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== 日本のファンタジー漫画の歴史 ==
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日本の漫画は子供向けのメディアとしてスタートしており、魔法や現実には起こらない不可思議な出来事が作品の中で描かれることは普通であり、それらをことさらに[[ファンタジー漫画]]と見ることは無かったし、ジャンルとして定義されることも無かった。
日本の漫画は子供向けのメディアとしてスタートしており、魔法や現実には起こらない不可思議な出来事が作品の中で描かれることは普通であり、それらをことさらに[[ファンタジー漫画]]と見ることは無かったし、ジャンルとして定義されることも無かった。広義的な意味でのファンタジー漫画は日本漫画界で最も人気のある[[ジャンル]]の一つだと言えるだろう


今日の目で見ると[[手塚治虫]]の『[[リボンの騎士]]』([[1953年]])や、[[水野英子]]『星のたてごと』([[1960年]])などは本格的な[[ファンタジー漫画]]の先駆的な作品と見ることが出来る<ref>『戦後少女マンガ史』[[米澤嘉博]](2007年、ちくま文庫、ISBN 9784480423580)が、これらの作品にそれぞれ1節を割いている。第2章9節と第3章23節を参照のこと</ref>。[[水木しげる]]の『[[ゲゲゲの鬼太郎]]』は「和風ファンタジー」の戦後初期の代表作の一つである。手塚治虫の『[[どろろ]]』([[1967年]])は日本漫画界における「[[ダーク・ファンタジー]]」の先駆的な作品だろう。[[藤子不二雄A]]の『[[怪物くん]]』([[1965年]])の幻想世界の住人たちが特定の人間の家に居候して騒動を巻き起こすというプロットは後のファンタジー漫画の主要な類型の一つである。
今日の目で見ると[[手塚治虫]]の『[[リボンの騎士]]』([[1953年]])や、[[水野英子]]『星のたてごと』([[1960年]])などは本格的な[[ファンタジー漫画]]の先駆的な作品と見ることが出来る<ref>『戦後少女マンガ史』[[米澤嘉博]](2007年、ちくま文庫、ISBN 9784480423580)が、これらの作品にそれぞれ1節を割いている。第2章9節と第3章23節を参照のこと</ref>。[[水木しげる]]の『[[ゲゲゲの鬼太郎]]』は「和風ファンタジー」の戦後初期の代表作の一つである。手塚治虫の『[[どろろ]]』([[1967年]])や[[永井豪]]の『[[魔王ダンテ]]』『[[デビルマン]]』は日本漫画界における「[[ダーク・ファンタジー]]」の先駆的な作品だろう。[[藤子不二雄A]]の『[[怪物くん]]』([[1965年]])の幻想世界の住人たちが特定の人間の家に居候して騒動を巻き起こすというプロットは後のファンタジー漫画の主要な類型の一つである。


また、[[赤塚不二夫]]『[[ひみつのアッコちゃん]]』([[1962年]])、[[横山光輝]]『[[魔法使いサリー]]』([[1966年]])といった、不思議な力を持つ少女がごく普通の日常生活を暮らしているというプロットの作品は、「[[魔法少女]]系」というファンタジー漫画の一つの[[ジャンル]]の先駆的作品である。前者は、少女が不思議な力で変身して大活躍する話であり、後者は魔法少女の話である。
また、[[赤塚不二夫]]『[[ひみつのアッコちゃん]]』([[1962年]])、[[横山光輝]]『[[魔法使いサリー]]』([[1966年]])といった、不思議な力を持つ少女がごく普通の日常生活を暮らしているというプロットの作品は、「[[魔法少女]]系」というファンタジー漫画の一つのジャンルの先駆的作品である。前者は、少女が不思議な力で変身して大活躍する話であり、後者は魔法少女の話である。


1980年代前半に描かれた[[車田正美]]の『[[風魔の小次郎]]』は超能力的武術や魔法的な武器シリーズを持つ集団同士の戦いを描いた現代を舞台としたファンタジー漫画であるが、1980年代後半に同じ作者により描かれた同様のプロットの『[[聖闘士星矢]]』も大ヒットし、少年漫画掲載作品でありながら女性ファンから高い支持を受けた。
1980年代前半に描かれた[[車田正美]]の『[[風魔の小次郎]]』は超能力的武術や魔法的な武器シリーズを持つ集団同士の戦いを描いた現代を舞台としたファンタジー漫画であるが、1980年代後半に同じ作者により描かれた同様のプロットの『[[聖闘士星矢]]』も大ヒットし、少年漫画掲載作品でありながら女性ファンから高い支持を受けた。
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1993年には『[[月刊Gファンタジー]]』、94年には『[[月刊ASUKAファンタジーDX]]』(後に『ふぁんデラ』と誌名を改定。ただし、同誌は冒険漫画もしくはSF漫画と称される連載も多かった)などファンタジー漫画誌が創刊されており、2000年代に入ると『[[夢幻館]]』などのファンタジーを主題とした[[漫画雑誌]]が刊行されている。『[[月刊コミックコンプ]]』や『[[月刊少年ガンガン]]』は1990年代の[[おたく]]系ファンタジー漫画業界で大きな役割を果たした。
1993年には『[[月刊Gファンタジー]]』、94年には『[[月刊ASUKAファンタジーDX]]』(後に『ふぁんデラ』と誌名を改定。ただし、同誌は冒険漫画もしくはSF漫画と称される連載も多かった)などファンタジー漫画誌が創刊されており、2000年代に入ると『[[夢幻館]]』などのファンタジーを主題とした[[漫画雑誌]]が刊行されている。『[[月刊コミックコンプ]]』や『[[月刊少年ガンガン]]』は1990年代の[[おたく]]系ファンタジー漫画業界で大きな役割を果たした。


1990年代後半以降になると『[[ワンピース]]』『[[NARUTO -ナルト-|NARUTO]]』『[[BLEACH]]』『[[鋼の錬金術師]]』『[[犬夜叉]]』『[[カードキャプターさくら]]』『[[金色のガッシュ!!]]』『[[D.Gray-man]]』『[[魔法先生ネギま!]]』などが大ヒットしており、日本漫画界におけるファンタジー漫画の人気は非常に高いと言えるだろう。
1990年代後半以降になると『[[ワンピース]]』『[[NARUTO -ナルト-|NARUTO]]』『[[BLEACH]]』『[[HUNTER×HUNTER]]』『[[鋼の錬金術師]]』『[[犬夜叉]]』『[[カードキャプターさくら]]』『[[金色のガッシュ!!]]』『[[D.Gray-man]]』『[[魔法先生ネギま!]]』などが大ヒットしており、日本漫画界におけるファンタジー漫画の人気は非常に高いと言えるだろう。


== 脚注 ==
== 脚注 ==

2010年3月9日 (火) 02:17時点における版

ファンタジー漫画(ファンタジーまんが、: Fantasy comics)は、漫画の一ジャンル。ファンタジーを題材とし、現実とは異なった空想世界を舞台としたり、または魔法や幻想的な要素を含んでいるものをいう。

日本のファンタジー漫画の歴史

日本の漫画は子供向けのメディアとしてスタートしており、魔法や現実には起こらない不可思議な出来事が作品の中で描かれることは普通であり、それらをことさらにファンタジー漫画と見ることは無かったし、ジャンルとして定義されることも無かった。広義的な意味でのファンタジー漫画は日本漫画界で最も人気のあるジャンルの一つだと言えるだろう。

今日の目で見ると手塚治虫の『リボンの騎士』(1953年)や、水野英子『星のたてごと』(1960年)などは本格的なファンタジー漫画の先駆的な作品と見ることが出来る[1]水木しげるの『ゲゲゲの鬼太郎』は「和風ファンタジー」の戦後初期の代表作の一つである。手塚治虫の『どろろ』(1967年)や永井豪の『魔王ダンテ』『デビルマン』は日本漫画界における「ダーク・ファンタジー」の先駆的な作品だろう。藤子不二雄Aの『怪物くん』(1965年)の幻想世界の住人たちが特定の人間の家に居候して騒動を巻き起こすというプロットは後のファンタジー漫画の主要な類型の一つである。

また、赤塚不二夫ひみつのアッコちゃん』(1962年)、横山光輝魔法使いサリー』(1966年)といった、不思議な力を持つ少女がごく普通の日常生活を暮らしているというプロットの作品は、「魔法少女系」というファンタジー漫画の一つのジャンルの先駆的作品である。前者は、少女が不思議な力で変身して大活躍する話であり、後者は魔法少女の話である。

1980年代前半に描かれた車田正美の『風魔の小次郎』は超能力的武術や魔法的な武器シリーズを持つ集団同士の戦いを描いた現代を舞台としたファンタジー漫画であるが、1980年代後半に同じ作者により描かれた同様のプロットの『聖闘士星矢』も大ヒットし、少年漫画掲載作品でありながら女性ファンから高い支持を受けた。

1980年代後半から1990年前半には、『ドラゴンクエストシリーズ』や『ファイナルファンタジーシリーズ』などのヒットの影響もありファンタジーブームが起き、少年漫画や青年漫画では『ダイの大冒険』『GS美神 極楽大作戦!!』『BASTARD!!』『ベルセルク』『サザンアイズ』『ああっ女神さまっ』『孔雀王』『うしおととら』『YAIBA』『サイレントメビウス』『魍魎戦記MADARA』『ミュウの伝説』などのヒット作が出てきている。広義に解釈すれば国民的大ヒット作『ドラゴンボール』もファンタジー漫画であると言えるだろう。『ベルセルク』は日本漫画界に「ダーク・ファンタジー」というジャンルを広めた。また少女漫画では武内直子の『美少女戦士セーラームーン』やCLAMPの『X』『魔法騎士レイアース』や和田慎二の『ピグマリオ』などがヒットした。『ピグマリオ』は重厚なストーリーの長編ハイ・ファンタジー漫画で、少女漫画でありながら少年が主人公という異色な作品であった。その後も少女漫画の世界で、『クリスタル☆ドラゴン』『妖精国の騎士』といった長編ハイ・ファンタジー漫画が次々と生み出されていった。

1993年には『月刊Gファンタジー』、94年には『月刊ASUKAファンタジーDX』(後に『ふぁんデラ』と誌名を改定。ただし、同誌は冒険漫画もしくはSF漫画と称される連載も多かった)などファンタジー漫画誌が創刊されており、2000年代に入ると『夢幻館』などのファンタジーを主題とした漫画雑誌が刊行されている。『月刊コミックコンプ』や『月刊少年ガンガン』は1990年代のおたく系ファンタジー漫画業界で大きな役割を果たした。

1990年代後半以降になると『ワンピース』『NARUTO』『BLEACH』『HUNTER×HUNTER』『鋼の錬金術師』『犬夜叉』『カードキャプターさくら』『金色のガッシュ!!』『D.Gray-man』『魔法先生ネギま!』などが大ヒットしており、日本漫画界におけるファンタジー漫画の人気は非常に高いと言えるだろう。

脚注

  1. ^ 『戦後少女マンガ史』米澤嘉博(2007年、ちくま文庫、ISBN 9784480423580)が、これらの作品にそれぞれ1節を割いている。第2章9節と第3章23節を参照のこと