「退去強制」の版間の差分

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2008年2月18日 (月) 05:41時点における版

退去強制(たいきょきょうせい)とは、出入国管理及び難民認定法(入管法)に定められた行政処分の一つで、日本に滞在している外国人を強制的に日本から退去させることをいう。退去強制の処分に至るまでの調査・審理手続を含めて言うときは「退去強制手続」という。関係官庁内では「退去強制令書」を縮めて「退令(たいれい)」と略され、報道等では俗に「強制送還」、「国外退去処分」と表現される。

なお、同法には日本国外の領域から日本に入国(正確には上陸)しようとして拒否される処分(退去命令。略称・退命)があるが、退去強制とは趣旨・条項・罰則等が全く異なる別概念ものとされている。報道等ではこちらも「強制送還」、「国外退去」と表現することがあり、両者を混同して認識する例が少なくない。

退去強制事由

出入国管理及び難民認定法第24条各号所定の退去強制事由を要約して列記。この場合「本邦」とは日本国を指す。正確な退去強制事由は条文参照。(法令データ提供システム

  1. 有効な旅券を所持せず本邦に入った者、又は入国審査官から上陸の許可を受けないで本邦に上陸する目的を有して本邦に入った者(1号)
  2. 入国審査官から上陸の許可を受けないで本邦に上陸した者(2号)
  3. 在留資格を取り消された者(2号の2)
  4. 在留資格を取り消された者で、出国に必要な期間を経過して本邦に残留する者(2号の3)
  5. 他の外国人に不正に上陸許可、在留資格の変更許可、在留期間の更新許可等を受けさせる目的で、文書等を偽造し、偽造文書等を行使、貸与等をした者(3号)
  6. 本邦に在留する外国人(仮上陸の許可、寄港地上陸の許可、通過上陸の許可、乗員上陸の許可又は遭難による上陸の許可を受けた者を除く。)で次に掲げる者(4号)
    1. 資格外活動の禁止に違反して事業を運営する活動又は報酬を受ける活動を専ら行っていると明らかに認められる者(イ。人身取引等の被害者を除く。)
    2. 在留期間の更新又は変更を受けないで在留期間を経過して本邦に在留する者(ロ。いわゆるオーバーステイ。入院等正当な理由がある場合を除く)
    3. 人身取引等を行った者等(ハ)
    4. 旅券法違反の犯罪で刑に処せられた者(ニ。一部除外あり。)
    5. 入管法違反の犯罪で刑に処せられた者(ホ。一部除外あり。)
    6. 外国人登録法違反の犯罪で禁錮以上の刑(実刑に限る。)に処せられた者(ヘ)
    7. 少年で長期3年を超える懲役又は禁錮に処せられたもの(ト)
    8. 薬物犯罪で有罪の判決を受けた者(チ)
    9. そのほか無期又は1年を超える懲役若しくは禁錮に処せられた者(リ。実刑に限る。)
    10. 売春に直接関係ある業務に従事する者(ヌ。人身取引等被害者を除く。)
    11. 他の外国人の不法上陸・不法入国をあおり、そそのかし、助けた者(ル)
    12. 日本国憲法又はその下に成立した政府を暴力で破壊することを企て、若しくは主張し、又はこれを企て若しくは主張する政党等を結成し若しくはこれに加入している者(オ)
    13. 次に掲げる政党等を結成し若しくはこれに加入し、又はこれと密接な関係がある者(ワ)
      1. 公務員であるという理由により、公務員に暴行を加え又は公務員を殺傷することを勧奨する政党等((1))
      2. 公共の施設を不法に損傷し、又は破壊することを勧奨する政党等((2))
      3. 工場事業場における安全保持の施設の正常な維持又は運行を停廃し、又は妨げるような争議行為を勧奨する政党等((3))
    14. 上記政党等の目的を達するため、文書図画を作成・頒布・展示した者(カ)
    15. そのほか法務大臣が日本国の利益又は公安を害する行為を行ったと認定する者(ヨ)
  7. 別表第1の在留資格で在留する者で、一定の刑法犯罪等により懲役又は禁錮に処せられた者(4号の2)
  8. 短期滞在の在留資格をもって滞在する者で、本邦において行われる国際競技会等の経過・結果に関連して、又はその円滑な実施を妨げる目的をもって、その会場等において不法に人を殺傷し、人に暴行を加え、人を脅迫し、又は建造物その他の者を損壊した者(4号の3。いわゆるフーリガン対策)
  9. 仮上陸の許可の条件違反者等(5号)
  10. 上陸拒否事由に該当し退去命令を受けた者で、遅滞なく退去しない者(5号の2)
  11. 寄港地上陸の許可等を受けた者で、許可期間を経過して本邦に残留する者(6号)
  12. 数次乗員上陸許可を取り消された者で、出国に必要な期間を経過して本邦に残留する者(6号の2)
  13. 日本の国籍を離脱した者又は本邦で出生した外国人等が在留資格を取得せずに、国籍の離脱・出生の日から60日を経過して本邦に残留するもの(7号)
  14. 出国命令を受けた者で出国期限を経過して本邦に残留するもの(8号)
  15. 出国命令の際に付された条件に違反したため出国命令を取り消された者(9号)
  16. 難民の認定を取り消された者(10号。一部除外あり。)

出国命令と退去強制との関係

出国命令対象者(対象の範囲については出国命令を参照のこと)は、第1次的には出国命令手続で出国することとなる。もっとも、出国期限内に出国しなかった場合、出国命令の際に付された条件に違反したため出国命令を取り消された場合には、退去強制手続によることになる。

一方、退去強制手続の途中で出国命令対象者であることが判明した場合には、出国命令手続に移行する(47条2項、48条7項、49条5項、55条の3)。

退去強制の手続

退去強制の手続は、違反調査→収容→審査→口頭審理→異議の申出→退去強制令書の発付→退去強制令書の執行の流れで行われる。以下概説する。

違反調査

違反調査とは、退去強制事由の存否について入国警備官により行われる調査である。入国警備官は、容疑者・証人を取り調べ、地方裁判所又は簡易裁判所裁判官の令状により臨検、捜索及び押収をすることができる。

収容

入国警備官が、容疑者に退去強制事由に該当すると疑うに足りる相当な理由があり、またその外国人が出国命令対象者に該当しない場合には、主任審査官に収容令書の発付を請求する。主任審査官がこれを認めて収容令書を発付した場合、入国警備官は、容疑者に収容令書を示して容疑者を収容場等に収容することができる。収容の期間は30日以内であるが、やむを得ない事由があるときには30日を限り延長することができる。

実務上は、退去強制事由に該当する場合であっても、帰国の意思をもって自ら地方入国管理局等へ出頭し、自力で帰国できる見込みがある者に対しては、入管法違反以外に犯罪の嫌疑がなければ、身柄の拘束は行わず在宅での取調べとなることも多い。

審査

入国警備官は、容疑者の収容後48時間以内に、調書及び証拠物とともに,当該容疑者を入国審査官に引き渡す。引渡しを受けた入国審査官は、受け取った調書及び証拠物を精査し、容疑者から事情を聴取するなどして、容疑者が退去強制事由に該当するかについて審査を行う。審査の結果、退去強制事由がないと認定された場合には、直ちに容疑者は放免される。出国命令対象者であると認定された場合には出国命令手続に移行し、容疑者は出国命令を受けたら直ちに放免される。容疑者が退去強制対象者に該当すると認定された場合には、その旨と口頭審理を受ける権利を告知される。容疑者が認定に服した場合には、主任審査官により退去強制令書が発付される。

口頭審理

容疑者が認定に異議があるときは、認定通知の日から3日以内(日数は通知の翌日から起算)に特別審理官に対し、口頭審理の請求をすることができる。特別審理官は、関係書類を精査し、容疑者から事情を聴取するなどして、入国審査官の認定に誤りがないかの口頭審理を行う。入国審査官の認定に誤りがあり、退去強制事由がないと判定された場合には、直ちに容疑者は放免される。出国命令対象者であると判定された場合には出国命令手続に移行し、容疑者は出国命令を受けたら直ちに放免される。容疑者が退去強制対象者に該当するとの認定に誤りがないと判定された場合には、その旨と異議の申出の権利を告知される。容疑者が判定に服した場合には、主任審査官により退去強制令書が発付される。

異議の申出

容疑者が判定に異議があるときは、判定通知の日から3日以内(日数は通知の翌日から起算)に法務大臣に対し、異議の申出をすることができる。法務大臣又はその権限の委任を受けた地方入国管理局長は、関係書類を精査し、異議の申出に理由があるかを書面審理する。異議の申出に理由があり、退去強制事由がないと裁決された場合には、直ちに容疑者は放免される。出国命令対象者であると裁決された場合には出国命令手続に移行し、容疑者は出国命令を受けたら直ちに放免される。異議の申出に理由がなく、在留特別許可をしないと裁決された場合には、主任審査官により退去強制令書が発付される。法務大臣等は、異議の申出に理由がない場合であっても、永住許可を受けているとき、かつて日本国民として本邦に本籍を有したことがあるとき、人身取引等の被害者であるときその他法務大臣等が特別に在留を許可すべき事情があると認めるときには、その者の在留を特別に許可し、直ちにその者を放免する。

退去強制令書の執行

主任審査官により発付された退去強制令書は入国警備官(又は警察官若しくは海上保安官)が執行する。退去強制令書の発付を受けた者は、入国者収容所長又は主任審査官の許可を得て、自費で本邦を退去することもできる。退去強制を受ける者は原則として本国に送還される。

実務上の取扱いとして、退去強制の費用(主に航空運賃)を自分で支弁できたり、差入れを受けることが可能な者は、身柄が拘束(収容)されていても10日から14日程度で出国ができるが、費用を支弁できない場合は、種々の手続・決裁を経て国家予算で送還されるため、収容状態が長期に及ぶこともある。

外部リンク

関連項目