「既存不適格」の版間の差分

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
削除された内容 追加された内容
編集の要約なし
34行目: 34行目:
*[[建築基準法]]第3条第2項(建築済み等の建築物には新たな規制を適用しない=不遡及の原則)
*[[建築基準法]]第3条第2項(建築済み等の建築物には新たな規制を適用しない=不遡及の原則)
*同 第3条第3項(ただし、当初から違反していた建築は除く。また、増築や大規模修繕等を行う際には、規制に適合するようにすること)
*同 第3条第3項(ただし、当初から違反していた建築は除く。また、増築や大規模修繕等を行う際には、規制に適合するようにすること)
*同 第86条の7(第3条第3項の緩和規定)
*同 第86条の7(第3条第3項の緩和規定)
*同 第87条第3項
*同 第87条第3項


[[Category:建築関連法令|きそんふてきかく]]
{{DEFAULTSORT:きそんふてきかく}}
[[Category:都市問題|きそんふてきかく]]
[[Category:建築関連法令]]
[[Category:都市問題]]


{{architecture-stub}}
{{architecture-stub}}

2008年10月19日 (日) 08:33時点における版

既存不適格(きそんふてきかく)とは、建築時には適法に建てられた建築物であって、その後、法令の改正や都市計画変更等によって不適格な部分が生じた建築物のことをいう。そのまま使用していてもただちに違法というわけではないが、増築や建替え等を行う際には、法令に適合するよう建築しなければならない(原則)。

  • 当初から法令に違反して建築された違法建築とは区別する必要がある。
  • 法令の改正など、新たな規制ができた際に、既存不適格は生じるものである。

既存不適格の例

  • 大正時代に制定された市街地建築物法では当初2.7m以上の道路に接していなければ建築することができない、という規定になっていた。その後、法改正で要件が強化され、建築基準法でも4m以上の道路に接しなければならない、という規定になったが、古くからの市街地などでは4m未満の道も多く存在しているのが実情である(2項道路の項を参照)。
  • 都市計画で用途地域が決められる以前から稼動していた工場などで、後から住居専用地域に定められたため、既存不適格になった事例がある。
  • かつては31m・20mなどの高さ制限で建物のボリュームを規制していたが、建築基準法の改正(1968年)により、建物のボリュームは都市計画で定める容積率で規制することが原則になった。1960年代までに高層化が進んだ市街地の中などで、後から導入された容積率をオーバーしている事例が見られる。この場合、ビルを建替えようとすると床面積を減らさざるを得ず、建替えの障害になる。
  • 日照権訴訟が多発したため、1976年の建築基準法改正で日影規制の導入が可能になったが、導入前に建てられたビルの中には、日影規制の既存不適格になっている事例がある。
  • 新耐震基準前の建築物。

既存不適格に対する緩和

上記のように、既存不適格の建築物は増改築などの際に、建物全体を現行法(着工時の法律)に適合させる必要がある。

しかしながら、建物の状況によってはこれは簡単なことではない。例えば旧耐震基準で設計された建築物の構造強度を補強によって現行基準に全て適合させることは、理論上は可能であるにしても現実には不可能である場合が多い(全て壊して建て替えたほうが費用も工期も安くなる)。そのほか、防火区画など後付けで改善することが難しいものも少なくない。このため、法律上は全く増築ができない建築物が出てくることとなる。こうした問題から、2005年より、既存不適格の建築物について、一定の条件下では緩和が行われることとなった。

ただし既存部分をそのままにしてよいと言うわけではなく、不適格部分と何らかの区画を行う必要があったり、構造強度の場合は既存部分の耐震診断や耐震補強を行って十分な強度を確保することが求められたりと、結果としてかなりの費用が必要となる場合もある。

用途地域における既存不適格

都市計画によって用途地域が定められた結果、用途制限上の既存不適格になった場合(例えば第一種低層住居専用地域となる前から稼働していた工場など)は例外的な扱いがあり、増改築等を行っても既存不適格のままである(その用途で使用し続けることができる)。

ただし、敷地を増やすことはできず、また延べ床面積も「最初に既存不適格となった日」(基準日と呼ばれる)の床面積の1.2倍をこえることはできない。原動機の出力や危険物の保管量などにも制限を受ける場合がある。さらに、新たな用途を発生させることができない場合が多い(上記の例の場合、工場敷地内に新たに製品の直売所を作ることは普通はできない)。

なお、用途制限については建築基準法第48条に基づく許可によって上記の制限を超えた増改築等が行われる場合もあるが、これは既存不適格とは全く別の制度である。

課題

既存不適格建築物で著しく危険または有害なものについて、建築基準法法第10条に基づく命令を行うことができる規定があるが、実際に命令が出されるケースはほとんどないと言われる。また、増改築等を行うとすると厳しい基準が適用されるので、それを避けるために改修を行わず放置される事例もあって問題となっている。

消防法の場合

消防設備が不十分で既存不適格となっていたデパート、旅館などにおいて火災が発生するケースが多発したため、1974年の消防法改正において、公共的要素の高い旅館やホテル、デパート、病院、地下街などについては、現在の基準に適合するよう義務付ける「遡及適用」の規定が初めて設けられた。

参照条文

  • 建築基準法第3条第2項(建築済み等の建築物には新たな規制を適用しない=不遡及の原則)
  • 同 第3条第3項(ただし、当初から違反していた建築は除く。また、増築や大規模修繕等を行う際には、規制に適合するようにすること)
  • 同 第86条の7(第3条第3項の緩和規定)
  • 同 第87条第3項