ギレルモ・デル・トロ

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ギレルモ・デル・トロ
Guillermo del Toro
Guillermo del Toro
2017年
本名 Guillermo del Toro Gómez
生年月日 (1964-10-09) 1964年10月9日(59歳)
出生地 メキシコの旗 メキシコ
ハリスコ州 グアダラハラ
職業 映画監督映画プロデューサー脚本家小説家
ジャンル 映画テレビドラマ
活動期間 1985年 -
主な作品
映画(監督)
クロノス
ミミック
ブレイド2
ヘルボーイ』シリーズ
パンズ・ラビリンス
パシフィック・リム
クリムゾン・ピーク
シェイプ・オブ・ウォーター
ナイトメア・アリー
ギレルモ・デル・トロのピノッキオ
映画(脚本)
ホビット』シリーズ
スケアリーストーリーズ 怖い本
魔女がいっぱい
映画(製作)
タブロイド
永遠のこどもたち
スプライス
カンフー・パンダ2
長ぐつをはいたネコ
MAMA
パシフィック・リム: アップライジング
テレビドラマ
ストレイン 沈黙のエクリプス
 
受賞
アカデミー賞
作品賞
2017年シェイプ・オブ・ウォーター
監督賞
2017年『シェイプ・オブ・ウォーター』
長編アニメ映画賞
2022年ギレルモ・デル・トロのピノッキオ
ヴェネツィア国際映画祭
金獅子賞
2017年『シェイプ・オブ・ウォーター』
ロサンゼルス映画批評家協会賞
監督賞
2017年『シェイプ・オブ・ウォーター』
放送映画批評家協会賞
監督賞
2017年『シェイプ・オブ・ウォーター』
アニメ映画賞
2022年『ギレルモ・デル・トロのピノッキオ』
アリエル賞
監督賞
1992年クロノス
2006年『パンズ・ラビリンス』
脚本賞
1993年『クロノス』
第一回監督作品賞
1993年『クロノス』
英国アカデミー賞
監督賞
2017年『シェイプ・オブ・ウォーター』
非英語作品賞
2006年『パンズ・ラビリンス』
アニメ映画賞
2022年『ギレルモ・デル・トロのピノッキオ』
ゴールデングローブ賞
監督賞
2017年『シェイプ・オブ・ウォーター』
アニメ映画賞
2022年『ギレルモ・デル・トロのピノッキオ』
ゴヤ賞
脚本賞
2006年『パンズ・ラビリンス』
その他の賞
ボストン映画批評家協会賞
外国語映画賞
2006年『パンズ・ラビリンス』
備考
第75回ヴェネツィア国際映画祭 審査委員長(2018年)
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ギレルモ・デル・トロ、またはギジェルモ・デル・トーロ[注 1]スペイン語: Guillermo del Toro1964年10月9日 - )は、メキシコの映画製作者である。2017年の『シェイプ・オブ・ウォーター』で、アカデミー作品賞アカデミー監督賞を受賞した。

来歴[編集]

クロノス』撮影時のデル・トロとロン・パールマン

父・フェデリコ・デル・トロ・トレス、母・グアダルーペ・ゴメスの息子としてメキシコのハリスコ州グアダラハラに生まれる。10代のはじめから映画に興味を持ち、『エクソシスト』の特殊メイクを手がけたディック・スミスに直接手紙を送っている。メキシコ国立自治大学付属映画学校で学んだ後にスミスの元で学び、メキシコに帰国後特殊メイク・造形の会社を立ち上げ10年以上特殊メイクに関わった。29歳の時からは本格的に映画監督にも乗り出す。

マイク・ミニョーラの大ファンであり、『ヘルボーイ』の映画化は彼が長年夢見ていた企画であったが、原作者ミニョーラとともにヘルボーイ役にロン・パールマンの起用を主張したため、ジョン・トラヴォルタなど、より知名度の高いスター俳優を望んでいたスタジオと対立。説得に7年を要し、製作費を大幅に削減されたが、デル・トロは「それでもロン抜きでは考えられなかった」と語っている。本作のヒットにより、製作会社を大手ユニバーサル・スタジオに移し、続編『ヘルボーイ/ゴールデン・アーミー』が製作され、2008年に公開された。また、『ヘルボーイ』準備期間中だった2001年、『ヘルボーイ』映画化へ向けての実験を兼ね、同じくコミック原作のアクション映画である『ブレイド2』の監督を引き受け、マイク・ミニョーラを美術監修に招いてのプラハロケを敢行。前作『ブレイド』を超えるヒットとなった。

パンズ・ラビリンス』北米プレミア上映時のデル・トロとイバナ・バケーロ英語版

2006年のスペインで製作した『パンズ・ラビリンス』が米アカデミー賞外国語映画賞を含む6部門にノミネートされ、技術部門で3冠に輝き、自身も脚本賞にノミネートされた。

2007年、のちに『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』『レヴェナント: 蘇えりし者』で2年連続アカデミー賞監督賞を受賞するアレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ、『ゼロ・グラビティ』で第86回アカデミー賞8部門を受賞するアルフォンソ・キュアロンら2人のメキシコ人映画監督と共にメキシコで製作会社「チャチャチャ(Cha-Cha-Cha)」を設立。

2008年、『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズの前日譚である『ホビット』2部作の監督に就任し、製作総指揮のピーター・ジャクソンらと共に脚本も担当することになったが、相次ぐ資金や権利関係のトラブルなどで製作スケジュールが大幅に遅延したため、2010年に降板が発表された。監督はジャクソンが引き継ぐことになったが、脚本にはデル・トロの名前は変わらずクレジットされている。

2009年には、チャック・ホーガンとの共著で初の小説『ザ・ストレイン』を発表。なお、この小説のオーディオブック版ではロン・パールマンによる朗読を聴くことが出来る。2014年からは同作に基づくドラマシリーズ『ストレイン 沈黙のエクリプス』の製作、製作総指揮、一部のエピソードの脚本並びに監督を務めている。

2017年の『シェイプ・オブ・ウォーター』では監督を務め、第74回ヴェネツィア国際映画祭で最高賞にあたる金獅子賞を受賞。また、第75回ゴールデングローブ賞では監督賞を、第90回アカデミー賞では作品賞監督賞を受賞した。

2021年に結婚した脚本家のキム・モーガンと、『ナイトメア・アリー』で共同脚本家を務めた[1]

人物[編集]

第68回カンヌ国際映画祭でのデル・トロ(右から2人目)

尊敬する人物に押井守を挙げており、『うる星やつら オンリー・ユー』、『天使のたまご』から全映画を観ている。2002年に初来日した際は押井のスタジオプロダクション・アイジーを訪問し作画風景を見学、直接会っている。CGへの転換期にも関わらず一生懸命手書きで作画する姿に影響を受けたと語っている。ジェームズ・キャメロンの勧めで観た押井のアニメ『機動警察パトレイバー』が「パシフィック・リム」に多大な影響を与えたと公言。「ストレイン 沈黙のエクリプス」にも押井守リスペクトがたっぷりあるとし、「彼は素晴らしいフィルムメーカー、私の偉大なるお手本です」と発言している[2][注 2]

押井守側からの会った印象は、押井のエッセイに詳しく載っている。ギレルモからは何度も「アンタの映画はアニメも実写も大好きなんだ。どこがいいかって言うとアニメをやっても実写もやってもメンタリティが変わらないところがいい」と言われた[注 3]

日本の特撮、アニメ、マンガに造詣が深いことで知られる。他の日本の作品では円谷英二ウルトラシリーズ』、九重佑三子の『コメットさん』、永井豪マジンガーZ』、『鉄人28号』、『スカイヤーズ5』、宮崎駿高畑勲スタジオジブリ作品、谷口ジロー遥かな町へ』、『攻殻機動隊』、『マグマ大使』、手塚治虫伊藤潤二大友克洋弐瓶勉韮沢靖などに影響を受けている。影響の一例としては『ブレイド2』の衣装は韮沢からの影響が大きかったと語っている[5][6][7][8]。デビュー作『クロノス』は、コメットさん第75話『わんぱく受験生』が発想の根源である。

デル・トロが公開しているコレクションの一部には他に小泉八雲河鍋暁斎水木しげる菊池秀行天野喜孝士郎正宗浦沢直樹鬼頭莫宏男鹿和雄椋尾篁井上直久今敏森本晃司楳図かずお山咲トオル竹谷隆之寺田克也正子公也若杉公徳岩明均五十嵐大介岩井俊雄山口貴由奥浩哉諸星大二郎などの書籍があることが確認できる[9]

永井豪には2017年のアヌシー国際アニメーション映画祭で初対面し[10]、「(彼は)モーツァルトだ」と評して興奮のあまり、ハグまでしてしまった。その後、持ってきたノートに直筆サインやマジンガーZのラフイラストも描いてもらった。

2000年代には大友克洋の『童夢[11]、浦沢直樹の『MONSTER』を映画化[12]するという計画もあったが実現には至っていない。

生成AI技術に批判的で「私は人間が作った芸術を消費し、愛しています。私は機械やテクノロジーによって作られたイラストレーションには興味がありません。人間の感情や表情をテクノロジーで再現しようというような会話が映画について交わされたとしたら、私は深く傷つき、宮崎駿監督が言うように、『生命に対する侮辱』だと思います」と述べている[13]

フィルモグラフィ[編集]

映画・テレビ[編集]

作品名 クレジット
監督 脚本 製作
1986 Dona Herlinda and Her Son (製作総指揮)
1993 クロノス
Cronos
Yes Yes
1997 ミミック
Mimic
Yes Yes
1998 Un Embrujo Yes
2001 デビルズ・バックボーン
The Devil's Backbone
Yes Yes Yes
2002 Asesino en serio Yes
ブレイド2
Blade II
Yes
2004 タブロイド
Crónicas
Yes
ヘルボーイ
Hellboy
Yes Yes
2006 Hellboy: Sword of Storms Yes
パンズ・ラビリンス
Pan's Labyrinth
Yes Yes Yes
2007 Hellboy: Blood and Iron Yes
永遠のこどもたち
The Orphanage
(製作総指揮)
2008 While She Was Out Yes
ルドandクルシ
Rudo y Cursi
Yes
Cosas insignificantes Yes
ヘルボーイ/ゴールデン・アーミー
Hellboy II: The Golden Army
Yes Yes
2009 スプライス
Splice
(製作総指揮)
2010 BIUTIFUL ビューティフル
Biutiful
(製作助手)
ロスト・アイズ英語版
Julia's Eyes
Yes
2011 カンフー・パンダ2
Kung Fu Panda 2
(製作総指揮)
ダーク・フェアリー
Don't Be Afraid of the Dark
Yes Yes
長ぐつをはいたネコ
Puss in Boots
(製作総指揮)
2012 ガーディアンズ 伝説の勇者たち
Rise of the Guardians
Yes
ホビット 思いがけない冒険
The Hobbit: An Unexpected Journey
Yes
2013 MAMA
Mama
(製作総指揮)
パシフィック・リム
Pacific Rim
Yes Yes Yes
ホビット 竜に奪われた王国
The Hobbit: The Desolation of Smaug
Yes
2014 ホビット 決戦のゆくえ
The Hobbit: The Battle of the Five Armies
Yes
2014–2017 ストレイン 沈黙のエクリプス
The Strain
Yes[注 4] Yes[注 4] Yes
2015 クリムゾン・ピーク
Crimson Peak
Yes Yes Yes
2017 シェイプ・オブ・ウォーター
The Shape of Water
Yes Yes Yes
2018 パシフィック・リム: アップライジング
Pacific Rim: Uprising
Yes
2019 スケアリーストーリーズ 怖い本
Scary Stories to Tell in the Dark
Yes Yes
2020 魔女がいっぱい
The Witches
Yes Yes
2021 アントラーズ
Antlers
Yes
ナイトメア・アリー
Nightmare Alley
Yes Yes Yes
2022- ギレルモ・デル・トロの驚異の部屋
Guillermo del Toro’s Cabinet of Curiosities
Yes Yes Yes
2022 ギレルモ・デル・トロのピノッキオ
Guillermo del Toro's Pinocchio
Yes Yes Yes
TBA 忘れられた巨人
The Buried Giant
Yes
フランケンシュタイン
Frankenstein
Yes Yes

ゲーム[編集]

備考
2019 デス・ストランディング
Death Stranding
デッドマン役(3Dスキャン)

著書[編集]

関連書籍[編集]

  • 『クリムゾン・ピーク アート・オブ・ダークネス』(2016)阿部清美訳、DU BOOKS
  • 『ギレルモ・デル・トロの怪物の館 映画、創作ノート、コレクションの内なる世界』(2017)阿部清美訳、DU BOOKS
  • 『ギレルモ・デル・トロのパンズ・ラビリンス 異色のファンタジー映画の舞台裏』(2018)阿部清美監修 富永晶子訳、DU BOOKS
  • 『ギレルモ・デル・トロのシェイプ・オブ・ウォーター 混沌の時代に贈るおとぎ話』(2018)阿部清美訳、DU BOOKS
  • 『ギジェルモ・デル・トロ(フィルムメーカーズ19)』(2019)大森望 責任編集、宮帯出版社
  • 『ギレルモ・デル・トロのナイトメア・アリー ある「怪物(おとこ)」の悲しき物語とその舞台裏』(2022)阿部清美訳、DU BOOKS
  • 『ギレルモ・デル・トロのピノッキオ おとぎ話の巨匠による新しい人形劇の創作術』(2023)阿部清美訳、DU BOOKS

受賞歴[編集]

年度 部門 作品名 結果 出典
1997 サターン賞 脚本賞 ミミック ノミネート
2006 アカデミー賞 オリジナル脚本賞 パンズ・ラビリンス ノミネート
英国アカデミー賞 非英語作品賞 受賞
オリジナル脚本賞 ノミネート
カンヌ国際映画祭 パルム・ドール ノミネート
第33回サターン賞 監督賞 ノミネート
脚本賞 ノミネート
2007 インディペンデント・スピリット賞 作品賞 ノミネート
2008 第34回サターン賞 ジョージ・パル記念賞 ギレルモ・デル・トロ 受賞
2017 ヴェネチア国際映画祭 金獅子賞 シェイプ・オブ・ウォーター 受賞
ゴールデングローブ賞 監督賞 受賞 [14]
脚本賞 ノミネート
ロサンゼルス映画批評家協会賞 監督賞 受賞 [15]
英国アカデミー賞 監督賞 受賞
作品賞 ノミネート
オリジナル脚本賞 ノミネート
アカデミー賞 監督賞 受賞 [16]
作品賞 受賞
脚本賞 ノミネート
2023 アニー賞 長編映画監督賞 ギレルモ・デル・トロのピノッキオ 受賞
映画部門音楽賞 受賞
英国アカデミー賞 アニメ映画賞 受賞
アカデミー賞 長編アニメ映画賞 受賞

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 「ギジェルモ」は欧米で一般的な人名のウィリアム(英)/ヴィルヘルム(独)/ギョーム(仏)のスペイン語対応形である。
  2. ^ 勧めたジェームズ・キャメロンは劇場版1作目と2作目を高く評価している[3][要ページ番号]
  3. ^ プロダクション・アイジーを2回訪れたことがあり、ロサンゼルスでも1回会ったという[4][要ページ番号]
  4. ^ a b 一部のエピソードのみ。

出典[編集]

  1. ^ https://realsound.jp/movie/2021/11/post-901026.html
  2. ^ ギレルモ監督が押井愛とパトレイバーを語る「J・キャメロン監督に勧められた」”. マイナビニュース (2015年4月28日). 2015年5月3日閲覧。
  3. ^ 『押井守全仕事』(キネマ旬報社)
  4. ^ 『勝つために戦え!監督篇』(押井守、徳間書店)
  5. ^ moviecollectionjp 『ヘルボーイ/ゴールデン・アーミー』ギレルモ・デル・トロ監督 - YouTube, https://www.youtube.com/watch?v=AL8BTmuoHXs 
  6. ^ マイナビニュース【エンタメ・ホビー】 『THE NEXT GENERATION パトレイバー 首都決戦』ギレルモ・デル・トロ監督インタビュー - YouTube, https://www.youtube.com/watch?v=oSuzryqXJik 
  7. ^ バルタン星人と映画『パシフィック・リム』ギレルモ・デル・トロ監督がご対面!”. 円谷ステーション. 2019年3月2日閲覧。
  8. ^ I am Guillermo del Toro, director, writer, producer. AMA. : IAmA”. reddit. 2019年3月2日閲覧。
  9. ^ Guillermo del Toro displays his massive anime and manga collection”. Twitter. 2019年3月2日閲覧。
  10. ^ “「マジンガーZ」特報解禁、ギレルモ・デル・トロが永井豪を「モーツァルト」と絶賛”. 映画ナタリー (株式会社ナターシャ). (2017年6月16日). https://natalie.mu/eiga/news/236916 2017年6月16日閲覧。 
  11. ^ 大友克洋原作『童夢』の映画化、一歩前進?”. allcinema. 2015年11月17日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年11月13日閲覧。
  12. ^ 浦沢直樹「MONSTER」をギレルモ・デル・トロがTVドラマ化!”. 映画.com. 2019年3月2日閲覧。
  13. ^ https://bunshun.jp/articles/-/65285?page=6
  14. ^ 75th Golden Globe Awards Winners & Nominees 2018” (2018年1月7日). 2018年1月11日閲覧。
  15. ^ L.A. Film Critics Association: ‘Call Me By Your Name’ Selected As Best Picture — Winners List”. DEADLINE (2017年12月3日). 2018年1月11日閲覧。
  16. ^ 第92回アカデミー賞 結果速報:第92回アカデミー賞”. シネマトゥデイ. 2020年1月27日閲覧。

外部リンク[編集]