「ポイント」の版間の差分

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'''ポイント'''は、[[出版]]において使用される[[長さの単位]]である。[[文字]]のサイズや[[余白]]の幅などの、版面の構成要素の長さを表す場合に使われる。“pt” と略記されることが多く、「ポ」と略記されることもある(例:「11ポ」)。[[Macintosh]] では 1 pt = 1/72 [[インチ|in.]] (= 25.4/72 [[ミリメートル|mm]] = 0.352 777 7... mm) とされ、以後 [[DTP]] アプリケーションにおいて標準となった。これは '''DTP ポイント'''と呼ばれる。版面のレイアウトの単位をポイントにしておくと、文字が占める量を計算しやすいというメリットがある。なお日本の[[活字]]は'''号数'''制が基本であるが、歴史上では'''ポイント活字'''も使われた時期があった。そのときは、1 pt ≒ 0.351 4 mm が用いられた。



2010年9月1日 (水) 08:41時点における版

ポイントは、出版において使用される長さの単位である。文字のサイズや余白の幅などの、版面の構成要素の長さを表す場合に使われる。“pt” と略記されることが多く、「ポ」と略記されることもある(例:「11ポ」)。Macintosh では 1 pt = 1/72 in. (= 25.4/72 mm = 0.352 777 7... mm) とされ、以後 DTP アプリケーションにおいて標準となった。これは DTP ポイントと呼ばれる。版面のレイアウトの単位をポイントにしておくと、文字が占める量を計算しやすいというメリットがある。なお日本の活字号数制が基本であるが、歴史上ではポイント活字も使われた時期があった。そのときは、1 pt ≒ 0.351 4 mm が用いられた。

ポイントの歴史と定義

ポイントは複数の地域や時代に種々のシステムが成立したため、定義も一様でない。最も古いポイント・システムはフルニエ・ポイント (Fournier's point) とされ、次にディドー・ポイント (Didot's point) が1783年ごろ成立する。これら二つのシステムはフランスで誕生し、大陸で広く使われた。フルニエ・ポイントは、フルニエ (Pierre-Simon Fournier)[1] により提案されたものである。シセロ (Cicéro) 格の 1/12 を基準として、ポイントを定義したのである。ディドー (François-Ambroise Didot)[2] はこのフルニエのシステムを改善し、「王のインチ」(Pied de roi) と呼ばれるフランスのインチ格に、1 ptを1/72インチとして適合させた[要出典]エラー: タグの貼り付け年月を「date=yyyy年m月」形式で記入してください。間違えて「date=」を「data=」等と記入していないかも確認してください。。フルニエ・ポイントにおいては、1 pt ≒ 0.348 82 mm で、ディドー・ポイントでは 1 pt ≒ 0.375 9 mm に相当する。

欧州大陸では主にディドーのポイント・システムが使用されていたが、英米では定まったポイント・システムは普及しなかった。アメリカで活字のサイズが統一されるのは、1886年に MS&J (Mackellar, Smiths and Jordan, Letter Founder) のジョンソン・パイカ (Johnson pica) を共通的に使用することが確認されてからである。これをアメリカン・ポイント (American point, American printers' point) という。ジョンソン・パイカは 83 picas = 35 cm とするもので、1 pt = 1/12 picas ≒ 0.351 4 mm である。ジョンソン・パイカが 83 picas = 35 cm とし、それが結局アメリカン・ポイントとして選択されたのは、サイズ体系を維持することで、活字の改鋳を極力避けるためであった。多くの有力な活字鋳造業者がジョンソン・パイカを使用していたため、アメリカン・ポイントを 1 in. = 6 picas、1 picas = 12 pt にしようと運動したホークスの提案は退けられたのである。アメリカン・ポイントは築地活版によって1900年代後半に紹介され、日本でも普及した。

1973年、ディドー・ポイントは 1 pt = 3/8 mm (= 0.375 mm) と定義されなおされた[要出典]エラー: タグの貼り付け年月を「date=yyyy年m月」形式で記入してください。間違えて「date=」を「data=」等と記入していないかも確認してください。

互換性

金属活字のポイントには、アメリカン・ポイントと、ヨーロッパで使用されるディドー・ポイント、フルニエ・ポイントがある。アメリカン・ポイント(パイカ・ポイント)は約 0.351 4 mm で、日本の出版場面ではこちらが主に使われていた[3]。ちなみに Microsoft Word では DTP ポイント (1 pt = 1/72 in. = 0.352 777 7... mm) を採用している。

なお上述の通り、アメリカン・ポイントは DTP ポイントと異なる。このため、小さなポイント数ならばともかく紙面全体となってくるとかなりのズレが生じることになる。ゆえにポイント基準で製作された過去の書籍を組み直す際には、当時の組版指示書をそのまま使えないことがある。

一方、TeX (TeX) ではこの問題を、より微細なスケールド・ポイント (scaled point, sp) を 1 sp = 1/216 pt (= 1/65,536 pt) と定義して導入し、これを用いて複数のポイントを定義しなおすことによって解決している。TeX においてはポイントを 1 pt = 65,536 sp = 1/72.27 in. (= 25.4/72.27 mm = 0.351 459 80... mm) と定義してあり(TeX ポイントと呼ばれる)、一方でビッグ・ポイント (big point, bp) を 1 bp = 65,781 sp [= 65,781 × 25.4 / (216 × 72.27) mm = 0.352 773 70... mm] と定義している。アメリカン・ポイントに TeX ポイントを、DTP ポイントにビック・ポイントを対応させることで、アメリカン・ポイントと DTP ポイントとを(1ポイントあたり 0.000 06 mm 程度の誤差のもとで)併存することができる。

ポイントとほかの単位系

日本においてポイントと同様な場面で使われる単位に「」(Q) というものがある (1 Q = 0.25 mm)。級数制はメートル法をもとにしており、紙の寸法を含めて計算の利便性が良いという利点もあるが、ワープロの普及などもあり、ポイントのほうがより一般ユーザーレベルで広く使われていると言える。日本語対応している DTP ソフトは級数を扱えるものがほとんどだが、“Q” で入力すると自動的に “pt” に換算して表示するという形でのみ対応しているものもある。ちなみに日本語用の TeX (pTeX) でも Q や H(歯)で文字の寸法などを指定することができる(「級」や「歯」については写真植字機の項目を参照のこと)。

また、和文用のワードプロセッサワープロソフトで多くの場合10.5ポイントが標準である。これは活字の大きさの単位が号数であった時代、5というサイズが公文書の本文用活字に用いられ、それが約10.5ポイントに相当することから、号数制からポイント制の移行時にもひきつづきその字の大きさが用いられていたためであった。本文の文字サイズとして可読性が良いなどの理由から、現在でも広く用いられている。なお公文書において5号活字と同様によく使われた4号活字のサイズは、約13.75ポイントに相当する[4]

あまり知られていないことであるが、かつて1960年代まで活版印刷によって月刊雑誌や小冊子などが発行されていた時代、8ポイントや9ポイントというサイズの活字が本文用に使われていた。5号では大きすぎ、6号では小さすぎたため、その中間のサイズで読みやすいポイント活字が使われたのである。主に9ポイントが本文、8ポイントがコラムやニュースなど補助的な記事に使われていた。すなわち雑誌編集の世界では「活字のポイント」から「写真植字の級」へ移行し、再び「DTP のポイント」という単位に戻ってきたのである。

脚注

  1. ^ fr:Pierre-Simon Fournier
  2. ^ fr:François-Ambroise Didot
  3. ^ 日本工業規格JIS Z 8305-1962 (JIS Z 8305:1962)「活字の基準寸法」では 2. (2) に「1ポイントは 0.351 4 mm とする」と定められている。『日本工業規格活字の基準寸法』日本規格協会、1967年12月、1ページ。
  4. ^ 文字サイズ #号 — CyberLibrarian

外部リンク