ウルヴズ・イン・ザ・スローン・ルーム

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ウルヴズ・イン・ザ・スローン・ルーム
Wolves in the Throne Room
ドイツ・グレーフェンハイニッヒェン公演(2018年6月)
基本情報
出身地 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
ワシントン州 オリンピア
ジャンル ブラックメタル[1]
ダーク・アンビエント
ポストメタル
活動期間 2003年 - 現在
レーベル Vendlus Records
サザンロード・レコーズ
Artemisia Records
公式サイト wittr.com
メンバー ネイサン・ウィーヴァー (リードボーカルギター)
アーロン・ウィーヴァー (ドラムスベースシンセサイザー )
コーディー・キーワース (ギター、バッキングボーカル)
旧メンバー ニック・ポール (ギター)
リック・ダーリン (ギター)
ウィル・リンジー (ギター、バッキングボーカル、ベース)

ウルヴズ・イン・ザ・スローン・ルームWolves in the Throne Room)は、アメリカ合衆国出身のブラックメタルバンド。略称「WITTR」。

ポストメタル・グループの一つで、ウィーヴァー兄弟のプロジェクトとして発足。アンビエント・ミュージックを加味した、長尺な楽曲を特徴とする。

略歴[編集]

2002年、バンドのコンセプトを抱えていたネイサンは「Wolves in the Throne Room」と「Black Tea」の2曲を書き上げる。あるインタヴューによれば、この2曲はギフォード・ピンショー国有林で行われた、環境保護団体 Earth First!英語版 の集会に彼が参加した際に書かれたという。

2003年、ウィーヴァ―兄弟はオリンピアの郊外にあるカリオペーという荒れた農場へと拠点を移す[2][3] 。この年からバンドの正式な活動が始まる。同年冬、バンド初のセルフタイトルデモをレコーディング。翌年リリースされる。先述の2曲はこのデモに収録されている。

2005年、2ndデモ『2005 Demo』を発表。全3曲52分、うち一曲は26分弱もあった。

2006年、ワシントンDCに存在するレーベル Vendlus Records から1stアルバム『Diadem Of 12 Stars』をリリース。同年暮れに Southern Lord Records と契約。

2007年、2ndアルバム『Two Hunters』をリリース。Daymare Recordings から国内盤がリリースされ、日本デビュー。ボーナスディスクとしてデモ「2005 Demo」の音源が追加収録されている。JesuとのUSツアーを行う。

2009年、EP Malevolent Grain を発表。3rdアルバム『Black Cascade』をリリース。国内盤は Daymare Recordings からリリースされ、ボーナスディスクとして「Malevolent Grain」が収録された。

2011年、4thアルバム『Celestial Lineage』がリリースされ、各音楽紙で高い評価を受ける。

音楽的影響[編集]

彼らはスカンディナヴィアブラックメタルバンド[2][3]ドゥームメタルダークアンビエントクラストコア民族音楽からの影響を公言している。また、バンドは影響を受けたバンドとして Neurosis を重要なバンドに挙げている[2][4]。何故なら彼らの音楽が「深く、そして強く神話的な次元で作用する」からだという。また、ポポル・ヴーのようなシンセサイザー・アーティストも音楽的影響として挙げている[5]

音楽的特徴と思想[編集]

Wolves in the Throne Room の音楽はエコメタルだとかアストラル・ブラックメタル、カスケイディアン・ブラックメタルなどと形容されることが多い[6][7][8][9]。Wolves in the Throne Room の出現によって、カスケイディア(カスカディア共和国に当たる地域)のブラック・メタルを意味する「カスケイディアン・ブラックメタル」と呼ばれる一派が現れることになった。

彼らはコープスペイントやステージネーム、悪魔的な図像といった伝統的なブラックメタルの要素のほとんどを拒んでいる[2][10]。アーロンはブラックメタルについて「Wolves in the Throne Room はブラックメタルじゃない。いや、もっと正確に言うなら俺たちはブラックメタルを俺たちの言葉で、そして俺たちの論理でプレイしてるのさ」と語っている[11]と同時に「ブラックメタルは根本的なレベルで現代精神を批判する芸術活動なんだと思う。現代の世界観は何かを見落としているんだ、という具合に。」とも述べている[12]。また、ネイサンはブラックメタルについて「ブラックメタルが孕む深い悲哀は、潜在意識の深層領域で私たちが切望する、決して戻ることのできない神話的かつ牧歌的な世界への畏怖に他ならない。」と語っている[13]

バンドは普通ブラックメタルが扱っているようなテーマを超えたところにあるものをテーマにしている点でも有名である。たとえば、急進的な環境保護やバイオダイナミック農法、自然を根拠にした神秘的世界観の創出などである[14][15][16][17]。バンドの歌詞のテーマは黙示録、変化、現代社会が失ってしまった自然界との結びつきに焦点を置いている[18]

ウィーヴァー兄弟はカリオペーという農場で完全な自給自足生活を目指して生活している。ちなみにカリオペーとはギリシャ神話の叙事詩をつかさどる女神のことである。アーロンの妻はここカリオペーで有機野菜の栽培を行っている[1][19]

現代の大部分のメタルバンドとは対照的に、彼らはいつもヴィンテージアンプやそれに準ずるようなレコーディング機器を用いている。あるインタヴューではルーピングやドラムトリガーのような現代的なレコーディング技術を嫌悪しているとも語っている[20]。しかし、エレクトリック・ギターを用いて演奏することの矛盾を認めてもいる。

メンバー[編集]

現ラインナップ[編集]

旧メンバー[編集]

  • ニック・ポール (Nick Paul) - ギター (2003-2004)
  • リック・ダーリン (Rick Dahlin) - ギター (2005-2007)
  • ウィル・リンジー (Will Lindsay) - ギター、バッキングボーカル、ベース (2008-2009)

ディスコグラフィー[編集]

オリジナルアルバム[編集]

ライブアルバム[編集]

  • 2009年 Live at Roadburn 2008
  • 2013年 BBC Session 2011 Anno Domini
  • 2014年 Turning Ever Towards The Sun - Live At Neudegg Alm
  • 2015年 Live at the Bell House 9.12.11

EP[編集]

デモ[編集]

脚注[編集]

  1. ^ a b Official Biography”. wittr.com. 2012年2月29日閲覧。
  2. ^ a b c d Hopper, Jessica (2009) "Back to the land with the Wolves", Chicago Tribune, May 15, 2009, retrieved 2011-12-24
  3. ^ a b Grow, Kory (2005) "Wolves in the Throne Room", CMJ New Music Monthly, Issue 139, p. 15, retrieved 2011-12-24
  4. ^ An Interview with Wolves in the Throne Room's Aaron Weaver”. Brooklyn Vegan. 2012年2月29日閲覧。
  5. ^ WOLVES IN THE THRONE ROOM Album Nears Completion thegauntlet.com. 2011-07-11. Retrieved on 2011-07-11.
  6. ^ Stosuy, Brandon. “Pitchfork reviews”. 2011年9月23日閲覧。 [リンク切れ]
  7. ^ Hopper, Jessica (2009) "Wolves in the Throne Room. It's organic metal", Chicago Tribune, May 15, 2009, p. 13 ('On the Town' section)
  8. ^ Masciandaro, Nicola et al. (2010) Hideous Gnosis, Createspace, ISBN 978-1450572163, p. 109
  9. ^ Brenner, Dave (2011年8月19日). “Earsplit Compound”. 2012年2月29日閲覧。
  10. ^ Ravishing Grimness”. Hails and Horns. 2012年2月29日閲覧。
  11. ^ Black Metal on Their Own Terms”. Ultimate Metal. 2012年2月29日閲覧。
  12. ^ Interview with Wolves in the Throne Room's Aaron Weaver”. Brooklyn Vegan (2009年5月22日). 2011年12月5日閲覧。
  13. ^ 『トゥー・ハンターズ』(Two Hunters国内盤) 付属ライナーノーツ
  14. ^ Anson, Matthew Grant (2011) "Year in Review: The best concerts of 2011", The Copenhagen Post, December 22, 2011, retrieved 2011-12-24
  15. ^ Ratliff, Ben (2009) "THE WEEK AHEAD | MAY 24-MAY 30", The New York Times, May 24, 2009, retrieved 2011-12-24
  16. ^ Christian, Thaddeus (2006) "Volcanoes, Space Pirates... Walk the Plank with Alien Metal Mutants", Portland Mercury, June 1, 2006, retrieved 2011-12-24
  17. ^ Heathen Harvest”. WITTR Interview. 2012年2月29日閲覧。
  18. ^ Stosuy, Brandon (2007年9月26日). “Show no Mercy”. Pitchfork. 2011年12月24日閲覧。
  19. ^ "The Billboard Green 10: And One to Grow On - In Organic Soil of Course", Billboard, April 11, 2009, p. 20, retrieved 2011-12-24
  20. ^ Interview with WITTR 2006”. Nocturnal Cult. 2012年2月29日閲覧。

参考文献[編集]

外部リンク[編集]