Wikipedia:井戸端/subj/北朝鮮の著作権

北朝鮮の著作権について[編集]

初投稿で恐縮です。谷崎と申すものです。本日は、以前からウィキペディアにご質問があった為、この場をお借りしてコメントを投稿させて頂きます。

先日、東京地裁において、北朝鮮の映画の著作権に関する日本での利用につき、行われておりました訴訟の判決が下されました。詳細はこちらの記事(asahi.comより)等をご参照頂けるとお分かりかと思いますが、判決によれば、日本と北朝鮮は国交がなく、日本は北朝鮮を国家として承認していないことが理由で、北朝鮮で制作された著作物への保護義務はないとのことでした。

短期間ではありますが、私も閲覧者として最近になってウィキペディアを覗き始めたネットユーザーの一人であります。見たところによれば、ウィキペディア日本語版は、日本の法律及び日本が加盟している条約に則って運営が行われているのかと、個人的な見解ながらそう感じました。もしそうであれば、北朝鮮で作成されたことが明確なメディアは、このウィキペディア日本語版上でも自由に使用して問題は無いということになるのでしょうか? 例をとって申し上げると、北朝鮮のホームページ上にはこの様な画像が掲載されておりますが、こうした画像・写真等も、日本語版に限定して自由に改変・アップロードし、記事中の利用が可能である、ということなのでしょうか。

一つの判例から判断することは短絡的かと自照しておりますが、著作権に敏感な日本語版ウィキペディアでは、どういった見解がなされるのか、やや気掛かりであった為こうした場をお借りして投稿させて頂きました。返信頂ければ有り難く思います。 谷崎以上のコメントは、谷崎会話投稿記録)さんが[2007年12月16日 (日) 21:55 (UTC)]に投稿したものです(Broad-Skyによる付記)。[返信]

北朝鮮の著作権法で著作者の死後翌年の1月1日から50年間、あるいは団体名義のものは発表後翌年の1月1日から50年間は著作権があります。Wikipedia:削除依頼/画像:Taepodong1.jpgで説明したことがありますが、著作権の対象にならないのものとして著作権法12条、フェアユース規定として32条4項があります。(法令、決定、支持のような国家管理文言と時事報道物、通報資料のようなものは著作権の対象にならない。)(12条)しかも、北朝鮮の著作権法は国家管理に必要な著作物の複製、放送ならびに編集物作成に利用する場合(同32条4項)を除いてはフェアユースを認めていません。日本語版に限定して利用できるかといえば無理でしょう。対応するライセンスもないし。。。--hyolee2/H.L.LEE 2007年12月17日 (月) 02:54 (UTC)[返信]
hyolee2さんの法解釈に関して根本的な勘違いがあるので念のため書いておきます。北朝鮮の著作権法の解釈を展開していますが、今回の事例の場合全く意味がありません。著作権の内容に関してどの法域の法を準拠法とするかは、著作物の利用行為地の法によると解するのが一般的です(詳細は著作権の準拠法の項目を参照)。本件の場合、純粋に日本国内における公衆送信が問題になっているので、著作権の保護期間に関する問題を除いて北朝鮮法の著作権法の解釈を展開する余地はないのです。あくまでも、日本国の著作権法における外国著作物の地位が問題になっているにすぎません。ウィキペディア日本語版の扱いについても、公衆送信権の準拠法には複雑な問題を含んでおり、無難な方針としてサーバ所在地である米国法と受信行為の多数を占める地と考えられる日本法の双方を利用行為地法とする運用をしているため、著作権の内容について北朝鮮法を考慮することは原則として考えられないのです。--Vigilante 2007年12月19日 (水) 14:59 (UTC)[返信]
あくまでも北朝鮮の著作権法について説明したのみです。(ないと思っている方多し。)適用はVigilanteさんの指摘どおりです。--hyolee2/H.L.LEE 2007年12月19日 (水) 15:33 (UTC)[返信]
日本語版ウィキペディアではどう扱われるのかという問題点の提示に対して、北朝鮮法の解釈を展開している以上、北朝鮮法が準拠法になるとの見解に基づき意見を提出したとしか解釈しようがないと思いますが。まあ、それはいいでしょう。ことあるごとに韓国語版ウィキペディアではどうだとか、必要性に乏しい議論を展開している人ですから、単に知っていることを言いたかっただけでしょうから。--Vigilante 2007年12月19日 (水) 21:14 (UTC)[返信]
日本語版ウィキペディアは、日本法と米国法の両方に準拠するという方針の下で運営されています。すなわち、日本法下において北朝鮮における著作物が保護の対象にならないとした場合でも、米国法で保護対象となるのならば日本語版ウィキペディアにおいても保護対象となります。まだ地裁判決であり、原告に控訴する意思があるようですので早まった行動に出るのは危険ですが、仮に北朝鮮の著作物が日本において保護対象にならないとしたとき、米国法においても保護対象とならないのであればパブリックドメインとすることが可能となります。米国法で保護対象となる場合でも、米国著作権法におけるフェアユースが適用可能となるのではないでしょうか。ただ、ZCUさんのコメントに依れば、著作隣接権の問題も絡むので、一律に受け入れる事は難しいように思えます。何にせよ微妙な問題ですので、きちんとした議論と合意の形成は必須で、ウィキメディア財団との相談も必要かもしれません。しかしまぁ、いずれ国交が戻ったときには著作権保護の対象となるのでしょうから、日本語版ウィキペディアとしては北朝鮮の著作物の受け入れは認めないとする合意がなされる可能性も十分にあるかと思います。--Swind 2007年12月17日 (月) 03:52 (UTC)[返信]
あの判決はたかが地裁判決にすぎませんし、判決文をちゃんと読んでいませんので断言を避けますが法令解釈を間違ってるようにも思います。今後覆る可能性が充分にありますので、「北朝鮮の著作権は尊重しなくてよい」と考えたらあとあとめんどくさくなるような気がします。
とゆーか、そもそも著作権の主体について、国交の有無あたりを理由として、排除できるという法理がどうにもよくわからん。あの判決を出した裁判官、頭おかしいんじゃないか。--Nekosuki600 2007年12月17日 (月) 08:55 (UTC)[返信]
(疑問)不勉強で良く分からないことが多いのですが、行政府の見解にそって「朝鮮民主主義人民共和国」という国家はないとして、その上で「朝鮮民主主義人民共和国」法による著作権は日本で保護されないとしても、朝鮮半島北部にも大韓民国の著作権法が施行されていて、朝鮮半島北部で創作・発表された作品には大韓民国法による著作権が認めらるという理屈は成り立たないでしょうか。日本政府外務省のページをみると朝鮮半島北部を大韓民国の領土としていないようで、良く分からなくなってきます。--Mizusumashi 2007年12月17日 (月) 10:05 (UTC)hyolee2/H.L.LEE 2007年12月17日 (月) 13:39 (UTC)(下線部追加)[返信]
日韓基本条約の文言からは、どちらとも解釈できそうな気がしますね。それはそうと、個人的には朝鮮映画輸出入社に民事訴訟法28条に基づいて当事者能力を認めた点が気になりました。当事者能力の有無は本国の権利能力の有無によるとの判断は問題ないとして、日本国内では民法36条に基づく認許がされないはずであり、むしろ民訴法29条で当事者能力を認めるべき事案でしょう。--Vigilante 2007年12月17日 (月) 10:39 (UTC)[返信]
ベルヌ条約--fromm 2007年12月17日 (月) 11:00 (UTC)[返信]
あ、いや、ベルヌ条約があって、北朝鮮も日本も加入していることは分かっています。北朝鮮も日本もベルヌ条約に加入していることを前提に、それでも、北朝鮮の国民が著作者である映画は「著作権法6条3号の「条約により我が国が保護の義務を負う著作物」とはいえない」とする判決が出たので、日本語版ウィキペディアとしてはどうするのかという話題になっているわけです。--Mizusumashi 2007年12月17日 (月) 15:21 (UTC)[返信]
>朝鮮半島北部で創作・発表された作品には大韓民国法による著作権が認めらるという理屈は成り立たないでしょうか。
大韓民国内においては大韓民国著作権法により著作権が認められています。韓国語版には著作権のある北朝鮮の著作物はアップできません。--hyolee2/H.L.LEE 2007年12月17日 (月) 13:39 (UTC)[返信]
訂正のための追記、ありがとうございました。
やはり、大韓民国では、そういうことになっているんですね。--Mizusumashi 2007年12月17日 (月) 15:21 (UTC)[返信]
別の視点から。
日本と北朝鮮が今後も未来永劫、国交を断絶したままになるかどうかは、しょーじきよくわかりません。しばらくは国交樹立ってことはなさそうだけど、何十年というスパンで見たときにないとは断言できないでしょう。リビアみたいな革命的変化だってあり得るんだし。
そのとき、北朝鮮の著作物の権利は、ある日突然、政策的に尊重されるものになるかもしれません(いや、高裁判決とかで覆ってある日突然政策的に尊重されることになる可能性の方が、控えめに見積もって千倍くらいは多いと思うけれども)。もしWikipediaに、北朝鮮の著作物があったら、そのとき改めて権利処理をするのでしょうか。そのとき、ぜんぶばっさり消すことになるのでしょうか。前者は無理でしょう。後者は、その掲載されていた著作物の上に成り立っていた幾多の項目に甚大な悪影響が出ることだろう。
地裁がなんか言ったとして、「そうかそうか北朝鮮の著作物なんか尊重しなくてええんか」とか言ってわれわれが尻馬に乗るのは、とても危険だし愚劣な選択肢だ。地裁は地裁、われわれはわれわれ、うちらWikipedianは「著作権は、尊重しましょう」という線を譲らずに、粛々と編集をしていくべきなんじゃないでしょうか。--Nekosuki600 2007年12月17日 (月) 15:06 (UTC)[返信]
最高裁の判例データベースに判決が掲載されていました。
判決理由の「当裁判所の判断」だけ流し読みしましたが、私が読み取ったポントは:
  • 〔朝鮮民主主義人民共和国の行政機関である朝鮮映画輸出入社は、〕準拠法である北朝鮮の法律によって権利能力を付与されているから、民事訴訟法28条により当事者能力を有する
  • 国家として承認されていない国は、国際法上一定の権利を有することは否定されないものの、承認をしない国家との間においては、国際法上の主体である国家間の権利義務関係は認められない
  • 我が国は、北朝鮮との間でベルヌ条約上の権利義務関係を有するものではなく、北朝鮮に対し、ベルヌ条約3条(1)(a)に基づく義務を負うことはない
  • 〔北朝鮮の国民が著作者である映画は、〕著作権法6条3号の「条約により我が国が保護の義務を負う著作物」とはいえない
というところでしょうか。ただ、
  • 〔条約の〕当該条項が、個々の条約当事国の関係を超え、国際社会全体に対する権利義務に関する事項を規定する普遍的な価値を含むものであれば、あらゆる国際法上の主体にその遵守が要求されることになり、その限りでは、国家承認とは無関係に、その普遍的な価値の保護が求められることになる〔強調:Mizusumashi〕
とした上で、
  • 著作権の保護は、国際社会において、擁護されるべき重要な価値を有しており、我が国も、可能な限り著作権を保護すべきであるということはできるものの、ベルヌ条約の解釈上、国際社会全体において、国家の枠組みを超えた普遍的に尊重される価値を有するものとして位置付けることは困難である
という判断をしている点と、先の民事訴訟法28条で北朝鮮の行政機関に当事者能力を認めている点からは、この判決は、北朝鮮を「国際法上の主体」としては認めていることにはなるだろうと思います。--Mizusumashi 2007年12月17日 (月) 15:21 (UTC)--打消線部撤回:2007年12月17日 (月) 16:07 (UTC)[返信]

日本法上は問題ないのだから(米国法上も問題なければ)積極的に使うべきだ、という意見はないようですが、英語版ではそういうことをイラン国内で発表された著作物について実際に試みた人がいるようです。(この場合は国交ではなく、著作権関連の国際条約への加盟がないことが理由とされている点が違いますが。)

メーリングリスト WikiEN-l で以前報告と議論があり、アーカイブで今でも読めます。[1]盛り上がった話題ではありませんが、慎重よりの意見が多いようです。

米国法ではどうなっているか、初歩的なところだけ調べてみたのですが、著作権局の発行しているサーキュラー No.38Aによると条約上の関係は「不明瞭」(unclear)とされています。人によって意見が分かれるような問題だということでしょうか。

他にまだ出ていない論点としては、日本法・米国法いずれかで著作権が発生した場合に、それまでGFDLで利用可能であったものがその時点以降は突然不可能になるという可能性があるような気がするので、特に文章の利用については控えるのが賢明かと思います。

Tomos 2007年12月27日 (木) 08:43 (UTC)[返信]