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スーツアクターは[[中島春雄]]。
スーツアクターは[[中島春雄]]。


外見は[[セイウチ]]に似ているが爬虫類という設定。南極の地底に眠っていたが妖星ゴラス回避のため建設された原子力ジェットパイプの熱で目覚め基地の装置の一部を破壊した。その後調査に来た国連のVTOL機のレーザー攻撃により死亡した。
外見は[[セイウチ]]に似ているが爬虫類という設定。南極の地底に眠っていたが妖星ゴラス回避のため建設された原子力ジェットパイプの熱で目覚め基地の装置の一部を破壊した。その後調査に来た国連の[[垂直離着陸機|VTOL機]]のレーザー攻撃により死亡した。


== スタッフ ==
== スタッフ ==

2008年7月18日 (金) 11:16時点における版

妖星ゴラス』(ようせいゴラス)は、東宝制作で1962年公開の特撮映画作品。


注意:以降の記述には物語・作品・登場人物に関するネタバレが含まれます。免責事項もお読みください。


概要

謎の燃える怪星ゴラスと地球の衝突を回避するため、地球の公転軌道そのものを変えて人類が滅亡から逃れる…という内容。

多くの地球滅亡物(いわゆるディザスター映画)では、少数の選ばれた者がシェルターに避難したり、地球外に脱出したり、原因そのものを爆破などの手段で消滅させたり、あるいはなすすべもなく滅亡する…というパターンが主流だが、この作品では「ロケット化した地球で全人類を助ける」という、よく言えば「壮大無比」、悪く言えば「荒唐無稽」な設定で物語が描かれている。

本多猪四郎監督は撮入前に、梶田興治助監督とともに1週間余り東京大学の理工学部に通い、「地球移動」というこの設定の科学的裏づけを考証してもらった。劇中で黒板に示される、地球移動にかかるエネルギー計算などの科学方程式は、東大理工学部が算出したものである。

クランク・アップ前になって、東宝上層部から、「せっかくの円谷特撮だから怪獣を出してほしい」との要求があった。本多監督は抵抗したが、結局、唐突な形で「怪獣マグマ」が登場することとなった。このマグマの登場シーンは当時の映画評などでも蛇足として不評であった。が、ファンにとっては志村喬の登場シーンが増えるという楽しみにもなった。結局、怪獣マグマの登場は、海外での公開ではカットされている。

あらすじ

土星探査の任務を負った日本の宇宙船 JX-1 隼号は、質量が地球の6000倍あるという妖星「ゴラス」発見の報を受け、急遽目的を変更し調査に向かう。だがその方向に巨星は存在しないうえに、逆にゴラスの引力に捉えられてしまう。ゴラスは質量こそ膨大だったが、大きさは地球の4分の3しかなかったのだ。脱出の努力も虚しく、隼号は最後の観測データを送信した直後乗組員共々遭難してしまう。このニュースは多大な衝撃を与えるが、隼号のデータから導き出された結論はさらに恐るべきものだった。「ゴラスは今の進路のままだと地球に衝突する」。

だが、日本宇宙物理学会の田沢博士(池部良)と河野博士(上原謙)の想いとは裏腹に、国民世論は衝撃こそ受けても自分の問題として捉えている人は少なく、政府も対策に本腰を入れようとしない。宇宙省のパイロット達(久保明太刀川寛二瓶正也他)は再度観測を実施せんと JX-2 鳳号の打ち上げを宇宙省長官(西村晃)に直訴するが、兆単位の国家予算を費やした隼号の事故の影響で思うように予算が出ないという現実を知るのだった。しかし田沢は、河野と共に訪れた園田博士(志村喬)亭で、彼の孫・速男の「ゴラスを爆破するか地球が逃げるか、その2つしかないじゃないか」という言葉に一つの活路を見出す。

やがて田沢と河野は、国連科学会議で「地球移動計画」を提案。100日間で地球を40万キロ移動させるために、南極に巨大ロケット推進装置を建設し、これを海水から取り出した重水素及び三重水素を用いた原子力エネルギーを使って地球の軌道を変える、という高度な技術を要する大計画であった。各国の学者はこれを疑問視するが、実はアメリカソ連も似たような技術を秘密裏に研究していたことが判明。これがきっかけで一気に計画は推進し、日本もゴラスの精密なデータ収集のため鳳号の打ち上げを決定した。

かくして「南極計画」は始まり、南極には世界中からありとあらゆる技術と莫大な資材が投入され、一丸となって巨大ロケット建設に取り掛かる。一方の鳳号は、太陽系に向かいつつあるゴラスの観測を急いだ。結果、ゴラスの質量は他惑星や宇宙の塵を吸収した結果、6200倍に増加していた。もはや爆破は不可能であり、地球を救う術は南極計画のみとなる。

困難を乗り越えロケット基地は完成し、ついに点火の時を迎えた。1000本以上のジェットパイプから一気に立ち上がった炎は、計算通りの速度で地球を動かし始めた。このニュースに世界中が歓喜。だが順調に進もうとする計画の中で、ひとり田沢は不安を抱えていた。ゴラスの質量増加が続けば現在の施設だけでは追いつかなくなる、と。彼は国連にさらなる設備投資を訴えるが、その前に河野が立ち塞がる。河野は田沢の意見を支持しつつも、既に国連が“無い袖は触れない”状態であることを知っていたからだった。

その田沢の不安は思わぬ形で的中してしまう。南極の氷の下に眠っていたセイウチ型の巨大生物・マグマが目覚め、施設の一部に損傷を与えたのだ。田沢と河野、そして園田等の処置によりすぐさまマグマは葬り去られるが、復旧作業も含めて72時間というタイムロスを抱えてしまう。

そしてついに、ゴラスと地球が最も接近する日を迎えた。あらゆる人々の尽力によりタイムロスは減ったが、それでも移動距離は36時間分も足りないのだ。地球上ではゴラスの引力により、各地で高潮や嵐、崖崩れが発生し始める。運命の時は刻々と迫っていた。

マグマ

  • 体長:50メートル
  • 体重:2万5000トン

スーツアクターは中島春雄

外見はセイウチに似ているが爬虫類という設定。南極の地底に眠っていたが妖星ゴラス回避のため建設された原子力ジェットパイプの熱で目覚め基地の装置の一部を破壊した。その後調査に来た国連のVTOL機のレーザー攻撃により死亡した。

スタッフ

キャスト

※オープニングタイトルに準拠

その他

  • 「妖星ゴラス」という星は『ゴジラ FINAL WARS』でも登場している(ただし偽物)。
  • 作中に登場するVTOL機(ビートル機)は郡司模型製作所でブリキの叩き出し方式で製作された。後に、『ウルトラマン』に登場するジェットビートルが、同じ木型使用によって製作されている。マグマの着ぐるみも『ウルトラQ』のトドラに改造されている。
  • 南極計画のミニチュアセットはその広さが特撮ファンの間で語り草になっているが、これには以下のような逸話がある。円谷英二から「とにかく大きな南極のセットを組んでくれ」と言われた特撮班の美術スタッフが、勢い余って500坪ある東宝第8スタジオいっぱいに南極の大地のセットを建造。その広さは照明スタッフから「どこに機材を置くんだよ」とボヤキが出るほどだった。そして円谷は、セットの端の方からミニチュアを少しずつ組みながら撮影を進行させ、南極のセットがミニチュアでぎっしり埋まったところで全体のロングショットを撮影した。特撮班のチーフ助監督だった中野昭慶の話によると、南極のシーンだけで撮影に2、3週間を要したという。
  • これも中野昭慶によると、ジェットパイプ噴射には、プロパンガスによる火炎が用いられ、風の影響を考えて屋内セットで撮影された。このためスタジオはものすごい熱さだったという。
  • 本作の四年後の映画「日本一のゴリガン男」で、国防隊基地内に隼号と鳳号のミニチュアが飾られている。
  • 南極を砕氷船が進むシーンでの氷原は発泡スチロールで作られている。