忠犬タマ公

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村松公園のタマ公像(2020年5月)
胎内市笹口浜のタマ公像(2021年3月)
白山公園のタマ公像(2021年3月)
新潟駅南口のタマ公像(2021年3月)

忠犬タマ公(ちゅうけんタマこう)は、新潟県中蒲原郡川内村(のちの村松町、現在の五泉市村松地区)にて飼われていたメス柴犬越後柴犬えちごしばいぬ)である[1][2]。飼い主を2度にわたり雪崩から救ったことから[3]、忠犬として知られている。

概要[編集]

昭和の初めの頃、新潟県中蒲原郡川内村で猟師をしていた刈田吉太郎かりたよしたろうが飼っていた越後柴犬である[2][4]1934年昭和9年)2月5日1936年(昭和11年)1月10日の2度にわたり、刈田が猟場にて雪崩に巻き込まれたのを助けたことにより、日本や世界の新聞・ラジオで大きく取り上げられた[4][5]。タマは新潟県知事アメリカ合衆国から表彰され、1940年(昭和15年)に11歳で没した[5][6]

銅像[編集]

1936年(昭和11年)、乃木神社奉賛会の人々によって北蒲原郡築地村ときのと村の境界付近にある笹口浜に建立された[2]。翌1937年(昭和12年)には、当時の川内村立川内小学校[注 1]校長の呼びかけで、羽下大化による銅像が川内小学校と新潟市白山公園に建立された。このうち、白山公園に建立された銅像は第二次世界大戦中に銅鉄供出されたが、1958年(昭和33年)に再建運動が起き、翌1959年(昭和34年)、皇太子明仁親王(明仁上皇)と正田美智子(上皇后美智子)のご成婚を記念して渡辺徹により2代目が建立された。また、1982年(昭和57年)には上越新幹線開通を記念して、新潟駅南口駅舎2階の新幹線コンコースに羽下大化の弟子の林昭三により銅像が建立された。さらに、翌1983年(昭和58年)には五泉市にある村松公園にも林昭三により銅像が建立された。少し時を経た2003年平成15年)には五泉市内にあるありがとうの郷・タマ公苑こうえんに銅像が建ち、そして2021年令和3年)には五泉市内に新しくできたラポルテ五泉に愛宕小にあるものを複製する形で銅像が建ち、新潟県内には合計7基の忠犬タマ公の銅像が存在することになった[2][7][8][9][10][11][12]

また、当時横須賀市に在住していた新潟県出身の海軍関係者が、この話に感動し、1936年(昭和11年)に高さ約2mの石碑を建立した。この石碑の揮毫は、当時横須賀市長であった小泉又次郎によるものであった[9][13]。当時の村松町川内地区と横須賀市衣笠地区はこの縁から交流を深め、2002年(平成14年)からは市民レベルでの交流が本格化し、合併後の五泉市と横須賀市は2009年(平成21年)1月15日付で災害時相互応援協定を締結した[9][14]。2017年(平成29年)3月23日の衣笠観光協会主催「忠犬タマ公慰霊祭」において、五泉市から寄贈された忠犬タマ公像の除幕式も行われた[15][16]。揮毫は小泉純一郎の次男、小泉進次郎によるものである[17]。現在、日本国内には合計8基の忠犬タマ公の銅像が存在する。

なお、村松公園にあるタマ公像の隣に建立されている石碑の揮毫は、小泉又次郎の孫であり、当時の内閣総理大臣であった小泉純一郎によるものである[18]

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ のちの村松町立、五泉市立。2012年3月の校区統廃合により閉校し、翌4月に市内石曽根に新設された五泉市立愛宕小学校に統合された。

出典[編集]

  1. ^ 山川栄 2015, pp. 3–4.
  2. ^ a b c d 胎内市の歴史探訪155 忠犬公の碑と石像(笹口浜)(【No.323】市報たいない2019年2月1日号)”. 胎内市公式ホームページ. 胎内市. p. 20 (2019年2月1日). 2022年3月10日閲覧。
  3. ^ “世界よ、これがタマ公だ 五泉の忠犬SNSで発信 銅像県内7か所”. 読売新聞オンライン. (2023年1月4日). https://www.yomiuri.co.jp/local/niigata/feature/CO062564/20230103-OYTAT50057/ 2024年3月16日閲覧。 
  4. ^ a b 忠犬タマ公物語”. 五泉市公式ホームページ. 五泉市. 2018年4月22日閲覧。
  5. ^ a b 山川栄 2015, pp. 7–22.
  6. ^ 山川栄 2015, pp. 22–23.
  7. ^ 新潟駅には「忠犬タマ公」の銅像があるそうですが、実在した犬なのですか。 - レファレンス協同データベース
  8. ^ 忠犬タマ公像”. 新潟県公式観光情報サイト にいがた観光ナビ. 2016年9月6日閲覧。
  9. ^ a b c “忠犬タマ公像 交流の証 新潟・五泉市、横須賀市に寄贈へ”. 朝日新聞 朝刊 神奈川版 (朝日新聞社): p. 29. (2016年11月8日). http://www.asahi.com/articles/ASJBX3WBVJBXULOB00X.html 2016年11月8日閲覧。 
  10. ^ 「タマ公と吉太郎」の物語を【しゃべる紙芝居】に!をクラウドファンディングで実現!”. MotionGallery Inc. (2018年9月28日). 2022年3月8日閲覧。
  11. ^ “タマ公のお手柄思いはせ”. 新潟日報社. (2021年9月14日) 
  12. ^ “新たな「忠犬タマ公」像 五泉市、10月オープンの複合施設に 羽下大化氏の作品を複製”. 毎日新聞 朝刊 地方版 (毎日新聞社). (2021年9月3日). https://mainichi.jp/articles/20210903/ddl/k15/040/134000c 2022年3月8日閲覧。 
  13. ^ 忠犬タマ公がとりもつ秋の贈り物~新米こしひかりが2俵~”. YOKOSUKA NEWS RELEASE. 横須賀市 (2013年10月4日). 2016年11月8日閲覧。
  14. ^ 五泉市における災害協定の状況” (XSL). 五泉市 (2016年4月21日). 2016年11月8日閲覧。
  15. ^ 青柳健二 2017, pp. 19–22.
  16. ^ 衣笠山公園「忠犬タマ公」がやってくる!”. YOKOSUKA NEWS RELEASE. 横須賀市 (2016年10月17日). 2018年10月30日閲覧。
  17. ^ “タマ公像、新潟・五泉から横須賀へ 両市結ぶ忠犬、地域のシンボルに”. 産経ニュース 神奈川 (産経新聞社). (2017年5月2日). https://www.sankei.com/article/20170502-B7NEZIUSB5NJVN26ASV2MRPJGM/ 2018年10月30日閲覧。 
  18. ^ 忠犬タマ公 - (小泉進次郎ブログの記事)

参考文献[編集]

  • 滝沢惣衛『新潟駅の忠犬タマ公』滝沢惣衛、1982年9月1日。 
  • 本間芳男『三びきのタマ公』あすなろ書房、1982年10月20日。 
  • 滝沢てるお『忠犬タマ公ものがたり』小学館、1983年5月20日。ISBN 4092860226 
  • 綾野まさる『奇跡の犬タマ公』ハート出版、1998年3月2日。ISBN 4892952117 
  • 山川栄『忠犬タマ公』(PDF)越佐防災テクノ タマ公倶楽部(企画)、2015年5月。全国書誌番号:22667414https://www.pref.niigata.lg.jp/uploaded/attachment/78191.pdf2020年7月30日閲覧 
  • 青柳健二『全国の犬像をめぐる 忠犬物語45話』青弓社、2017年4月24日。ISBN 9784787220714 
  • 青柳健二『犬像をたずね歩く あんな犬、こんな犬32話』青弓社、2018年8月20日。ISBN 9784787220776 
  • 岩野笙子「羽下大化と小林存」『高志路』第413号、p.9-11、ISSN 0912067X 
  • “婚姻届提出…進次郎氏&滝クリに地元横須賀フィーバー、「忠犬タマ公」像は新スポットに?”. スポニチ Sponichi Annex (スポーツニッポン). (2019年8月9日). https://www.sponichi.co.jp/entertainment/news/2019/08/09/kiji/20190809s00041000058000c.html 2019年8月12日閲覧。 
  • 『一読(わんどっく) ハチ公とタマ公が解るお話』忠犬タマ公委員会事務局、2020年12月。 
  • 藤田市男 (2022年3月5日). “桜の里に息づく歴史”. 新潟日報社(おとなプラス): p. 1 

外部リンク[編集]