アイシャ

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アイシャはアラビア語の女性名アーイシャ (عَائِشَةُ ʿĀ'ishah / ʿĀ'isha) の発音バリエーション、表記揺れの一つ。非アラビア語圏でも多用されており、各言語での発音に即したアイシェ (Ayşe)、アイシャト (ޢާއިޝަތު Aishath) といったカタカナ表記も用いられている。

ラテン文字表記(英字表記)としてはAishah、AishaのほかAisyaなどが用いられている。

概要[編集]

イスラームを布教した預言者ムハンマドの妻の一人であったアーイシャ・ビント・アブー・バクルの名であることから彼女に対する崇敬から女児につける宗教的な名前として非常によく好まれ、女性イスラーム教徒のポピュラーな女性名の1つとなっている。(ただしシーア派圏では第四代正統カリフ・初代シーア派イマームと対立したことから命名されることが少ない。)

この名前は中東・イスラーム地域の女性名としてよく知られていることから、日本の漫画アニメコンピューターゲーム、あるいは海外の演劇などの登場キャラクター名としてもしばしば使われており、特にアイシャ、アイーシャというカタカナ表記が多い。

なおアラブ世界では元々は男女共用の人名であり、古くはアーイシャという名前を持つ男性も存在した[1]

意味と発音[編集]

アーイシャ (عَائِشَةُ ʿĀ'ishah もしくは ʿĀ'isha) アラビア語の動詞 عَاشَ(ʿāsha, アーシャ[2])の能動分詞 عَائِش(ʿā'ish, アーイシュ, 「生きている」の意、男性名アーイシュ(生きている;良き生を送っている)として用いられる場合もある[3])語尾に女性化機能を持つ文字 ة(ター・マルブータ)を付加した女性形で、意味は「生きている(者、女性)」「長生きする(者、女性)」「安寧な良き生を送る(者、女性)」[4]

文語アラビア語発音では読み上げ方の種類によりアーイシャトゥ、アーイシャ(ʿĀ'ishah に対応)、アーイシャ(ʿĀ'isha に対応)の3通りだが、通常はアーイシャと発音するため標準的カタカナ表記も「アーイシャ」となっている。

また口語アラビア語(方言)だとアイシャ、アーイシェ、アイシェに変わることもある。日本で多用されているアイシャは口語的な長母音短母音化が起こった発音と一致するものとなっている。

非アラビア語圏でアイシャトのように語末に「t」の音が来たり、英字表記でAishahやAishaのように統一されていないのはアラビア語の語末に来る文字 ـةُ が読み方によって「h」音になったり、「t」音になったり、読み飛ばされたりするため。

なお、英語圏などでは原語であるアラビア語アーイシャとは異なる後半部分を伸ばしたアイーシャという発音が行われるなどするため、日本のアラブ系キャラクターネーミングでもアイーシャとなっていることが少なくない。

実在の人物[編集]

演劇・実写の登場人物[編集]

アニメ・漫画の登場人物[編集]

ゲームの登場人物[編集]

脚注[編集]

  1. ^ بئر عائشة” (アラビア語). islamic-content.com. 2023年12月23日閲覧。
  2. ^ ネット記事には「アーシャ(Asha)はアラビア語で"生きる"という名前の女性名」「arshaにはアラビア語で"素敵に生きる"という意味」「アーシャはアラビア語で"希望の光"という意味」との記載が見られるが、いずれも誤りでありそのようなアラブ女性名や動詞は存在しない。動詞 عَاشَ(ʿāsha, アーシャ)自体は男性単数に対応した完了形(過去形)動詞で「彼は生きた(he lived)」ないしは「それは生きた(it lived)」という意味を持つが、本項目のアーイシャ(アイシャ)とは全く別の語であり、女性につける名前ではなく、男性名としても用いられていない。またこれと同様の発音になる عَاشة(ʿĀshah ないしは ʿĀsha、アーシャ)という女性形語形の名詞や人名も存在しない。なお「生きる」という意味の男性名は実在するが完了形(過去形)ではなく未完了形(現在形)のيَعِيش(Yaʿīsh, ヤイーシュ)の語形が用いられる。またアラビア語については翻字Arshaをアーシャと読むことはされず、アルシャと発音されるがそのような語は無く「素敵に生きる」という意味を表すこともしない。
  3. ^ قاموس الأسماء العربية الموسع. دار العلم للملايين. (2007). p. 124 
  4. ^ المعاني - معاني الأسماء : عائشة”. 2023年12月23日閲覧。