Wikipedia:オーバーサイトの方針

一部オーバーサイトされたウィキペディアのロゴ

この文書ではオーバーサイト権限について解説するとともに、オーバーサイトの目的、ウィキペディア日本語版独自のオーバーサイト係の選任プロセスについて規定します。

オーバーサイト(秘匿、Suppressionとも)とは、通常よりも強力な削除方法です。オーバーサイトが行われた記述は通常の方法ではアクセスできなくなり、管理者からさえ閲覧できなくなります。この方法が用いられるのは、ウィキペディア日本語版における誹謗・中傷の除去、プライバシーの保護、重大な著作権侵害の除去など、ごく一部のケースに限られます。

ウィキペディア日本語版では、オーバーサイト権限はコミュニティの信頼を得ているごく少数の利用者にのみ付与されます(以下、この権限を所持する利用者をオーバーサイト係と称す)。また、権限の行使は下に定める基準によって厳格に制限され、ログを通して他のオーバーサイト係によって監視されます。

オーバーサイト係に就くにはWikipedia:管理者への立候補#オーバーサイトへの推薦・立候補における投票で信任される必要があります。加えて、満18歳、かつ、居住地法で成年、かつ、ウィキメディア財団に対し身元証明できなければなりません。詳細は非公開個人データへのアクセス方針(日本語)Access to nonpublic data policy(英語)を参照してください。このポリシーに基づいて提出された個人情報はウィキメディア財団の秘密・非公開情報として扱われます。プライバシー・ポリシーに定める場合を除いて公開されることはありません。

用語の由来[編集]

オーバーサイトという用語はMediaWikiオーバーサイト拡張機能に由来します。オーバーサイト拡張機能は過去に一時的な措置として導入されていた機能で、これによって過去の履歴を記録から消去することができました。2009年にはmw:RevisionDeleteシステムが導入され、オーバーサイト拡張機能の問題であった誤った編集の差分が作成されることと不可逆性が解消され、オーバーサイト拡張機能にはもともとなかった利用者名やログの秘匿も可能になりました。

このような背景から、オーバーサイト拡張機能そのものが使われなくなった現在もmw:RevisionDeleteの機能の一部がオーバーサイトと呼ばれます。

mw:RevisionDeleteのうち管理者が利用出来るのは版指定削除機能に限られます。ウィキペディア日本語版における「オーバーサイト」とは、mw:RevisionDeleteのうち管理者からも利用者名・版・ログを不可視化する権限を指します。

方針[編集]

ウィキメディア財団のオーバーサイトの方針はm:Oversight policyをご覧ください

オーバーサイト権限を行使して不可視化をしても良いのは次の場合です。

  1. 非公開の個人情報の除去 - これには電話番号・住所・職場の情報・本名非公開の人物の本名・自ら本名を公開していない匿名の人物の情報などが含まれます。また、普段はログインして編集している利用者が誤ってログアウトして編集したために表示されてしまったIPアドレスも対象となります。オーバーサイトは、このような情報を除去する手段として使われます。

次のような場合は、状況に応じては版に加えてログのオーバーサイトが必要になる場合もあります。ただし、版指定削除で十分でないかどうか、よく検討してください。

  1. 名誉毀損となる可能性がある記述の除去 - ウィキメディア財団の理事会による助言に基づく場合、または明らかな名誉毀損かつ編集上その記述を残しておく必要が無い場合にオーバーサイトが行われます。
  2. 著作権を侵害している記述の除去 - ウィキメディア財団の助言によるものに限ります。
  3. 露骨で不適切な利用者名を自動的生成リストとログから隠す場合 - 編集履歴が分断しない場合に限ります。「露骨で不適切」なものには、明らかな中傷・脅迫・名誉毀損・侮辱・嫌がらせなどが該当します。
  4. 荒らしの除去 - 荒らしはまず版指定削除で対応するべきです。しかし、管理者権限では十分に対応できない荒らしが行われた場合にはオーバーサイトが使われることがあります。オーバーサイト権限を使って荒らしに対応する場合は、事前にオーバーサイト係のメーリングリストで十分に議論するようにしてください。急を要するケースでは議論を省くことができますが、その場合でも事後にメーリングリストで是非を検討してください。

方針1から3はオーバーサイトの方針が導入された当初からmeta:Oversight policyで定められていました。4番目の方針が導入されたのはRevisionDeleteが導入されオーバーサイトされた版の復帰が可能になった2009年11月です。

5番目の方針はm:Oversight policyを補完するために設けられたウィキペディア英語版・日本語版独自のもので、m:Oversight policyと対立するものではありません。1~4番目の方針に拠らないでやむを得ずオーバーサイト権限を行使する場合は、それがウィキメディア財団の方針全般に照らして妥当なものであるか十分に検討してください。

オーバーサイトが必要な依頼を公開の場で行うことは推奨されていませんのでご注意ください。秘匿記録は、オーバーサイト権限保持者のみに公開され、権限が行使された記録は一般には公開されません。ただし、削除の方針に基づいて削除依頼など公開の場で行われた依頼に対して、オーバーサイトの方針にも合致するとして秘匿を実施した場合に、その旨を依頼ページで宣言することはプライバシーポリシーには違反しないとされています。この場合、依頼ページに秘匿すべき情報が残っていないことは十分に確認してください。

オーバーサイト機能の使用[編集]

出来ること[編集]

オーバーサイト権限を用いて実行出来ることは次のとおりです。

  1. 指定された版を投稿した利用者名、本文、要約の一部または全部を不可視化する
  2. 指定されたログの利用者名、操作内容、要約の一部または全部を不可視化する
  3. 不可視化する内容を管理者から見えないようにするかどうか設定できる
  4. 利用者をブロックし、一覧から見えないようにする
    1. ブロックされた利用者は利用者一覧に表示されません
    2. ブロック一覧からブロック記録を探し出すことが出来なくなります
    3. 統一アカウントの秘匿と組み合わせることで、アカウントの存在を完全に隠すことが出来ます
    4. 管理者がブロックされた利用者の投稿記録にアクセスすれば、ブロックされていることは確認できます
  5. 編集フィルターの記録を見えないようにする
  6. オーバーサイト権限による秘匿記録の閲覧

オーバーサイト権限が行使されても投稿履歴にはプレースホルダが残り、必要であれば記述を復帰できます。

オーバーサイトの記録[編集]

オーバーサイト機能を使って不可視化された版は特別:Log/suppressに記録されます。mw:RevisionDelete は、オーバーサイト係と管理者の両方が使用できます。オーバーサイト係は問題のある版を不可視化するにあたり、オーバーサイト機能を用いて管理者からも不可視化するのか、または管理者には版を閲覧・変更できるよう版指定削除するのか選択することができます。版指定削除した場合の記録は特別:Log/deleteに記録されます。

  1. オーバーサイト係が削除の際に「他の利用者と同様に管理者からもデータを隠す」にチェックボックスを入れると削除の操作は特別:Log/suppressに記録されます。
  2. オーバーサイト係が不可視化の際に「他の利用者と同様に管理者からもデータを隠す」にチェックボックスを入れると特別:Log/suppressに記録されます。
  3. オーバーサイト係が不可視化の際に「他の利用者と同様に管理者からもデータを隠す」にチェックボックスを入れなかった場合、もしくは管理者が版指定削除によって不可視化した場合は特別:Log/deleteに記録されます[1]
  4. 投稿ブロックされたアカウントのうち「利用者名を編集履歴や各種一覧から秘匿する」にチェックボックスが入っているものは特別:Log/suppressに記録され、ブロックされた利用者名は編集履歴や各種記録から自動的に不可視化されます。

記録されるのは、オーバーサイトまたは版指定削除機能を行使した利用者の名前、日時、ページ、コメントです。不可視化された版と、その直前の版との差分も表示されます。

付記[編集]

  1. ^  このような方法が設けられているのは、版指定削除された版は一般利用者からは閲覧できないものの管理者からは閲覧できる状態にあるからです。オーバーサイト機能を使うことにより、一般利用者に加えて管理者からも不可視化することができます。オーバーサイト権限により版が管理者からも閲覧できないようになった場合のみ「オーバーサイト(秘匿)」と呼ばれます。管理者による通常の削除記録は他の管理者が閲覧・取り消しすることができますが、オーバーサイトされた場合は管理者は閲覧できずオーバーサイトのログに記録されます。

権限の取得・剥奪[編集]

取得[編集]

日本語版ウィキペディアにおいてオーバーサイト権限を得るには、次の条件を満たす必要があります。

  • 管理者として広くコミュニティの信頼を得ている
  • プライバシーポリシーを熟知している
  • 満18歳以上、かつ居住国法で成年、財団に対して身元を証明できる
  • 信任投票での賛成者が30人以上、かつ賛成票の割合が75%以上

他の全てのプロジェクト同様に、権限の付与操作はスチュワードが行います。メタウィキ上の許可申請所に信任投票の結果が分かるリンクを添えて依頼します。明確な危機がある場合は信任投票を経ず緊急的にオーバーサイト権限が付与される場合がありますが、その場合もここで依頼します。

剥奪[編集]

権限を濫用した利用者は、解任投票またはウィキメディア財団の判断により権限を剥奪されることがあります。また、オーバーサイト権限を持つアカウントの活動が1年以上無い場合、権限は剥奪されます。

妥当な理由がある場合、スチュワードは解任投票を経ずに係の権限を一時的に剥奪することがあります。このような例外的な措置はしばしばその是非が問われるため、スチュワードは剥奪の根拠が明確であることを事前に確認し、剥奪後は直ちにこの措置が一時的なものであることを表明する必要があります。

苦情・問い合わせ[編集]

オーバーサイト権限の不正使用に関する苦情や問い合わせはWikipedia:コメント依頼で受け付けます。ただしコメント依頼は一般に公開されますので依頼内容の詳細は書かないでください。機微な内容を含む苦情はウィキメディア財団のオンブズ委員会にEメールで送信することができます。

オーバーサイト権限の保持者[編集]

ウィキペディア日本語版におけるオーバーサイト権限の保持者一覧はこのリストから確認できます。また、スチュワードも全てのプロジェクトにおいてオーバーサイト権限を行使することができます。

メーリングリスト[編集]

日本語版のオーバーサイト権限保持者で構成されるメーリングリストがあります。原則として、オーバーサイトに就任すれば参加し、退任すれば退会することになります。新たに就任したオーバーサイトは、メーリングリストで使いたいメールアドレスをメーリングリストのオーナーに伝えてください。

  • 2023年7月現在のオーナー:W.CC

関連項目[編集]

方針

依頼

  • Wikipedia:オーバーサイト依頼 - オーバーサイトによって不可視化されなければならない記述を見つけた場合は、こちらに依頼してください。依頼はEメールによって行われる必要があります。このページでは絶対に行わないでください。詳しくは、このページの説明をご覧ください。

オーバーサイト係

  • m:Requests for permission - 係として信任された利用者は、メタウィキ上のこの許可申請 (RFP) ページで権限の付与を依頼します。
  • m:Special:Log/rights - 係の去就が記録されています。TitleにUser:調べる利用者名@jawikiと入力してください。
  • wmf:Access to nonpublic data policy - 非公開情報へのアクセスに関するウィキメディア財団の方針
  • oversight-ja-wpwikipedia.org - 依頼先のEメールアドレス
  • oversight-wp-ja(メーリングリスト) - 係が登録するメーリングリスト(オーバーサイト係間の議論・情報共有専用依頼はメーリングリストではお受けしていません

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