「セロファン」の版間の差分

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
削除された内容 追加された内容
AlnoktaBOT (会話 | 投稿記録)
m ロボットによる 追加: sq:Celofani
Fievarsty (会話 | 投稿記録)
m +Otheruses
1行目: 1行目:
{{Otheruses|材料|その他|セロファン (曖昧さ回避)}}
'''セロファン'''または'''セロハン''' (cellophane) は[[セルロース]]を加工して作られる、透明な薄膜状の物質である。普通セロファン (PT) と防湿セロファン (MST) の2種類がある。日本国内では、[[レンゴー]]と[[フタムラ化学]]で生産されている。PTセロファンはレンゴー及びフタムラで生産されているが、MSTセロファンはフタムラ化学でのみ生産されている。
'''セロファン'''または'''セロハン''' (cellophane) は[[セルロース]]を加工して作られる、透明な薄膜状の物質である。普通セロファン (PT) と防湿セロファン (MST) の2種類がある。日本国内では、[[レンゴー]]と[[フタムラ化学]]で生産されている。PTセロファンはレンゴー及びフタムラで生産されているが、MSTセロファンはフタムラ化学でのみ生産されている。


10行目: 11行目:
== 用途 ==
== 用途 ==
透明で細菌を通さないため、食品のパッケージなど、包装材料として使用される。光沢がよいこと、[[飴]]などをねじって包んだ場合に勝手に解けないこと、手切れ性と呼ばれる、端を持って左右に引っ張ると裂ける性質があり開封しやすいこと、紙の原料として[[リサイクル]]できること、などの特長がある。しかし、熱でそりやすい、水に濡れると強度が下がるなどの問題があるため、近年は[[ポリプロピレン]]フィルムなどに置き換えられている例が少なくない。また、[[水蒸気]]の透過性は高いので、表面に[[ポリ塩化ビニリデン]] (PVDC) を塗布して、バリア性を持たせた複合素材の製品もある。
透明で細菌を通さないため、食品のパッケージなど、包装材料として使用される。光沢がよいこと、[[飴]]などをねじって包んだ場合に勝手に解けないこと、手切れ性と呼ばれる、端を持って左右に引っ張ると裂ける性質があり開封しやすいこと、紙の原料として[[リサイクル]]できること、などの特長がある。しかし、熱でそりやすい、水に濡れると強度が下がるなどの問題があるため、近年は[[ポリプロピレン]]フィルムなどに置き換えられている例が少なくない。また、[[水蒸気]]の透過性は高いので、表面に[[ポリ塩化ビニリデン]] (PVDC) を塗布して、バリア性を持たせた複合素材の製品もある。
*[[1930年]]に販売が開始された[[セロハンテープ]]の基材として、耐水性をもたせたものが使用されている。
* [[1930年]]に販売が開始された[[セロハンテープ]]の基材として、耐水性をもたせたものが使用されている。
*また、水分はよく通すが、[[ウイルス]]を通さないために[[人工透析]]用の膜としても利用される。
* また、水分はよく通すが、[[ウイルス]]を通さないために[[人工透析]]用の膜としても利用される。
*そのほか、ボタン電池や蓄電池のセパレーターとしても利用されるが、「ソニー株式会社」の「ぶどう糖で発電するバイオ電池」のセバレータとして用いられた例もある。
* そのほか、ボタン電池や蓄電池のセパレーターとしても利用されるが、「ソニー株式会社」の「ぶどう糖で発電するバイオ電池」のセバレータとして用いられた例もある。
*[[海水淡水化プラント]]で海水から真水を抽出する為の[[逆浸透膜]]に用いられる。
* [[海水淡水化プラント]]で海水から真水を抽出する為の[[逆浸透膜]]に用いられる。
*合成化学が発達した現在に於いても透析等の分野では天然素材から製造されたセロファンに及ばない分野がある。
* 合成化学が発達した現在に於いても透析等の分野では天然素材から製造されたセロファンに及ばない分野がある。
*特にPTは[[セルラーゼ]]の作用を受けやすく、もっとも普及している生分解性の包装資材と言える。ただし産業上は[[紙]]に分類されるため、[[ポリ乳酸]]などの[[生分解性プラスチック]]とは区別される。
* 特にPTは[[セルラーゼ]]の作用を受けやすく、もっとも普及している生分解性の包装資材と言える。ただし産業上は[[紙]]に分類されるため、[[ポリ乳酸]]などの[[生分解性プラスチック]]とは区別される。
*MSTは防湿処理によりセロファンの欠点を補ったものであるが、同時に生分解性も失われる。双方を満たすため、生分解性素材による防湿処理についての検討も行われている。
* MSTは防湿処理によりセロファンの欠点を補ったものであるが、同時に生分解性も失われる。双方を満たすため、生分解性素材による防湿処理についての検討も行われている。


== 色セロファン ==
== 色セロファン ==
セロファンに色をつけたもの。現在日本で発売されているのは「赤・青・黄・緑」の4色である。主な用途は以下の通り。
セロファンに色をつけたもの。現在日本で発売されているのは「赤・青・黄・緑」の4色である。主な用途は以下の通り。
*包装材料
* 包装材料
*[[色#三原色|加算混色]]の実験。
* [[色#三原色|加算混色]]の実験。
*[[3次元映像|アナグラフ]]用メガネの自作。
* [[3次元映像|アナグラフ]]用メガネの自作。
[[1970年代]]までの[[アーケードゲーム]]用[[ビデオゲーム]]の白黒画面を補う為にも使われた。英語ではオーバーレイ(overlay, over=越えて lay=置く)と呼ぶ。これは技術やコストの面からカラーゲームがまだ一般的でなく、また画面レイアウトが単純な為、特定の場所に色セロハンを貼るだけで、十分カラー的な表現が楽しめたからである。色セロハン物で有名なゲームには『[[ブロックくずし]]』『[[サーカス (ゲーム)|サーカス]]』『[[スペースインベーダー]]』などが挙げられ、復刻ゲームや[[MAME]]でもこれらを再現しているケースがある。また[[ベクタースキャン]]式のゲームは、通常のゲームよりカラー化が遅れた為、メーカーによってはもう少し後の時代まで色セロファンを使用していた。
[[1970年代]]までの[[アーケードゲーム]]用[[ビデオゲーム]]の白黒画面を補う為にも使われた。英語ではオーバーレイ(overlay, over=越えて lay=置く)と呼ぶ。これは技術やコストの面からカラーゲームがまだ一般的でなく、また画面レイアウトが単純な為、特定の場所に色セロハンを貼るだけで、十分カラー的な表現が楽しめたからである。色セロハン物で有名なゲームには『[[ブロックくずし]]』『[[サーカス (ゲーム)|サーカス]]』『[[スペースインベーダー]]』などが挙げられ、復刻ゲームや[[MAME]]でもこれらを再現しているケースがある。また[[ベクタースキャン]]式のゲームは、通常のゲームよりカラー化が遅れた為、メーカーによってはもう少し後の時代まで色セロファンを使用していた。



2008年9月14日 (日) 02:46時点における版

セロファンまたはセロハン (cellophane) はセルロースを加工して作られる、透明な薄膜状の物質である。普通セロファン (PT) と防湿セロファン (MST) の2種類がある。日本国内では、レンゴーフタムラ化学で生産されている。PTセロファンはレンゴー及びフタムラで生産されているが、MSTセロファンはフタムラ化学でのみ生産されている。

製法

1912年スイスのブランデンベルガー(Jacques Edwin Brandenberger, 1872年-1954年)が製法を発明した。

主な原材料は、木材を粉砕して作るパルプである。木綿などの植物性繊維からも作ることは可能である。

まず、パルプを水酸化ナトリウムなどのアルカリ二硫化炭素で溶かしてビスコースを作る。その後スリットに通して、薄く成型したものを、硫酸などの酸で中和してセルロースに戻すことによって製造される。なお、ビスコースを、スリットではなく、ノズルから射出して繊維状にし、中和したものはレーヨンである。

用途

透明で細菌を通さないため、食品のパッケージなど、包装材料として使用される。光沢がよいこと、などをねじって包んだ場合に勝手に解けないこと、手切れ性と呼ばれる、端を持って左右に引っ張ると裂ける性質があり開封しやすいこと、紙の原料としてリサイクルできること、などの特長がある。しかし、熱でそりやすい、水に濡れると強度が下がるなどの問題があるため、近年はポリプロピレンフィルムなどに置き換えられている例が少なくない。また、水蒸気の透過性は高いので、表面にポリ塩化ビニリデン (PVDC) を塗布して、バリア性を持たせた複合素材の製品もある。

  • 1930年に販売が開始されたセロハンテープの基材として、耐水性をもたせたものが使用されている。
  • また、水分はよく通すが、ウイルスを通さないために人工透析用の膜としても利用される。
  • そのほか、ボタン電池や蓄電池のセパレーターとしても利用されるが、「ソニー株式会社」の「ぶどう糖で発電するバイオ電池」のセバレータとして用いられた例もある。
  • 海水淡水化プラントで海水から真水を抽出する為の逆浸透膜に用いられる。
  • 合成化学が発達した現在に於いても透析等の分野では天然素材から製造されたセロファンに及ばない分野がある。
  • 特にPTはセルラーゼの作用を受けやすく、もっとも普及している生分解性の包装資材と言える。ただし産業上はに分類されるため、ポリ乳酸などの生分解性プラスチックとは区別される。
  • MSTは防湿処理によりセロファンの欠点を補ったものであるが、同時に生分解性も失われる。双方を満たすため、生分解性素材による防湿処理についての検討も行われている。

色セロファン

セロファンに色をつけたもの。現在日本で発売されているのは「赤・青・黄・緑」の4色である。主な用途は以下の通り。

1970年代までのアーケードゲームビデオゲームの白黒画面を補う為にも使われた。英語ではオーバーレイ(overlay, over=越えて lay=置く)と呼ぶ。これは技術やコストの面からカラーゲームがまだ一般的でなく、また画面レイアウトが単純な為、特定の場所に色セロハンを貼るだけで、十分カラー的な表現が楽しめたからである。色セロハン物で有名なゲームには『ブロックくずし』『サーカス』『スペースインベーダー』などが挙げられ、復刻ゲームやMAMEでもこれらを再現しているケースがある。またベクタースキャン式のゲームは、通常のゲームよりカラー化が遅れた為、メーカーによってはもう少し後の時代まで色セロファンを使用していた。