リック・ポーセロ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
リック・ポーセロ
Rick Porcello
ボストン・レッドソックスでの現役時代
(2015年4月24日)
基本情報
国籍 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
出身地 ニュージャージー州モリスタウン
生年月日 (1988-12-27) 1988年12月27日(35歳)
身長
体重
6' 5" =約195.6 cm
200 lb =約90.7 kg
選手情報
投球・打席 右投右打
ポジション 投手
プロ入り 2007年 MLBドラフト1巡目
初出場 2009年4月9日
最終出場 2020年9月26日
経歴(括弧内はプロチーム在籍年度)

フレドリック・アルフレッド・ポーセロ3世Fredrick Alfred Porcello III, 1988年12月27日 - )は、アメリカ合衆国ニュージャージー州モリスタウン出身の元プロ野球選手投手)。右投右打。愛称はスペイン語を話すチームメイトが名付けたベインティードスVeintidos[1]

祖父はプロ野球選手のサム・デンテ英語版[2]

プロ入りの際の代理人はスコット・ボラスだったが、現在はエクセル・スポーツ・マネジメントのジム・マレー[3]

経歴[編集]

プロ入り前[編集]

高校時代の最終学年時には63イニングを投げ、9勝0敗、防御率1.44、102奪三振を記録[4]。高校を通算GPA3.94で卒業し、優秀な生徒のみが入会できるNational Honor SocietyとSpanish National Honor Societyの会員でもあった[5]

スポーツ・イラストレイテッドはポーセロが2007年MLBドラフトで全体5位以内で指名されると予想された[4]が、代理人がスコット・ボラスのため多くの球団は指名を見送った。

プロ入りとタイガース時代[編集]

デトロイト・タイガース時代
(2014年5月12日)

2007年のMLBドラフトでは1巡目(全体27位)でデトロイト・タイガースが指名した[6]。4年725万ドルで契約し、高校出身の選手として史上最高額の契約となった[7]

2008年、傘下のA+級レイクランド・フライングタイガース英語版でプロデビュー。24試合に先発登板で8勝6敗を挙げ、防御率2.66はリーグ1位[8]。7月19日のセントルーシー・メッツ戦ではポーセロを含め3投手の継投で7イニングのノーヒッターを達成[9]。シーズン終了後、タイガース傘下の最優秀マイナー選手に選出され[10]ベースボール・アメリカ誌の有望株ランキングでもポーセロはタイガース傘下での最高評価を受けた[11]

2009年は当初ポーセロをシーズンはAA級エリー・シーウルブズでプレーさせる予定だったが、ジェレミー・ボンダーマンの復帰の遅れやネイト・ロバートソンドントレル・ウィリスの不調もあり、ジム・リーランド監督は「必ず状態をしっかりとチェックする。球数、投球回数を見る」としてポーセロは2009年開幕をメジャーで迎えた[6]。開幕4試合目の4月9日のトロント・ブルージェイズ戦でメジャーデビュー。

2014年1月17日にタイガースと850万ドルの1年契約に合意した[12][13]。自己最多の32試合に登板し、うち31試合で先発登板。メジャーデビューから6年連続での二桁勝利、且つ自己ベストとなる15勝を挙げたが、後半でやや失速して負け星が増え、13敗も勝ち星と同じく自己最多だった。メジャー初完封を含むシーズン3完封はリーグ1位。

レッドソックス時代[編集]

2014年12月11日にヨエニス・セスペデスアレックス・ウィルソンゲイブ・スパイアーとのトレードで、ボストン・レッドソックスへ移籍した[14]

2015年1月16日にレッドソックスと1250万ドルの1年契約に合意[15][16]。4月6日には総額8250万ドルの4年契約[17]を結んだ[18][19]。この年は開幕ローテーション入りしたが、打ち込まれる場面が目立ち、防御率は5.00近くまで上昇して自己ワーストタイの4.92となった。また、被本塁打25も自己ワースト(当時)だった。これらが響き、勝ち星は9勝(15敗、これも当時の自己ワースト)止まりで、メジャーデビューからの連続二桁勝利は6年でストップした。なお、149奪三振は自己ベスト(当時)だった。

2016年は打って変わり、圧倒的なペースで勝ち星が先行。おおむね調子を崩す事なくレギュラーシーズンを投げ切り、自己最高の33試合に先発登板。防御率3.15(リーグ5位)、22勝4敗(アメリカンリーグ最多勝)、勝率.846(リーグ2位)、223.0イニング(リーグ4位)で189奪三振(リーグ8位)を記録する一方で四球を抑えてK/BB5.91(リーグ1位)という成績を残し[20]サイ・ヤング賞を受賞した[21]カムバック賞にも選出。なお同年、通算100勝を達成した。オフの11月18日に第4回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)アメリカ合衆国代表への不参加の意思を表明した[22]

2017年は開幕投手に抜擢され、6.1回を6安打3失点1四球5奪三振というピッチング内容で同シーズン初勝利を挙げた[23]。しかし、その後は負けが先行するようになり、開幕戦終了時点から2試合目で黒星を喫するまでの間を除き、勝ち越した期間はなかった[24]。最終的に33試合に先発登板(203.1回)したが、11勝17敗・防御率4.65・236被安打・38被本塁打・WHIP1.40という成績で、敗戦・被安打・被本塁打の3部門でア・リーグワーストとなってしまった。ただし、奪三振は2年連続で180以上となり、以前の水準(多くても140台)には戻らなかった。

2018年4月12日のニューヨーク・ヤンキース戦で6回途中まで相手をノーヒットに抑え四死球も出さない投球を見せたが、アーロン・ジャッジに二塁打を打たれ完全試合は潰えた。7回を投げ6奪三振で打たれた安打はその二塁打だけで、その後チームは6-3で勝利した[25]。最終的に33先発で191.1回を投げ、17勝7敗・防御率4.28で、38被本塁打はリーグワーストだった。チームは108勝54敗でロサンゼルス・ドジャースとのワールドシリーズにも優勝し、ポーセロ自身初のワールドシリーズ優勝だった[26]

2019年は4月を防御率5.52で低調な滑り出しに始まった。6月29日にはヨーロッパ初開催となったヤンキースとのロンドン・シリーズ第1戦で先発登板するも、0.1回・6失点で降板。なお、相手先発の田中将大も0.2回で降板し、このカードで両先発投手が1回未満で降板するのは史上初の出来事であった[27]。その後も全体的に不振に終わり、8月1日のタンパベイ・レイズ戦で降板した際には怒りから備品のモニターを破壊するということもあった[28]。最終成績は32先発で14勝12敗、防御率5.52だった。オフの10月31日にFAとなった[29]

メッツ時代[編集]

2019年12月16日にニューヨーク・メッツと1年1000万ドルで契約した[30]

2020年オフの11月1日にFAとなった[31]

メッツ退団後[編集]

2021年2022年はどこの球団にも所属しなかった。その後、2022年12月5日に現役引退を表明した[32]

投球スタイル[編集]

2016年のシーズンでは、最速94.9mph(約153km/h)・平均91.4mph(約147km/h)のフォーシームと平均89.5mph(約144km/h)のツーシームの二種類の速球を軸に、平均73.7mph(約119km/h)のカーブ、平均80.8mph(約130km/h)のチェンジアップ、平均85.1mph(約137km/h)のスライダーを使用した[33]

詳細情報[編集]

年度別投手成績[編集]





















































W
H
I
P
2009 DET 31 31 0 0 0 14 9 0 0 .609 720 170.2 176 23 52 0 3 89 6 1 81 75 3.96 1.34
2010 27 27 0 0 0 10 12 0 0 .455 700 162.2 188 18 38 2 7 84 11 3 96 89 4.92 1.39
2011 31 31 0 0 0 14 9 0 0 .609 784 182.0 210 18 46 1 8 104 12 0 103 96 4.75 1.41
2012 31 31 0 0 0 10 12 0 0 .455 783 176.1 226 16 44 3 6 107 6 0 101 90 4.59 1.53
2013 32 29 1 0 0 13 8 0 0 .619 736 177.0 185 18 42 4 3 142 6 1 87 85 4.32 1.28
2014 32 31 3 3 2 15 13 0 0 .536 840 204.2 211 18 41 4 4 129 0 0 89 78 3.43 1.23
2015 BOS 28 28 0 0 0 9 15 0 0 .375 737 172.0 196 25 38 0 10 149 12 1 103 94 4.92 1.36
2016 33 33 3 0 1 22 4 0 0 .846 890 223.0 193 23 32 0 13 189 3 0 85 78 3.15 1.01
2017 33 33 2 0 0 11 17 0 0 .393 885 203.1 236 38 48 1 6 181 5 0 125 105 4.65 1.40
2018 33 33 1 0 0 17 7 0 0 .708 808 191.1 177 27 48 0 16 190 3 1 97 91 4.28 1.18
2019 32 32 0 0 0 14 12 0 0 .538 768 174.1 198 31 45 2 6 143 5 2 114 107 5.52 1.39
2020 NYM 12 12 0 0 0 1 7 0 0 .125 261 59.0 74 5 15 0 2 54 1 0 41 37 5.64 1.51
MLB:12年 355 351 10 3 3 150 125 0 0 .545 8912 2096.1 2270 260 489 17 84 1561 69 9 1122 1025 4.40 1.32
  • 各年度の太字はリーグ最高

年度別守備成績[編集]



投手(P)












2009 DET 31 11 25 2 1 .947
2010 27 9 15 1 3 .960
2011 31 15 21 2 4 .947
2012 31 12 30 5 0 .894
2013 32 15 21 1 2 .973
2014 32 18 17 4 2 .897
2015 BOS 28 10 19 3 3 .906
2016 33 6 15 1 0 .955
2017 33 10 17 3 2 .900
2018 33 15 20 3 1 .921
2019 32 16 21 1 1 .974
2020 NYM 12 3 4 0 0 1.000
MLB 355 140 225 26 19 .934
  • 各年度の太字はリーグ最高

タイトル[編集]

表彰[編集]

背番号[編集]

  • 48(2009年 - 2012年)
  • 21(2013年 - 2014年)
  • 22(2015年 - 2020年)

脚注[編集]

  1. ^ Red Sox Players Weekend nicknames explained MLB.com (英語) (2017年8月24日) 2017年9月6日閲覧
  2. ^ Sam Dente” (英語). MLB.com. 2015年11月20日閲覧。
  3. ^ Rick Porcello Contract Details, Salaries, & Earnings” (英語). Spotrac. 2019年3月1日閲覧。
  4. ^ a b Matt Remsberg (2007年6月6日). “Top 20 high school prospects” (英語). SI.com. 2009年8月22日閲覧。
  5. ^ Rick Porcello BB”. www.njsportsheroes.com. 2019年12月2日閲覧。
  6. ^ a b 谷口輝世子 「20歳の怪童 リック・ポーセロ [タイガース #48]」 『月刊月刊スラッガー』2009年8月号、日本スポーツ企画出版社、2009年、雑誌15509-8、24 - 27頁。
  7. ^ Jason Beck (2007年8月15日). “Tigers sign Porcello, two other picks” (英語). MLB.com. 2016年11月17日閲覧。
  8. ^ Florida State League: Stats” (英語). minorleaguebaseball.com. 2009年8月22日閲覧。
  9. ^ Daren Smith (2008年7月19日). “Porcello combines on Class A no-no” (英語). MLB.com. 2009年8月22日閲覧。
  10. ^ Rick Porcello Awards” (英語). The Baseball Cube. 2009年8月22日閲覧。
  11. ^ Jon Paul Morosi; Detroit Free Press (2008年11月20日). “2009 Detroit Tigers Top 10 Prospects” (英語). Baseball America. 2009年8月22日閲覧。
  12. ^ "Tigers agree to 2014 contracts with five players" (Press release) (英語). MLB.com (Detroit Tigers). 17 January 2014. 2015年11月20日閲覧
  13. ^ Jason Beck (2014年1月17日). “Tigers agree to one-year, $15.5M deal with Scherzer” (英語). MLB.com. 2015年11月20日閲覧。
  14. ^ "Red Sox acquire right-handed pitcher Rick Porcello from Tigers" (Press release) (英語). MLB.com (Boston Red Sox). 11 December 2014. 2015年11月20日閲覧
  15. ^ "Red Sox agree to terms with right-handed pitchers Rick Porcello and Junichi Tazawa on one-year contracts" (Press release) (英語). MLB.com (Boston Red Sox). 16 January 2015. 2015年11月20日閲覧
  16. ^ Ian Browne (2015年1月16日). “Red Sox sign Porcello, Tazawa to avoid arbitration” (英語). MLB.com. 2015年11月20日閲覧。
  17. ^ 2016年と2017年はそれぞれ2000万ドル、2018年と2019年はそれぞれ2100万ドルで、契約金は50万ドル。
  18. ^ "Red Sox and right-handed pitcher Rick Porcello agree on four-year contract extension" (Press release) (英語). MLB.com (Boston Red Sox). 6 April 2015. 2015年11月20日閲覧
  19. ^ Gordon Edes (2015年4月8日). “Rick Porcello, Red Sox agree to extension through 2019” (英語). ESPN. 2015年11月20日閲覧。
  20. ^ MLB公式プロフィール参照。2016年11月17日閲覧。
  21. ^ Ian Browne (2016年11月16日). “Porcello wins AL Cy Young Award” (英語). MLB.com. 2016年11月17日閲覧。
  22. ^ サイ・ヤング賞投手ポーセロ WBC不参加の意向「チームを最優先」 スポニチ (2016年11月18日) 2016年12月15日閲覧
  23. ^ Pirates vs. Red Sox Box Score 04/03/17 - MLB.com (英語) . 2017年10月3日閲覧。
  24. ^ Rick Porcello 2017 Pitching Gamelogs - Baseball-Reference.com (英語) . 2017年10月3日閲覧。
  25. ^ Ian Browne (2019年4月13日). “Rick Porcello dominates Yanks, flirts with no-hitter” (英語). MLB.com. 2018年11月29日閲覧。
  26. ^ Boston Red Sox win 2018 World Series.” (英語). MLB.com. 2018年11月29日閲覧。
  27. ^ 田中将大&ポーセロともに1回もたずKO 史上初の珍記録も誕生したロンドン初開催”. Full-count. 2019年12月2日閲覧。
  28. ^ レッドソックス・ポーセロ、試合中に備品モニターを破壊。 試合後に猛省「全ての人に謝罪する」”. ベースボールチャンネル. 2019年12月2日閲覧。
  29. ^ Thomas Harrigan, Manny Randhawa and Paul Casella (2019年11月8日). “Here are every team's free agents this winter” (英語). MLB.com. 2019年12月2日閲覧。
  30. ^ ポーセロ、メッツと約11億円の1年契約”. nikkansports.com. 2019年12月17日閲覧。
  31. ^ 2020-21 free agents, position by position” (英語). MLB.com. 2020年11月2日閲覧。
  32. ^ Rick Porcello Announces Retirement” (英語). MLB Trade Rumors. 2022年12月5日閲覧。
  33. ^ FanGraphs PITCHf/x

関連項目[編集]

外部リンク[編集]