日本民営鉄道協会

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日本民営鉄道協会
Japan Private Railway Association
団体種類 一般社団法人
設立 2012年4月1日
(一般社団法人)
所在地 東京都千代田区紀尾井町3-6
紀尾井町パークビル6階
北緯35度40分55.8042秒 東経139度44分9.906秒 / 北緯35.682167833度 東経139.73608500度 / 35.682167833; 139.73608500座標: 北緯35度40分55.8042秒 東経139度44分9.906秒 / 北緯35.682167833度 東経139.73608500度 / 35.682167833; 139.73608500
法人番号 5010005018726 ウィキデータを編集
起源 軽便鉄道協会
主要人物 代表理事会長 原田一之
代表理事理事長 羽尾一郎
活動地域 日本の旗 日本
主眼 鉄道事業及び軌道事業の健全な発達
活動内容 鉄道、軌道事業が社会的、経済的生活の向上に寄与するための施策を企画すること 他
会員数 72社
ウェブサイト www.mintetsu.or.jp ウィキデータを編集
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一般社団法人日本民営鉄道協会(にっぽんみんえいてつどうきょうかい)は、日本鉄道事業者および軌道経営者で構成する業界団体である。略称は民鉄協(みんてっきょう)。元国土交通省鉄道局所管。

概要[編集]

会員は、主に国鉄分割民営化1987年)・鉄道事業法施行(1986年)前から旧地方鉄道法に基づいて鉄道事業を行っていた鉄道事業者と軌道法に基づいて事業を行っていた軌道経営者で、地方公営企業を除く事業者である。地方公営企業として鉄道事業・軌道経営する地方公共団体東京都大阪市名古屋市札幌市など日本の一部の政令指定都市))は一般社団法人 公営交通事業協会の会員である。

会員資格は「鉄道事業及び軌道事業を営む法人」であり、「民営」に限定されておらず[注 1]、会員はほとんどが純民間資本の株式会社であるものの一部に地方公共団体も出資する第三セクターの株式会社(青い森鉄道ひたちなか海浜鉄道など)も加盟している他、東京地下鉄の前身である公共企業体帝都高速度交通営団も会員であった。とさでん交通は、純公共資本の企業ではあるものの、民営鉄道の土佐電気鉄道から会員資格を引き継いだため、加盟している。

入会は任意であり、日本の民間鉄道事業者全てが加盟しているわけではない。例えば、分割民営化により日本国有鉄道の鉄道事業の大部分を地域別に継承したJRグループ7社[注 2]は会員ではない。JR傘下の鉄道事業者では仙台空港鉄道嵯峨野観光鉄道は会員であるが、東京モノレール東海交通事業などは未加盟である。財団法人札幌市交通事業振興公社(札幌市電)・青函トンネル記念館神戸住環境整備公社)や宗教法人鞍馬寺)も未加盟である。

大手私鉄でも西日本鉄道(西鉄)が、自社の経営格差[注 3]および地域格差が関東・関西の大手私鉄と隔たりがあったことを理由に1969年6月に脱退していた[1]。また、名古屋鉄道も同様の理由で1971年に脱退していたが、協会側の対応の変化を見て西鉄と名鉄は1982年8月に復帰している[2][1]。その後京成電鉄が自社の経営危機に突入した1980年3月に脱退したが、同社も1990年4月に復帰した[注 4]。2005年に開業した首都圏新都市鉄道や、旧大阪市交通局の鉄道・軌道事業を2018年に民営化した大阪市高速電気軌道の2社[注 5]も、規模的には大手私鉄の一角と認められるレベルであるが[3]、2023年4月現在は未加盟[注 6]である。国土交通省の資料でも静岡県の2大私鉄である静岡鉄道遠州鉄道[注 7]とともに中小民鉄に区分されている[4]

関連組織に地方毎の鉄道協会(東北鉄道協会関東鉄道協会中部鉄道協会関西鉄道協会中国地方鉄道協会四国鉄道協会九州鉄道協会)があり、そちらには第三セクターの多くも加盟しており、総加盟者数は本協会より多い。

役員[編集]

会長職は、関西大手と関東大手から持ち回りで選出されている。

会長
在任期間 氏名 役職(当時)
1975年 - 1977年 川崎千春 京成電鉄社長
1979年 - 1981年 川勝傳 南海電気鉄道社長
1981年 - 1983年 広田宗 小田急電鉄会長
1983年 - 1985年 柴谷貞雄 阪急電鉄社長
1985年 - 1987年 片桐典徳 京浜急行電鉄会長
1989年 - 1991年 利光達三 小田急電鉄社長
1991年 - 1993年 久万俊二郎 阪神電気鉄道社長、会長
1993年 - 1995年 芹沢守利 京浜急行電鉄会長
1995年 - 1997年 金森茂一郎 近畿日本鉄道会長
1997年 - 1999年5月12日 平松一朗 京浜急行電鉄会長
1999年5月12日 - 2001年 小林公平 阪急電鉄会長
2001年 - 2003年 清水仁 東京急行電鉄会長
2003年7月 - 2005年5月27日 吉田二郎 南海電気鉄道会長
2005年5月27日 - 2007年5月25日 小谷昌 京浜急行電鉄会長
2007年5月25日 - 2009年5月29日 佐藤茂雄 京阪電気鉄道社長
2009年5月29日 - 2011年5月27日 上條清文 東京急行電鉄会長
2011年5月27日 -2013年5月31日 石渡恒夫 京浜急行電鉄会長
2013年5月31日 - 2015年5月29日 坂井信也 阪神電気鉄道会長
2015年5月29日 - 2017年5月26日 根津嘉澄 東武鉄道取締役社長
2017年5月26日 - 2019年5月31日 山木利満 小田急電鉄取締役会長
2019年5月31日 - 2021年5月28日 和田林道宜 近畿日本鉄道代表取締役会長
2021年6月4日 - 2023年5月26日 野本弘文 東急電鉄取締役会長
2023年5月26日 - 原田一之 京浜急行電鉄取締役会長
副会長
在任期間 氏名 役職(当時)
2005年 - 2007年 上條清文 東京急行電鉄社長
木村操 名古屋鉄道社長
佐藤茂雄 京阪電気鉄道社長
明松亮一 神戸電鉄社長
笠原甲一 長野電鉄社長
大田哲哉 広島電鉄社長
2007年 - 2009年 上條清文 東京急行電鉄会長
木下栄一郎 名古屋鉄道社長
角和夫 阪急電鉄社長
明松亮一 神戸電鉄会長
桑名博勝 富山地方鉄道社長
大田哲哉 広島電鉄社長
2009年 - 2011年 石渡恒夫 京浜急行電鉄社長
木下栄一郎 名古屋鉄道社長
坂井信也 阪神電気鉄道社長
明松亮一 神戸電鉄会長
桑名博勝 富山地方鉄道社長
大田哲哉 広島電鉄社長
2011年 - 2013年 根津嘉澄 東武鉄道社長
山本亜土 名古屋鉄道社長
亘信二 南海電気鉄道社長
竹内善一郎 遠州鉄道社長
上門一裕 山陽電気鉄道社長
大田哲哉 広島電鉄社長
2013年 - 2015年 根津嘉澄 東武鉄道社長
山本亜土 名古屋鉄道社長
小林哲也 近畿日本鉄道社長
竹内善一郎 遠州鉄道社長
上門一裕 山陽電気鉄道社長
佐伯要 伊予鉄道社長
2015年 - 2017年 山木利満 小田急電鉄取締役社長
山本亜土 名古屋鉄道取締役会長
加藤好文 京阪電気鉄道取締役社長
大谷隆男 秩父鉄道取締役社長
杉山健博 神戸電鉄取締役社長
佐伯要 伊予鉄道取締役社長
2017年 - 2021年 野本弘文 東急電鉄取締役社長
安藤隆司 名古屋鉄道取締役社長
杉山健博 阪急電鉄取締役社長
大谷隆男 秩父鉄道取締役社長
寺田信彦 神戸電鉄取締役社長
椋田昌夫 広島電鉄取締役社長
2021年 - 2023年 原田一之 京浜急行電鉄取締役社長
髙﨑裕樹[注 8] 名古屋鉄道取締役社長
遠北光彦 南海電気鉄道取締役社長
宮岸武司 北陸鉄道取締役社長
寺田信彦 神戸電鉄取締役社長
椋田昌夫 広島電鉄取締役社長
2023年 - 現職 紅村康 京王電鉄取締役会長
髙﨑裕樹 名古屋鉄道取締役社長
原恭[注 9] 近畿日本鉄道取締役社長
宮岸武司 北陸鉄道取締役社長
寺田信彦 神戸電鉄取締役社長
椋田昌夫 広島電鉄取締役社長

会員の一覧[編集]

括弧内は本社所在地。地方区分および一覧の掲載順序は日本民営鉄道協会の公式発表に準ずる。

★印は地方公共団体も出資する第三セクター鉄道
☆印は完全公的資本の株式会社
●印は大株主に非加盟鉄道会社のある会社
■印は特別法に拠る特殊会社
▲印は鉄道事業法施行後に設立あるいは加盟した会社
◎印は交通系ICカード全国相互利用サービスが利用できる鉄道会社

大手[編集]

東北[編集]

北陸信越[編集]

関東[編集]

中部[編集]

関西[編集]

中国[編集]

四国[編集]

九州[編集]

非加盟会社[編集]

日本の民間鉄道会社のうち民鉄協非加盟の会社。民鉄協に加盟している大手私鉄の子会社または大口出資会社、バス・建設業など異業種から参入した会社、第三セクターの会社が多数を占める。民鉄協には加盟せず、公営交通事業協会の特別会員もしくは賛助会員となっている会社や、第三セクター鉄道等協議会に加盟している会社も少なくない。本表からはJR7社と貨物専業を除外した。

純民間資本
筑波観光鉄道(京成電鉄の子会社)/千葉ニュータウン鉄道(京成電鉄の子会社)/東京モノレール(JR東日本グループ)/御岳登山鉄道(京王電鉄の子会社)/東海交通事業JR東海の子会社)/黒部峡谷鉄道関西電力の子会社)/養老鉄道(近畿日本鉄道の子会社)/近江鉄道(西武鉄道の子会社)/WILLER TRAINS(京都丹後鉄道・WILLER ALLIANCEの子会社)/比叡山鉄道(京阪電鉄の子会社)/阪堺電気軌道(南海電鉄の子会社)/スカイレールサービス積水ハウスが大株主)/筑豊電気鉄道(西日本鉄道の子会社)
公的資本の出資(間接含む)がある会社
函館山ロープウェイ道南いさりび鉄道IGRいわて銀河鉄道三陸鉄道秋田内陸縦貫鉄道由利高原鉄道山形鉄道阿武隈急行会津鉄道野岩鉄道鹿島臨海鉄道首都圏新都市鉄道真岡鐵道わたらせ渓谷鐵道埼玉新都市交通埼玉高速鉄道流鉄千葉都市モノレール舞浜リゾートラインいすみ鉄道北総鉄道成田高速鉄道アクセス芝山鉄道東葉高速鉄道東京臨海高速鉄道ゆりかもめ多摩都市モノレール横浜高速鉄道横浜シーサイドライン大山観光電鉄北越急行しなの鉄道えちごトキめき鉄道あいの風とやま鉄道IRいしかわ鉄道のと鉄道立山黒部貫光天竜浜名湖鉄道愛知環状鉄道上飯田連絡線名古屋ガイドウェイバス伊勢鉄道四日市あすなろう鉄道伊賀鉄道明知鉄道長良川鉄道信楽高原鉄道北近畿タンゴ鉄道大阪モノレール大阪港トランスポートシステム中之島高速鉄道関西高速鉄道大阪外環状鉄道西大阪高速鉄道大阪市高速電気軌道奈良生駒高速鉄道神戸高速鉄道神戸新交通北条鉄道智頭急行若桜鉄道広島高速交通錦川鉄道阿佐海岸鉄道土佐くろしお鉄道北九州高速鉄道平成筑豊鉄道松浦鉄道甘木鉄道南阿蘇鉄道くま川鉄道肥薩おれんじ鉄道沖縄都市モノレール
神戸高速鉄道は阪急阪神ホールディングスの子会社で、以前は民鉄協に加盟していたが2021年9月現在では加盟していない。

加盟の会社の路線が存在しない都道府県[編集]

前述のとおり入会は任意であるため、加盟の会社の路線が存在しない都道府県も多い。

北海道[注 10]秋田県山形県新潟県[注 11]鳥取県山口県徳島県[注 12]佐賀県大分県[注 13]宮崎県[注 13]鹿児島県沖縄県[注 14]

上記以外の都府県には必ず1社は加盟の会社の路線が存在するが、岩手県は貨物専業の岩手開発鉄道[注 15]のみであるため、旅客営業を行う会社に限れば岩手県も加盟の会社の路線が存在しない県に該当する。

(参考)加盟の会社の路線が大手私鉄以外存在しない都道府県[編集]

栃木県[注 16]岐阜県[注 17]滋賀県[注 18]奈良県[注 19]福岡県[注 20]

(参考)以前加盟していた会社[編集]

鉄道事業撤退後も会社が存続する事業者[編集]

この場合は鉄道路線の廃線で鉄道事業のみ撤退した例や鉄道事業を分社した例も含む。

鉄道事業撤退により会社が消滅した事業者[編集]

沿革[編集]

前史[編集]

民鉄協[編集]

国会議員用の乗車証[編集]

国会議員が無料で鉄軌道線に乗車できる「鉄道軌道乗車証」は民鉄協加盟社が中心となって共同で無償提供している。経営上の都合から、一部利用できない会社線もある。この制度は国鉄が存在した1946年衆議院参議院議長から日本鉄道会(民鉄協の前身)に依頼があったことに始まる[7]。国鉄分割民営化で誕生したJRグループの無料乗車証は公費で購入しており、違いがある。

協会内で「公平性という点で利用者の同意が得づらい」という声が上がり、1995年平成7年)以来、各議院に廃止あるいは費用負担の打診を続けていたが、正式な要請だと受け取られないまま20年近くが経過してきた[8]2012年5月には、民鉄協として正式に廃止を求める方向性で検討を開始することとなった[9]

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 定款第5条より。
  2. ^ 東日本旅客鉄道(JR東日本)・東海旅客鉄道(JR東海)・西日本旅客鉄道(JR西日本)・九州旅客鉄道(JR九州)の4社は純民間資本。
  3. ^ 同社は鉄道よりもバス事業の比重が大きい。
  4. ^ 京成電鉄社史「京成電鉄85年のあゆみ」1980年および1990年の欄内の記事に記載。
  5. ^ 首都圏新都市鉄道の連結売上高は300億円台、大阪市高速電気軌道は連結売上高が1000億を超えている。
  6. ^ 2018年6月現在、大阪市高速電気軌道は大阪市交通局時代の名残で公営交通事業協会の特別会員となっている。
  7. ^ 静岡鉄道は大阪市高速電気軌道とともに連結売上高が1000億を超えており、遠州鉄道に至っては連結売上高が2000億円を突破している。
  8. ^ 名古屋鉄道の社長交代までは安藤隆司。
  9. ^ 近畿日本鉄道の社長交代までは都司尚
  10. ^ 北海道は地方単位で唯一加盟する会社の路線が存在しない都道府県である。また加盟する会社の路線が存在しない都道府県のなかでは人口が最も多い。
  11. ^ 北陸信越地方では唯一で、加盟する会社の路線が存在しない本州の都道府県では人口が最も多い。
  12. ^ 四国地方では唯一。
  13. ^ a b JR以外の鉄道路線が存在しない。
  14. ^ 県内の鉄道路線は沖縄都市モノレールのみ。
  15. ^ 同社は1992年4月1日まで旅客営業も行っていた。
  16. ^ 県内で加盟の会社の路線は大手私鉄の東武のみで第三セクターの野岩鉄道真岡鐵道わたらせ渓谷鐵道は未加盟。
  17. ^ 県内で加盟の会社の路線は大手私鉄の名鉄のみで近鉄グループの養老鉄道や第三セクターの明知鉄道長良川鉄道樽見鉄道は未加盟。
  18. ^ 県内で加盟の会社の路線は大手私鉄の京阪のみで西武グループの近江鉄道、京阪グループの比叡山鉄道や第三セクターの信楽高原鉄道は未加盟。
  19. ^ 県内ではJR西日本と近鉄以外の鉄道会社が存在しない。
  20. ^ 県内で加盟の会社の路線のは大手私鉄の西鉄のみで西鉄グループの筑豊電気鉄道や第三セクターの北九州高速鉄道平成筑豊鉄道甘木鉄道は未加盟。
  21. ^ 定款第43条より。

出典[編集]

  1. ^ a b 「西日本鉄道百年史」P.208・285、2008年、西日本鉄道
  2. ^ 梶井健一、飯田経夫、大谷健「<交通経営フォーラム> 鼎談・名古屋鉄道―その経営観、経営戦略」『運輸と経済』第46巻第5号、運輸調査局、1986年5月、12頁。 
  3. ^ 関西大手をごぼう抜き! 数字で見えた大阪メトロの実力 - 乗りものニュース・2018年4月12日
  4. ^ 鉄軌道事業者一覧(令和5年4月1日現在)” (PDF). 統計情報. 国土交通省. 2023年5月20日閲覧。
  5. ^ “民鉄協がHP”. 交通新聞 (交通新聞社): p. 3. (2000年8月1日) 
  6. ^ 移転 日本民営鉄道協会、関東鉄道協会”. 交通新聞社 (2022年6月28日). 2023年1月14日閲覧。
  7. ^ 毎日新聞2006年10月
  8. ^ “私鉄71社、議員無料パス廃止を要請 衆参取り合わず「正式な要請受けていない」”. msn産経ニュース. (2012年5月17日). オリジナルの2012年5月26日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20120526043335/http://sankei.jp.msn.com/life/news/120517/trd12051713470020-n1.htm 2012年5月27日閲覧。 
  9. ^ “国会議員の私鉄無料パス、廃止要請を検討 民営鉄道協会”. 朝日新聞デジタル. (2012年5月17日). オリジナルの2012年5月20日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20120520033200/http://www.asahi.com/politics/update/0517/TKY201205170164.html 2012年5月27日閲覧。 

関連項目[編集]

外部リンク[編集]