた御用宿を用達(ようたし)と呼んだ。
江戸の公事宿は、馬喰町小伝馬町旅人宿、八拾弐軒百姓宿、三拾軒百姓宿、それに十三軒組があり、それぞれ仲間組織を形成していた。旅人宿は町奉行所と、八拾弐軒組は公事方勘定奉行所、三拾軒組は馬喰町御用屋敷とそれぞれ密接な関係にあり、百姓宿はそれぞれの役所の近辺に建てられていることが多かった。
役割・業務
江戸時代では、農村は農民の居住空間であり、支配階級である武士は基本的には農村周辺にはいなかった。そのため、何らかの公事訴訟を起こす必要が発生した時、農民は江戸の奉行所や、領主のいる陣屋や城下町に出向き、公事の手続きをしなければならなかった。
公事宿は、そうした農民たちのための宿泊施設を提供した。そして、彼らが役所に提出する願書や証文、訴状など諸々の書類の作成・清書、手続きの代行や、弁護人的な役割もこなした。他にも御用状や触書、差紙(さしがみ)[1]などの公式文書の町村への通達、手鎖をかけられた未決囚の宿預も行った。
公事宿は、役所と町村の公事訴訟の手続きが円滑に行われるよう、仲介・取次をする役割も担っていた。
参考文献
- 『江戸幕府大事典』 大石学編 吉川弘文館 2009年 ISBN 978-4-642-01452-6
- 『国史大辞典』4巻 吉川弘文館 ISBN 4-642-00504-8
脚注
- ^ 役所から通達される召喚状。