ステンレスソープ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ステンレスソープの「インゴット」

ステンレスソープ: Stainless steel soap)は、石鹸の形状あるいはその他の手に持ちやすい形をしたステンレス鋼の塊または中空の製品。調理時に手についた匂いを消す[1]効果がうたわれているが、有効性は否定されている[2]

当初、ニューヨーク近代美術館 (MoMA) やクレートアンドバレルのウェブストアでも販売されていた[3][4]ほか、日本では100円ショップでも見かける。

概要[編集]

ニンニク玉ねぎといった臭気の強い食品を調理したあと、手を金属製の流し台などで擦ると臭わなくなることが、以前から知られていた。

ニンニクや玉ねぎ臭のスルフィド類は難水溶性で油脂の性質も小さく、石鹸で水洗いしてもにおいが落ちにくいが、金属と反応して水溶性錯体に変わる[5]。魚臭のアミン類は易水溶性だが、同じく錯体をつくりやすい。そこで、錆びていない金属の表面を水で濡らし、皮膚表面の物質と接触・反応させて洗い流す動作を、錆びにくいステンレスの塊を手元に置くことで容易に実施できるよう考案された[1]ドイツゾーリンゲンに本社を置く企業・ジロンカ社(Zielonka)がこの種のステンレスソープの特許を取得している[6]

作用機構上、表面が汚れて金属イオンの溶出が衰えると効かなくなる。また、反応しない物質には効果が無い。

有効性[編集]

「ソープ」と称していても石鹸ではなく、単なるステンレスの塊であるので、通常の石鹸が持っているような鹸化や殺菌効果はない。

有効性に関して科学的な根拠が不十分とする意見もある[7][8]

日本の公正取引委員会には有効性が有るとは認められていない。2007年、ジロンカ社の「スメルキラー」というブランドの製品を、あたかも「水と空気に接触することによって消臭効果を有する」かのように宣伝して販売していたジュピターショップチャンネルに対し、公正取引委員会がその合理的な根拠となる資料の提出を求めたが、ジュピター社が提示した資料は合理的な根拠を示すとは認められず、「不当表示」として排除命令を受けた(平成19年(排)第4号[2])。

脚注[編集]

  1. ^ a b Helmenstine, Anne Marie. “How Does Stainless Steel Remove Odors?”. About.com. 2009年10月18日閲覧。
  2. ^ a b テレビ通販における表示チェック体制等に関する実態調査報告書”. 公正取引委員会 (2007年7月). 2017年12月16日閲覧。
  3. ^ Rub Away Bar”. Crate & Barrel. 2012年7月24日閲覧。
  4. ^ Stainless-Steel Soap”. MOMAstore.org. Museum of Modern Art (2001年). 2012年7月24日閲覧。
  5. ^ よく商品説明で『プラスイオンとマイナスイオンが云々』とある
  6. ^ Geprüft und patentiert” [Tested and patented] ((ドイツ語)). zielonka-shop.com. Zielonka Wohnen & Leben (2000/2004). 2012年11月15日時点のオリジナルよりアーカイブ。2012年7月24日閲覧。
  7. ^ Does a Bit of Steel Get Rid of That Garlic Smell?”. All Things Considered. National Public Radio (2006年11月11日). 2012年7月24日閲覧。
  8. ^ Pollick, Michael (2012年4月4日). “What is Stainless Steel Soap?”. wisegeek.com. 2012年7月24日閲覧。

関連項目[編集]