ドクゼリ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ドクゼリ
分類APG III
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 eudicots
階級なし : コア真正双子葉類 core eudicots
階級なし : キク類 asterids
階級なし : キキョウ類 campanulids
: セリ目 Apiales
: セリ科 Apiaceae (Umbelliferae)
: ドクゼリ属 Cicuta [1][2]
: ドクゼリ Cicuta virosa [3]
学名
Cicuta virosa L. (1753) [3][4]
シノニム

Cicuta virosa L. var. nipponica (Franch.) Makino (1905) [5]

和名
ドクゼリ(オオゼリ)
英名
Mackenzie's Water Hemlock [6][7]

ドクゼリ(毒芹、Cicuta virosa)は、セリ科ドクゼリ属多年草有毒植物。別名、オオゼリ(大芹)。ドクウツギトリカブトと並んで日本三大有毒植物の一つとされる[8]

秋田県平鹿郡山形県西置賜郡熊本県玉名郡ではウマゼリとも呼ぶ[9]

分布と生育環境[編集]

日本では、北海道、本州、四国、九州に広く分布し、水辺、湿原に生育する多年生の抽水植物[10]ユーラシア大陸に広く分布する。

形態・生態[編集]

セリにやや似るが大型で、地下茎は太くタケノコ状に詰まった節があるのが特徴[11]は中空で上部で枝分かれし、高さ90 - 100センチメートル (cm) になる[11]は柄があり、2-3回羽状複葉になり、小葉は長楕円状披針形で、長さ3-8cm、幅5-20mmになり、縁には鋸歯がある。

花期は夏(6 - 7月)。花茎を伸ばして先端に複散形花序をつけ、球状に白色の小花を多数つける[11]。複散形花序の下の総苞片は無く、小花序の下の小総苞片は数個ある。果実は長さ約2.5mmで、毛は生えない。地下茎は筍に似た節が延びて繁殖する。

中毒[編集]

全草有毒で、誤食すると嘔吐、精神錯乱、呼吸困難となって死に至る場合もある[11]。春先の若葉の形状が食用のセリとよく似ている上に[10]、同じようなところに生えるので、若葉をセリと間違って摘み、中毒する者が後を絶たない[10]。ただし、葉や茎にセリ特有の香気がない点や、セリと違って地下茎が存在する点に注意すれば区別は比較的容易である。地下茎をワサビと間違えて食べた死亡例や、痒み止めに使用しての死亡例も報告されている[8]

成分はシクトキシン (Cicutoxin)、シクチン (Cicutin…コニインの窒素が四級アンモニウム化したもの) で全草に含まれる。皮膚からも吸収され易い性質を持ち、ヒト致死量:50mg/kg。5g以上の摂取で致死的中毒の可能性がある[8]

処置[編集]

  • 呼吸対策として気道確保、酸素吸入、人工呼吸
  • 痙攣対策として、pentobarbital sodium(ネンブタール注)、thiopental sodium(ラボナール注)の静注。特異的治療はジアゼパムあるいはペントバルビタールの静注。これらの薬物は、痙攣を止める作用だけでなく、ピクロトキシンの作用点(GABA受容体)に対する特異的拮抗薬である[8]
  • 強制利尿、血液透析、血液吸着による毒成分の体外排出。

参考画像[編集]

その他[編集]

  • ソクラテスの毒殺刑に使われたとする説がある[12]。ただし、実際に使われたのはドクゼリではなくドクニンジンだったという説もある[13]
  • ドクゼリモドキAmmi majus; セリ科ドクゼリモドキ属)というよく似た名前の種があるが、そちらには毒はない。地中海原産で、レースフラワーあるいはホワイトレースフラワーの名で園芸種として流通しており、日本にも帰化している。

脚注[編集]

  1. ^ 米倉浩司『高等植物分類表』(重版)北隆館、2010年。ISBN 978-4-8326-0838-2 
  2. ^ 大場秀章(編著)『植物分類表』(第2刷)アボック社、2010年。ISBN 978-4-900358-61-4 
  3. ^ a b 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Cicuta virosa L.”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2012年8月4日閲覧。
  4. ^ "'Cicuta virosa L.". Tropicos. Missouri Botanical Garden. 1700057. 2012年8月4日閲覧
  5. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Cicuta virosa L. var. nipponica (Franch.) Makino”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2012年8月4日閲覧。
  6. ^ "Cicuta virosa" - Encyclopedia of Life
  7. ^ "Cicuta virosa" (英語). Integrated Taxonomic Information System. 2012年8月4日閲覧
  8. ^ a b c d 古泉秀夫 (2007年8月17日). “毒芹(water-hemlok)の毒性”. 医薬品情報21. 2014年6月11日閲覧。
  9. ^ 八坂書房 編『日本植物方言集成』八坂書房、2001年、373頁。ISBN 4-89694-470-4 
  10. ^ a b c ドクゼリ:4人が食中毒 セリに酷似、1人重体 新潟市保健所、発表 /新潟 毎日新聞 2013年4月2日(火)13時16分配信
  11. ^ a b c d 金田初代 2010, p. 184.
  12. ^ 山田恒史 (1997.10.1). 朝日百科「植物の世界」. 第3巻. 朝日新聞社. p. 114. ISBN 4-02-380010-4 
  13. ^ 木原志乃 (2008年11月1日). “ドクニンジンと「よき死」”. 教員随筆. 國學院大學 文学部. 2015年2月9日閲覧。

参考文献[編集]

  • 金田初代、金田洋一郎(写真)『ひと目でわかる! おいしい「山菜・野草」の見分け方・食べ方』PHP研究所、2010年9月24日、184頁。ISBN 978-4-569-79145-6 

関連項目[編集]

外部リンク[編集]