気仙川

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
気仙川けせんがわ
河口付近左岸より撮影(2015年4月撮影)
川に架かる大きな吊り橋は一般橋梁ではなく、震災復興事業(地盤のかさ上げ)土砂運搬のために作られた巨大なベルトコンベアである。
水系 気仙川
種別 二級河川
延長 44 km
流域面積 520 km²
水源 高清水山たかすずやま(岩手県)
水源の標高 1,013 m
河口・合流先 広田湾(岩手県)
流域 岩手県

地図

地図
テンプレートを表示

気仙川(けせんがわ)は、岩手県を流れる二級河川であり、気仙川水系の本流である。住田町陸前高田市を流域とし、流路延長は44キロメートル。鮎など渓流釣りの人気スポットとして知られる。

概要[編集]

住田町を流れる気仙川(2007年7月撮影)

岩手県気仙郡住田町上有住かみありす高清水山たかすずやまを源流として南西に向かって流れ、多くの支流を合わせながら[1]住田町世田米の住田町役場付近でほぼ直角に右に折れて陸前高田市へ南流する[2]陸前高田市に入ると南から南南東に流れて広田湾太平洋)に注ぐ[3]。河口付近で三角形の陸前高田平野を作る[4]。全長は44キロメートル、流域面積は520平方キロメートル[2]

1934年(昭和9年)、昭和農業恐慌により地域経済が疲弊する中、時局匡救事業の一環として下流域で河川改修事業が行われた。雇用された労働者の賃金は男90銭、女45銭とされた[5]

河口には仙台藩・岩手県を代表する防潮林であり、観光地にもなっていた高田松原があったが、2011年(平成23年)3月11日の東日本大震災によって壊滅した。

震災後に再建が進められた河口部の水門2020年(令和2年)3月末にほぼ完成となった[6]

主な支流[編集]

市町名は流域の自治体

  • 大股川おおまたがわ:住田町 - 物見山ものみやま種山ヶ原)に発して東流し、世田米川口で気仙川の右岸に合流する[7]
  • 矢作川やはぎがわ(生出川、中平川):陸前高田市 - 竹駒地区で気仙川の右岸に合流する[8][9]

水害[編集]

流域は急峻な地形であるため洪水が起こりやすく、たびたび水害に見舞われた。近年発生した大規模な水害は次の通り[10]

  • 1979年(昭和54年)10月 - 台風20号により氾濫。橋梁が流されるなど甚大な被害。
  • 1981年(昭和56年)8月 - 台風15号により氾濫。
  • 1998年(平成10年)9月 - 豪雨により氾濫。土砂崩れや路面流出が相次ぐ。
  • 1999年(平成11年)7月 - 豪雨により各地で浸水が発生。
  • 2002年(平成14年)7月 - 台風6号による氾濫。国道45号が寸断したほか、各地で水路が氾濫。

生態系[編集]

清流として知られ、アユイワナヤマメなどの魚類が多く生息している[11]

渓流釣り[編集]

毎年3月から10月のシーズンには渓流釣りを楽しむ釣り師が訪れ[11]、毎年7月1日はアユ釣り解禁日となっている[12][13][14]。なお、魚種ごとに定められた気仙川での釣りの方法と期間については、遊漁券を発行している気仙川漁業協同組合の「遊漁規則」に示されている[15]

並行・交差する交通[編集]

道路[編集]

[編集]

そのほか気仙川とその支流にかかる多数の橋の名前は、気仙川漁業協同組合ウェブサイトの「遊漁マップ」で確認できる[1]

作品[編集]

東日本大震災の翌年2012年(平成24年)に、陸前高田市出身の著名な写真家・畠山直哉写真集『気仙川』(河出書房新社)を刊行した[16]。同写真集には2013年刊行のフランス版‘Kesengawa’(Light motiv 発行、英仏語併記)もある[17]

脚注[編集]

  1. ^ a b 遊漁マップ” (pdf). 気仙川漁業協同組合オフィシャルサイト. 気仙川漁業協同組合. 2023年6月11日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年6月11日閲覧。 ※pdf配布元は気仙川漁業協同組合ウェブサイト「遊漁マップ」ページ。
  2. ^ a b 気仙川の概要”. 岩手県公式ウェブサイト. 岩手県 (2019年2月20日). 2023年5月31日閲覧。
  3. ^ 北本朝展(国立情報学研究所) (2022年8月8日). “気仙川 [0300420001] 気仙川水系 地図”. 国土数値情報河川データセット. ROIS-DS 人文学オープンデータ共同利用センター. 2023年6月10日閲覧。
  4. ^ 小池, 田村 他編『日本の地形 3 : 東北』、63頁。
  5. ^ 「木の実、草の根も食べ尽くして」『東京朝日新聞』昭和9年10月14日(『昭和ニュース事典 第4巻 昭和8年-昭和9年』本編、pp. 461-462、昭和ニュース事典編纂委員会 毎日コミュニケーションズ刊 1994年)
  6. ^ 津波防御ライン確保 「気仙川水門」ほぼ完成 陸前高田」『Web東海新報』東海新報社、2020年4月8日、1面。2021年3月13日閲覧。オリジナルの2021年3月13日時点におけるアーカイブ。
  7. ^ 北本朝展(国立情報学研究所) (2022年8月8日). “大股川 [0300420014] 気仙川水系 地図”. 国土数値情報河川データセット. ROIS-DS 人文学オープンデータ共同利用センター. 2023年6月10日閲覧。
  8. ^ 北本朝展(国立情報学研究所) (2022年8月8日). “矢作川 [0300420006] 気仙川水系 地図”. 国土数値情報河川データセット. ROIS-DS 人文学オープンデータ共同利用センター. 2023年6月10日閲覧。
  9. ^ 小松正之『大震災後の海洋生態系 : 陸前高田を中心に』雄山閣〈地球環境 陸・海の生態系と人の将来〉、2022年7月、17頁。ISBN 978-4-639-02839-0。"矢作川/ 黒森山から源流を発して竹駒地区で、気仙川と合流する。矢作川には、生出川と黒森山が源流の中平川が合流する。生出川の源流には、清水川があり、岩手の名水100選に選ばれた。"。 
  10. ^ 気仙川の治水”. 津付ダム建設事務所 (2014年7月30日). 2008年5月7日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年6月10日閲覧。 ※表「既存災害実績(住田町、陸前高田市)」も参照。
  11. ^ a b 気仙川”. 住田町公式ウェブサイト. 住田町. 2023年6月10日閲覧。
  12. ^ 気仙川 鮎釣り <住田町> ファミリーで釣りの競演!”. さんりく旅しるべ 〜いわて三陸観光ガイド〜. 公益財団法人さんりく基金 三陸DMOセンター (2022年6月30日). 2023年6月11日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年6月11日閲覧。
  13. ^ 梅雨空に銀鱗キラリ 気仙川でアユ釣り解禁 約500人が来訪 (別写真あり)」『Web東海新報』東海新報社、2021年7月2日、7面。2021年3月13日閲覧。
  14. ^ 気仙川に夏の情景/県内トップ切りアユ漁解禁/早朝から多くの太公望」『Web東海新報』東海新報社、2012年7月3日、6面。2023年6月11日閲覧。オリジナルの2012年7月4日時点におけるアーカイブ。 ※東日本大震災の翌年の鮎釣り解禁記事。
  15. ^ 遊漁規則”. 気仙川漁業協同組合オフィシャルサイト. 気仙川漁業協同組合. 2023年6月11日閲覧。 ※第3条(遊漁の方法および期間)参照。
  16. ^ 飯沢耕太郎 (2012年10月15日). “畠山直哉『気仙川』:artscapeレビュー”. 美術館・アート情報 artscape. 大日本印刷株式会社. 2023年6月11日閲覧。
  17. ^ 気仙川 by 畠山直哉”. Hakusan Creation. Hakusan Creation | An Artist-run Publisher. 2023年6月10日閲覧。記事英語版あり。

参考文献[編集]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]