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[[Pentium]]黎明期(i486の末期)の頃になると、クロック周波数50~100MHz、消費電力が30W前後に上り、自然冷却では放熱が間に合わず、ファンでおこした風を吹き付けて冷却する強制空冷が行われる様になった。
[[Pentium]]黎明期(i486の末期)の頃になると、クロック周波数50~100MHz、消費電力が30W前後に上り、自然冷却では放熱が間に合わず、ファンでおこした風を吹き付けて冷却する強制空冷が行われる様になった。


特性上どうしても高の風切り音が発生してしまう。これをできるだけ抑えようとメーカーは静音性も重要視したファン開発を行っているため、標準付属品以外にも様々な製品が販売されている。
その特性上どうしても高周波の風切り音が発生してしまう。これをできるだけ抑えようとメーカーは静音性も重要視したファン開発を行っているため、標準付属品以外にも様々な製品が販売されており、その中には[[流体力学]]や[[航空工学]]の成果を応用した様なものまで存在している。


===受動空冷===
===受動空冷===
CPUクーラー専用の冷却ファンを用いずに、筐体の吸排気ファンや電源ファンによって生じる筐体内部のエアフローを用いて、ヒートシンクに空気を当てる方法。
CPUクーラー専用の冷却ファンを用いずに、筐体の吸排気ファンや電源ファンによって生じる筐体内部のエアフローを用いて、ヒートシンクに空気を当てる方法。


一時期、静音を謳ったPCで多く使われたもののファンを用いる方法に対してヒートシンクに当たる風量が限られる、年々上昇するCPUのTDP等の制約が多く、やがて廃れていった。
一時期、静音を謳ったPCで多く使われたもののファンを用いる方法に対してヒートシンクに当たる風量が限られる、年々上昇するCPUのTDP等の制約が多く、やがて廃れていった。

しかし、昨今低TDPのCPU静音を求めるユーザー向けにフィンピッチが広く受動空冷に適したCPUクーラーが発売されている等現在でもそれなりに用いられている。
しかし、昨今は比較的TDPのCPUが普及したことから、静音を求めるユーザー向けにフィンピッチが広く受動空冷に適した「ファンレス」と呼ばれるCPUクーラーが発売されている等現在でもそれなりに用いられている。ただし、発熱の大きさゆえ、現在の受動空冷対応型CPUクーラーはいずれも巨大なものになっている。


かつて[[PowerPC]]を搭載していた、[[Macintosh]]([[Power Macintosh]])は、騒音源を少しでも減らす為、この方法をとっていた。[[PowerPC G3]]や[[PowerPC G4]]といった、300MHz~700MHz程度の高速プロセッサに至るまでこの方式を貫いていた(同世代の他の機種ではこの方法はもう考えられなかった)。
かつて[[PowerPC]]を搭載していた、[[Macintosh]]([[Power Macintosh]])は、騒音源を少しでも減らす為、この方法をとっていた。[[PowerPC G3]]や[[PowerPC G4]]といった、300MHz~700MHz程度の高速プロセッサに至るまでこの方式を貫いていた(同世代の他の機種ではこの方法はもう考えられなかった)。

2008年10月9日 (木) 09:38時点における版

ファイル:Heatsink with fan2.jpg
一般的なCPUクーラー(空冷式冷却装置)

CPUの冷却装置(-れいきゃくそうち)は高温になるCPUを冷却するための装置。CPUクーラーなどとも言われている。

なお、本項では特に断りのない限り、パーソナルコンピュータ(パソコン)に付いているCPUの冷却装置について解説する。

概要

現在のCPUは高密度に集積された半導体素子であり、電流を流せば(動作させれば)発熱するが、高温になると異常動作(ハングアップなど)が起き最悪の場合不可逆なダメージを受ける。そのため、CPUの正常動作を維持するためには何らかの冷却方法が必要になる。

CPUの発熱が問題視され始めたのは486等の頃からで、「CPUで目玉焼きができるか」等という企画を出した雑誌があったり、2005年頃には「このままのペースで発熱が増加すれば、数十年後にはCPUの発熱が太陽を超えてしまう」と揶揄された事もある。実際、発熱量(熱設計電力、TDP)は2006年現在までの10数年ほぼ一貫して上がり続けており、それに伴い冷却装置も強化されてきた。

一般に単体販売されるCPUには強制空冷式の冷却装置が付属しているが、性能の高い冷却装置も別に販売されている。

またパソコンに限らず、高速なCPUが搭載されている最近の家庭用ゲーム機テレビゲーム)には、なんらかの冷却装置が搭載されたものが多い。

自然冷却

冷却ファンなどは使用せず、筐体内の自然対流と電源装置の排気による負圧による換気によって、冷却する方法。他の冷却方法と比べて仕掛けが簡単で、無音で冷却することが可能だが、大きさの割にはあまり冷やせない。

マイクロプロセッサの黎明期からおよそIntel 80386の頃までは、放熱のために特別な部品は搭載されておらず、プロセッサ表面から放熱させていた。i486の隆盛期に入り、クロック周波数がおよそ30MHz以上になると、プロセッサ表面だけでは充分な放熱ができなくなり、CPUの上に放熱性の高い金属製のヒートシンクを取り付けるようになった。

最近のCPUの多くは発熱量が高いため、CPUクーラーとして利用するにはかなり大きなサイズのヒートシンクが必要であまり実用的ではない。しかし、現代でも発熱量の比較的少ない一般的なチップセットはこの方法で冷却していることが多い。

空冷

強制冷却

インテルの単体販売しているCPUに標準付属されているクーラー

冷却ファンを使用し空気を利用して冷却する、最も一般的な方法。ヒートシンクの上に冷却ファンを載せた状態で使用され、ヒートシンクとファンモータが一体化したものが多い。

店頭で販売されているCPU製品にはサーマル・ソリューションと称して、十分な性能の強制空冷式冷却装置が付属している。特に記述がない限り市販されているパーソナルコンピュータにおいて、CPUの冷却にはこの方式が用いられる。

Pentium黎明期(i486の末期)の頃になると、クロック周波数50~100MHz、消費電力が30W前後に上り、自然冷却では放熱が間に合わず、ファンでおこした風を吹き付けて冷却する強制空冷が行われる様になった。

その特性上、どうしても高周波の風切り音が発生してしまう。これをできるだけ抑えようとメーカーは静音性も重要視したファン開発を行っているため、標準付属品以外にも様々な製品が販売されており、その中には流体力学航空工学の成果を応用した様なものまで存在している。

受動空冷

CPUクーラー専用の冷却ファンを用いずに、筐体の吸排気ファンや電源ファンによって生じる筐体内部のエアフローを用いて、ヒートシンクに空気を当てる方法。

一時期、静音を謳ったPCで多く使われたもののファンを用いる方法に対してヒートシンクに当たる風量が限られる上、年々上昇するCPUのTDP等の制約が多く、やがて廃れていった。

しかし、昨今は比較的低いTDPのCPUが普及したことから、静音を求めるユーザー向けに、フィンピッチが広く受動空冷に適した「ファンレス」と呼ばれるCPUクーラーが発売されている等、現在でもそれなりに用いられている。ただし、発熱の大きさゆえ、現在の受動空冷対応型CPUクーラーはいずれも巨大なものになっている。

かつてPowerPCを搭載していた、MacintoshPower Macintosh)は、騒音源を少しでも減らす為、この方法をとっていた。PowerPC G3PowerPC G4といった、300MHz~700MHz程度の高速プロセッサに至るまでこの方式を貫いていた(同世代の他の機種ではこの方法はもう考えられなかった)。

水冷

空気より熱容量の大きい水を冷却に用いる方法。CPUに水を循環させるヘッドを接触させて、熱を水で持ち去り、外部のラジエータで放散させる。

大型汎用機では普及している方法だが、パソコンに用いるには仕掛けが大掛かりになり、また、メンテナンスも必要で、一般に空冷式より高価になる事から簡便に用いられなかった。近年は高品質のキットも販売されており、冷却性能の高さに加え、ファンによる騒音を嫌い静粛性を求める向きにも用いられる。

ペルチェ素子

ペルチェ素子

ペルチェ効果(ペルチェ効果)を利用した薄型の冷却素子。CPUに接する面から吸収した熱を、反対側の面に移動させる。素子単体では冷却装置として機能しない(単なるヒーターになってしまう)ことから、空冷や水冷の冷却装置を併用して放熱効率を向上させたり、外気より低い温度を作るために使用される。

パソコンではi486Pentium(初代)の時代に流行したが、それ自体がかなりの電力を消費し発熱すること、冷却しすぎると結露が発生することといった使い勝手の悪さや、空冷装置の性能向上によりペルチェ素子の優位性が失われたこと等の理由で廃れ、現在はオーバークロッカー等、一部マニアで使用されるに留まる。

ガス冷却

パソコンの筐体に小型のコンプレッサを仕込んで、冷蔵庫などと同様の方式液体気化する時の気化熱を利用した放熱を行うもの。マニアが自作する物のほか、これを組み入れた製品を出荷しているメーカーや、パソコンショップのショップブランド品に仕込んで販売する例もある。

水冷よりもさらに高い冷却効果を得られる反面、冷却装置そのものがそれなりに大掛かりかつ高価であり、一般的なエンドユーザーの使用環境であれば空冷でも十分なため、一般的な方式ではない。

ヒートパイプを利用した冷却

熱伝導率の高いヒートパイプを用いてチップの熱を移動させる方法。 金属よりも効率が良いために速やかに遠くまで熱が移動できる為、薄く多量のフィンや側面を用いて表面積を稼ぐ事ができ、放熱部の効率を高められる。

大きさや部品配置の点で制約の厳しいノートパソコンなどでも十分に冷却することが容易になる。また、ケース内に余裕の大きい自作機やBTO機では、これを用いて大型化したクーラーをより大型のファンを用いて冷却できるようになり、高速ファンを使ってのオーバークロック、或いは低速ファンを用いる事での静音化が容易になる。

冷却装置(CPUクーラー)の著名メーカー

関連項目