「痛風」の版間の差分

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
削除された内容 追加された内容
Loveless (会話 | 投稿記録)
m ロボットによる 変更: id:Pirai
73行目: 73行目:
[[fr:Arthrite goutteuse]]
[[fr:Arthrite goutteuse]]
[[he:שיגדון]]
[[he:שיגדון]]
[[id:Gout]]
[[id:Pirai]]
[[io:Kiragro]]
[[io:Kiragro]]
[[it:Gotta]]
[[it:Gotta]]

2008年1月16日 (水) 22:08時点における版

痛風(つうふう、gout)とは高尿酸血症を原因とした関節を来す疾患である。名称は、痛みが風が吹くように全身を移動することから命名された。尿酸値の高い・低いは両親からの遺伝及び祖父母以前からの隔世遺伝によると考えられている。

原因

痛風における関節炎は、関節包内に析出した尿酸結晶に対する炎症反応である。従って、高尿酸血症がその原因の一つであることは間違いない。ただし、高尿酸血症の患者で、実際に痛風をおこす患者はごくわずかである。そこで、痛風を起こすことになる直接の原因は別にあるとする考え方も存在する。米国で、高尿酸血症の患者に尿酸値を下げる薬を処方しないのはその考え方に基づいている。実際、痛風は、高尿酸血症の治療薬によって急激に尿酸値が低下したときにもおこることがある。

疫学

患者の90%以上が男性で、ぜいたくな食生活をすると発症すると言われており、「帝王病」の異名で知られる。最近の疫学的研究によると、アルコールは痛風のリスクを高めるが、特にビールは最もリスクが高い[1](ただしビールには利尿作用があり、プリン体だけで痛風のリスクが高くなるとは言えないという実験結果もある[要出典]エラー: タグの貼り付け年月を「date=yyyy年m月」形式で記入してください。間違えて「date=」を「data=」等と記入していないかも確認してください。)。また、蒸留酒は少し高く、ワインは飲んでも痛風のリスクを高めない。また、尿酸とはプリン体と呼ばれる物質の代謝産物であり、プリン体を多く摂取すると高尿酸血症、さらには痛風の引きがねとなると考えられるが、のみならずに含まれるプリン体も痛風のリスクを高めるが、野菜に含まれるプリン体類に多い)は高めない[2]。そのほか、精神的ストレスや水分摂取の不足は発症の引きがねとなる。特に水分摂取の不足に関しては、日常的に意識して水分を多めに取り、血中尿酸濃度を(排尿によって体外に出す事で)低く保つことが勧められている。

エピソード

中世のモンゴル帝国で、肉類と乳製品といった動物質食品に偏った食生活をしていたモンゴル人、特に宴会の場で根回しをして満場一致の合議制に持ち込む政治慣習を持ち、アルコール摂取量も著しく多かった王族、貴族層の間では非常に痛風が蔓延していたようである。そのため、帝国内の内紛で政治的に対立した勢力から呼びつけられて身の危険を感じた者が、仮病によって当たり障りなく拒絶しようとするときの常套句が「足が痛い」であったと伝えられている。

症状

関節に激烈な痛みがおこり、発熱を伴う。体温の低い部位ほど尿酸が析出し易いため、痛風発作は足趾(母趾)に好発する。最初に痛む部位は大抵、足の親指の第二関節である。病状が進むと足関節、膝関節まで進行する。発作を繰り返すたびに症状は増悪する。発作の痛みは骨折の痛み以上といわれ非常に苦痛を伴う。

検査

  • 痛風を発症する患者では、少なくとも非発作時には血液検査での高尿酸血症がみられるが、25%の患者で発作時に尿酸値が正常である。
  • 関節穿刺液検査における多形核細胞の増加と尿酸結晶の証明(これが一番大事だが、感度は100%ではない。85%程度とする文献がある)。

治療

  • 発作時には、NSAIDs(非ステロイド系抗炎症鎮痛薬)と呼ばれる種類の痛み止めの薬で対症療法を行う。インドメタシンなどに、臨床研究に基づく科学的根拠がある(根拠に基づいた医療)。他のNSAIDsの効果もおそらく同等である。ただし、アスピリンは高尿酸血症を悪化させるため避けるべきである。
  • 痛風患者は発作の前兆を感じることがあると言われ、そのときコルヒチンを飲むと発作を予防する効果があるとされている。しかしこの治療法に臨床研究に基づく根拠はない。
  • 疼痛が強い患者では、ステロイドの全身投与や、単関節炎患者では関節内投与が極めて有効である。最近では、最初にNSAIDsではなくステロイドを服用したほうが、効果は同等で副作用(悪心消化管出血など)は少ないとする報告がある[3]
  • 発作を起こしている関節は安静を保つ必要がある。動かすと症状は悪化する。
  • 痛風発作がおこってから1ヶ月は、尿酸値を下げる薬を服用してはならない。これは、この時期には尿酸値を下げる薬が痛風発作をひきおこすことがあるからである。
  • 予防的に尿酸産生抑制剤であるアロプリノールや、尿酸排泄促進剤であるベンズブロマロンプロベネシドを服用し、高尿酸血症を改善する。ただし、発作後2-4週間は血中尿酸値の変動そのものが痛風発作を増悪したり再燃させる可能性があるため、服用してはならない。
  • 『高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン』[4]では、「適度な量の飲酒」、「プリン体の摂取を控えめにする」、「十分な水分摂取」、「尿をアルカリ性に保つ」、「運動」、「ストレスの解消」がすすめられてる。

民間療法と喫茶の歴史

水分を多めに取る事で、非常な痛みを伴う症状の発生を予防できる事は、古くから経験によって知られていた。これは排尿によって血中尿酸濃度を下げる効果があるため、関節への尿酸結晶の発生を避けられるためである。

特に利尿作用のある緑茶紅茶コーヒー等を多量に摂取して大量に排尿すれば、それだけ大量の尿酸が体外に排泄される事にも繋がるため、より症状発生の予防ができるとされている。しかし利尿作用も度が過ぎると、脱水症状を起こして症状が悪化したり、尿路結石が出来る可能性もある。

1618世紀ヨーロッパでは、ワイン等の類を日常的に飲み、肉食中心の食習慣であった貴族や王侯の間で、痛風が猛威を振るっていた。しかしヨーロッパに喫茶の習慣が伝えられると、喫茶する事で痛風の症状を緩和できたり予防できるとして、盛んに喫茶が流行・奨励された。

なお当時の緑茶が、日本中国などのアジアでしか生産されていなかった事もあり、大変贅沢な療法とされ、オランダが日本産や中国産の、イギリスが中国産の緑茶を独占的に扱っていたため、緑茶が高価過ぎて手が出せない事情から、フランスドイツでは、コーヒーの飲用が流行したという。紅茶は、保存に便利で効果の程は緑茶と大きく変わらないとして、後々のイギリスにおける紅茶文化発展の元となった。

今日では、これらの飲料は大変安価なものになったため、気軽に試せる民間療法ではあるが、前記の通り、現代医学の上では問題点も提起されているし、何より飲み過ぎれば安眠を阻害することにも繋がる。

また、尿酸値を下げることが発作のリスクを抑えるという観点から、肝機能向上(中性脂肪を減らし、肝臓内に蓄えられているプリン体自体を減らす)と腎機能向上(腎臓の負担を減らし、効率的に尿酸の排出をうながす)は重要な療法といえる。具体的には、散歩などの有酸素運動、低塩分、低カロリーな食事、カリウムを多く含む食品の摂取、十分な水分補給と入浴、睡眠などが効果があるとされる。

アメリカでは尿酸値を下げる効果と痛風発作の痛みを緩和する効果があるといわれるアメリカンチェリーは、アントシアニンなどのポリフェノール類が働いているといわれている(効果はあるようだが、まだ臨床と研究段階でメカニズムは解明されていない)。

参考文献

  1. ^ Choi HK; Atkinson K; Karlson EW; Willett W; Curhan G. Alcohol intake and risk of incident gout in men: a prospective study. Lancet 2004 17;363:1277-81.
  2. ^ Choi HK; Atkinson K; Karlson EW; Willett W; Curhan G. Purine-rich foods, dairy and protein intake, and the risk of gout in men. N Engl J Med 2004 11;350:1093-103.
  3. ^ Man CY et al. Comparison of oral prednisolone/paracetamol and oral indomethacin/paracetamol combination therapy in the treatment of acute goutlike arthritis: A double-blind, randomized, controlled trial. Ann Emerg Med 2007;49:670-7.
  4. ^ 高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン ダイジェスト版」日本痛風・核酸代謝学会、2002年9月。ISBN ISBN 4-901935-02-X

関連

外部リンク