Y-20 (航空機)
Y-20(中国語:运-20/運輸-20)は、西安飛機工業公司が開発した大型輸送機である。開発名称は「072プロジェクト(中国語:072工程)」[3]。コードネームは「鯤鵬」。
開発
[編集]Y-20の開発は2010年代には始まっており、2012年12月25日に中国網がY-20の画像が流出したと報じた。公開された画像と情報によると、外観や大きさはウクライナのAn-70(ただしAn-70はターボプロップ機)やロシアのIl-76に似ている[4]。
2013年1月26日、初飛行に成功したと公表された[5]。
2016年7月6日、正式運用を開始すると発表された[6]。
設計
[編集]デザインは下反角のついた高翼配置、大型の単垂直尾翼、高水平尾翼配置の、輸送機としてはオーソドックスなものである。過去にアントノフと中国でAn-70をジェット化したAn-77を共同開発する計画があり[7]、胴体形状がAn-70に似ているのはそのためと思われる。中国網はY-20の性能を「総合性能はアメリカ空軍のC-17の60%のみだ。」としながらも、「Y-20の高い航続能力は、中国の戦略物資輸送能力に質的な飛躍をもたらした。中国人民解放軍空軍(中国空軍)はY-20の持つ高い性能により、より多くの軍事任務をこなすことができる。」としており、Y-20の開発、運用の経験がもたらすものは大きいとしている[8]。
プロトタイプのエンジンはIl-76と同じ、ロシア製のソロヴィヨーフ D-30KP-2(推力12トン)ターボファンエンジンを輸入してパイロン懸吊方式で4基装備している[9]。しかしD-30KPではやや推力不足であり、将来的に換装されるとみられている。候補としては国産のWS-20(推力12トン)とSF-A(推力13トン)が上がっており、2015年10月26日にはY-20の試作5号機に開発中のWS-20が搭載したと公表された[5][10]。しかし、WS-20に関しては出力不足という意見もある[11]。そのほか、ウクライナとのエンジン開発も用意されている[3]。
Y-20は、主翼に超臨界翼を採用し、複合材料の使用比率を高める可能性があるとしている。これにより軽量化を図り、上昇能力を強化し、揚抗比を高め、エンジンの推力と最大離陸重量を変更せずに、搭載量を増やすことが可能としている。ボーイング787のようにコックピットには全曲面ガラスを採用している[12]。
Y-20は貨物室の高さと幅をAn-70並の4メートル、貨物室の容積を320m2まで拡大し、今後輸送することになる大型貨物に対応するとしている[13]。
Y-20は生産・製造コストを抑えるため、いくつかの部品を3Dプリンターにより製造している。3Dプリンターによる大型部品を使用した輸送機はY-20が初めてである[14]。
運用
[編集]2020年4月24日、パキスタンの新型コロナウイルス対策を支援するためにパキスタンへ医療チームと物資を輸送した。Y-20が国外で輸送任務を行った初めての事例となる[15]。
2021年11月28日には、空中給油機型のY-20Uが2機のJ-16戦闘機の護衛を伴い、バシー海峡から台湾本島西側を飛行した[16]。2024年11月22日にも、Y-20Uが4機のJ-16を伴い沖縄本島と宮古島の間を往復し、J-16に空中給油を行っているのを航空自衛隊が確認した[17]。Y-20に空中給油機型が登場したことで、中国空軍は洋上での空中給油能力を得ることになったが、このことは台湾本島中央の高山地帯でレーダーの電波が遮られ大陸から「聖域」だった中華民国の東部を、中国空軍の軍用機が島を迂回して飛来することが可能になると指摘されている[16]。
派生型
[編集]

- Y-20A
- D-30KP-2エンジン搭載の基本型。
- Y-20B
- WS-20エンジン搭載型[18]。
- YY-20 (Y-20U, YU-20, YY-20A)
- 推定90トンの燃料を輸送できる空中給油機型[19]。Il-78に似た役割とされている。空中給油機型として降着装置が再設計されている[19]。従来はY-20UあるいはYU-20[20]として知られていたが、2022年に名称がYY-20であると確認された[21][22]。D-30KP-2エンジンが搭載されていることから、Y-20Aと同様にYY-20Aと表記されることもある[23]。既存のH-6U/DU空中給油機と比べ給油可能量が倍増しており、中国空軍の空中給油能力を飛躍的に向上させたといわれる[19]。
- YY-20B
- YY-20のWS-20エンジン搭載型[19][24]。
- Y-20 AEW
- Y-20Bを基にした早期警戒管制機型[25]。KJ-2000の後継と見られることから、名称が「KJ-3000」になると推測している報道もある[26][27]。KJ-2000などと異なり、大型の回転式レドームを搭載しないと考えられている[28]。2024年後半に飛行中の画像が初公開され、2025年6月時点で飛行試験中とされる[25]。
- Y-20E
- 輸出型。2024年現在、ナイジェリアへ提案されていると報じられている[29]。
諸元
[編集]- 全長:47 m
- 全幅:50 m
- 全高:15 m
- 最大速度:700~918km/h(諸説あり)
- 巡航速度:M0.75(高度不明)
- 最大離陸重量:220t
- 貨物室:奥行20.0m × 幅4.0m × 高さ4.0m
- 最大積載量:66 t
- 最大航続距離:7,500 km
- 上昇限界高度:13,000 m
- 最短離陸滑走距離:600-700m[30]
- エンジン:ソロヴィヨーフ D-30KP-2(12トン)4基 または中国航発 WS-18 / WS-20 4基
71 t / 4,630 km
53 t / 4,200 km
150 t / 3,700 km
※ロシアのウクライナ侵攻による攻撃で焼損し、破壊される。
36 t(2.25G)
(L×W×H)
781 km/h
(高度9,450 m)
830 km/h
(高度8,530 m)
671 km/h
(高度6,700 m)
870 km/h
825 km/h
810 km/h
20 t/7,600 km
30 t/5,700 km
36 t/4,500 km
20 t/6,390 km
30 t/4,540 km
72 t/4,630 km
16.3 t/3,150 km
14 t/5,019 km
23 t/2,722 km
26 t/2,000 km
5.0 t/4,700km
18.0 t/1,000 km
4.5 t/6,000 km
20 t/3,250 km
ギャラリー
[編集]脚注
[編集]- ^ *The International Institute for Strategic Studies (2023). The Military Balance 2023. Routledge. ISBN 978-1-003-40022-6
- ^ 9架运20下线占满厂区!最终将造百架:国产大飞机生产迅猛
- ^ a b 深度:乌克兰帮运20研制成功 俄后悔没多卖中国运输机
- ^ “中国初の国産大型軍用輸送機Y-20 米C-17と20年の技術差”. 中国網. (2012年12月26日) 2012年12月27日閲覧。
- ^ a b 我国自主发展的运—20大型运输机首次试飞取得圆满成功
- ^ 运-20大型运输机正式列装空军部队
- ^ Y-20 / Y-XX - Antonov Participation
- ^ “中国初の国産大型軍用輸送機Y-20 米C-17と20年の技術差”. 中国網. (2012年12月26日) 2017年12月22日閲覧。
- ^ China's Y-20 'enters second phase of testing'
- ^ 鲲鹏翼下生旋风:谈涡扇20版运20的成功首飞
- ^ 中国が開発中のターボファンエンジンは4型式
- ^ “运20运输机用全曲面风挡玻璃 机头阻力减小”. 凤凰网. (2013年3月21日) 2014年7月5日閲覧。
{{cite news}}: CS1メンテナンス: 先頭の0を省略したymd形式の日付 (カテゴリ) - ^ “中国 世界3番目の大型輸送機試験飛行国に”. 中国網. (2012年12月5日) 2013年1月2日閲覧。
{{cite news}}: CS1メンテナンス: 先頭の0を省略したymd形式の日付 (カテゴリ) - ^ 央视首次曝光运20运输机驾驶舱内部珍贵画面
- ^ “运20首次飞出国门的背后 将会常飞巴基斯坦执行任务|巴基斯坦|运-20|新冠肺炎_新浪军事_新浪网”. mil.news.sina.com.cn. 2020年11月1日閲覧。
- ^ a b 石川潤一「F-16VのFOC獲得と台中関係」『航空ファン』通巻830号(2022年2月号) 文林堂 P.68
- ^ “(お知らせ)中国軍機及びロシア軍機の動向について”. 統合幕僚監部. (2024年11月22日) 2025年9月14日閲覧。
- ^ Newdick, Thomas (2020年12月3日). “China's Y-20 Transport Appears To Be Finally Flying With Indigenous Jet Engines”. The Drive. 2022年11月3日閲覧。
- ^ a b c d 関賢太郎「特集 世界の軍用機2025図鑑」『JWINGS』第27巻第3号、イカロス出版、2025年3月、23頁。
- ^ Waldron, Greg (2022年8月2日). “Beijing commissions tanker variant of Y-20 strategic transport”. flight global. 2023年9月25日閲覧。
- ^ Trevithick, Joseph (2022年11月7日). “All The Air Combat Developments Out Of China's Massive Air Show”. The Drive. 2023年9月25日閲覧。
- ^ Arthur, Gordon (2022年8月2日). “PLAAF unveils YY-20 air-to-air tanker aircraft”. Shephard Media. 2023年9月25日閲覧。
- ^ “China expanding YY-20 aerial refueller fleet”. Janes (2023年7月13日). 2023年10月28日閲覧。
- ^ Bradley Perrett (2023年10月4日). “Y-20 Revolutionizes China’s Airlifter And Tanker Capacity”. Aviation Week Network. 2023年12月28日閲覧。
- ^ a b Akhil Kadidal (2025年6月10日). “New imagery of China's KJ-3000 reveals key features”. janes.com. 2025年6月11日閲覧。
- ^ “KJ-3000 AEW&C based on Y-20 to detect stealth fighters”. CHINA-ARMS (2020年2月25日). 2023年12月28日閲覧。
- ^ “KJ-3000はどうなる? CG画像でY-20からの改造を予想”. 中国網 (2018年1月10日). 2023年12月28日閲覧。
- ^ “空警3000將領航中國預警機”. 大公報 (2019年2月18日). 2024年6月29日閲覧。
- ^ Daisuke Sato (2024年1月13日). “China proposes Y-20 transport plane to Nigeria”. Defense Blog. 2024年1月16日閲覧。
- ^ “Y-20が初飛行 最短離陸距離は600メートルのみ”. 中国網. (2014年2月10日) 2014年7月5日閲覧。
{{cite news}}: CS1メンテナンス: 先頭の0を省略したymd形式の日付 (カテゴリ)
関連項目
[編集]外部リンク
[編集]