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2012年1月11日 (水) 04:12時点における版
原子力 |
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原子 原子物理学 原子力 核兵器 |
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原子力(げんしりょく 英: nuclear power、英: nuclear energy、核エネルギー、原子エネルギーとも[1])とは、 原子核の変換や核反応に伴って放出される多量のエネルギーのこと[2]、またはそのエネルギーを兵器や動力源に利用すること。
呼称
「原子力」と「核」は本来はほぼ同義語である。例えば英語で「atomic」(原子の意)と「nuclear」(原子核の意)の形容詞はほぼ同じ意味で使用されている。しかし日本では「核」は核兵器など軍事用、「原子力」は原子力発電など動力用に使われる事が多く、これに対する批判もある[3][4]。同様に日本では「反核」が主に反核兵器、「反原子力」が主に反原子力発電の意味で使い分けられる場合も多いが、世界的にはこのような使い分けは行われていない。
なお英語のパワー(power)は「力」と「電力」の両方の意味を持つため、「nuclear power」や「atomic power」は、内容に応じて「原子力」または「原子力発電」の意味を持つ[5][6]。例えば「国際原子力機関」(International Atomic Power Agency)は原子力発電だけの機関では無い[1]が、「nuclear power plant」や「atomic power plant」は「原子力発電所」を指す場合が多い。
概要
「原子力」という言葉は、原義的には、ウランやプルトニウムの核分裂、放射性物質の崩壊、重水素・トリチウムなどの核融合により放出される核エネルギーのことを指す[2]。原子核変換は、原子核崩壊と原子核反応に分類され、原子核反応はさらに原子核融合反応と原子核分裂反応に分類される。
原子核反応により発生するエネルギーは、化石燃料の燃焼などの化学反応により発生するエネルギーに比べて桁違いに大きく、核兵器として利用されるほか、エネルギー資源として主に原子力発電に利用されている。ただし現在のところ発電に利用されているのは原子核分裂だけであり、原子核融合による発電はまだ実用化されていない。一方、原子核崩壊により発生する比較的弱いエネルギーは原子力電池や放射線医学などに利用されている。
しかし、原子力の利用により、放射線、放射線を放出する能力(放射能)を持った物質(放射性物質、放射性廃棄物)が発生する。放射線は、その量や強さに応じて生物に対して悪影響(放射線障害)を与えるため、適切に防護(放射線防護)する必要がある。放射線防護についての国際的な研究機関として、国際放射線防護委員会 (ICRP) がある。
核兵器は代表的な大量破壊兵器とされている。原子力発電所などの非軍事利用も、その過程で使われる燃料や生成物・廃棄物などの放射性物質が核兵器へ転用される危険性がある。また原子力の利用には、軍事利用および非軍事利用にかかわらず、各種の原子力事故、放射性廃棄物の処理、核テロリズムの危険性などの課題が存在している。
核兵器の拡散を防止する条約には核拡散防止条約があり、原子力の平和利用を促進し、軍事転用されないための保障措置の実施をする国際機関には国際原子力機関がある。
原子力の利用に反対する運動は「反原子力運動」または「反核運動」などと呼ばれ、特に核兵器への反対運動は「反核兵器運動」、特に原子力発電を巡る論争は「原子力発電論争」などとも呼ばれている。
歴史
- 1895年 放射線の発見。レントゲンが謎のビーム(X線)を発見、ベクレルもウランが発する同様のビーム(アルファ線)を発見して、これらは「放射線」と名づけられた。3年後、ピエール・キュリーとマリー・キュリーの夫妻がラジウムを発見し、ここから放射線の研究が始まった。
- 1905年 ドイツのアルベルト・アインシュタインが特殊相対性理論を発表し、質量とエネルギーの等価性を理論的に証明した。
- 1938年 ドイツのオットー・ハーンにより発見され、リーゼ・マイトナーによって核分裂反応と確認され、質量とエネルギーの等価性が実証された。
- 1945年 米国のマンハッタン計画によって核分裂反応を利用した最初の原子爆弾が製造される。広島・長崎に原子爆弾が投下され、原子爆弾が実際に使用される。このとき得られたデータは放射線障害の重要なデータとして現在でも使用されている。第2次大戦以降、世界の大国による核兵器開発が行われる。
- 1951年 米国のEBR-Iで世界初の原子力発電に成功した。
- 1954年 ソ連において最初の商用の原子力発電が開始された。
- 1966年 東海発電所において日本で最初の原子力発電が開始された。原子力は未来のエネルギーとして期待され、歓迎された。
- 1979年 米国のスリーマイル島原子力発電所で運転員の誤操作により炉心溶融事故が起こった。放射性物質の放出は防げたものの、周辺住民10万人が避難した。この事故以降、原子力に対する批判的な機運が高まった。
- 1986年 旧ソ連のチェルノブイリ原子力発電所で実験中に爆発事故が起こり、放射性物質が環境中に放出され47人が急性の放射線障害で死亡した。2006年のIAEAの報告では、晩発の放射線障害を含む死者の推計数は約9000人とされており、原子力発電所の事故としては史上最悪の事態となった。
- 1999年 茨城県のJCOにおいて正規の作業手順を無視したことにより臨界事故が起こり、大量の放射線を浴びた作業員2名が、急性の放射線障害で死亡した。戦後日本で初めての原子力による死亡事故である。1999年の時点で、世界の発電所で425基の原子炉が稼動し、年間で35,943万kW年の電力が発電された。[要出典]この他にも原子力空母と原子力潜水艦で動力用原子炉が使用されている。
- 2003年 2003年時点で、日本の発電所では52基の原子炉が稼動し、年間で3,357万kW年の電力が発電された。[要出典]原子爆弾の実戦での使用実績は2発であるが、核実験の回数は全世界で2000回を超えている[要出典]。2003年の世界の原子爆弾保有数は約3万発である[要出典]。
- 2011年 福島県の東京電力福島第一原子力発電所で、3月11日の東北地方太平洋沖地震に伴い発生した大津波により設備等に甚大な被害が生じ、原子炉の冷却機能を喪失。1号機から3号機で燃料棒が露出する空焚き状態になり、炉心溶融が発生。さらに、原子炉建屋内に充満した水素により1号機と3号機の原子炉建屋が水素爆発を起こし、使用済み核燃料プールの冷却が停止した4号機でも同様の原因で水素爆発が発生したほか、2号機の格納容器の一部でも爆発が発生。この結果、広範囲に高濃度の放射性物質が拡散する事態となり、4月12日、経済産業省原子力安全・保安院は、同事故が国際原子力事象評価尺度におけるレベル7(深刻な事故)に該当すると発表した。このレベルは、チェルノブイリ原子力発電所事故と同じである。5月12日、1号機の水位が想定外に低いことから、東京電力がメルトダウンを認める。
核兵器
原子力(核エネルギー)を主要な殺傷力とした兵器を核兵器と呼ぶ。原子爆弾や水素爆弾などの核爆弾が代表例である。このほか放射能兵器なども含まれる。
原子力発電
原子力を利用した発電を原子力発電と呼ぶ。通常は原子炉で発生した熱エネルギーで蒸気をつくり、タービン発電機で発電する[7]。
原子力電池
原子力による電池を原子力電池と呼ぶ。通常は不安定な原子核である不安定核種の、核壊変と呼ばれる長期持続的で小規模な核反応による発熱から電力を得る。
原子力推進
原子力を動力源とする推進方法を原子力推進(nuclear propulsion)と呼ぶ。原子力船、原子力飛行機の他、各種の原子力ロケットが考えられている。
宇宙空間での利用
不安定核種はすなわち放射性物質であり、打ち上げの途中で失敗すると上空から放射性物質をばら撒くことになるので人工衛星への搭載は民間では積極的には行われない。
しかしながら、軍用衛星では事情が異なる。特に電力を使う軍用衛星はレーダー衛星である。レーダーを照射し、地形・高度・森林中の構造物・地下構造物・潜水艦などを発見する。運用効率の問題などから、太陽電池では全く電力不足になるため原子力電池または原子炉を使う。特に旧ソ連のコスモス・シリーズでは原子炉搭載型が多かった。問題は軍用偵察衛星の高度が低いことである。空気抵抗が大きく落下しがちなので姿勢制御用の燃料を大量に消費する。また姿勢制御自体が難しい。そのため落下の危険が大きい。実際に何基か落ち、放射性物質をばらまいている(コスモスに関する米国の発表)。それを防ぐためには、寿命が尽きる前に燃料を噴射して、何万年も落ちてこない遠くの軌道に移すなどするほかない。
脚注
- ^ 広辞苑第五版に「原子力」の項で「原子エネルギー」と同義と解説し、「原子エネルギー」の項に同義語として「核エネルギー」が挙げてある。
- ^ a b 平凡社『世界大百科事典』より「原子力」の項。
- ^ 小出裕章 (2005年10月9日). “核と原子力は同じもの” (PDF). 第23回エントロピー学会シンポジウム at 広島. 2011年4月25日閲覧。
- ^ 吉田康彦 (2007年6月23日). “「核」と「原子力」はどう違う?”. 日本国際フォーラム『百花斉放』. 2011年4月25日閲覧。
- ^ the freedictionary.com - nuclear power
- ^ eプログレッシブ英和中辞典 - atomic power
- ^ デジタル大辞泉
関連項目
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