ユニシス

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ユニシス
Unisys Corporation
種類 公開会社 (NYSE: UIS)
本社所在地 アメリカ合衆国の旗ペンシルベニア州ブルーベル英語版
設立 1886年American Arithmometer Companyとして創業
1986年、ユニシスとなる
業種 コンピュータサービス
事業内容 コンピュータサービス、ソリューション
代表者 J. Edward Coleman(CEO兼会長)
売上高 増加 22億USドル (2020)[1]
従業員数 17,200 (2020)[1]
外部リンク www.unisys.com
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ユニシスUnisys Corporation, NYSE:UIS)は、アメリカ合衆国のITサービスとソリューションを提供する国際的企業。システム機器などの設計/製造も行っている。

日本での事業はかつて関連会社であったBIPROGYが実施していたが、2006年に持株の全てを売却、資本関係は存在しない。ただし業務提携は継続されている。[要出典]

2017年にユニシスコーポレーションジャパン合同会社が設立された[2]

歴史[編集]

ペンシルベニア州ブルーベルのユニシス本社

ユニシスは1986年9月、元アメリカ合衆国財務長官マイケル・ブルーメンソールによるメインフレームメーカーのスペリー社とバロース社の合併(バロースがスペリーを48億ドルで買収)で設立された。名称は「UNited Information SYStem」からの造語で、社内公募で決定された。この合併は当時のコンピュータ業界では最大の合併と言われ、ユニシスは年間売上高105億ドルでIBMに次ぐ世界第2位のコンピュータ企業となった[3]。合併当時、120,000人もの従業員を抱えていた。

ハードウェア製造に加えて、バロースもスペリーもアメリカ政府との契約を請け負っていた。ユニシスも各種政府機関にハードウェア、ソフトウェア、サービスを提供している[4]

合併後、オープン化の波にさらされ、企業構造の大改革を迫られた。結果としてメインフレーム企業からの脱却を図り、UNIXWindows NTベースのコンピュータ市場へ参入した。その後、ヒューレット・パッカードやIBMのように、徐々にハードウェアからサービス/コンサルティングへと企業としての主軸を移していった。1997年、売り上げに占めるサービスの割合は 65% となっていたが、2006年現在は 83% にまで高まっている[5]

ユニシスの歴史の中で重要な出来事として以下のことが挙げられる。

1988年コンバージェント・テクノロジー英語版を獲得し、その革新的なオペレーティングシステム CTOS英語版 を手に入れた[9]

2008年10月7日、CEO兼会長に J. Edward Coleman が就任[10]

2008年11月11日、ユニシスの時価総額が S&P 500 の規定する下限である40億ドルを下回ったため、S&P 500 から外された[11]。2009年10月、上場廃止を避けるために株価を支える目的で10:1の株式併合を行った[12]

2010年、医療情報管理サービス部門を Molina Healthcare に1億3500万ドルで売却した[13]

ユニシスの施設
ソルトレイクシティ(アメリカ)
シドニー(オーストラリア)
バンガロール(インド)
ミルトン・キーンズ(イギリス)
サンパウロ(ブラジル)
カリフォルニア州(アメリカ)

製品とサービス[編集]

同社はコンサルティング、一時的な契約業務、ITサービスのアウトソーシング請負などを行っている。サービスには、ハードウェアシステムとソフトウェアシステムの構築、ホスティングやデータ管理、業務プロセスの計画立案、セキュリティの確保などが含まれる[14]

2000年、ユニシスはミッドレンジ〜ハイエンドサーバ Unisys ES7000 ファミリを開発した。この製品はインテルXeonおよびItaniumを使い、オペレーティングシステム (OS) として Microsoft Windows Server 2003ノベルまたはレッドハットLinuxが動作する。

ユニシスはローエンドとメインフレームの"ClearPath"というシリーズも持っている。ClearPathはメインフレームのソフトウェアが動作するだけでなく、同時にJavaプラットフォームとしても、JBossJakarta EEアプリケーションサーバとしても動作する。ClearPathには、スペリー/UNIVAC系の ClearPath Dorado とバロース系の ClearPath Libra がある。

ユニシスのシステムは、銀行業務、小切手処理、所得税処理、航空機予約、生体認証、新聞コンテンツ管理、港湾出荷管理、気象情報サービスなど様々な用途に使われている。アメリカ国立気象局のドップラー気象レーダーシステム NEXRAD のソフトウェアもユニシスが開発しており、レーダーや気象衛星などからの気象データを提供している[15]。また、アメリカ軍の世界最大のRFIDネットワークの運用も担当しており、25カ国にある1,500箇所の拠点で年間900万個のコンテナの追跡を行っている。南アフリカ共和国では一般市民用の汎用的身分証明書の作成を請け負った。

Secure Partitioning (s-Par) はインテルプロセッサベースのClearPathサーバにおける仮想化テクノロジーである[16]。s-Parテクノロジーは高性能システムを4つのセキュアなパーティションに分割し、1つは中核処理複合体とし、残る3つをウェブサービスやJavaアプリケーション配備など特定のアプリケーション機能を実行する専用エンジンとする。これによりCleaPathユーザーは資源管理を効率化できる[17]

2010年12月、Hosted Secure Private Cloud を立ち上げた。プライベートクラウド(企業内のクラウドコンピューティング)のあらゆる利点を提供しつつ、新たな基盤を購入する必要がなく、同時に規約に沿ったよりよい機能により共有ビジネス資産を制御する[18]。このソリューションはコンピュータ、ストレージ、ネットワーク、ミドルウェアといったITリソースを各顧客専用に割り当て(ユニシスのデータセンターでのホスティング)、自動的に数分間でプライベートクラウドにITリソースを追加可能としている[19]

2011年3月、Unisys Hybrid Enterprise Framework を立ち上げた。これは、従来型とクラウド型のIT提供モデルを管理する方法論とサービス群からなり、全体として一貫したコンピューティング環境を提供する。その鍵となるのは、クラウド構築サービスのポートフォリオであり、統合企業環境におけるミッションクリティカルなクラウド・ソリューションの計画立案・設計・実装を中心としたものである[20]

2014年、ClearPathメインフレームのプロセッサを独自のCMOSからインテルのx86へと切り替えた。このマシン上で利用可能なOSとしては、OS 2200およびMCP、そして仮想化されたWindowsやLinuxとなっている[21]

顧客[編集]

ユニシスの顧客は大企業や政府機関などが多い。以下に例を挙げる。

データセンター[編集]

ユニシスは世界各地でデータセンターを運営しており、サービス品質の世界標準の認定を受けている[22]。認定されている標準としては、ISO 9001:2008ISO 20000-1:2005ISO 27001 などがある。また、ユニシスは顧客の所有する施設でもデータセンターを運営またはサポートしている[23]

所在地 ISO 9001 ISO 20000 ISO 27001
ミネソタ州イーガン アメリカ N/A 認定 認定
ヴァージニア州レストン アメリカ N/A N/A 認定
ユタ州ソルトレイクシティ アメリカ N/A 認定 認定
リオデジャネイロ ブラジル 認定 認定 認定
サンパウロ ブラジル 認定 認定 認定
ミルトン・キーンズ イギリス 認定 認定 認定
アリングソース スウェーデン 認定 2011 認定
シドニー オーストラリア 認定 認定 認定
オークランド ニュージーランド 認定 N/A 認定
カピティ ニュージーランド 認定 認定 認定

議論[編集]

LZWアルゴリズムに関するライセンス料の要求
LZWアルゴリズムはGIFファイル形式で使われている。ユニシスは当初LZWのライセンス料を求めなかったので、GIF形式は大いに普及した。しかし1994年になると、ユニシスはGIFを扱う商用ソフトに対してライセンス料を求めるようになる。1999年にはフリーソフトウェアに対しても料金を求め始めた。これを受けて、"Burn All GIFs"(全てのGIFを焼き捨てろ)キャンペーンが広がった[24]GNUプロジェクトはGIFからPNG形式への移行を推進[25]。PNG形式は2013年1月、GIFよりも多くのサイトで使用されるようになった[26]。なお、LZWアルゴリズムに関する特許は米国では2003年6月20日に失効、日本でも2004年6月20日に失効した[25]
ロビイストとの関係
2003年と2004年の2年間、ユニシスは有力なロビイストジャック・エイブラモフ英語版に64万ドルを支払い、彼の助力を得ていた。2006年1月、エイブラモフはロビー活動に関わる様々な犯罪で摘発され、罪を認めた。ただし、ユニシスからの依頼が犯罪と関係していたわけではない[27]。エイブラモフらのロビー活動は連邦の広範囲の調査対象となっている。
残業代の不当な計上(ユニシス側は否定)
2005年10月、ワシントン・ポスト紙はユニシスが運輸保安局英語版との10億から30億ドルの契約において、契約上許されていない長時間の残業を高い単価で計上していたと報じた。ユニシスはこれを否定している[28]
セキュリティ面でのミス(ユニシス側は否定)
2006年、ワシントン・ポスト紙は国土安全保障省との契約でユニシスがコンピュータセキュリティ上のミスを犯したとされる件でFBIが捜査中だと報じた。契約期間中にいくつものセキュリティ上のミスを犯したと見られており、データが間違って中国のサーバに送られてしまったという件も含まれる[29]。ユニシスは報道を否定し、反証となる文書もあるとしている[30]。2008年、Joe McGrath は信任投票もなく取締役を解任され、後任にはゲートウェイの前CEO J. Edward Coleman が就任した。アメリカ連邦政府担当重役の Greg Baroni も解雇されている[31]。2008年6月30日、ユニシスは運輸保安局 (TSA) の Information Technology Infrastructure Program のフェーズ2で同社が調達先に選ばれなかったと発表した[32]。翌月ユニシスはアメリカ合衆国会計検査院英語版 (GAO) に対してTSAの決定に対する正式な不服申し立てを行う予定であることを発表[33]。8月20日、TSAは当初入札参加者に選ばれていなかったユニシスとノースロップ・グラマン(こちらも連邦航空局にTSAの決定への不服を申し立てていた)の入札参加を許可すると発表した[34]
雇用に関する発言
2009年、ユニシスの重役 Richard Marcello はクラウドコンピューティングの効用について「我々は米国内の雇用を削減し、それで浮いた費用でインドで2倍の人員を雇用することもできる」とアメリカ人労働者の解雇を自慢するような発言をした[35]

脚注・出典[編集]

  1. ^ a b Unisys Corporation Annual Report 2020” (英語). unisys.com. 2021年5月14日閲覧。
  2. ^ ユニシスコーポレーションジャパン合同会社(東京都千代田区)の企業情報詳細”. 全国法人データバンク. 2023年8月9日閲覧。
  3. ^ “About Unisys”. Unisys. オリジナルの2012年9月17日時点におけるアーカイブ。. https://webcitation.org/6Ajh36rLh?url=http://www.unisys.com/unisys/about/company/history.jsp?id=209 
  4. ^ “Unisys Annual Report”. Unisys. オリジナルの2012年2月18日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20120218021332/http://www.app3.unisys.com/investors/annuals/2010/2010_AR_F.pdf 2010年12月閲覧。 
  5. ^ “Investors News, Events, Financials, Information”. Unisys. http://www.unisys.com/unisys/about/investorrelations.jsp?id=202 
  6. ^ COMPANY NEWS; Unisys Introduces Micro A Computer”. The New York Times. 2012年3月11日閲覧。
  7. ^ How Five 'Hippies' In A Trailer Hatched The Unisys Micro A”. philly.com. 2012年3月11日閲覧。
  8. ^ “ING selects Unisys”. fidarticles.com. オリジナルの2012年7月18日時点におけるアーカイブ。. https://archive.is/20120718131558/http://findarticles.com/p/articles/mi_m0EIN/is_2003_Dec_11/ai_111133254/ 2012年3月11日閲覧。 
  9. ^ Convergent Technologies”. Centre for Computing History. 2012年3月11日閲覧。
  10. ^ Unisys Elects Corporate Transformation Leader J. Edward Coleman As Chairman and CEO”. Unisys. 2011年10月12日閲覧。
  11. ^ “People's United to replace Unisys on S&P 500 Index”. Reuters. (10 Nov., 2008). http://www.reuters.com/article/hotStocksNews/idUSTRE4A951020081110 2008年11月10日閲覧。 
  12. ^ “Unisys Board Approves One-for-Ten Reverse Stock Split”. Unisys. (2009年10月6日). http://www.unisys.com/unisys/news/detail.jsp?id=1120000970000310238 2012年3月12日閲覧。 
  13. ^ “Unisys jettisons Medicare processing biz”. The Register. (2010年1月19日). http://www.theregister.co.uk/2010/01/19/unisys_sells_him/ 2012年3月12日閲覧。 
  14. ^ About Unisys”. PR Newswire. 2011年8月12日閲覧。
  15. ^ “Unisys Weather”. Unisys. (11 Feb., 2010). http://weather.unisys.com 2012年3月11日閲覧。 
  16. ^ “Unisys Brings Home-Grown Virtualization to ClearPath Mainframes”. http://www.eweek.com/c/a/IT-Infrastructure/Unisys-Brings-HomeGrown-Virtualization-to-ClearPath-Mainframes-137295/ 
  17. ^ “Unisys lights up Xeon-based mainframes”. http://www.theregister.co.uk/2010/10/19/unisys_xeon_mainframes/ 2012年3月11日閲覧。 
  18. ^ “Unisys Rackspace Launch Private Cloud Services”. http://www.eweek.com/c/a/Cloud-Computing/Unisys-Rackspace-Launch-Private-Cloud-Services-202843/ 
  19. ^ “Unisys offers 'hosted private cloud'”. http://www.networkworld.com/news/2010/120710-unisys-offers-hosted-private.html?source=nww_rss 
  20. ^ Unisys Cloud’s Big Business with help”. 2012年3月11日閲覧。
  21. ^ “Unisys Retires CMOS Mainframe”. TechWeekeurope. (2014年6月18日). http://www.techweekeurope.co.uk/news/unisys-finally-retires-cmos-mainframe-processors-147530 
  22. ^ Quality certifications”. 2012年3月12日閲覧。
  23. ^ Data centers at client-owned facilities”. 2012年3月12日閲覧。
  24. ^ “LZWに震え上がった10年前の人たち”. ITmediaエンタープライズ. (2008年11月16日). https://www.itmedia.co.jp/enterprise/articles/0811/16/news003.html 2018年6月18日閲覧。 
  25. ^ a b “GNUのウェブページにGIFファイルが一つも無い理由”. GNUプロジェクト. https://www.gnu.org/philosophy/gif.ja.html 2018年6月18日閲覧。 
  26. ^ “The PNG image file format is now more popular than GIF”. W3Techs. (2013年1月31日). https://w3techs.com/blog/entry/the_png_image_file_format_is_now_more_popular_than_gif 2018年6月18日閲覧。 
  27. ^ “Abramoff Scandal Could Cast Pall On Tech Lobby”. eWeek. (2006年1月13日). http://www.eweek.com/article2/0,1895,1911073,00.asp 2012年3月12日閲覧。 
  28. ^ O'Harrow Jr, Robert; Higham, Scott (2005年10月22日). “Contractor Accused Of Overbilling U.S”. Washington Post. http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2005/10/22/AR2005102201437.html 
  29. ^ “FBI investigates Unisys over U.S. government hack”. InfoWorld. http://www.infoworld.com/d/security-central/fbi-investigates-unisys-over-us-government-hack-541 2013年3月12日閲覧。 
  30. ^ “Unisys Says Facts, Documentation Contradict Allegations in News Story on DHS”. Unisys. オリジナルの2007年10月13日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20071013041658/http://unisys.com/about__unisys/news_a_events/09248817.htm 
  31. ^ “Baroni departs as head of Unisys federal”. オリジナルの2008年10月4日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20081004211227/http://www.washingtontechnology.com/online/1_1/33665-1.html?topic=&CMP=OTC-RSS 2012年3月12日閲覧。 
  32. ^ “Unisys not selected for next phase of TSA contract”. Philadelphia Business Journal. (2008年6月30日). http://philadelphia.bizjournals.com/philadelphia/stories/2008/06/30/daily18.html 2012年3月12日閲覧。 
  33. ^ “Unisys files protest over TSA down-select”. Washington Technology. (2008年7月10日). http://washingtontechnology.com/articles/2008/07/10/unisys-files-protest-over-tsa-downselect.aspx 2012年3月12日閲覧。 
  34. ^ “TSA lets Unisys, Northrop back into the mix”. Federal News Radio. (2008年8月20日). http://www.federalnewsradio.com/?nid=&sid=1462701 2012年3月12日閲覧。 
  35. ^ “cloud computing can save money”. http://www.networkworld.com/news/2009/110309-unisys-official-says-cloud-computing.html 2012年3月12日閲覧。 

関連項目[編集]

外部リンク[編集]

関連会社[編集]