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*[http://hep.phys.s.u-tokyo.ac.jp/SCJ/2009Jun01/sakurai.pdf RIBFの現状と将来]
*[http://hep.phys.s.u-tokyo.ac.jp/SCJ/2009Jun01/sakurai.pdf RIBFの現状と将来]

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2011年2月14日 (月) 16:56時点における版

r過程(アールかてい)は、恒星核が重力崩壊する超新星爆発時に起きる元素合成つまり超新星元素合成で、中性子の多い鉄より重い元素のほぼ半分の生成が行われる。この反応は高速に連続して中性子をニッケル56のような種核種に取り込むことによって起きる。そのためこの過程はr(rapid:高速)過程と呼ばれる。もう一方の重元素を生成する支配的な過程は、漸近巨星分枝星(赤色巨星への進化段階)でゆっくり(Slow)した中性子捕獲によって元素合成が行われる、s過程であり、この2つの過程が鉄より重い重元素の元素合成過程の大半を占める。r過程はs過程に比べ未解明の部分が多い。

歴史

r過程は重元素の同位体比や、1956年ハンズ・スースハロルド・ユーリーによって発表された元素の存在比の要請から見出された。中でもゲルマニウムキセノン白金に存在比の山があることが見出された。量子力学シェルモデルによると、これらの元素へ向けて崩壊する放射性原子核は、中性子ドリップライン付近に中性子閉殻がある。このことは、いくらかの元素は高速な中性子捕獲で作られないといけないことを示唆しており、他の元素がこのような過程に関わっているのはどの程度かが決定すべき事項となった。s過程とr過程で作られる重元素同位体の表は1957年の有名なB2FH論文[1]で発表され、星の元素合成の理論を提案し、現在の天体核物理学の枠組を作った。

核物理

恒星核が重力崩壊する超新星爆発の直後、非常に高密度の中性子束(1022/ cm²・s )が発生し、かつ高温となり、中性子捕獲は非常に不安定な核がベータ崩壊する間もなく行われ、r過程は中性子ドリップラインに沿って駈け上がることになる。このように中性子ドリップラインを上がることを阻害する制約は中性子閉核した原子核に対する中性子捕獲の反応断面積の著しい減少、原子核光分解en:photodisintegration([γ,n]))の反応率との競合、そして、核が急激に不安定化し、自発核分裂を起こし、r過程を終了させてしまう程の重同位体領域での核の安定性である(大体それは核図表の核子の数が270程度の中性子に富んだ領域と考えられている)。中性子束が落ち着いた後、これら非常に不安定な中性子過剰核である放射性原子核は安定核に落ち着くために急速に崩壊する。そのため、s過程では中性子閉核(魔法数)付近に元素を作るのに対し、r過程では、原子は核図表の一定の原子量線に沿ってベータ崩壊するため、s過程で作られるものの山に比べ、10原子量ほど小さいあたりに作る。

宇宙物理学的条件

R過程の起きる場所の候補は、r過程に必要な物理的条件を提供する、恒星核が重力崩壊する超新星爆発(スペクトル型 Ib型 Ic型 II型)と広く信じられている。しかしながら、R過程核種の存在比からすると、超新星爆発のうち、ほんの少しの事例でR過程核種を星間物質に放出するか、それぞれの超新星爆発で生成されたR過程核種のうち、ほんの少しの部分を放出するということを要請する。近年、中性子星の融合(衝突した中性子星の二重星系)もまたr過程核種の生成に関わっているのではないかと解決案が提案されているが、観測では確かめられていない。

参考文献

  1. ^ M. Burbidge, G. R. Burbidge, W. A. Fowler, and F. Hoyle. (1957). “Synthesis of the Elements in Stars”. Rev Mod Phy 29 (4): 547. doi:10.1103/RevModPhys.29.547. http://prola.aps.org/abstract/RMP/v29/i4/p547_1.