パプア諸語

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
赤色がパプア諸語の分布域。黄褐色はオーストロネシア語族であり、そして灰色は歴史的にオーストラリア諸語の範囲であった。

パプア諸語(パプアしょご、: Papuan Languages)は、ニューギニア島パプアニューギニアインドネシア)およびティモール島など周辺の島々に分布する、オーストロネシア語族でもオーストラリア諸語(オーストラリア・アボリジニ諸語)でもない諸言語の総称。パプア・北ハルマヘラ諸語ともいう。ISO 639-2では、「その他のパプア諸語」に3文字コードppaが割り当てられている。

系統関係は立証できていないので、1つの語族ではなく、単に「諸語」と呼ばれる。系統関係が立証できる範囲で、数十の語族が提唱されており、最大のものはトランス・ニューギニア語族である。

分布[編集]

主にニューギニア島。東へは、ビスマルク諸島ソロモン諸島、西へは、ハルマヘラ島ティモール島アロル諸島メリヤム・ミル語英語版だけがオーストラリアトレス海峡諸島東部)に分布。

約800の言語を、460万人が話している。

特徴[編集]

共通基礎語彙がないため系統関係は立証できないが、文法には多少の共通点がある。

語順はSOV。SVOのオーストロネシア語族、VSOのオーストラリア諸語と異なる。

動詞は複雑に格変化する。

主要言語[編集]

4言語だけが話者人口10万人に達する。4つともニューギニア島で話され、トランスニューギニア語族に属する。

分類[編集]

パプア諸語の分布
  トランスニューギニア語族以外のパプア諸語
  オーストロネシア語族(パプア諸語ではない)

分類は流動的。Ross (2005) にもとづく。数字は言語数。

赤:セピク語族
ブーゲンビル島ソロモン諸島周辺の言語分布。
赤:北ブーゲンヴィル語族、青:南ブーゲンヴィル語族、緑:中央ソロモン語族、橙色:イェリ・ダニエ語、灰色:オーストロネシア語族
トレス海峡諸島の東部(橙色以外)はメリヤム・ミル語

※以前はトランスニューギニア語族に分類されていた

そのほか、数十の孤立した言語がある。

他諸語との関係[編集]

ジョーゼフ・グリーンバーグは、アンダマン諸語(あるいは、少なくとも大アンダマン語族)がパプア諸語または西パプア語族英語版と関係があると提唱した。スティーヴン・ワームは、大アンダマン語族、西パプア語族および Timor–Alor 語派英語版については語彙の類似性が“極めて著しく、多くの事例から(中略)事実上正式に同定されたということになる”と言明した。しかしながら、ワームは、このことは(大)アンダマン諸語とトランス・ニューギニア語族の関連性を証明することにならないが、古い時代に西の地域からニューギニアへ移住があったことによる基層言語の影響は証明していると考えていた。

グリーンバーグはタスマニア諸語との関係についても提言した。

参考文献[編集]

  • Malcom Ross (2005). "Pronouns as a preliminary diagnostic for grouping Papuan languages." In: Andrew Pawley, Robert Attenborough, Robin Hide and Jack Golson, eds, Papuan pasts: cultural, linguistic and biological histories of Papuan-speaking peoples, 15-66. Canberra: Pacific Linguistics. ISBN 0-858-83562-2

脚注[編集]

  1. ^ 『世界の言語と国のハンドブック』下宮忠雄(大学書林)

関連項目[編集]

外部リンク[編集]