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==離婚に関する作品==
==離婚に関する作品==
*ハイチ式離婚 (原題 Haitian Divorce) [[幻想の摩天楼]] [[スティーリー・ダン]]
*ハイチ式離婚 (原題 Haitian Divorce) [[幻想の摩天楼]]/[[スティーリー・ダン]]


== 脚注 ==
== 脚注 ==

2008年9月1日 (月) 19:41時点における版

離婚(りこん)とは、生存中の夫婦が、有効に成立した婚姻を、婚姻後に生じた事情を理由として将来に向かって解消することをいう。有効に成立した婚姻を事後的に解消する点で、当初から婚姻の成立要件に疑義がある場合に問題となる婚姻の無効・取消しと区別される。

日本における離婚

日本では、民法(明治29年法律第89号)第763条から第771条に離婚に関する実体的規定を置いているが、その他、戸籍法(昭和22年法律第224号)、家事審判法(昭和22年法律第152号)、人事訴訟法(平成15年法律第109号)及びこれらの附属法規が離婚に関する手続規定を置いている。


現行法は、離婚の形態として、協議離婚(協議上の離婚)、調停離婚審判離婚裁判離婚(裁判上の離婚)を規定している。

協議離婚

この制度は、日本が世界で初めて法律で認められた。旧ソ連でも子供がいないことを条件に認められている。また、台湾(中華民国)の民法1049条も、無条件で協議離婚を認める。日本では、離婚の大半が協議離婚である。

夫婦は、その協議で、離婚をすることができる(第763条)。夫婦双方の合意が必須となるため、夫婦の一方が勝手に離婚届を作成して提出すると文書偽造罪で罰せられ、離婚は無効となる。また、配偶者の親との間で養子縁組をしている場合は、養子離縁届を出さない限り、前配偶者とは義兄弟姉妹の関係が残り、前配偶者の親族の間で親族関係が続く。

離婚をした者の一方は、相手方に対して財産分与を請求することができる(768条)。

協議離婚では、子供(孫)がいる場合、養育費については夫婦間で取り決めがなされない場合が多が、離婚給付等契約公正証書を作成すれば債務名義と成る。

調停離婚

家庭裁判所調停において、夫婦間に離婚の合意が成立し、これを調書に記載したときは、離婚の判決と同一の効力(ここでは、いわゆる広義の執行力)を有する(家事審判法21条本文)。

離婚の訴えを提起しようとする者は、まず家庭裁判所に調停の申立てをしなければならない(同法18条、17条)。これを調停前置主義という。

審判離婚

調停が成立しない場合においても、家庭裁判所が相当と認めるときは、職権で離婚の審判をすることができ(家事審判法24条1項前段)、2週間以内に家庭裁判所に対する異議の申立てがなければ、その審判は、離婚の判決と同一の効力(「調停離婚」の項を参照)を有する(同法25条3項、1項)。

裁判離婚

協議離婚、調停離婚が成立せず、審判離婚が成されない時に、判決によって離婚すること。裁判離婚の成立は離婚総数の1%程度である。

条文

(裁判上の離婚)民法第770条

  1. 夫婦の一方は、以下の場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
    1. 配偶者に不貞な行為(不貞行為)があったとき。
    2. 配偶者から悪意遺棄されたとき。
    3. 配偶者の生死が3年以上明らかでないとき。
    4. 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
    5. その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
  2. 裁判所は、前項第1号から第4号までに掲げる事由がある場合であっても、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができる。
概要

離婚をした者の一方は、相手方に対して財産分与を請求することができる(771条、768条)。

離婚の訴えは、家庭裁判所の管轄専属する(人事訴訟法4条1項、2条1号)。つまり、家庭裁判所に訴えを提起する必要があり、地方裁判所での審理を希望することは不可能である。

離婚の訴えに係る訴訟において、離婚をなす旨の和解が成立し、又は請求の認諾がなされ、これを調書に記載したときは、離婚の判決と同一の効力(「調停離婚」の項を参照)を有する(同法37条、民事訴訟法267条)。

裁判所の意識

根本では「現在ある人間関係を維持する」ことを意識している。同意のない離婚を事実上不可能にし、離婚の選択権を、離婚の原因(落ち度)の無い配偶者にゆだねている。これによって、配偶者が現在の人間関係を続けることを望めば、離婚できないようにしている[1]

また、不貞・虐待・遺棄などについては有責行為を必要とする有責主義の考え方、当事者間に婚姻を継続しがたい理由がある場合には破綻主義の考え方により、離婚が認められるが、判例上、有責者が婚姻の破綻を理由に離婚請求した場合には、容易には離婚が認められない。

離婚の効果

「離婚」に対する考え方

一昔前に比べると離婚に対して世間が寛容になったと言われているが、内閣府の「男女共同参画社会に関する世論調査」によると、「相手に満足できないときは離婚すればよいか」との質問に対して、賛成派(「賛成」と「どちらかと言えば賛成」の合計)が46.5%にとどまったのに対して、反対派(「反対」「どちらかといえば反対」の合計)が47.5%となり、23年ぶりに反対派が賛成派を上回るという結果が出た[2] [3]。賛成派は1997年の54.2%をピークに毎回減り続けており、むしろ「一昔前に比べると、離婚に対して寛容ではなくなってきている」事が伺える。

いわゆる渉外離婚

以上のように日本では協議離婚の制度が認められているが、離婚するか否かを当事者の完全な意思に委ねる制度を採用する国は比較的少数であり、離婚そのものを認めない国、一定の別居期間を経ないと離婚が認められない国、行政機関裁判所による関与を要求する国などがある。

このように国によって離婚の要件や手続(特に手続に国家が関与する方法・程度)が異なるため、ある国での離婚の効力が、別の国では認められないこともありうる。例えば、裁判による離婚制度しか存在しない国では、当事者の意思に基づく協議離婚はありえないから、日本で成立した協議離婚の効力が認められるとは限らないし、裁判所が関与する調停離婚についてもその効力が認められる保障がない。

このような事情があるため、裁判離婚しか認めていない国の国籍を有する者が日本で離婚する場合は、離婚の準拠法の問題もあり、当事者による離婚の合意ができている場合でも、前述の審判離婚や裁判離婚をする例が少なくない。

ペーパー離婚

法律婚の夫婦が事実婚に移行する離婚をペーパー離婚と呼ぶ。夫婦別姓を目的とする場合が多い。また、何らかの不当利得を目的とする場合もある。(生活保護児童扶養手当の不正受給、いわゆる資産隠し、など)

法律婚夫婦の改姓配偶者が公的書類において旧姓を使用したい時に、一時的に離婚して旧姓に戻り目的の手続きを完了した後に再婚するというように、何らかの目的を持って同じ相手と離婚再婚を繰り返すことをペーパー離再婚と呼ぶ。

ただし、結婚の場合には実質的意思(夫婦としての共同生活を営む意思)が要求されているのに対し、離婚の場合には形式的意思(法律上の婚姻関係を解消する意思)のみで足りるとされていることから、離婚届を提出した以上法的にも離婚したことになるので[4]、仮にペーパー離婚中に配偶者が死亡して相続が発生した場合、「配偶者」に対する法定相続分や遺留分は無いことになる(遺贈特別縁故者としての財産の取得は可能)。

家庭内離婚

実際には夫婦関係が失われているが、何らかの事情があるために同居を継続しつつも法的には離婚していない状態は、俗に家庭内離婚と呼ばれている。

熟年離婚

中高年の夫婦の離婚のこと。

2007年(平成19年)4月の年金制度の変更で、夫の厚生年金を離婚時に分割できるようになった(それまでは、離婚したら妻はもらえなかった)ときには、中高年夫婦が高い関心を寄せたという。実際には離婚件数は急増しなかったものの、相談件数は急増し、離婚を考えているものは多いという[5]

離婚件数・率

「人口千人あたりの、一年間の離婚件数」(「人口千人あたりの、生涯のどこかで離婚する人数」とは異なる)のことを普通離婚率というが、これは人口の年齢構成の影響を強く受ける。これ以外の離婚率を特殊離婚率という。特殊離婚率には、例えば男女別年齢別有配偶離婚率や、結婚経過年数別離婚率などがある[6]


マスコミなどで言われる「3組に1組が離婚」[7]などの表現は、一年間の離婚件数をその年の新規婚姻件数で割った、厚生労働省とは異なる定義に基づくものである[8]。 これは、近年大きな変動のない婚姻件数のうち、生涯のどこかで離婚する割合を暗示するデータとして用いられているが、今年離婚した者が結婚した年の婚姻件数が、今年の婚姻件数と一致するわけではないので、正確な生涯離婚率を表しているとは言えない。

日本では、普通離婚率は1883年(明治16年)には3.38であったが、大正・昭和期にかけて低下し、1935年には0.70となった。その後1950年前後(約1)および1984年(1.51)に二度の山を形成したが、1990年代から再び上昇し、2002年には2.30を記録した[9][10][6]


日本では平成元年から平成15年にかけて離婚件数が増加し、その後減少している。厚生労働省「人口動態統計」によると、平成元年の離婚件数は約20万件、平成14年は29万組となっている(離婚率でいえば、平成17年で人口1000人あたり2.08である)。平成14年を境に減少傾向となっており、離婚率が3.39であった明治時代に比べれば少ない[11](これは、明治時代の女性は処女性よりも労働力として評価されており、再婚についての違和感がほとんどなく、嫁の追い出し・逃げ出し離婚も多かったこと、離婚することを恥とも残念とも思わない人が多かったことが理由とされている[12])。現代の離婚の原因の主なものは「性格の不一致」である。また、熟年結婚が熟年夫婦による離婚の数値を押し上げている。

離婚の原因

司法統計によれば、離婚の申し立てにおいて、夫からの申し立て理由は「性格が合わない」、「異性関係」、「異常性格」の順で多い。また妻からの申し立て理由は、「性格が合わない」、「暴力をふるう」、「異性関係」の順で多い[13]

アメリカでは、大学の公開講座や宗教団体などが、健全な家庭生活を維持・増進させるための活動をしているが、そうした団体の一つであるThe National Marriage Project は、離婚の原因は「家庭の運営に必要な知識を持っていないこと」であるとして、必要な情報を提供している[14]。また、Marriage Builders (ウィラード・ハーリ)は、「心からの合意の原則」など、考え方の食い違いを調整するために必要な諸概念について解説している[15]。また、Smart Marriage では、離婚の原因は「意見の食い違いを調整する技術を持たないこと」であるとして、その技術を習得するための教育を行い成果を挙げている[16]

離婚が子どもに与える影響

かつて、離婚は子どもに何の影響も与えないと考えられていた。アメリカの心理学者ジュディス・ウォーラースタインは、親が離婚した子どもを長期に追跡調査して、子ども達は大きな精神的な打撃を受けていることを見出した。子ども達は、両方の親から見捨てられる不安を持ち、学業成績が悪く、成人してからの社会的地位も低く、自分の結婚も失敗に終わりやすいなどの影響があった。ウォーラースタインの結果について、多くの国で大規模な追跡調査が行われ、悪影響が実際に存在することが確認された。

日本も批准した子どもの権利条約では、その対策として、(1)子どもの処遇を決めるに際しては、年齢に応じて子どもの意見を聞くこと、(2)別居が始まれば直ちに、定期的な面会を始めることの二点を求めている。

離婚の悪影響を少なく抑えるための条件は、二人の親の間で争いが少なく、近くに住んで、再婚せず、二親とも育児に関わり、育児時間が50%ずつに近いことである。

結婚から得られる利益の喪失

人は、結婚から大きな利益を得るが、離婚により、その利益は失われる[17]。学歴や職歴がおなじであれば、結婚している男性は、独身や離婚後の男性よりも、平均して、より多くの収入を得る。結婚している男性は、より健康で、精神的に安定し、より長生きする。結婚している女性は、独身、同棲中、離婚した女性と比較して、経済的に、より豊かになる。ストレスが少なく、幸福感がより強くなる。また両親が結婚している子どもは、片親や、親が再婚後の子どもと比較して、学業成績がより良好で、精神的なトラブルが少なく、成人してからの社会的地位がより高く、結婚生活もうまく行く。子どもは両方の親から多くを学ぶのである。また結婚した家庭は、地域における人間関係の拠点になり、社会のネットワークに貢献する。離婚により、こうした結婚の利点は失われる。

女性については、寡婦とそうでない女性を比べると、寡婦の方が貧困率が高いという[18]

離婚によって収入を得ている職業・産業

離婚によって収入を得ている職業としては、弁護士(法曹)、探偵などがあげられる[19]。人によってはこのような職業・業務を「離婚関連産業」「離婚産業」などと呼んだりすることがあり、また、離婚関連のお金の動きを「市場」と見なし、「離婚関連市場」などと呼ぶ人もいる。[20][21] [22][23] [24]

  • オーストリアでは2007年10月、探偵、弁護士、カウンセラーらによって「離婚フェア」が開催された。こういった職業では離婚を「今ある関係の終わり」ではなく、「新たな始まり」などと表現し、人を離婚へと誘導することがある[25][26]
  • 子どもの権利は、日本では裁判規範とはされず、裁判所によって無視されており、国際機関から再三勧告を受けている[27]


離婚に関する作品

脚注

  1. ^ 『裁判と社会―司法の「常識」再考』ダニエル・H・フット 溜箭将之訳 NTT出版 2006年10月 ISBN:9784757140950』
  2. ^ 時事通信のニュース記事
  3. ^ 男女共同参画社会に関する世論調査(内閣府)
  4. ^ 最高裁判例 昭和38年11月28日 (pdf)
  5. ^ 2007年5月23日付読売新聞『「熟年離婚」揺れてます…制度開始1か月、年金分割相談 1万件超』
  6. ^ a b 『事典 家族』弘文堂)
  7. ^ フジテレビ「離婚弁護士」
  8. ^ 婚姻・離婚件数と離婚率の年次推移
  9. ^ 離婚に関する統計(厚生労働省)
  10. ^ 平成15年 人口動態統計の年間推計(厚生労働省)
  11. ^ 『明治の結婚 明治の離婚―家庭内ジェンダーの原点』 湯沢 雍彦
  12. ^ 福岡県弁護士会のコラム
  13. ^ 司法統計 (pdf)
  14. ^ The National Marriage Project
  15. ^ Marriage Builders
  16. ^ Smart Marriage
  17. ^ National Marriage Project
  18. ^ 「未亡人・離婚女性への差別、韓国が最も過酷」『中央日報』2008年6月25日付配信
  19. ^ 村上政博『法律家のためのキャリア論: 変わりはじめた弁護士・役人・学者の世界』PHP文庫、ISBN 4569645348
  20. ^ 注.結婚に関連する産業を「結婚関連産業」「結婚関連市場」などと呼ぶのと同じ原理である
  21. ^ 出典,
    • Robert Mendelson, A Family Divided: A Divorced Father's Struggle With the Child Custody Industry
    • Glenda Riley, Divorce: An American Tradition, p225
    • John Hubner, Jill Wolfson, Somebody Else's Children: The Courts, the Kids, and the Struggle to Save, p.163 他多数
  22. ^ 出典, 弁護士相馬達夫の法律百科
  23. ^ 拡大する未開拓分野、離婚関連市場に向けた新ビジネス動向 JNEWS
  24. ^ スイスの離婚市場
  25. ^ 2007年10月22日産経iza『世界初の「離婚フェア」、オーストリアで開催』
  26. ^ Newsvine.com Oct 27, 2007
  27. ^ 国連子どもの権利委員会、平野裕二氏訳

関連項目

離婚以外の婚姻の形態

離婚原因

離婚により発生する憲法上の問題

離婚と法律

世相

外部リンク