五毛党

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五毛党(ごもうとう、拼音: wǔmáo dǎng)とは、中華人民共和国における中国共産党配下のインターネット世論誘導集団を指すネットスラングである。正式名は網絡評論員(インターネットコメンテーター)であり[1]、2005年ごろまでは書き込み1件当たり5毛(5角(=0.5元)を口語でこう呼ぶ)が支払われていたことからこの蔑称が名づけられた。網軍[2][3]と呼ばれることもある。

通常は一般人を装い、インターネット上のコメント欄や電子掲示板などに、中国共産党政権に有利な書き込みをする。または共産党「それに関連する事」を批判する人に対する集団攻撃をする。ネットを通じ、世論誘導をする役割を担っている。2015年時点で、約1050万人程度いると見られている[4][5]。中国政府が世論操作のためにSNSに投稿させている「やらせ書き込み」は、年間で4億8800万件に上るという[6]

歴史と名称[編集]

2004年の長沙市党委宣伝部のネットコメンテーターについて、「毎月の最低支払金額が600元で、1回の書き込み毎に五毛(0.5人民元で8〜10日本円)が上乗せされる」とされていたことを踏まえ、五毛党の俗名がついた。

五毛党の必要条件[編集]

五毛党のコメンテーターは、一般的には中国共産党主導のもと地方政府の宣伝部門で構成され[7]、活動は地元政府と連携する事が殆どである。

仕事は世論を誘導し地方政府への負の印象を排除する事で、中央政府である中国共産党の主張とは一致しないことがある[8]

また一般的なイメージと異なり、論争などの攻撃的な行動を好まず、あくまで政府を賛美しながら都合の悪い話題を逸らすことに主力が注がれている[6]

募集と規模[編集]

「中国共産党委員会大学募集意見(仮称)」によれば、主に大学の大学共産党宣伝部、共産党青年団の学生、教務、ネットワークセンター職員などから募集される[9]

工作機関ではあるものの、特に存在を伏せられてはおらず、2005年4月、揚子ニュースは「市内の宿遷市市党委員会宣伝部で、26人のインターネットコメンテーターを募集する」放送をした[1]

国外でも活動しており、グレート・ファイアウォールにより通常は中国本土からアクセスが不可能なツイッター、フェイスブック、知恵袋等、各国のインターネットコミュニティで活動している[10][11]

2019年逃亡犯条例改正案をめぐっては、中国本土で作成されたYouTubeTwitterFacebookの大量の不正アカウントを削除したと各社が明らかにした。中国当局がソーシャルメディアを使って情報操作を行った可能性があるという[12]

給与とボーナス[編集]

国際的世論や中国国内の世論などによっても給与が変動し、胡錦濤体制末期には給与が数倍になったとされるが、正確な金額は明らかではない。

2020年に内部文書の漏洩によってその実在と一部の報酬額が判明した。それによれば、400文字以上のプロパガンダを1件投稿すれば25ドル(およそ160元)、中国に批判的な書き込みを1件摘発すれば40セント(およそ2元5毛)、他者のプロパガンダをリツイート等で1回拡散すれば1セント(およそ0.6毛)が支払われ[13]、通俗的な「書き込み一回5毛」とはやや異なっていた。

世論を効果的に誘導するなど、傑出したコメンテーターには、ボーナスが割り当てられる。新華ネットの優秀批評家賞10賞などが代表的である[14]周小平中国語版花千芳中国語版などの作家は特に功績が大きいとされ、習近平から直接面会にて労いを受けている[15]

脚注・出典[編集]

  1. ^ Zhang Lei (5 February 2010). "Invisible footprints of online commentators". Global Times English version. Archived from the original on 8 February 2010.
  2. ^ 中共高層要人人當網軍 美媒:「五毛黨」可望加薪”. 蘋果日報 (2018年9月7日). 2019年6月27日閲覧。
  3. ^ 掲露巴西版「五毛」網軍疑干預大選的運作内幕”. BBC (2017年12月15日). 2019年6月27日閲覧。
  4. ^ 五毛党とは - コトバンク/朝日新聞 2010-12-14, 朝刊オピニオン
  5. ^ 中国コメントバイト集団「五毛党」1000万人超 中央日報 2015年4月6日
  6. ^ a b 中国「五毛党」のやらせ書き込み、年間4億件超=ハーバード大研究発表”. 大紀元 (2016年5月27日). 2017年8月3日閲覧。
  7. ^ 巴中市人事局采取四大措施加強网絡輿情監控” (中国語). 四川省人民政府 (2009年7月29日). 2016年8月14日閲覧。
  8. ^ 甘粛将建650人網絡評論員隊伍引導輿論(Wayback Machine) - http://news.sina.com.hk/cgi-bin/nw/show.cgi/9/1/1/1401589/1.html[リンク切れ]
  9. ^ “为认真贯彻落实《中共中央、国务院关于进一步加强和改进大学生思想政治教育的意见》(中发〔2004〕16号)和《教育部、共青团中央关于进一步加强高等学校校园网络管理工作的意见》(教社政〔2004〕17号)精神,牢牢把握网上舆论主导权,为我省高等教育改革发展稳定提供良好的舆论环境,努力构建社会主义和谐校园,现就加强高校网络评论员队伍建设提出以下意见。”
  10. ^ http://www.appledaily.com.tw/appledaily/article/forum/20151222/36967330/ 焦點評論:五毛黨已入侵台灣(黃世澤)
  11. ^ 中国政府、世論を操作するために数百万人を雇用 - ニュース”. Bitter Winter (日本語) (2018年12月24日). 2019年3月1日閲覧。
  12. ^ https://www.sankei.com/article/20190820-NSYH3XFSURJXJA7KKOMURGXH3A/ ツイッター、フェイスブック 中国政府の情報操作アカウントを削除
  13. ^ No‘Negative’News: How China Censored the Coronavirus” (英語). The New York Times (2020年12月19日). 2020年12月25日閲覧。
  14. ^ 新华网2007年度优秀网评人评选揭晓
  15. ^ http://politics.caijing.com.cn/20141016/3722979.shtml 习近平嘱咐「希望你们创作更多具有正能量的作品」cmn:周小平#cite_note-rdemo1-4

関連項目[編集]