クレイジー・ワールド・オブ・アーサー・ブラウン

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クレイジー・ワールド・オブ・アーサー・ブラウン
The Crazy World of Arthur Brown
ライブの様子(2014年)
基本情報
出身地 イングランドの旗 イングランド ロンドン
ジャンル サイケデリック・ロック
活動期間 1967年 - 1970年
2000年 -
レーベル ヴォイスプリント、トラック、Zoho Music
メンバー アーサー・ブラウン
ジム・モルティモア
サミュエル・ウォーカー
ルーシー・レジェルトヴァ
ニナ・グロムニアック
マルコム・ディック
Z-スター
旧メンバー ニコラス・グリーンウッド
ヴィンセント・クレイン
ドレイチェン・シーカー
カール・パーマー
ジェフ・カトラー
ディック・ヘニンガム
ピート・ソリー

クレイジー・ワールド・オブ・アーサー・ブラウンThe Crazy World Of Arthur Brown)は、イングランドロック・ミュージシャンのアーサー・ブラウンが、アルバムの録音とツアーのために1968年に結成したロック・バンドである。

概要[編集]

音楽的な系譜ではサイケデリック・ロックの他、グラム・ロックやシアトリカル・ロックの草分け的な存在で、頭から火を出し、マスクを被って歌うブラウンのパフォーマンスは、1970年代のアリス・クーパーなどに影響を与えている。

同名のデビュー・アルバム『クレイジー・ワールド・オブ・アーサー・ブラウン』(1968年)はザ・フーのマネージャーのキット・ランバートとメンバーのピート・タウンゼント[1]のプロデュースによって制作された。USAツアーの際、飛行機恐怖症で参加を拒んだドラマーのドレイチェン・シーカーと神経衰弱になったキーボーディストのヴィンセント・クレインの穴を臨時メンバーを雇って埋めて、ツアーをこなした、帰国後に雇われたのは、1970年代のエマーソン・レイク・アンド・パーマー(EL&P)のメンバーとしての活動で知られることになるドラマーカール・パーマー[注釈 1]とキーボーディストのピート・ソリーである。クレインは後に復帰したが、彼とパーマーは再度のUSAツアー中に脱退してアトミック・ルースター[注釈 2]を結成した。

彼等の名前が今日まで知られているのは、シングル「ファイアー英語版」のヒットによる。この曲は全英シングルチャートの首位を獲得したほか、アメリカビルボードHOT100でも2位に輝き、1968年を代表するヒット曲の一つである。これがバンドにとってもアーサー・ブラウンにとっても、唯一チャート・インしたシングルとなった。アルバムはイギリスで2位、アメリカで7位まで上昇した[2]

来歴[編集]

1966年:アーサー・ブラウン、ヴィンセント・クレイン、ドレイチェン・シーカーにより結成。

1967年:ニコラス・グリーンウッド加入。

1968年:ブラウン、クレイン、シーカー、グリーンウッドで1stアルバム『クレイジー・ワールド・オブ・アーサー・ブラウン』録音。USAツアー中にクレイン、シーカーが脱退、ディック・ヘニンガム、ジェフ・カトラーを急遽臨時メンバーに加えてツアー続行。ブラウン、グリーンウッドは帰国後メンバーを探し、ピート・ソリー、カール・パーマー[注釈 3]を加える。クレインは10月に復帰するが、USAツアー中にパーマーと共に脱退して、二人でアトミック・ルースターを結成する。

1969年:4月にブラウン、ジョン・マーシャル、マックロウ、デニス・テイラー、シーカーでブラウンとクレインの共作曲「Space Plucks」を録音。ブラウン、シーカー、アンディ・リッケル、ジョージ・カーン、ジョン・ミッチェル、テイラーの顔ぶれで2ndアルバム『不思議の国のアーサー王』を録音[注釈 4]。その後ブラウンはキングダム・カムを結成[注釈 5]、テイラーは1stアルバム発表時の照明係、3rdアルバムのプロデューサーになった。

クレイジー・ワールド・オブ・アーサー・ブラウンは2000年にブラウンを中心に再結成。2002年、2003年に同名義で『Tantric Lover』『Vampire Suite』を録音している。     

メンバーと担当楽器[編集]

現在のラインナップ[編集]

  • アーサー・ブラウン (Arthur Brown) – リード・ボーカル (1967年–1970年、2000年– )
  • Z-スター (Z-Star) – リード&バック・ボーカル、ギター、キーボード、パーカッション (2000年– )
  • ルーシー・レジェルトヴァ (Lucie Rejchrtova) – キーボード (2000年– )
  • ジム・モルティモア (Jim Mortimore) – ベース、バック・ボーカル、ギター (2000年– )
  • サミュエル・ウォーカー (Samuel Walker) – ドラムス、バック・ボーカル (2000年– )
  • マルコム・ディック (Malcolm Dick) – デジタル・アーティスト、映像担当 (2000年– )
  • ニナ・グロムニアック (Nina Gromniak) – ギター (2011年– )

第1期 1966年 - 1967年[編集]

  • アーサー・ブラウン (Arthur Brown) - ボーカル
  • ヴィンセント・クレイン (Vincent Crane) - オルガン、ピアノ、ベース・ペダル
  • ドレイチェン・シーカー (Drachen Theaker) - ドラムス

+

  • ピート・ギフォード (Pete Gifford) - サックス(1967年、数回ギグに参加)
  • ロン・ウッド (Ron Wood) - ベース(1967年、BBC 「トップ・ギアー」の録音に参加)


ブラウン、クレイン、シーカーの3人でデビュー・シングル「Devil's Grip/Give Him A Flower」録音。
(但しA面のドラムスはジョン・ハイズマンが叩いている)

第2期 1967年末 - 1968年[編集]

  • アーサー・ブラウン (Arthur Brown) - ボーカルス
  • ヴィンセント・クレイン (Vincent Crane) - オルガン、ピアノ(ストリング・ベース・アレンジ)
  • ドレイチェン・シーカー (Drachen Theaker) - ドラム
  • ニコラス・グリーンウッド (Nicholas Greenwood) - ベース


1stアルバム『クレイジー・ワールド・オブ・アーサー・ブラウン』録音。
(但し「I Put A Spell On You」「Child Of My Kingdom」のドラムスはエインズレー・ダンパー、ジョン・マーシャルらが叩いていると言われている)

第3期 1968年[編集]

  • アーサー・ブラウン (Arthur Brown) - ボーカル
  • ニコラス・グリーンウッド (Nicholas Greenwood) - ベース
  • ディック・ヘニンガム (Dick Henningham) - オルガン
  • ジェフ・カトラー (Jeff Cutler) - ドラムス


USAツアー中にクレイン、シーカーが脱退してしまったため、ヘニンガム、カトラーを急遽臨時メンバーに加えてツアー続行。

第4期 1968年[編集]

  • アーサー・ブラウン (Arthur Brown) - ボーカル
  • ニコラス・グリーンウッド (Nicholas Greenwood) - ベース
  • ピート・ソリー (Pete Solley) - オルガン
  • カール・パーマー (Carl Palmer) - ドラムス


シングル「悪夢/不思議な出来事」。B面「不思議な出来事」がパーマーがこのバンドで録音した唯一の曲である。

第5期 1968年10月 -[編集]

  • アーサー・ブラウン (Arthur Brown) - ボーカル
  • ニコラス・グリーンウッド (Nicholas Greenwood) - ベース
  • ヴィンセント・クレイン (Vincent Crane) - オルガン、ピアノ
  • カール・パーマー (Carl Palmer) - ドラムス


10月にクレインが復帰するが、USAツアー中にクレイン、パーマーが脱退してアトミック・ルースターを結成。

第6期 1969年4月[編集]

  • アーサー・ブラウン (Arthur Brown) - ボーカル
  • ジョン・マーシャル (John Marshall) - ドラムス
  • マッカロウ (McCullough) - オルガン
  • デニス・テイラー (Dennis Taylor) - ベース
  • ドレイチェン・シーカー (Drachen Theaker) - シンセトフォン


「Space Plucks」録音、この曲は2ndに収録。

第7期 (Puddletown Express) 1969年[編集]

  • アーサー・ブラウン (Arthur Brown) - ボーカル
  • ドレイチェン・シーカー (Drachen Theaker) - ドラムス
  • アンディ・リッケル (Andy Rickell) - ギター
  • ジョージ・カーン (George Khan) - エレクトリック・サックス
  • ジョン・ミッチェル (John Mitchell) - オルガン
  • デニス・テイラー (Dennis Taylor) - ベース


2ndアルバム『不思議の国のアーサー王』録音。

第8期 2002年[編集]

  • アーサー・ブラウン (Arthur Brown) - ボーカル、アコースティックギター
  • リック・パテン (Rik Patten) - アコースティックギター、オルガン、バンジョー、マンドリン
  • スタン・アドラー (Stan Adler) - チェロ、ダブル・ベース、ベース
  • マルコム・モルティモア (Malcom Mortimore) - ドラムス、パーカッション


3rdアルバム『Tantric Lover』録音。

第9期 2003年[編集]

  • アーサー・ブラウン (Arthur Brown) - ボーカル
  • ジョシュ・フィリップス (Josh Phillips) - オルガン、ピアノ、シンセサイザー
  • マーク・ブレゼジッキー (Mark Brzezicki) - ドラムス、パーカッション

+

  • リチャード・スタッドホルム (Richard Studholme) - ベース
  • ロジャー・マニング (Roger Manning) - ギター
  • デイヴ・ウィリアムソン (Dave Wiliamson) - ベース
  • ジェイムズ・ヘイト (James Heyto) - ギター
  • スティーヴ・ルー (Steve Roux) - ギター
  • ニック・ペントロウ (Nick Pentelow) - サックス
  • ピート・トムズ (Pete Thoms) - トロンボーン
  • シド・ゴールド (Sid Gauld) - トランペット
  • ロブ・ハート (Rob Hart) - バック・ボーカル
  • ソフィー・ハート (Sophie Hart) - バック・ボーカル
  • スティーヴ・グラスコック (Steve Glasscock) - バック・ボーカル
  • カール・バージェス (Carl Burgess) - バック・ボーカル

4thアルバム『Vampire Suite』録音。

ディスコグラフィ[編集]

スタジオ・アルバム[編集]

  • クレイジー・ワールド・オブ・アーサー・ブラウン』 - The Crazy World Of Arthur Brown (1968年 第2期) ※旧邦題『ファイアー』
  • 『不思議の国のアーサー王』 - Strangelands (1988年 第6期 - 第7期) ※1969年録音
  • Tantric Lover (2002年 第8期)
  • Vampire Suite (2003年 第9期)
  • Voice of Love (2007年)
  • Zim Zam Zim (2013年)
  • Gypsy Voodoo (2019年)

ライブ・アルバム[編集]

  • Live At High Voltage (2012年)
  • Live In Bristol 2002 (2015年)
  • Radio Sessions: 1968 1972 1975 (2016年)
  • Live 1967-1968 (2016年)

コンピレーション[編集]

  • The Lost Ears (1976年キングダム・カム時代のコンピレーションだが、第6期、第7期の曲も収録)

シングル[編集]

  • "Devil's Grip / Give Him A Flower" (1967年 第1期 A面のドラム:ジョン・ハイズマン)
  • 「ファイアー/レスト・キュア」 - "Fire / Rest Cure" (1968年 第2期)
  • 「悪夢/不思議な出来事」 - "Nightmare / What's Happening" (1968年 第2期(A面)、第4期(B面))
  • "Vampire Love / A Hard Rain's Gonna Fall" (1997年)

脚注[編集]

出典[編集]

  1. ^ Townshend (2012), p. 254.
  2. ^ Crazy World of Arthur Brown - Full Official Chart History”. Official Charts Company. Official Charts Company. 2016年1月19日閲覧。

注釈[編集]

  1. ^ EL&Pは1993年に発表した『リターン・オブ・ザ・マンティコア』で、「ファイアー」を取り上げた。
  2. ^ プログレッシブ・ロックにジャンル分けされている。
  3. ^ 後にアトミック・ルースター、エマーソン・レイク・アンド・パーマー・に加入したドラマー。
  4. ^ 発表は1988年。
  5. ^ 上記のブラウンとクレインの共作曲「Space Plucks」を再演。

参考文献[編集]

関連項目[編集]