「エフェボフィリア」の版間の差分

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'''エフェボフィリア''' (希:'''Εφηβοφιλια''',英語:'''Ephebophilia'''<!--、別表記'''hebephilia'''-->) は成人男性による、思春期の男女の[[児童]](13 - 17歳)に向かう倒錯した[[性的嗜好]]のことである。欧米で使われているが、日本語としては流布しておらず、定着しているとは言い難い。古代ギリシア語で「青年」を意味する「エペーボス(έφηβος,ephebos)と、「友情的な愛」を意味する「ピリアー(φιλία,philia)」の合成語である。思春期(一般に13歳から16歳)の子どもに向けられる[[性欲]]は'''ペデラスティ'''({{lang-en-short|pederasty}})という。
'''エフェボフィリア''' (希:'''Εφηβοφιλια''',英語:'''Ephebophilia'''<!--、別表記'''hebephilia'''-->) は成人男性による、思春期の男女の[[児童]](13 - 17歳)に向かう倒錯した[[性的嗜好]]のことである。欧米で使われているが、日本語としては流布しておらず、定着しているとは言い難い。古代ギリシア語で「青年」を意味する「エペーボス(έφηβος,ephebos)と、「友情的な愛」を意味する「ピリアー(φιλία,philia)」の合成語である。思春期の子どもに向けられる[[性欲]]は'''ペデラスティ'''({{lang-en-short|pederasty}})という。


== 言葉の原義 ==
== 言葉の原義 ==

2010年2月12日 (金) 13:59時点における版

エフェボフィリア (希:Εφηβοφιλια,英語:Ephebophilia) は成人男性による、思春期の男女の児童(13 - 17歳)に向かう倒錯した性的嗜好のことである。欧米で使われているが、日本語としては流布しておらず、定着しているとは言い難い。古代ギリシア語で「青年」を意味する「エペーボス(έφηβος,ephebos)と、「友情的な愛」を意味する「ピリアー(φιλία,philia)」の合成語である。思春期の子どもに向けられる性欲ペデラスティ: pederasty)という。

言葉の原義

もともと、古代ギリシアの「少年愛 (phaidophilia)」は、古代ギリシアポリス社会の制度として成立していたもので、男性少年愛は極めて高尚であるとされた。アテーナイなどの男性市民は「高貴な市民の役割」として男性少年愛を実行していた。スパルタなどでは、少数支配者の結束を高めるため、少年愛は「市民の義務」でもあった。

しかし、古典ギリシアのポリス市民にとって、少年を対象とした愛は、「少年・愛 (phaido-philia)」と呼ばれているが、実質的には「男性青年愛」であり、エペーボピリアというのが実態に近かった。エペーボスとは欧米における「エフェボフィリア」で解釈されているような、「男女を含む青少年・児童」ではなく、成人年齢に達し、市民の資格を得ることができた「男性青年」のことで、アテーナイでは、それは通常18歳以上であった(市民資格の認定であるので、やや年齢差はあった)。

概説

欧米で使用されている「エフェボフィリア」の概念は、古典ギリシアの言葉の意味から逸脱している。しかし、悪質な精神病理と見なされたペドフィリア(小児性愛、pedophilia)と区分し、異常心理や精神病理の認められないものの、複雑化した現代社会ではもはや社会的にブレーキをかけざるを得ない(と一部論者が主張する)青少年への性嗜好を表じるため、このような言葉の転用がなされたと考えられる。

「エフェボフィリア」は原義からすれば、女性青年への性的嗜好は含まない。そのためか、「ヘベフィリア(hebephilia)」という言葉が分類上、造語されている。これは、明らかに使用頻度からは、エフェボフィリアに較べわずかであるが、同じ意味に使われる。

「ヘベフィリア」は、古代ギリシアの青春の女神である「ヘーベー(Ηηβη、Hebe)」と上述の「ピリアー」の合成語として造語されたと考えられる。ヘーベーは乙女であり、若々しい美しさで知られた(本来、「hebe」は「若さ・青春」という意味のギリシア語女性名詞である)。

欧米では、エフェボフィリアにおいて、少年を対象とする嗜好を「少年愛 (pederasty)」と呼び、少女を対象とするものを「ロリータ・シンドローム (lolita syndrome)」と呼んで区別している。

少年愛と儒教

少年愛は、日本古来の武士や僧侶社会の伝統にあって、衆道(若衆道の略)として存在し、また同様な「少年愛」一般は、戦士社会・戦士集団の存在する共同体では、文化普遍的に、世界中で制度的に存在して来た。他方、少女愛というものは、社会制度的には存在しない。

ロリータ・シンドロームは、歴史的にいずれの社会でも犯罪としたため、制度的・文化的概念としては成立しなかった。日本においても、このような概念を表す言葉は存在しない。日本では古来より伝統的に、儒教が社会を構築する概念として厳密に成立していたことが背景がある。

現代の日本には、ロリータ・コンプレックス、略称「ロリコン」の概念が存在するが、これは欧米で言うロリータ・シンドロームとは別の概念である。

関連項目