UVB-76

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動先: 案内検索

座標: 北緯56度04分58秒 東経37度05分22秒 / 北緯56.08278度 東経37.08944度 / 56.08278; 37.08944 UVB-76ロシア語: УВБ76)とは、周波数4625kHz、または、6998kHzで、ロシア(開始当時はソ連)内の送信所から送信されている短波放送コールサインである[1]。その放送内容より、短波受信家などからは「ザ・ブザー英語: The Buzzer)」という愛称が付けられている[1][2]

この送信所は、ほぼ1日中[注釈 1]、1分間に約21回から34回のペースで、短い単調なブザー音を繰り返し流し続けている[1][4]

電波型式SSBである[1]。また、現在まで何度か(ほとんどの報告が21世紀に入った後のもの)、ブザー音の合間にロシア語による音声メッセージが放送されたことがある[1][5][4]

この放送の目的は公には明らかにされておらず、様々な見解が唱えられている。

通常の放送内容[編集]

送信所から860km(530mi)離れたフィンランド南部で聞こえたUVB-76のブザー音。

この音声や映像がうまく視聴できない場合は、Help:音声・動画の再生をご覧ください。
UVB-76の周波数分布図

ブザー音は遅くとも1973年から放送されている[6]1982年の確認では2秒おきに短い電子音を繰り返し放送しており、1990年初頭ごろに、ブザー音へと切り替わった[6][7]2003年1月16日から音程が高く[要出典]また0.08秒長いブザー音に変更されていた時期があったが、2010年11月に元に戻されている[1]。また、2010年6月までは、正時1分前になると、ブザー音が途切れのない連続音に切り替えられており、この連続音は、ブザー音が再開されるまでの1分間続けられていた[6]。しかし、それ以降は途切れのない連続音は放送されなくなり、一定の周期(2秒おき)に変更されている[6]

ときおり、かすかな雑音や会話音がブザー音の背後に聞こえることがある[8][9]。これは録音放送や再生装置による自動送信によって放送されているのではなく、ブザーを発生させている装置からマイクで音を拾う形で生放送されているためであると考えられている[要出典]

2010年6月5日、切れ目なく放送を続けていたブザー音が突如停止したが、翌日には放送が再開された[9][10]。同年8月中旬ころから放送は断続的に停止されるようになり、8月25日には誰かが放送ブース内にいるかのような足音や物音、ガイガーカウンターのような音が聞こえるようになった[9][11]。9月第一週には音楽が流れてブザー音の放送が中断されるようになり、9月7日には新しいコールサインが放送された[9][12]

音声メッセージ[編集]

極まれにブザー音が中断され、ロシア語による音声メッセージが放送されることがある。このようなことは、UVB-76の歴史の中で2010年9月初頭の時点では数えられるほどしか観測されておらず、またその全てが1990年代後半以降に行われていた。ところが、2010年代以降は比較的頻繁に音声メッセージが放送されるようになっている[13]

1997年の音声メッセージ[編集]

最初の音声メッセージは、1997年12月24日21時58分(日本時間12月25日6時58分)に放送された。ブザー音が突然停止し、短い信号音が流れた後、男性の声がロシア語で次のように述べた[8][14]

≪Ya - UVB-76.
18008.
BROMAL: Boris, Roman, Olga, Mikhail, Anna, Larisa.
742, 799, 14.≫

上のメッセージが逐語的に数回繰り返された後、信号音が繰り返され、ブザー音が再開された。

2002年の音声メッセージ[編集]

2002年9月12日に放送されたメッセージは、音声が極端に歪んでいて明瞭でなく、聴き取りが困難なものであった。以下はこの2度目の音声放送の一部を書き起こしたものである[3][15]

≪UVB-76, UVB-76.
62691 Izafet 3693 8270≫

2006年の音声メッセージ[編集]

2006年2月21日7時57分(日本時間2月21日16時57分)に放送された。この時も強く歪んだ音声であったが、次のようなメッセージが述べられた[3][8][16]

≪75-59-75-59.
39-52-53-58.
5-5-2-5.
Konstantin-1-9-0-9-0-8-9-8-Tatiana-Oksana-Anna-Elena-Pavel-Schuka.
Konstantin 8-4.
9-7-5-5-9-Tatiana.
Anna Larisa Uliyana-9-4-1-4-3-4-8≫[注釈 2]

2010年8月23日の音声メッセージ[編集]

2010年8月23日13時35分(日本時間8月23日22時35分)に放送された[9][18]

≪UVB-76, UVB-76, 93, 882, NAIMINA,
74, 14, 35, 74, 9, 3, 8, 8, 2,
Nikolai, Anna, Ivan, Mikhail, Ivan, Nikolai, Anna,
7, 4, 1, 4, 3, 5, 7, 4≫

2010年8月25日の音声メッセージ[編集]

2010年8月25日16時31分(日本時間8月26日01時31分)に放送された[9][19]

≪38, 77, 38, 527, a, 3, 50, 3707, 55, 73, 3, 8, 5, 2, 7, 
Anna, Konstantin, Konstantin, Roman, Elena, Caplya, Ivan, Yakov,
3, 5, Dnjyaj, Viljanka, 5, 5, 2, 3,
UVB-76, UVB-76, 38, 527, AKKRECIA,
3609, 55, 73, 3, 8, 5, 2, 7, Anna, Konstantin, Konstantin, Roman, Elena, _,
Ivan, Yakov, 3, 5 ,0, 9, 5, 5[人が "yeah!"と言っているような音], 9, 3.≫

2014年3月18日の音声メッセージ[編集]

2014年3月18日17時00分(日本時間3月18日22時00分)に放送された[20]。なお、この際にはロシアによるクリミア・セヴァストポリの編入が発生している。

≪T-E-R-R-A-K-O-T-A. 
Mikhail Dmitri Zhenya Boris. Mikhail Dmitri Zhenya Boris. 
81 26 T-E-R-R-A-K-O-T-A.≫

送信所の所在地[編集]

送信所は、2010年6月5日まではロシア連邦ゼレノグラードソーネチノゴルスクの中間、モスクワの北西40kmに位置するポヴァロヴォ近郊、ヴォイェニ・ゴロドックに所在していた[1][4]。この位置とコールサインは、1997年の最初の音声放送まで明らかになっていなかった[21]。送信にはMolniya-2M (PKM-15)、Molniya-3(PKM-20)送信機と、Viaz-M2バックアップ用送信機を使用しており、アンテナにはソ連製水平ダイポールアンテナ「VGDSh」(高さ約20 m)が使われていた[3]

2010年9月に送信所が移転し、現在はモスクワ州ナロ=フォミンスクに所在する第69通信基地から送信されている[1]。従来のモスクワ軍管区にとどまらない西部軍管区がカバー範囲となったため、移転以降はより頻繁にメッセージが送られるようになっている[13]、と言われている。

目的をめぐる議論[編集]

UVB-76の放送の目的については諸説ある。

乱数放送説[編集]

送信所の位置がロシア連邦軍参謀本部の通信拠点であると噂されていることと、(ごく稀にある)その音声メッセージの性質から、UVB-76は短波に存在する多くの乱数放送と同様に、スパイに対して暗号化されたメッセージを送信する役割を担っていると広く信じられている[22](こうした乱数放送のための通信設備は、各国の軍隊や諜報機関によって利用されていると考えられているが、その性質上目的や存在について公表した国家はない[23])。乱数放送の分析を行う団体であるエニグマ2000のドイツ支部長は、内容はイレギュラーではあるが、UVB-76も乱数放送の一種であるとみている[22]

国内の軍隊への通信説[編集]

UVB-76の(ナロ=フォミンスクへの送信局移転前の)送信用設備スペックが簡易軍事用のものであるとみられることなどを理由として、放送は国外のスパイ等に対するものではなく、モスクワ軍管区の部隊と新兵募集センターに命令を送信するためのものだとする説がある[3][24]

旧ソ連の核ミサイル説[編集]

上記のほか、UVB-76は、アメリカにより核兵器による攻撃が行われた場合に、旧ソ連の核ミサイルをアメリカに向けて発射するためのプログラムであるとする説もある[25]

電離層変化測定説[編集]

近年、この電波の利用目的の一つを示している文献が確認された。RUSSIAN JOURNAL OF EARTH SCIENCES VOL. 10, ES3007,doi:10.2205/2007ES000227, 2008[26] の、段落番号[33]の部分で、搬送波の実例として示されている周波数は、4.625MHz(4625kHz)で、UVB-76のそれに一致する。電離層の不均一性とその変化は、太陽活動の変化や地殻変動を反映しており、定常的な電波が電離層に反射される様の変化を比較することで、電離層の変化を知ることができるという研究である。

注釈[編集]

  1. ^ 協定世界時7:00〜7:50の間は、送信機の保守点検を行っているため、正確には23時間10分である[3]
  2. ^ ボリス」「タチアナ」「コンスタンチン」といった人名は、ロシア語の通話表の中に見ることができる[17]

脚注[編集]

  1. ^ a b c d e f g h The Buzzer” (2014年10月). 2014年10月1日閲覧。
  2. ^ ピーター・サヴォドニック 『Wired Single Stories 006 ENIGMA ロシアから謎の短波が聴こえる』 裏地良子訳、コンデナスト・ジャパン、2011年ASIN B007Z95D42(Kindle版)位置16/216
  3. ^ a b c d e Radio Station UVB 76 "The Buzzer"”. 2002年6月3日時点のオリジナルよりアーカイブ。2017年3月16日閲覧。
  4. ^ a b c サヴォドニック、2011年(Kindle版)位置4/216
  5. ^ Peter Savodnik (2011年9月27日). “Inside the Russian Short Wave Radio Enigma”. Wired. https://www.wired.com/magazine/2011/09/ff_uvb76/ 2011年10月7日閲覧。 
  6. ^ a b c d Morse Stations”. Seventy-fifth edition of the N&O column / Spooks newsletter (2004年8月2日). 2010年8月27日閲覧。
  7. ^ Boender, Ary (1995年). “Numbers & oddities: Column 1”. World Utility News. 2017年3月16日閲覧。
  8. ^ a b c Pre2010”. 2017年3月16日閲覧。
  9. ^ a b c d e f 2010”. 2017年3月16日閲覧。
  10. ^ サヴォドニック、2011年(Kindle版)位置16-22/216
  11. ^ サヴォドニック、2011年(Kindle版)位置22/216
  12. ^ サヴォドニック、2011年(Kindle版)位置28/216
  13. ^ a b The Buzzer”. 2017年3月16日閲覧。
  14. ^ UZB-76/UVB-76 record from 1997. http://www.youtube.com/watch?v=PpJ3-D_srxM 2011年9月21日閲覧。 
  15. ^ 録音サンプル”.[リンク切れ]
  16. ^ 録音サンプル”.[リンク切れ]
  17. ^ Russian Phonetic Alphabet and Numbers”. 2017年3月16日閲覧。
  18. ^ 録音サンプル”. 2017年3月16日閲覧。
  19. ^ 録音サンプル”.[リンク切れ]
  20. ^ 録音サンプル”. 2017年3月16日閲覧。
  21. ^ “El misterioso zumbido de la estación de radio UVB-76”. El Reservado. (2011年1月24日). http://www.elreservado.es/news/view/261-correos-rebotados-internet-comic/895-el-misterioso-zumbido-de-la-estacion-de-radio-uvb-76 2011年1月31日閲覧。 
  22. ^ a b サヴォドニック、2011年(Kindle版)位置88-106/216
  23. ^ Jason Walsh(天野美保・高森郁哉訳) (2004年11月18日). “スパイご用達? 短波「乱数放送局」の謎”. wired. 2017年3月16日閲覧。
  24. ^ サヴォドニック、2011年(Kindle版)位置108/216
  25. ^ サヴォドニック、2011年(Kindle版)位置58/216
  26. ^ http://elpub.wdcb.ru/journals/rjes/v10/2007ES000227/2.shtml

関連項目[編集]

外部リンク[編集]