クリーブランド級軽巡洋艦

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クリーブランド級軽巡洋艦
CL-55 USS Cleveland
CL-55 USS Cleveland
基本情報
艦種 軽巡洋艦
命名基準 都市名
建造所
運用者 アメリカ合衆国の旗 アメリカ海軍
建造期間 1940年 - 1958年
就役期間 1942年-1979年
計画数 52隻
建造数 27隻[注 1]
前級 アトランタ級
ブルックリン級
準同型艦 ガルベストン級ミサイル巡洋艦
プロビデンス級ミサイル巡洋艦
次級 ファーゴ級
要目 ([1]
基準排水量 11,130-11,734 l.t[注 2]
(11,309-11,922 t)
満載排水量 13,897-14,144 l.t[注 3]
(14,120-14,371t)
全長 608フィート4インチ (185.42 m)
水線長 600フィート (182.88 m)
最大幅 66フィート4インチ (20.22 m)
吃水 25フィート (7.62 m)
高さ 113フィート (34.44 m)
ボイラー バブコック & ウィルコックス水管ボイラー×4缶
主機 GE式ギヤード蒸気タービン×4基
推進器 スクリュープロペラ×4軸
出力 100,000馬力 (75,000 kW)
最大速力 32.5ノット (60.2 km/h)
航続距離 8,640海里 (16,000 km) / 15ノット
乗員 1,252名(士官70名、下士官兵1,115名)
兵装
装甲
  • 舷側:3.5-5インチ (89-127mm)
  • 甲板:2インチ (51mm)
  • 船内隔壁:5インチ (127mm)
  • 砲塔前面:6.5インチ (165mm)
  • 砲塔後面:1.5インチ (38mm)
  • 砲塔上面:3インチ (76mm)
搭載機 水上機×4機
レーダー
初期
後期
  • AN/SPS-6(対空)
  • SR-3(対空)
  • SP(航空管制)
その他 カタパルト×2基
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クリーブランド級軽巡洋艦(クリーブランドきゅう けいじゅんようかん、英語: Cleveland-class light cruiser) は、アメリカ海軍軽巡洋艦の艦級。改良型の「ファーゴ (CL-106) 」以降を含む資料も存在する。

来歴[編集]

1937年1月1日ロンドン海軍軍縮条約失効に伴い、列強各国に課せられていた巡洋艦の保有制限は解除された。同時にワシントン海軍軍縮条約も失効したことから、各国は一斉に海軍軍備の拡張に乗り出しており、1938年5月には、アメリカでも第2次ヴィンソン海軍法英語版と通称される一大海軍拡張計画が議会を通過した。同計画には10,000トン型軽巡洋艦が盛り込まれていたが、これによって建造されたのが本級である[2]

設計[編集]

当初は基準排水量8,000トン、6インチ両用砲 連装5基搭載というアトランタ級の拡大型として計画されたものの、搭載砲の開発が間に合わなかったことから、ブルックリン級軽巡洋艦後期型(セント・ルイス級)の船体設計を踏襲することとされた[3]

主砲としては、セント・ルイス級と同じくMk.16 47口径6インチ砲英語版を三連装砲塔に配して搭載した。ただしセント・ルイス級では、前甲板3基・後甲板2基の計15門搭載であったのに対し、本級では前後甲板に2基ずつに削減された。その一方で、Mk.12 38口径5インチ両用砲は12門(連装6基; セント・ルイス級では連装4基)に増備され、また56口径40mm機銃など高角機銃も多数を搭載するなど、対空砲火力は大幅に強化された[4]

配備[編集]

まず1940年度計画で4隻の建造が決定され、その後さらに1941年度計画で32隻、1942年度計画で16隻の建造が追加されたことから、合計52隻という大量建造が計画されることとなった[2]

その後、3隻は建造中止され、また13隻は発展型(ファーゴ級)に、9隻は軽空母インディペンデンス級)に設計変更されて建造されたことから、本級として完成したのは27隻であった[2]

同型艦一覧
艦番号 艦名 起工 就役 退役 備考
CL-55 クリーブランド
USS Cleveland
1940年
7月
1942年
6月
1947年
2月
CL-56 コロンビア
USS Columbia
1940年
8月
1942年
7月
1946年
11月
CL-57 モントピリア
USS Montpelier
1940年
12月
1942年
9月
1947年
1月
CL-58 デンバー
USS Denver
1940年
12月
1942年
10月
1947年
2月
CL-59 アムステルダム
USS Amsterdam
1941年
5月
1943年1月
CVL-22「インディペンデンス」として就役。
CL-60 サンタフェ
USS Santa Fe
1941年
6月
1942年
11月
1946年
10月
CL-61 タラハシー
USS Tallahassee
1941年
6月
1943年2月
CVL-23「プリンストン」として就役。
CL-62 バーミングハム
USS Birmingham
1941年
2月
1943年
1月
1947年
1月
CL-63 モービル
USS Mobile
1941年
4月
1943年
3月
1947年
5月
CL-64 ヴィンセンス
USS Vincennes
1942年
3月
1944年
1月
1946年
9月
CL-65 パサデナ
USS Pasadena
1943年
2月
1944年
6月
1950年
1月
CL-66 スプリングフィールド
USS Springfield
1943年
2月
1944年
9月
1974年
5月
1960年7月
プロビデンス級ミサイル巡洋艦2番艦(CLG-7)として再就役。
CL-67 トピカ
USS Topeka
1943年
4月
1944年
12月
1969年
6月
1960年3月
プロビデンス級ミサイル巡洋艦3番艦(CLG-8)として再就役。
CL-76 ニュー・ヘヴン
USS New Haven
1941年
8月
1943年3月
CVL-24「ベロー・ウッド」として就役。
CL-77 ハンチントン
USS Huntington
1941年
11月
1943年5月
CVL-25「カウペンス」として就役。
CL-78 デイトン
USS Dayton
1941年
12月
1943年6月
CVL-26「モンテレー」として就役。
CL-79 ウィルミントン
USS Wilmington
1942年
3月
1943年7月
CVL-28「カボット」として就役。
CL-80 ビロクシ
USS Biloxi
1941年
7月
1943年
8月
1946年
8月
CL-81 ヒューストン
USS Houston
1943年
6月(進水)
1943年
12月
1947年
12月
CL-82 プロビデンス
USS Providence
1943年
7月
1945年
5月
1973年
8月
1959年9月
プロビデンス級ミサイル巡洋艦1番艦(CLG-6)として再就役。
CL-83 マンチェスター
USS Manchester
1944年
9月
1946年
10月
1956年
6月
CL-84 バッファロー
USS Buffalo
1940年12月
未起工のまま建造計画中止。
CL-85 ファーゴ
USS Fargo
1943年8月
CVL-27「ラングレー」として就役。
CL-86 ヴィックスバーグ
USS Vicksburg
1942年
10月
1944年
6月
1947年
6月
CL-87 ダルース
USS Duluth
1942年
11月
1944年
9月
1949年
6月
CL-88 ニューアーク
USS Newark
※予定
1940年12月
未着手のまま建造計画中止。
CL-89 マイアミ
USS Miami
1941年
8月
1943年
12月
1947年
6月
CL-90 アストリア
USS Astoria
1941年
9月
1944年
5月
1949年
7月
CL-91 オクラホマシティ
USS Oklahoma City
1942年
12月
1944年
12月
1979年
12月
1960年9月
ガルベストン級ミサイル巡洋艦3番艦(CLG-5)として再就役。
CL-92 リトルロック
USS Little Rock
1943年
3月
1945年
6月
1976年
5月
1960年6月
ガルベストン級ミサイル巡洋艦2番艦(CLG-4)として再就役。
CL-93 ガルベストン
USS Galveston
1945年
4月(進水)
1958年
5月
1970年
5月
1958年5月
ガルベストン級ミサイル巡洋艦1番艦(CLG-3)として再就役。
CL-94 ヤングズタウン
USS Youngstown
1944年
9月
1945年8月に建造中止、スクラップ。
CL-99 バッファロー
USS Buffalo
1942年
8月
1943年11月
CVL-29「バターン」として就役。
CL-100 ニューアーク
USS Newark
1942年
10月
1943年11月
CVL-30「サン・ジャシント」として就役。
CL-101 アムステルダム
USS Amsterdam
1943年
3月
1945年
1月
1947年
6月
CL-102 ポーツマス
USS Portsmouth
1943年
6月
1945年
6月
1949年
6月
CL-103 ウィルクスバリ
USS Wilkes-Barre
1942年
12月
1944年
7月
1947年
10月
CL-104 アトランタ
USS Atlanta
1943年
1月
1944年
12月
1970年
4月
CL-105 デイトン
USS Dayton
1943年
3月
1945年
1月
1949年
3月

運用史[編集]

「クリーブランド」「コロンビア」「モントピーリア」「デンバー」は水上戦闘部隊の手駒が切れかかっていた時期の1943年11月2日ブーゲンビル島攻略支援に第39任務部隊の主力として投入された。日本海軍は天候不良とアメリカ軍に察知されたため逆上陸作戦を中止していたが、第39任務部隊の撃滅を目指し、エンプレス・オーガスタ湾に突入してきた。クリーブランド級4隻は悪天候の中、レーダー射撃を有効に利用して日本連合襲撃部隊に打撃と混乱を与え、軽巡洋艦「川内」と駆逐艦「初風」を撃沈した。体勢を整えた日本海軍は「デンバー」と駆逐艦2隻を損傷させたが、煙幕を張って回頭したアメリカ艦隊を撃破、撃沈したものだと誤認して退却した。重巡洋艦2隻、軽巡洋艦2隻、駆逐艦11隻の有力な艦隊に対してクリーブランド級4隻、駆逐艦8隻という劣勢状況下で1隻の沈没なく日本海軍を撃退したことから当級の優秀さが窺える。ソロモン近海の制海権はアメリカ海軍が堅持し、この海戦の約一週間後にはギルバート・マーシャル攻略が開始された。

順次、竣工したクリーブランド級は空母機動部隊の護衛や上陸戦の火力支援(艦砲射撃)などに従事し、アメリカ海軍の反攻を影から支えた。

戦後、1959年から1974年にかけて大半の艦はスクラップとして解体されたが、一部の艦は艦対空ミサイル・システムを搭載してミサイル巡洋艦に改装された。「スプリングフィールド」「トピカ」「プロビデンス」はテリア・システムを搭載してプロビデンス級ミサイル巡洋艦、「オクラホマシティ」「リトルロック」「ガルベストン」はタロス・システムを搭載してガルベストン級ミサイル巡洋艦に改装されて、1970年代まで現役に留まることとなった。また、「ヴィンセンス」「ウィルクスバリー」「アトランタ」の3隻は実験艦、標的艦として使用、処分された。

画像[編集]

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 軽空母への改装が9隻、ファーゴ級として再発注されたものが13隻。
  2. ^ The Worlds Warships 3rd Edition (1965年) では10,500l.t (10,668t)と表記。
  3. ^ The Worlds Warships 3rd Edition (1965年) では13,755l.t (13,976t) と表記。
  4. ^ 表記しているのは一例であり、実際は年代や艦ごとに異なる。

出典[編集]

  1. ^ CL-89 USS Miami – Booklet of General Plans, 1946
    USS Cleveland (CL 55)
    CLEVELAND light cruisers (1942-1958)
    USS CLEVELAND (CL 55)
    The Worlds Warships 3rd Edition
  2. ^ a b c 青木栄一「アメリカ巡洋艦建造の歩み」『世界の艦船』第464号、海人社、1993年4月、129-137頁。 
  3. ^ 石橋孝夫「アメリカ巡洋艦の技術的特徴」『世界の艦船』第464号、海人社、1993年4月、138-147頁。 
  4. ^ 梅野和夫「アメリカ巡洋艦史」『世界の艦船』第464号、海人社、1993年4月、13-126頁。 

外部リンク[編集]