慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス

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中央は総合政策学部環境情報学部大学院政策・メディア研究科およびSFC研究所が設置される総環エリア
道路をまたいで左端は男女共学中高一貫校の湘南藤沢中等部・高等部

慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(けいおうぎじゅくだいがくしょうなんふじさわキャンパス、英称:Keio University Shonan Fujisawa Campus)は、神奈川県藤沢市遠藤5322番地に所在する慶應義塾大学キャンパスの一つである。略称SFC(エスエフシー)。

1990年に開設された。
3学部と2つの研究科が設置されており、一般的に「SFC」というと同大学総合政策学部環境情報学部を指すことが多い。

キャンパスの敷地面積は 313,009 m²。(約10万坪)

概要[編集]

Ω館(大講義室棟)
正門(タロー坂)
Ω館、Α館(本館)

学部は総合政策学部環境情報学部、大学院の政策・メディア研究科。別校舎に看護医療学部、大学院の健康マネジメント研究科。中学校・高校として男女共学慶應義塾湘南藤沢中等部・高等部が設置されている。

慶応SFCは日本の大学の中で先陣を切って大学改革に着手し、その多種多様なアイディアはのちに多くの大学の模範となった。1980年代終焉、明治以来の工業化=物的大量生産の時代が終わり、「脱工業化社会」・「第三の波」・「知価社会」のキーワードが次の時代に求められる中、加藤寛高橋潤二郎竹中平蔵などが新キャンパスの設立に参画し、1990年に慶応SFCが開設された。従来の画一的・単線的教育システムからの脱却を掲げ、文系と理系の垣根を超えた「文理融合」の教育・研究を目指し、語学教育や入試制度の改革などを行った。

特徴は、脳科学、身体科学、生命科学情報科学環境科学などと、テクノロジー(インフォメーションテクノロジー、空間情報技術、エレクトロニクスバイオテクノロジーなど)、デザイン(メディアデザイン、デジタルアート、建築・環境デザインなど)を駆使し、柔軟に人文・社会科学と融合させ、美術芸術分野まで幅広い複合領域となっている。

また、SFCは情報通信技術と関係が深く、附属研究所であるSFC研究所は、World Wide Web Consortium(W3C)のアジア拠点になっている。

歴史[編集]

旅人かへらずの碑
  • 1986年(昭和61年)7月20日 - 新学部検討委員会発足[1]
  • 1987年(昭和62年)3月20日 - 答申案発表[2]
  • 1987年(昭和62年)6月 - 新学部設立準備委員会(第1委員会)発足
  • 1988年(昭和63年) - 文部省へ申請
  • 1989年(昭和64年) - 文部省認可
  • 1990年(平成2年) - 総合政策学部環境情報学部のキャンパスとして開設[3]
  • 1990年(平成2年) - 第1回 入学試験
  • 1992年(平成4年) - キャンパス内に慶應義塾湘南藤沢中等部・高等部を設置
  • 1994年(平成6年) - 大学院政策・メディア研究科修士課程設置[4]
  • 1996年(平成8年) - 同後期博士課程、SFC研究所設置
  • 2001年(平成13年) - 看護医療学部設置[5]
  • 2005年(平成17年) - 大学院健康マネジメント研究科修士課程設置
  • 2007年(平成19年) - 同後期博士課程設置

学問分野・研究機関[編集]

総合政策学部[編集]

  • 政策デザインの分野
    • 経済・財政、政治・社会、法律・制度
  • 社会イノベーションの分野
    • 社会起業、ベンチャー・経営、情報社会デザイン
  • 国際戦略の分野
    • 国際政治経済、地域戦略、ヒューマンセキュリティ、言語コミュニケーション
  • 経営・組織の分野
  • 環境ガバナンスの分野
    • 環境政策、都市・地域政策、居住・コミュニティ政策

環境情報学部[編集]

  • 先端情報システムの分野
    • インターネットシステム、基盤ソフトウェアシステム、ユビキタス情報システム、知的情報システム
  • メディアデザインの分野
    • 音響・映像デザイン、プロダクト・ファッションデザイン、空間・コミュニケーション
  • 先端生命科学の分野
    • 環境バイオ、バイオ医科学、ゲノム科学、システム生物学
  • 環境デザインの分野
    • 地球環境テクノロジー、空間情報、エコロジー・ランドスケープ、建築・都市デザイン
  • 人間環境科学の分野
    • 認知科学、スポーツ・スキル、人間工学、社会・心理

GIGA プログラム[編集]

  • GIGA プログラム (Global Information and Communication Technology and Governance Academic Program):
    卒業に必要な単位を英語のみで修得

政策・メディア研究科[編集]

  • プログラム研究領域:
    • グローバル・ガバナンスとリージョナル・ストラテジー (GR)
    • ヒューマンセキュリティとコミュニケーション (HC)
    • 政策形成とソーシャルイノベーション (PS)
    • 認知・意味編成モデルと身体スキル (CB)
    • 環境デザイン・ガバナンス (EG)
    • エクス・デザイン (XD)
    • サイバーインフォマティクス (CI)
    • 先端生命科学 (BI)
  • プロフェッショナル育成コース:
    • 社会イノベータコース
    • ICT先端融合研究コース
    • 環境イノベータコース
    • グローバル環境システムリーダーコース
  • ダブル・ディグリー (Double degree) 制度:
  • 社会人コース:
    • 在職したまま博士学位取得

詳細は「慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科」を参照

SFC研究所[編集]

湘南藤沢キャンパス (SFC) にある大学院政策・メディア研究科、総合政策学部、環境情報学部の附属研究所。諸科学協調の立場に立って国内外のさまざまな関連活動と双方向の連携をとりながら先端的研究を行い、社会の発展に寄与することをその目的としており、産官学による研究を推進している。また、World Wide Webで使用される各種技術の標準化を推進するために設立された標準化団体World Wide Web Consortiumのアジア圏の拠点にもなっている。

看護医療学部[編集]

  • 情報技術・自然言語の分野
    • ヘルスケア情報学、疫学・保健統計学、異文化コミュニケーション
  • 制度・倫理・社会の分野
    • ヘルスケア倫理学、社会福祉学、看護哲学、ヘルスケアと法、NGO・ボランティア論
  • ヒューマンケアリングおよび看護理論・技術の分野
    • 基礎看護学、看護理論、健康教育学、ヘルスケア心理学、医療コミュニケーション、ストレスマネジメント
  • 健康科学・病態学及び人間発達学の分野
    • 解剖生理学、生化学・生理学、薬理学、生物・遺伝学、医学全般、母子看護学、小児看護学、成人看護学、高齢者看護学、スポーツ看護学
  • 臨床看護学及び先端医療の分野
    • 急性期看護学、慢性期看護学、終末期看護学(緩和ケア)、精神看護学、救命救急看護学、医療安全管理学、先端医療技術、遺伝看護学、助産学
  • コミュニティケアの分野
    • 地域看護学、公衆衛生学、在宅・家族看護学、国際保健学、学校保健学、産業保健学、環境保健学
  • 組織マネジメントの分野
    • 保健福祉行政、医療政策・管理学、医療経済学、看護経営・管理学

健康マネジメント研究科[編集]

「健康」を軸として、看護・医療・スポーツに関わる幅広い領域において先導的な役割を果たす、学際的な教育・研究を展開

慶應藤沢イノベーションビレッジ (SFC-IV)[編集]

大学、地域、企業の協同のための施設。

慶應義塾湘南藤沢中等部・高等部[編集]

男女共学中高一貫校。1年から6年までの余裕を持ったカリキュラムデザイン、大学の施設利用、授業連関など豊かな学習環境に恵まれている。

施設[編集]

κ館、ε館、ι館、ο館(研究棟・講義室棟)

キャンパスの建設には、既存の緑と自然地形の起伏を活かした全体計画を行い、情報通信に強い高度なネットワーク環境を完備している。

慶応SFCは「24時間キャンパス」の異名を持ち、24時間、キャンパスが開放されている。

  • 総合政策学部および環境情報学部の存在する通称「総環エリア」と、看護医療学部校舎のエリアに大別される。これらのエリアは藤沢市道遠藤宮原線を挟んで位置している。また、主に両エリアを行き来することの多い看護医療学部生の利便性のため、両エリアを行き来する循環バス「鴨池急行 SoKanKan」が運行されている。
  • 建築物にはギリシア文字の名前が付けられている。
    • 学部長室や事務室のある本館はΑ(アルファ)館、大学生協学生食堂のある厚生棟はΣ(シグマ)館。
    • 研究棟は「KEIO」に因んだκ(カッパ)棟、ε(イプシロン)棟、ι(イオタ)棟、ο(オミクロン)棟。
    • 「language」に因んだλ(ラムダ)棟、「Theater」に因んだΘ(シータ)館、「Digital Science Laboratory」に因んだΔ(デルタ)館。
    • クラブハウス棟(Φ棟、Ψ棟)の命名は少々強引で、東側が「ひがし」→「ひんがし」→「ふぃんがし」→「ふぃー(Φ)」、西側が「西」→「さい(Ψ)」。
  • 円形劇場を模した遊水地は「テアトロン」と呼ばれ、降水量が多いときに水没する。井関前総合政策学部長によって命名された。遊水地は他に「ガリバー」池(鴨池/カモ池)[6]、大学グラウンド、多目的グラウンド(駐車場)の3つがあり、これらが満杯になった場合は地下タンクが使われる。

デザイン・スタジオ棟が、2001年度グッドデザイン賞受賞[7]

学園祭[編集]

七夕祭と秋祭(あきまつり)という二つの学園祭がある。

七夕祭[編集]

毎年七月の第一土曜日に開催される学園祭。SFCの学生有志による七夕祭実行委員会によって企画・運営されており、1990年キャンパス開設以来20年以上の伝統がある。発足当初は七月の第一金曜日の夕刻に開催されていた。

キャンパス内にはやぐらが組まれ、花火や縁日のような出店、御輿などの夏祭りを彷彿とさせるような企画を行っている。また、この学園祭の大きな特徴として、学生と地域との協力を重視している点、七夕祭当日には来場者の多くが浴衣で訪れる点が挙げられる。

秋祭[編集]

毎年十月に土曜日曜の二日間開催される学園祭。SFCの学生有志による秋祭実行委員会によって企画・運営されており、1992年より20年以上続いている。発足当初は藤沢市のイベントである藤沢市民まつりの一環であった。2017年度の開催は10月8日のみであった。

そんな経緯もあり、七夕祭よりも幅広い地域や企業と協力しつつ、運営費を集めており、より学園祭的なことが七夕祭との大きな違いである。

協定[編集]

慶應義塾大学湘南藤沢キャンパスに関連する人物[編集]

ガリバー池(鴨池)からの遠景

政治家・社会運動家・実業家[編集]

司法[編集]

研究者[編集]

クリエイター・デザイナー[編集]

俳優・歌手・芸能[編集]

報道[編集]

スポーツ[編集]

その他[編集]

アクセス[編集]

連節バス「ツインライナー」

脚注[編集]

  1. ^ 委員会のメンバーは次に挙げる22名。松本三郎(常任理事)、相磯秀夫(理工学部)、井関利明(文学部)、牛場暁夫(文学部)、小田英夫(法学部)、金子晃(法学部)、小谷津孝明(文学部)、斎藤信男(理工学部)、佐藤芳雄(常任理事)、鈴木孝夫(言語文化研究所)、関口一郎(商学部)、関本昌秀(常任理事)、曽根泰教(法学部)、高橋潤二郎(経済学部)、寺尾誠(経済学部)、鳥居泰彦(経済学部)、深海博明(経済学部)、藤澤益夫(商学部)、藤森三男(商学部)、保崎秀夫(医学部)、安田健次郎(医学部)、柳井浩(理工学部)
  2. ^ 第1部 SFC前史(1986〜1990)|慶應義塾大学 湘南藤沢キャンパス(SFC)”. www.sfc.keio.ac.jp. 2020年3月19日閲覧。
  3. ^ 同年4月21日、文部省告示第48号「大学、短期大学、大学の学部、短期大学の学科、大学の学部の学科及び高等専門学校の学科の設置を認可した件」
  4. ^ 同年3月29日、文部省告示第42号「大学院及び大学院の研究科の設置を認可した件」
  5. ^ 同年1月24日、文部科学省告示第13号「大学、大学の学部、短期大学の学科及び大学の学部の学科の設置、大学の通信教育の開設、大学院及び大学院の研究科の設置並びに大学院における通信教育の開設を認可した件」
  6. ^ 杉浦学 (2011年). “鴨池の魅力をご紹介します”. SFC鴨池スタイル. 杉浦学. 2020年3月25日閲覧。
  7. ^ 受賞対象名 - 慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス デザイン・スタジオ棟 [藤沢市遠藤5322] - GOOD DESIGN AWARD
  8. ^ 関西学院大学と慶應義塾大学 文理融合の2キャンパス(KSC-SFC)間の連携協定締結について-関西学院大学総合政策学部、理工学部および大学院総合政策研究科、理工学研究科と慶應義塾大学総合政策学部、環境情報学部および大学院政策・メディア研究科の間で、連携協力に関する包括協定を締結-:[慶應義塾]
  9. ^ 藤沢市. “湘南藤沢コンソーシアム”. 藤沢市. 2023年10月16日閲覧。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]

座標: 北緯35度23分18秒 東経139度25分42秒 / 北緯35.38833度 東経139.42833度 / 35.38833; 139.42833