ジョニー・ゴームズ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ジョニー・ゴームスから転送)
ジョニー・ゴームズ
Jonny Gomes
ボストン・レッドソックスでの現役時代
(2013年6月15日)
基本情報
国籍 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
出身地 カリフォルニア州サンフランシスコ
生年月日 (1980-11-22) 1980年11月22日(43歳)
身長
体重
6' 1" =約185.4 cm
230 lb =約104.3 kg
選手情報
投球・打席 右投右打
ポジション 外野手指名打者
プロ入り 2001年 ドラフト18巡目(全体529位)でタンパベイ・デビルレイズから指名
初出場 MLB / 2003年9月12日
NPB / 2016年3月25日
最終出場 MLB / 2015年10月4日
NPB / 2016年4月21日
経歴(括弧内はプロチーム在籍年度)

ジョナサン・ジョンソン・ゴームズJonathan Johnson Gomes, 1980年11月22日 - )は、アメリカ合衆国カリフォルニア州サンフランシスコ出身の元プロ野球選手外野手、右投右打)、コーチ。愛称はアイアンサイズ (Ironsides)(勇猛果敢という意味)[1]

経歴[編集]

プロ入りとレイズ時代[編集]

2001年MLBドラフト18巡目(全体529位)でタンパベイ・デビルレイズから指名を受けてプロ入り。

2002年のシーズンオフに心臓発作を起こして緊急入院した。マイナーリーグで過ごしたのは3年と少しの間だけであったが、100近い数の本塁打を記録している。

2003年にメジャーデビューを果たすが、この年はわずか8試合の出場に留まり、15打数で6個の三振を記録した。

2005年の4月下旬にメジャー再昇格。チームの事情によって、一時期はマイナーリーグに逆戻りとなったこともあったが、101試合の出場で21本塁打を記録した。その活躍が評価され、新人王投票では3位にランクインしている。

2006年は、4月だけで打率.305・11本塁打を記録したが、その後は調子を落とし、8月に右手首を手術した事もあって、2005年よりもレベルの低い成績しか残せなかった。

レッズ時代[編集]

2009年シンシナティ・レッズとマイナー契約を結んだ。98試合に出場し、自身3度目の20本塁打以上を記録した。OPS.879という数字は、自身の中で2番目に高い数字だった。

2010年は、それまでの自己最多を大幅に更新する148試合に出場(それまでの最多記録は117試合であり31試合増)し、打率.266・18本塁打・86打点という数字を残した。出場試合数が自己最高だった事もあり、打数・得点・安打・二塁打・打点などの各部門で自己最高の数字をマークした。

ナショナルズ時代[編集]

2011年7月26日ビル・ラインハートクリス・マノとのトレードで、ワシントン・ナショナルズへ移籍[2]

アスレチックス時代[編集]

2012年1月20日にオークランド・アスレチックスと1年契約を結んだ[3]。99試合、333打席で18本塁打を放ち、チームの地区優勝に貢献した。オフにFAとなった。

レッドソックス時代[編集]

2012年11月21日にボストン・レッドソックスと総額1000万ドルの2年契約に合意した[4]

2013年も期待通りの活躍を見せ、チームの地区優勝に貢献した。ワールドシリーズでは、ナ・リーグ勝率1位のセントルイス・カージナルスに2連敗し、更に第4戦、6回表までに得点1-2と3連敗が迫っていたが、ここで値千金の逆転3ランを放ち勝利の立役者となった。その後、レッドソックスは1度もリードされること無くワールドシリーズ優勝を果たした。

アスレチックス復帰[編集]

2014年7月31日にヨエニス・セスペデス2015年のMLBドラフト・戦力均衡ラウンドB指名権とのトレードで、ジョン・レスターと共にアスレチックスへ移籍した[5]。オフにFAとなった。

ブレーブス時代[編集]

2015年1月30日にアトランタ・ブレーブスと400万ドルの1年契約を結んだ[6][7]。ここでは83試合に出場して7本塁打を放ったが、打率.221・67三振と、ミート力の低さは相変わらずであった。守備面では左翼を59試合で守り、DRSは-5だったが、無失策でこなし堅実さは見せた。

ロイヤルズ時代[編集]

2015年8月31日にルイス・バレンズエラとのトレードで、カンザスシティ・ロイヤルズに移籍する[8][9]。移籍後は12試合でプレーしたが、打率.167・14三振という内容に終わり、結果を残せなかった。ブレーブスとの通算では、95試合で打率.213・7本塁打・26打点・1盗塁・81三振という成績だった。11月5日に球団が持つオプションを破棄し、FAとなった[10]

楽天時代[編集]

2016年2月22日に東北楽天ゴールデンイーグルスとの1年契約で合意した[11]。推定年俸は200万ドルで、背番号は3。球団からは長打力の発揮を期待されたものの、実戦では変化球への対応に苦慮。一軍公式戦では、18試合の出場で、打率.169、1本塁打という成績にとどまった。4月22日に出場選手登録を抹消される[12]と、4月25日に家族の事情でアメリカへ帰国。帰国後に退団を申し入れたため、球団では5月6日に、ゴームズとの契約を解除することを発表した(詳細後述[13]。同月13日付で、NPBから自由契約選手として公示[14]

楽天退団後[編集]

50歳まで現役生活を続けることを目標に、MLBへの復帰を模索[15]。2016年5月25日には、現役引退を決意したことが、アメリカの複数のメディアで報じられた[16]が、ゴームズ自身は引退の可能性を否定していた[17]

現役引退後[編集]

2018年2月1日にアリゾナ・ダイヤモンドバックス傘下のルーキーリーグ打撃コーチに就任した[18]

選手としての特徴[編集]

宴会部長的な性格とハッスルプレーからチームのムードメーカーとしての評価が高く[19]、リーダーシップも高い評価を受ける[20]

走攻守で闘志を前面に出すハッスルプレー[19]とレイズ時代にトロピカーナ・フィールド史上2位の478フィート(約145.8メートル)の本塁打を放った長打力を持ち味とし[21]、プルヒッターで大きな外野フライが多い[22]

アスレチックス時代以降は対左投手のプラトーン選手として起用されている。2015年までのMLB通算対右打率.221、OPS.711に対し、対左には通算打率.273、OPS.855を記録し、左投手相手には状況に応じて逆方向へ打球を運ぶことも得意とする[23]。近年は対左投手専門の傾向がさらに強くなり、2014年から2015年までの通算対右投手成績は打率.186、OPS.536にまで落ち込んでいる。

若い頃は速いカウントから積極的に打ちに行くフリースインガーで[19]選球眼に欠けていたが[21]、2011年からは失投をじっくり待つスタイルとなり1打席あたりの投球数や四球が増えた[24]。一方で大振りが目立つスイングで[25]、変化球に弱く三振が非常に多い[21]。さらに好不調の波が極端に大きい[21]

外野守備は動きが鈍く[26]、打球の軌道を読み違えることも多い[19]。メジャーデビュー当初は平均以上の走力[27]と強肩[19]も備えていたが、レッドソックス時代以降は鈍足で敏捷性に欠ける姿が目立ち[24]、肩の強さも平均以下となった[24]。守備時には好物のヒマワリの種をポケットに入れている[28]

人物[編集]

幼少の頃に両親の離婚、貧困を経験し、2002年クリスマスに死の淵を彷徨った心臓発作の原因も未だ不明のままである[29]。しかしながら、その性格は明るく陽気で利己的なところが無く、クラブハウスの空気を正しい方向に導く選手として知られている[30]。2013年のレッドソックスの優勝パレードでは、背中に「健康」、右の脇腹に「チャンピオントロフィーを左手に持ち、「Boston Strong」の文字が描かれた水陸両用車に乗り、優勝パレードを喜ぶ顎鬚のレッドソックスの選手(自分自身?)」のタトゥーを彫った姿が話題となった。

楽天からの退団が発表された際には、ファンに向けて、「最高のファンの前でプレー出来たことが、どれほど幸せなものだったかを皆様にお伝えたい。ボールパークでの皆様のエネルギーと情熱に溢れた応援が、私の力となって、とてもプレーしやすい環境を作り出してくれた。(日本球界での)シーズンは非常に短かったが、心の底から感謝している。またいつの日か皆様にお会いできることを願っている」というメッセージを寄せた[31]。アメリカへの帰国後には、日本人チームメイトとのコミュニケーションに言葉の壁があり常に孤独感を感じたことや、(福岡ソフトバンクホークスとのビジターゲームで福岡市内へ滞在中に遭遇した)熊本地震に恐怖を感じたことを帰国・退団の理由に挙げている[15]

詳細情報[編集]

年度別打撃成績[編集]

















































O
P
S
2003 TB 8 16 15 1 2 1 0 0 3 0 0 0 0 0 0 0 1 6 0 .133 .188 .200 .388
2004 5 15 14 0 1 0 0 0 1 1 0 0 0 0 1 0 0 6 0 .071 .133 .071 .205
2005 101 407 348 61 98 13 6 21 186 54 9 5 1 5 39 1 14 113 6 .282 .372 .534 .906
2006 117 461 385 53 83 21 1 20 166 59 1 5 0 9 61 2 6 116 10 .216 .325 .431 .757
2007 107 394 348 48 85 20 2 17 160 49 12 4 0 4 35 1 7 126 1 .244 .322 .460 .782
2008 77 177 154 23 28 5 1 8 59 21 8 1 0 1 15 1 7 46 1 .182 .282 .383 .666
2009 CIN 98 314 281 39 75 17 0 20 152 51 3 1 0 2 26 2 5 85 8 .267 .338 .541 .879
2010 148 571 511 77 136 24 3 18 220 86 5 3 0 9 39 3 12 123 4 .266 .327 .431 .758
2011 77 265 218 30 46 8 0 11 87 31 5 3 0 4 38 1 5 74 1 .211 .336 .399 .735
WSH 43 107 93 11 19 4 1 3 34 12 2 0 0 1 10 0 3 31 1 .204 .299 .366 .665
'11計 120 372 311 41 65 12 1 14 121 43 7 3 0 5 48 1 8 105 2 .209 .325 .389 .714
2012 OAK 99 333 279 46 73 10 0 18 137 47 3 1 1 1 44 2 8 104 2 .262 .377 .491 .868
2013 BOS 116 366 312 49 77 17 0 13 133 52 1 0 0 5 43 3 6 89 6 .247 .344 .426 .771
2014 78 246 209 22 49 7 0 6 74 32 0 0 0 5 26 0 6 70 5 .234 .329 .354 .683
OAK 34 75 64 6 15 1 0 0 16 5 0 0 0 2 9 2 0 18 1 .234 .320 .250 .570
'14計 112 321 273 28 64 8 0 6 90 37 0 0 0 7 35 2 6 88 6 .234 .327 .330 .657
2015 ATL 83 228 195 27 43 7 0 7 71 22 1 1 0 2 28 1 3 67 5 .221 .325 .364 .689
KC 12 34 30 2 5 2 0 0 7 4 0 0 0 1 3 0 0 14 1 .167 .235 .233 .469
'15計 95 262 225 29 48 9 0 7 78 26 1 1 0 3 31 1 3 81 6 .213 .313 .347 .660
2016 楽天 18 75 65 5 11 2 0 1 16 7 0 1 0 0 8 0 2 22 1 .169 .280 .246 .526
MLB:15年 1203 4009 3456 495 835 157 14 162 1506 526 50 24 2 51 417 19 83 1088 52 .242 .333 .436 .769
NPB:1年 18 75 65 5 11 2 0 1 16 7 0 1 0 0 8 0 2 22 1 .169 .280 .246 .526

記録[編集]

NPB

背番号[編集]

  • 60 (2003年 - 2004年)
  • 31 (2005年 - 2011年途中、2012年、2015年途中 - 同年終了)
  • 30 (2011年途中 - 同年終了)
  • 5 (2013年 - 2014年途中)
  • 15 (2014年途中 - 同年終了)
  • 7 (2015年 - 同年途中)
  • 3 (2016年)

脚注[編集]

  1. ^ “Jonny Gomes Stats” (英語). Baseball Reference.com. https://www.baseball-reference.com/players/g/gomesjo01.shtml 2085年2月9日閲覧。 
  2. ^ http://www.mlbtraderumors.com/2011/07/nationals-acquire-jonny-gomes.html
  3. ^ http://mlb.mlb.com/news/article.jsp?ymd=20071031&content_id=2289968&vkey=news_mlb&fext=.jsp&c_id=mlb
  4. ^ Red Sox sign Jonny Gomes to $10 million deal
  5. ^ A's Acquire Starting Pitcher Jon Lester, Outfielder Jonny Gomes”. MLB.com A's Press Release (2014年7月31日). 2014年8月1日閲覧。
  6. ^ Bowman, Mark (2015年1月22日). “Gomes, Braves agree on one-year contract”. http://m.braves.mlb.com/news/article/107185170/outfielder-jonny-gomes-braves-agree-on-one-year-deal 2015年2月5日閲覧。 
  7. ^ Bowman, Mark (2015年1月30日). “Braves finalize one-year deal with Gomes”. MLB.com. http://m.braves.mlb.com/news/article/107949748/braves-finalize-one-year-deal-with-jonny-gomes 2015年2月5日閲覧。 
  8. ^ ロイヤルズ、ブレーブスからベテラン外野手J.ゴームズを獲得”. ISM (2015年9月1日). 2015年9月1日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年9月2日閲覧。
  9. ^ Braves trade Gomes to Royals”. MLB.com (2015年8月31日). 2015年9月1日閲覧。
  10. ^ Joe Pantorno (2015年11月5日). “Jonny Gomes Option Declined by Royals: Latest Details, Comments, Reaction” (英語). Bleacher Report. http://bleacherreport.com/articles/2586527-jonny-gomes-option-declined-by-royals-latest-details-comments-reaction 2015年11月6日閲覧。 
  11. ^ ジョニー・ゴームズ選手の契約合意に関して東北楽天ゴールデンイーグルス オフィシャルサイト 2016年2月22日配信
  12. ^ 楽天ゴームズ抹消、梨田監督「対応に苦しんでいた」日刊スポーツ 2016年4月22日配信
  13. ^ 楽天 ゴームズの退団発表、メジャー162発大砲 わずか1本塁打でスポニチアネックス 2016年5月6日配信
  14. ^ 自由契約選手
  15. ^ a b 【米国はこう見ている】楽天退団のゴームズ、米メディアに帰国の理由明かす 「地震も怖かった」(2)FullCount 2016年5月12日配信
  16. ^ 元楽天ゴームズが現役引退へ メジャー通算162本塁打も日本では… スポニチアネックス 2016年5月26日配信
  17. ^ ボストン地元局記者 元楽天ゴームズの引退を否定「本人と話した」スポニチアネックス 2016年5月26日配信
  18. ^ “元楽天ゴームズ、Dバックス傘下で打撃コーチに 球団が発表”. Full-Count. (2018年2月2日). https://full-count.jp/2018/02/02/post105276/ 2018年2月9日閲覧。 
  19. ^ a b c d e 友成那智、村上雅則『メジャーリーグ・完全データ選手名鑑2011』廣済堂出版、2011年、332頁。ISBN 978-4-331-51518-1 
  20. ^ 月刊スラッガー『2015 MLB選手名鑑』日本スポーツ企画出版社、2015年、70頁。ISBN 978-4-905411-27-7 
  21. ^ a b c d 友成那智、村上雅則『メジャーリーグ・完全データ選手名鑑2012』廣済堂出版、2012年、229頁。ISBN 978-4-331-51612-6 
  22. ^ 友成那智、村上雅則『メジャーリーグ・完全データ選手名鑑2013』廣済堂出版、2013年、107頁。ISBN 978-4-331-51711-6 
  23. ^ 月刊スラッガー『2015 MLB選手名鑑』日本スポーツ企画出版社、2012年、53頁。ISBN 978-4-905411-05-5 
  24. ^ a b c 友成那智、村上雅則『メジャーリーグ・完全データ選手名鑑2015』廣済堂出版、2015年、285頁。ISBN 978-4-331-51921-9 
  25. ^ 友成那智、村上雅則『メジャーリーグ・完全データ選手名鑑2006』廣済堂出版、2006年、94頁。ISBN 4-331-51146-4 
  26. ^ 友成那智、村上雅則『メジャーリーグ・完全データ選手名鑑2007』廣済堂出版、2007年、105頁。ISBN 978-4-331-51213-5 
  27. ^ 友成那智、村上雅則『メジャーリーグ・完全データ選手名鑑2008』廣済堂出版、2008年、109頁。ISBN 978-4-331-51300-2 
  28. ^ 月刊スラッガー『2014 MLB選手名鑑』日本スポーツ企画出版社、2014年、13頁。ISBN 978-4-905411-18-5 
  29. ^ [1]
  30. ^ レッドソックス 強打と性格自慢の外野手獲得
  31. ^ 楽天ゴームズが退団 MLB通算162本塁打も成績低迷「またいつの日か…」FullCount 2016年5月6日配信

関連項目[編集]

外部リンク[編集]