「発生主義」の版間の差分

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'''発生主義'''(はっせいしゅぎ、accrual basis)とは会計原則の一つで、現金の収入や支出に関係なく、収益や費用の事実が発生した時点で計上しなければならないとするもの。収益と費用を現金の受け渡しの時点で認識する会計原則である'''[[現金主義]]'''とは反対の概念である。これらを用いた会計手法は通常、「発生主義会計」や「現金主義会計」と呼ばれる。
'''発生主義'''(はっせいしゅぎ、accrual basis)とは[[会計]]原則の一つで、[[現金]]の収入や支出に関係なく、[[収益]][[費用]]の事実が発生した時点で計上しなければならないとするもの。収益と費用を現金の受け渡しの時点で認識する会計原則である'''[[現金主義]]'''とは反対の概念である。これらを用いた会計手法は通常、「発生主義会計」や「現金主義会計」と呼ばれる。


== 概要 ==
== 概要 ==
例えば一つの工場を例にとろう。この工場の運営にかかる電気代は3ヶ月ごとに払う契約になっているとしよう。発生主義においては毎月の生産活動の勘定において消費する電気が実際の現金の支払いと関係なく費用として換算される。つまり資源の消費と生産が時間的に統一される。よって毎月の決算においては電力代が支払いの有無に関らずに費用として会計に計上される。これによって企業の実際の経済活動、つまり経済資源の消費と生産活動の関連がより明確になるとされる。同じように寿命が年の機材を100万円で購入した場合、支払いは最初の年目に100万円であるが実際の経済資源の1年の消費はその分のに過ぎない。この場合は発生主義に基づき毎年10万円が費用として計上されることになる。このような会計処理を減価償却と呼ぶ
例えば一つの工場を例にとろう。この工場の運営にかかる電気代は3ヶ月ごとに払う契約になっているとしよう。発生主義においては毎月の生産活動の勘定において消費する電気が実際の現金の支払いと関係なく費用として換算される。つまり資源の消費と生産が時間的に統一される。よって毎月の決算においては電力代が支払いの有無に関らずに費用として会計に計上される。これによって企業の実際の経済活動、つまり経済資源の消費と生産活動の関連がより明確になるとされる。同じように寿命が10年の機材を100万円で購入した場合、支払いは最初の1年目に100万円であるが実際の経済資源の1年の消費はその10分の1に過ぎない。この場合は発生主義に基づき毎年10万円が費用として計上されることになる。このような会計処理を[[減価償却]]と呼ぶ。


現金主義における収益や費用の認識が現金の受け渡しの時点を基準にするのに対して、発生主義においては、現金収支を伴うか否かにかかわらず、収益または費用を発生させる経済事象に着目し、この事象に従って収益または費用を認識する。ただし別の細心注意(慎重)の原則(Prudence)に基づき未実現収益の計上は禁止されている。発生主義の適用によって認識される目としては、[[前払費用]]、[[前受収益]]、[[未払費用]]、[[未収収益]]、[[減価償却費]]、[[繰延資産]]、[[貸倒引当金]]、[[退職給付引当金]]などがある。前払費用、前受収益、未払費用、未収収益はB/S上の経過勘定と呼ばれる。
現金主義における収益や費用の認識が現金の受け渡しの時点を基準にするのに対して、発生主義においては、現金収支を伴うか否かにかかわらず、収益または費用を発生させる経済事象に着目し、この事象に従って収益または費用を認識する。ただし別の細心注意(慎重)の原則(Prudence)に基づき未実現収益の計上は禁止されている。発生主義の適用によって認識される[[勘定科]]としては、[[前払費用]]、[[前受収益]]、[[未払費用]]、[[未収収益]]、[[減価償却費]]、[[繰延資産]]、[[貸倒引当金]]、[[退職給付引当金]]などがある。前払費用、前受収益、未払費用、未収収益は[[貸借対照表]](B/S)上の[[経過勘定]]と呼ばれる。


この発生主義に基づいて[[損益計算書]]が作成されるため、企業の現金の収支については、[[キャッシュフロー計算書]]で別途把握する必要がある。
この発生主義に基づいて[[損益計算書]]が作成されるため、企業の現金の収支については、[[キャッシュフロー計算書]]で別途把握する必要がある。
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実際の仕訳では前払保険料、前払家賃、未払利息、未払家賃などのように前払~や未払~という表記を行なう。
実際の仕訳では前払保険料、前払家賃、未払利息、未払家賃などのように前払~や未払~という表記を行なう。
ただし、[[前払費用]]は流動資産[[未払費用]]は流動負債となる
ただし、[[前払費用]]は[[流動資産]]、[[未払費用]]は[[流動負債]]となる


== 関連項目 ==
== 関連項目 ==

2009年10月21日 (水) 06:33時点における版

発生主義(はっせいしゅぎ、accrual basis)とは会計原則の一つで、現金の収入や支出に関係なく、収益費用の事実が発生した時点で計上しなければならないとするもの。収益と費用を現金の受け渡しの時点で認識する会計原則である現金主義とは反対の概念である。これらを用いた会計手法は通常、「発生主義会計」や「現金主義会計」と呼ばれる。

概要

例えば一つの工場を例にとろう。この工場の運営にかかる電気代は3ヶ月ごとに払う契約になっているとしよう。発生主義においては毎月の生産活動の勘定において消費する電気が実際の現金の支払いと関係なく費用として換算される。つまり資源の消費と生産が時間的に統一される。よって毎月の決算においては電力代が支払いの有無に関らずに費用として会計に計上される。これによって企業の実際の経済活動、つまり経済資源の消費と生産活動の関連がより明確になるとされる。同じように寿命が10年の機材を100万円で購入した場合、支払いは最初の1年目に100万円であるが実際の経済資源の1年の消費はその10分の1に過ぎない。この場合は発生主義に基づき毎年10万円が費用として計上されることになる。このような会計処理を減価償却と呼ぶ。

現金主義における収益や費用の認識が現金の受け渡しの時点を基準にするのに対して、発生主義においては、現金収支を伴うか否かにかかわらず、収益または費用を発生させる経済事象に着目し、この事象に従って収益または費用を認識する。ただし別の細心注意(慎重)の原則(Prudence)に基づき未実現収益の計上は禁止されている。発生主義の適用によって認識される勘定科目としては、前払費用前受収益未払費用未収収益減価償却費繰延資産貸倒引当金退職給付引当金などがある。前払費用、前受収益、未払費用、未収収益は貸借対照表(B/S)上の経過勘定と呼ばれる。

この発生主義に基づいて損益計算書が作成されるため、企業の現金の収支については、キャッシュフロー計算書で別途把握する必要がある。

仕訳の例

収益の認識

サービスの提供時:

借方 貸方
未収収益 150,000 収益 150,000


現金の受領時:

借方 貸方
現金 150,000 未収収益 150,000

費用の認識

サービスの受取時:

借方 貸方
費用 200,000 未払費用 200,000

現金の支払時:

借方 貸方
未払費用 200,000 現金 200,000

実際の仕訳では前払保険料、前払家賃、未払利息、未払家賃などのように前払~や未払~という表記を行なう。 ただし、前払費用流動資産未払費用流動負債となる。

関連項目

参考