コロナー

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コロナー
UK・ウォルトン=オン=トレント公演(2011年8月)
基本情報
出身地 スイスの旗 スイス チューリヒ州 チューリッヒ
ジャンル
活動期間
レーベル ノイズ・レコード
公式サイト CORONER | Official website
メンバー
  • ロン・ブローダー
  • トミー・ヴェッターリ
  • ディエゴ・ラパキイッティ
旧メンバー
  • マーキー・エデルマン
  • オリバー・アンバーグ
  • ピート・アッティンガー
  • トミー・リッター
  • フィル・ポズクタイ

コロナー (Coroner)は、スイス出身のヘヴィメタルバンド。同国を代表するスラッシュメタル系グループとして活動していたが、1996年に解散。2010年以降から、約15年ぶりに再始動を果たした[2]

音楽性は、「スラッシュメタル」「プログレッシブ・ロック」「インダストリアル・メタル」「ジャズ」などさまざまな要素が混ざり合った高度なテクニカル・スタイルが特徴。そのアルバムを重ねるごとに、よりプログレッシブのクオリティを増していった彼らの音楽は「スラッシュメタルのラッシュ」とも評された[3]

来歴[編集]

1980年代 - 1986年[編集]

コロナー[注釈 1]は当初、ドラマーのマーキー・エデルマン、ギタリストのオリバー・アンバーグを中心に、1980年代初期にスイスチューリッヒで結成された。最初のラインナップは、マーキー・エデルマン、ギタリストのオリバー・アンバーグに、ベーシストのフィル・ポズクタイ、ヴォーカリストのピート・アッティンガーに加えた5人編成で、当時はその後のコロナーとはまったく違う種類のヘヴィメタルを演奏するバンドだった。しかし1985年初頭にバンドは解散。その後マーキー・エデルマンはメンバーを募集し、ギタリストのトミー・ヴェッターリ、ベーシストのロン・ブローダーの3人で、同年、再びコロナーとして活動を始めた。[4][5][6]

なお、1996年解散までの間、マーキー・エデルマンはマーカス・マーキー、トミー・ヴェッターリはトミー・T・バロン、ロン・ブローダーはロン・ロイスというアーティスト・ネームで活動した。

1986年、コロナーはこの3人のラインナップでのはじめてのデモとなるDeath Cult をリリース。このデモでは、同郷であるセルティック・フロストの中心人物トム・G・ウォリアーが数曲ヴォーカルで参加した。当時コロナーはヴォーカルがおらず、バンドはヴォーカルとセカンドギタリストを探しているところだった。1980年代のチューリッヒには、ヘヴィメタルを嗜好する若者が集う、いわゆるヘヴィディスコと呼ばれた場所があり、そこでお互いに知り合ったりバンドを結成するなどしていたという。その中にはセルティック・フロスト(当時はヘルハマー英語版)もおり、毎週のようにそこへ出かけていたマーキー・エデルマンはトム・G・ウォリアーとも懇意だったという。そして、このレコーディングの際にはじめてトム・G・ウォリアーのヴォーカルを聴いたロン・ブローダーは、彼のその独特のヴォーカルスタイルに刺激され、それが、彼が歌うことを試み始めた理由のひとつともなったという。そしてその後、ロン・ブローダーがコロナーのヴォーカルも担当するようになった。この他にもコロナーとセルティック・フロストのつながりは多く、初期コロナーのメンバーだったオリバー・アンバーグは1989年にセルティック・フロストに参加しCold Lake でギターを担当、またマーキー・エデルマンは1980年代セルティック・フロストのツアー時にローディーを務めたことがあったり、トム・G・ウォリアーがセルティック・フロスト解散後1995年に結成したApollyon SunのデビューEPとなるGod Leaves (and Dies) に参加するなどした。[5][7][8]

完成したDeath Cult を世界中のレーベルに送った結果、さまざまなレーベルからオファーを受けたコロナーは、Celtic Frostと同じくドイツのノイズ・レコードと契約した。[9]

1987年 - 1990年[編集]

1987年、1stアルバム『R.I.P.英語版』 をリリース。バンド自らその音楽性をプログレッシブ・デスメタルと表現していたとおり、主に死に関することをテーマとした、ダークで、そしてジャズクラシックなどの音楽要素も取り入れた、複雑でプログレッシブなそのスラッシュメタルサウンドは高く評価され、ヨーロッパで50,000枚以上のセールスを記録した。続く1988年には2ndアルバム『パニッシュメント・フォー・デカダンス英語版』をリリース。スピードへの強いこだわりを感じさせる楽曲はスラッシュメタルらしさを強く感じさせながら、さらに複雑さを増した楽曲と流れるようなトミー・ヴェッターリのギターソロなどにみられる音楽的な要素は、彼らの更なる音楽的発展の可能性を感じさせた。[9][10][11]

コロナーは、アルバムの最後に実験的な曲を収録することがよくあり、このアルバムでは実験的アレンジによるジミ・ヘンドリックスの「パープル・ヘイズ」のカバーが収録された。

1989年にリリースされた3rdアルバム『ノー・モア・カラー英語版』では、前作より音質が改善され、また楽曲もさらに複雑さを増しながらもソングライティングやアレンジは成熟を感じさせるものとなった。アルバムの最後に収録された"Last Entertainment"は、アトモスフェリックなシンセサイザーギターリフが響く中、エコーのかかった朗読がながれるという、アンビエント的要素を取り入れた実験的なクロージング曲で、こうした先進的な実験の成果が、次作で大きく実を結ぶことになる。[12]

バンドは1989年9月からクリーターとともにU.S.ツアーを行い、1990年から1991年にかけて『No More Color Tour』としてヨーロッパを回った。またその間にベルリンの壁崩壊後のベルリンで『Thrashing East』として行われたライブにクリーター、タンカードサバト英語版らとともに出演。同年、このときの模様を収録したVHSおよびレーザーディスク『No More Color Tour '90 - Live In East Berlin』がリリースされた。またこのフェスティバルの模様は、コンピレーション『Doomsday News III - Thrashing East Live』としてリリースされた。[13]

1991年 - 1992年[編集]

1991年、バンドは4thアルバム『メンタル・ヴォルテクス英語版』をリリース。このアルバムで、彼らの創造性、独創性は大きな開花をみせた。型にはまらない独創的なソングライティング、効果的に配されたSEジャズプログレッシブ・ロックインダストリアル・メタルなどさまざまな要素と混じりあい複雑に展開しながら、それを卓越した演奏力とアレンジでタイトにまとめたサウンドは、スラッシュメタルの枠を超え、アヴァンギャルド・スラッシュというべき領域へと踏み込むものとなった。また、当時デスメタルのアルバムを多く輩出し、その中心地的存在だったアメリカのフロリダ州タンパにあるモリサウンド英語版で、トム・モリスによってミックスされたそのサウンドは、非常にクリアで洗練されたものとなった。アルバムの最後には、ビートルズの「アイ・ウォント・ユー」のカバーを収録。商業的に大きな成功を得るにはいたらなかったが、この『メンタル・ヴォルテクス』はエクストリーム・メタルの傑作のひとつに数えられている。[14][15]

アルバムリリース後、メコン・デルタとともに『Shadows of the Dark Side Tour』としてオランダドイツを回ったのち、ニュークリア・アソルトやパニックとともにアメリカツアーを実施。翌1992年にはイタリアフランスなどでライブを行った。[13]

1993年 - 1996年[編集]

1993年、バンドは5thアルバム『グリン英語版』をリリース。前作でも、シーケンサーのように正確なリズムやSEなどによってインダストリアル・メタル的なニュアンスを多分に感じさせていたが、このアルバムではさらにそうした要素が拡大。スローでグルーヴィな楽曲を中心に、サンプリングやSEを多用し、パターンの反復や曲の長尺化など、プログレッシブでアヴァンギャルドなその音楽性をさらに推し進めた、これまでの集大成的な作品となった。マーキー・エデルマンによれば、こうしたサウンドの変化は、数々のライブを経る中で、どういうプレイが自分たちにとって楽しいのかということを次々に発見したことや、ライブの中でより聴衆との相互作用を生み出したいと考えた結果生まれてきたものだったという。[7]

こうした大きな変化を受けて、これをバンドの最高傑作とする評価と、受け入れられないとする評価と、このアルバムは賛否両論を呼ぶこととなった。不幸なことに所属レーベルであるノイズ・レコードがコロナーへの関心を失ったことで、バンドは十分なサポートやマネージメントを受けられない状況となり、バンドはこのアルバムのリリース直後から、解散することを考えていたという。[16][17]

アルバムリリース後、バンドは『Grin Tour』としてヨーロッパを回った。翌1994年フランススイスでライブを行い、1995年の末、これまでにリリースされた楽曲から選曲された曲に未発表曲を加えたベスト・アルバムCoroner』をリリースした。収録された新曲は、『Grin』の楽曲をさらに実験的に進化させたものとなった。その後、このアルバムはレーベルとのレコーディング契約を履行するためにリリースされたもので、バンドがこの年の初頭にすでに解散していたことが発表された。[13][17][18]

1996年、バンドはヨーロッパ数箇所を回るフェアウェル・ツアーを行うことを発表。このツアーの会場限定で、未発表曲や1995年9月23日のチューリッヒでのライブを収録したカセットテープThe Unknown Unreleased Tracks 1985-95』が販売された。[注釈 2]

解散後、トミー・ヴェッターリはクリーターに加入し、『アウトキャスト英語版』、『エンドラマ英語版』の2枚のアルバムに参加。また1994年にはクロークスやメコン・デルタなどで知られるドラマーのピーター・ハースとともにクロックワークを結成しており、1995年にNight Of The Vinyl Dead RecordsからEP『Clockwork』をリリースした。[注釈 3] また2005年からはスイスのNew Sound Studioでプロデューサーおよびエンジニアを務めている。マーキー・エデルマンはトム・G・ウォリアーのApollyon Sunに参加。また2005年にはテクノ・プロジェクトKnallkidsとしてEP『Baked Boy Scouts』をリリースした。ロン・ブローダーは音楽業界から離れたと伝えられた。[16][17][19]

2005年 -[編集]

2005年3月になって、トミー・ヴェッターリがプロデューサーのニール・カーノンが主催するフェスティバルにコロナーが参加できる可能性がないか打診されたことが伝えられ、コロナー再結成への期待が高まったが、後に撤回され、再結成は実現しなかった。しかしそれから5年後の2010年6月はじめごろ、69 Chambersの一員としてライブを行ったトミー・ヴェッターリが、ライブ終了後にコロナーが再結成すると発表したことが伝えられ、その後正式に、コロナーがオリジナルメンバーで再結成し、2011年の『ヘルフェスト英語版』(フランス)、『ブラッドストック英語版』(イギリス)、『デスフェスト英語版』(アメリカ)に出演することなどが正式発表された。[20][2]

活動再開後はコンスタントにさまざまなフェスティバル等に出演するなど順調に活動を続けていたものの、コロナーを立ち上げ、これまでそのほとんどの詩を書いてきたマーキー・エデルマンが2014年2月をもって脱退し、その後は新たにドラマーを迎えて活動を継続することが発表された。同年5月、パガニーニやサイレント・メモリアルのメンバーであり、トミー・ヴェッターリと同じく69 Chambersのメンバーでもあるディエゴ・ラパキイッティが正式に加入したことが発表された。[21][22]

同年6月からバンドは初めてとなるオーストラリアツアーを行い、翌2015年にはブラジルやメキシコ、コロンビアなどを回るラテンアメリカ・ツアーを行った。

2016年、2011年から2014年までのマーキー・エデルマン在籍中のライブ映像や、1990年リリースの『No More Color Tour '90』、コンピレーションCDなどを含む、オリジナルメンバーでのコロナーの集大成となるコンピレーションBOXセット『Autopsy』をリリース。そして、Sony Music Switzerlandと新たに契約し、作品をリリースする予定であることが発表された[23]

メンバー[編集]

現在ラインナップ[編集]

  • ロン・ブローダー (Ron Broder a.k.a. Ron Royce) - ヴォーカルベース (1985-1996、2010- )
  • トミー・ヴェッターリ (Tommy Vettarli a.k.a. Tommy T. Baron) - ギター (1985-1996、2010- )
  • ディエゴ・ラパキイッティ (Diego Rapacchietti) - ドラム (2014- )

旧メンバー[編集]

  • マーキー・エデルマン (Marky Edelmann a.k.a. Marquis Marky) - ドラム (1985-1995、2010-2014)
  • オリバー・アンバーグ (Oliver Amberg a.k.a. Oly Amberg) - ギター (1983–1985)
  • フィル・ポズクタイ (Phil Puzctai) - ベース (1983-1984)
  • ピート・アッティンガー (Pete Attinger) - ヴォーカル (1983-1984)

ディスコグラフィ[編集]

スタジオ・アルバム[編集]

発売年 タイトル 原題 最高位
(CH)
[24]
1987年 R.I.P.英語版 R.I.P.
74
1988年 パニッシュメント・フォー・デカダンス英語版 Punishment for Decadence
77
1989年 ノー・モア・カラー英語版 No More Color
63
1991年 メンタル・ヴォルテクス英語版 Mental Vortex
1993年 グリン英語版 Grin
99

ライブ・ビデオ[編集]

コンピレーション・アルバム[編集]

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 「coroner」は、変死者などの調査を行なう司法関係者(検視官)のこと(en:wikt:coroner)。
  2. ^ 2011年、Night Of The Vinyl Dead RecordsからLPが500枚限定で再リリースされた。
  3. ^ 2013年、Night Of The Vinyl Dead RecordsからLPが350枚限定で再リリースされた。

出典[編集]

  1. ^ a b c d Rivadavia, Eduardo. Coroner Biography, Songs & Albums - オールミュージック. 2021年11月14日閲覧。
  2. ^ a b It's Official: Coroner To Reunite For Appearance At Next Year's Hellfest”. blabbermouth (2010年6月30日). 2010年6月30日閲覧。
  3. ^ Coroner Biography”. Allmusic. 2008年5月8日閲覧。
  4. ^ Coroner 1st Line-up”. Coroner official website. 2012年6月20日閲覧。
  5. ^ a b Former CELTIC FROST And CORONER Guitarist OLIVER AMBERG Working On THE BORIS KARLOFF SYNDROME EP”. Blabbermouth (2014年7月11日). 2014年7月11日閲覧。
  6. ^ Coroner”. Encyclopaedia Metallum: The Metal Archives (2014年7月8日). 2014年7月8日閲覧。
  7. ^ a b Bring Out Your Dead: The Coroner Interview”. ASCAP (2011年6月20日). 2011年6月20日閲覧。
  8. ^ Apollyon Sun Biography”. Allmusic. 2014年7月8日閲覧。
  9. ^ a b Large, Olivier. “Coroner Interview”. Iron Fist Magazine #16 1987 (Iron Fist Magazine, UK). 
  10. ^ R.I.P. - Coroner”. Allmusic. 2014年7月8日閲覧。
  11. ^ Punishment For Decadence - Coroner”. Allmusic. 2014年7月8日閲覧。
  12. ^ No More Color - Coroner”. Allmusic. 2014年7月8日閲覧。
  13. ^ a b c Past Shows”. Coroner official website. 2014年7月8日閲覧。
  14. ^ Coroner Discography - Mental Vortex(1991)”. Coroner official website. 2014年7月8日閲覧。
  15. ^ Mental Vortex - Coroner”. Allmusic. 2014年7月8日閲覧。
  16. ^ a b Coroner Reunion”. Coroner official website. 2014年7月8日閲覧。
  17. ^ a b c Coroner Latest News”. Coroner unofficial fansite. 2014年7月8日閲覧。
  18. ^ Coroner Discography - Coroner(1995)”. Coroner official website. 2014年7月8日閲覧。
  19. ^ MUSIKALISCHE LAUFBAHN”. Peter Haas official website. 2014年7月8日閲覧。
  20. ^ CORONER Reunion In The Works”. blabbermouth (2005年3月10日). 2005年3月10日閲覧。
  21. ^ MARKY EDELMANN To Leave CORONER; Band To Continue With Replacement Drummer”. blabbermouth (2014年2月12日). 2014年2月12日閲覧。
  22. ^ CORONER Announces New Drummer”. blabbermouth. 2014年5月24日閲覧。
  23. ^ CORONER TO RELEASE 'AUTOPSY' 3X BLU-RAY + LP / 3X DVD + CD SET ON SEPTEMBER 23RD, 2016; NEW STUDIO ALBUM IN THE WORKS FOR 2017!”. facebook. 2016年7月26日閲覧。
  24. ^ Discographie Coroner - hitparade.ch”. Hung Medien. 2021年11月14日閲覧。

外部リンク[編集]