コハクチョウ

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コハクチョウ
アメリカコハクチョウ
アメリカコハクチョウ
Cygnus columbianus columbianus
保全状況評価[a 1]
LEAST CONCERN
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 鳥綱 Aves
: カモ目 Anseriformes
: カモ科 Anatidae
: ハクチョウ属 Cygnus
: コハクチョウ C. columbianus
学名
Cygnus columbianus (Ord, 1815)
和名
コハクチョウ
英名
Tundra swan

コハクチョウ(小白鳥[1]Cygnus columbianus)は、鳥綱カモ目カモ科ハクチョウ属に分類される鳥類。

分布[編集]

  • C. c. bewickii コハクチョウ

ユーラシア大陸北部で繁殖し、冬季になるとヨーロッパアイルランドイギリス南部、オランダデンマークなど)、カスピ海周辺(西部個体群)か、大韓民国中華人民共和国東部、日本など(東部個体群)へ南下し越冬する[2][3][4]

  • C. c. columbianus アメリカコハクチョウ

アメリカ合衆国カナダメキシコ北部[a 1]

種小名columbianusは「コロンビアの」の意で、基亜種の越冬地の1つであるコロンビア川に由来する[1]アラスカ州ハドソン湾などで繁殖し、冬季になるとカリフォルニア半島チェサピーク湾などへ南下し越冬する[3]

形態[編集]

全長115-150cm[2]。翼開張180-225センチメートル[2]。属内では頸部が太短い[3]。全身の羽衣は白い[3]。雌雄同色[5]

嘴の先端が丸みを帯びているか、または角張って突出せず、色彩は黒い[2][4]。鼻孔は嘴の中央部よりやや先端寄りに開口する[2]。気管が長く紐状[3]。後肢の色彩は黒い[2][4]

幼鳥は全身の羽衣が淡灰褐色[2][4]

  • C. c. bewickii コハクチョウ

翼長オス51.5-53.5センチメートル、メス47.5-52.5センチメートル[3]。上嘴基部から鼻孔にかけて黄色い斑紋が入る[2][3][4]

  • C. c. columbianus アメリカコハクチョウ

翼長オス50.1-56.9センチメートル、メス50.5-56.1センチメートル[3]。眼先に黄色い皮膚がわずかに裸出する[2][3][4]

分類[編集]

以前は和名がハクチョウとされていたが、1974年に発行された日本鳥学会のリストからはハクチョウ属他種との混同を避けるためにコハクチョウへ変更された[1][3]

亜種を独立種とする説もある。亜種コハクチョウを2亜種(西部個体群C. c. bewickii、東部個体群C. c. jankowskii)に分割する説もあったが、有力ではない[3]

  • Cygnus columbianus bewickii  コハクチョウ Bewick's swan
  • Cygnus columbianus columbianus (Ord, 1815) アメリカコハクチョウ Whistling swan

亜種アメリカコハクチョウ[編集]

アメリカコハクチョウは北アメリカ北部で繁殖する。日本へはごく少数が冬鳥としてコハクチョウの群れに混じって渡来する[6]

全長は約132cmで、コハクチョウ(全長約120cm)よりはやや大きい[6]。コハクチョウよりもくちばしの黒色の占める割合が大きく、付け根の部分がわずかに黄色である[7]。亜種アメリカコハクチョウと亜種コハクチョウとの交雑個体と考えられる個体も観察されている[6]

アメリカコハクチョウは通常コハクチョウの亜種(学名:C.c.columbianus)とされているが、分布域が明確に分かれることと体の大きさが異なることなどから、独立種とする説もある。この場合、本種の学名はCygnus columbianusとなり、コハクチョウの学名はCygnus bewickiiとなる[6]

生態[編集]

河川湖沼内湾などに生息する[2][4][5]

水田などを採食場とし、水面や湿地をねぐらとする[5]。天敵が近づかない限りは採食場で一日中採食と休息を繰り返しながら過ごす[5]。何かが近づいてきた場合は翼を広げて威嚇を行う[5]。主に群れで移動し、朝10時ごろに採食場へ、夕方ごろにねぐらへ移動する[5]。昼は水草、夜は刈り跡で落ち穂を採食することが多い[8]

繁殖形態は卵生。2-5個(基亜種は3-5個)の卵を産む[3]。抱卵期間は29-32日(基亜種30-32日、亜種コハクチョウ29-30日)[3]

画像・音声[編集]

参考文献[編集]

  1. ^ a b c 安部直哉 『山溪名前図鑑 野鳥の名前』、山と溪谷社2008年、77頁。
  2. ^ a b c d e f g h i j 桐原政志 『日本の鳥550 水辺の鳥』、文一総合出版2000年、112-113頁。
  3. ^ a b c d e f g h i j k l m 黒田長久、森岡弘之監修 『世界の動物 分類と飼育 (ガンカモ目)』、財団法人東京動物園協会、1980年、19、22-23頁。
  4. ^ a b c d e f g 真木広造、大西敏一 『日本の野鳥590』、平凡社、2000年、86-87頁。
  5. ^ a b c d e f 『新版 日本の野鳥』 7巻、山と溪谷社〈山溪ハンディ図鑑〉、2014年1月、40-41頁。ISBN 978-4-635-07033-1 
  6. ^ a b c d 叶内拓哉他、『山渓ハンディ図鑑7 日本の野鳥』、第二版、山と渓谷社、2001年、32-33頁
  7. ^ 高野伸二 『フィールドガイド 日本の野鳥』、日本野鳥の会、2003年、32-33頁
  8. ^ 「野生動物編」『京都府レッドデータブック 2015』 1巻、京都府自然環境保全課、4月 2015、82頁。 

関連項目[編集]

外部リンク[編集]

  1. ^ a b The IUCN Red List of Threatened Species
    • BirdLife International 2009. Cygnus columbianus. In: IUCN 2010. IUCN Red List of Threatened Species. Version 2010.1.