Z変換
関数解析学において、Z変換(ゼットへんかん、Z-transform)とは、数列に実数体上の関数を対応させる変換である。両側Z変換
と片側Z変換
があり、片側Z変換は数列から定義されるディリクレ級数と同一のものである。片側Z変換でと変数変換し、さらに「」を積分に置き換えたものがラプラス変換となる。このため、Z変換は離散群上でのラプラス変換とも説明される[1]。なお、Z変換という呼び方は、定義式中の遅延要素であるに由来する。
定義
[編集]列xnのZ変換は以下の式で定義される:
ここでnは整数でzは複素数である。なお後述の片側Z変換に対してこれを両側Z変換(two-sided Z-transform、bilateral Z-transform)と呼ばれる。
n<0 でxn=0のような場合は、総和の範囲を 0 〜 ∞ で計算できる:
これを元の定義と区別して片側Z変換(single-sided Z-transform、unilateral Z-transform)と呼ぶこともある。工学の分野などでは因果律を想定するので、こちらの式で定義することがある。
二次元信号(例えば画像)に対する二次元Z変換の定義は類似的である:
収束領域
[編集]なお、Z変換の級数は一般には発散することがある。収束するzの領域(収束領域,Region of Convergence)を以下のように書ける:
厳密にはこの収束領域内においてのX(z)を、xnのZ変換と定義する。
二次元Z変換の収束領域の定義は類似する:
逆Z変換
[編集]Z変換の逆変換である逆Z変換(inverse Z-transform)は次のようになる:
ここでiは虚数単位で積分路CはX(z)の極を全て含むような閉路である。
なおこの式は留数定理を用いて留数の和として計算することができる。しかし、手計算で計算するときは以下の方法がよく使われる:
- X(z)が既に級数展開されている場合、z-kの係数をxkの値とすることで簡単に逆変換ができる。例えば、z+2-3z-1の逆変換は { ..., 0, x-1=1,x0=2,x1=-3, 0, ...} のように係数をならべるだけで得られる。
- X(z)を部分分数分解し、各々の部分分数を変換表を用いて逆変換したものの和として逆変換を得る。
いずれにせよ、定義に示した積分計算そのものを直接計算することは稀である。
性質
[編集]- 線型性
- Z変換は線型性を持ち、したがって特に重ね合わせの原理を用いて計算できる。したがって任意のxn,ynに対して
- が成立する。但し、a,bは定数。逆Z変換も同様に線型性を持つ。したがって、与えられた関数を部分分数分解できるとき、各因子が変換表にあるものに合致すれば、その変換が求められる。
- シフト性
- Z領域微分
- 畳み込み
- フーリエ変換のように畳み込み定理が成り立ち、畳み込みはZ変換によって積となる。
- 初期値定理
- 最終値定理
- 時間領域の乗積
積分路 は と のROCの共同区域にある閉路であり、 は と のROCの共同区域にある閉路である。
- Parseval定理
積分路 は と のROCの共同区域にある閉路であり、 は と のROCの共同区域にある閉路である。
離散時間のLTIシステム
[編集]離散時間のLTIシステムは以下の定数係数の線形差分方程式としてモデル化できる:
一般には、と認める。
方程式の両辺をZ変換すると、
を得られて、
は、伝達関数と呼ばれ、その分母多項式は特性多項式と呼ばれる。
伝達関数を分析すれば、システム特性の解明に役立つ。
他の変換との関係性
[編集]ラプラス変換との関係
[編集]両側Z変換は両側ラプラス変換を離散化したものである。
関数を周期で離散化すると、
である。これを両側ラプラス変換すると、
積分は線形性が成り立つので、
においてになるので、
これを、と見れば、Z変換の定義式と一致する。
離散時間フーリエ変換との関係
[編集]Z変換は離散時間フーリエ変換(DTFT)の拡張である。DTFTはZ変換でz=eiωを代入したものと一致する。
変換表
[編集]主な変換の一覧を示す。ただし、は離散的なデルタ関数、は単位ステップ関数である。
| 元の関数 x(n) | Z変換 X(z) | 収束領域 |
|---|---|---|
| δ(n) | 1 | 複素数全体 |
| u(n) | ||
| anu(n) | ||
| n an u(n) | ||
| an u(-n-1) | ||
| n an u(-n-1) | ||
| cos(ω0n) u(n) | ||
| sin(ω0n) u(n) | ||
| an cos(ω0n) | ||
| an sin(ω0n) |
関連項目
[編集]脚注
[編集]- ↑ Palani, S. (2021-08-26). “The z-Transform Analysis of Discrete Time Signals and Systems”. Signals and Systems. Cham: Springer International Publishing. pp. 921–1055. doi:10.1007/978-3-030-75742-7_9. ISBN 978-3-030-75741-0