TIEファイター

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動先: 案内検索

TIEファイター(タイファイター)は、映画『スター・ウォーズ』シリーズに登場する架空の宇宙戦闘機である。TIEは、ツイン・イオン・エンジンTwin Ion Engine)の頭文字をとったものである。銀河帝国の最も標準的な宇宙戦闘機であり、旧三部作で多数登場する。

概要[編集]

一般的にTIEファイターと言う場合、通常は標準型の前線用タイプであるTIE/Lnファイター(LnはLineの略、前線の意)の事を指す。TIEシリーズ共通の球形コクピットと、それを挟む2枚の六角形の大型ソーラーパネルが特徴である[1]

その後のTIEシリーズの原型ともなった本機の特徴は、徹底的な機動性の追求である。常軌を逸した軽量化優先の設計がなされており、偏向シールドはおろか、装甲板脱出装置降着装置、果てはパイロットの生命維持装置すら持たない。その為、真空の宇宙空間を飛行する場合、パイロットは生命維持用に宇宙服も兼ねた専用のフライトスーツを着用する必要があるなど、航空機・宇宙船と言うよりも“武装付き飛行フレーム”といった性格の機体である。その上、視界が極めて劣悪という欠陥(後述)もあり、パイロットにはかなりの精神的負荷を強いるが、彼らはTIEファイター・パイロットを養成する教育課程に於いて「自らの犠牲は銀河帝国の支配力に繋がる」という理念を叩き込まれており、自らの死に対する恐怖を殆ど感じなくなる程迄に訓練されている為[2][3]、通常の任務中において心理的な問題は発生しない。反乱同盟軍はこの様な理念を持つ帝国軍パイロットを、そのストームトルーパーと同形のマスクになぞらえて「バケツ頭」と呼んでいる。[4][5]

機体解説[編集]

基本モジュールとなる1人乗りの球体コクピットに、名前の由来となっている2元のイオン・エンジン並びに、固定武装としてレーザー・キャノンを2門装備している。また左右に突き出たブームの先端には巨大な2枚のソーラー・パネルを持ち、ここで生成したエネルギーをエンジンに供給する事で出力を更に高めている[6]。エンジン出力はとりたてて高くはないが、機体の圧倒的な軽さによって驚異的な加速・旋回性能を誇る。

各部品に突出した性能の物は無く、徹底した軽量化と生産性を最優先にした設計がなされており、帝国の大量生産による量産効果により、機体コストは設計当初よりも更に低くなっている。加えて機体の構成部品そのものが少なく、整備性にも非常に優れている。2門のレーザー・キャノンも航空兵器としては一般的な性能のものだが、シールドを装備した戦闘機を十分に破壊出来る威力は備えており、敵戦闘機の撃墜も数多く記録している。但し、ミレニアム・ファルコンの様な重武装の中型船クラス相手となるとやや威力不足なのは否めず、劇中でも致命傷を与えることは出来ない[7]

オプションでミサイルランチャーを増設することも可能ではあったが、その重量で機体の運動性能を著しく低下させるため、滅多に装備されることはない。機体数をなかなか確保出来ない反乱軍がXウィングに代表される「万能機」になっていったのに対し、機体数で圧倒的優位に立つ帝国軍では、ミサイルやプロトン魚雷による雷爆撃をTIEボマーのような専用機に任せる「分業制」がとられた[8]

防御に関しては、一切の装備を持たない。軽量化からくる旋回性能によって、敵に後ろを取らせない=撃たれない、ことを主眼に置いて設計されている。これによって得た優れた機動性と、よく訓練された帝国軍パイロットの技量、そして常に数の優位に立つことにより、ベテラン揃いの反乱軍パイロットにすら容易には後ろを取らせず、反乱軍に苦戦を強いる。ただし、機体とパイロットを保護するものが何もないため、被弾することは即刻撃墜を意味した。左右のソーラー・パネルはコクピットに対する一種の緩衝材となってはいるが装甲として足るものではなく、Xウィングの強力なレーザー・キャノンが命中すれば一瞬で木っ端微塵となる[9]

脱出装置の類も一切搭載されていない。元より生命維持装置が無く、コクピット内が与圧すらされていない機体である為、パイロットは常に宇宙服でもあるフルフェイスのフライトスーツを着用しており、脱出時にはそのまま搭乗ハッチから脱出するだけである。このシステム上パイロットは残燃料とは別に、通常の宇宙船より遥かに少ないスーツの残酸素量を考慮する必要があるが、元より長距離進攻を想定しない、迎撃専用の局地戦闘機的な性格の強い機体であり、基本的には基地および味方艦船の周辺で戦闘を行っている為、この点は余り問題にはならない[10]。機体が破壊されたとしても、元より宇宙空間に居るのと同じ状態で乗り込んでいる為、フライトスーツさえ無事であれば生命維持は可能である。実際、戦闘中に機外に放り出されたものの、味方に救助されて生還したパイロットは非常に多い。但し、TIEボマーには脱出用の射出座席が装備されており、大気圏内でのパイロット生還率が向上している[11]

降着装置も一切搭載されていない。TIEファイターを搭載する帝国軍の各艦船には、機体の着艦及び格納用のラックが備えられており、帰投した機体は直接ラックに吊り下げられて着艦し、そのまま格納状態となった。着陸脚は無いが、2枚のソーラー・パネルの下部を代わりに接地させて離着陸することが可能で、陸上での運用もなされている。

このように徹底的に無駄を省いた、究極ともいえる合理的な設計の機体であったが、コクピットからの視界が極端に悪いという、明らかな欠点が存在する。TIEシリーズの共通コクピットは前方に大きな円形の風防を備え、前方に限れば上下左右の視界は広いが、その他の開口部は上部のスリットと後部の小さな窓しかなく、左右方向に関してはそもそも窓が無いため、巨大なソーラー・パネルの存在もあり全く視界が無い。本機の後継となるTIEインターセプターでは、大きく前方に伸びたパネルが視界を妨げぬようにパネル前中央部に切り欠きが入れられたが、やはり横には窓がなく、真横は視界ゼロのままだった。巨大なソーラー・パネルは敵から見たときに良い的になるほどに被弾面積も大きく、横方向から撃墜されやすいという欠点にもつながっている。

この視界の悪さと高い機動性は事故を誘発し、戦闘時、非戦闘時を問わず、数多くの接触事故を起こしている。一説には戦闘で撃墜された機体より、事故で喪失した機体の方が多いとまで言われている。常に敵より多い機数が災いし、味方同士の衝突という悲劇も多かった[12]

このように非常にはっきりとした長所と短所を持つTIEファイターであったが、配備当初は紛れも無く高性能な機体であった。初代デス・スターに配備されていた部隊は、選りすぐりのパイロットが多かった点もあり、反乱軍のデス・スター攻撃隊に配備されていた最新鋭機であるXウィングと互角以上の戦いを行う[13]

後の反乱軍戦闘機の高性能化により、TIE/Lnファイターは必ずしも優位ではなくなってきたため、より高性能なTIEインターセプターに置き換えられることになっていたが、帝国政府内の管轄間の縄張り意識によりなかなかはかどらず、本機は長らく一線に留まる[14]

本機のバリエーションとして、ヤヴィンの戦いダース・ベイダーが搭乗したTIEアドバンストx1がある。ソーラーパネルの上下が内側に折れ曲がっており、よりコンパクトに見えるが、標準タイプには搭載されていないシールドとハイパードライブエンジンが装備されているため、基本モジュールは同一ながら機体自体はかなり大型化している。設計には優れたパイロットにしてメカニックマンでもあったヴェイダー自身も携わっている。なお、この機体は次期主力機であるTIEインターセプターの原型となる予定であったが、コストの関係からシールドとハイパードライブの搭載は見送られ、折り曲げられた高効率ソーラーパネルのコンセプトのみが継承されている。また、同じく折れ曲がったソーラーパネルと円筒形の双胴ボディを持つ爆撃機「TIEボマー(双胴のうち1つがコクピット、もう1つが爆弾槽)」も存在し、ホスから逃れてアステロイドに隠れたファルコン号を燻り出す絨毯爆撃に使用される。このTIEボマーは、『ジェダイの帰還』では、戦闘シーンはないが、第2デス・スターのドッキング・ベイに降着している様子が描かれている[15]。更に、折れ曲がったソーラーパネルと円筒形の双胴ボディを持つ輸送機「TIEシャトル(双胴のうち1つがコクピット、もう1つが乗客用のキャビン)」も存在し、劇中では『帝国の逆襲』でニーダ艦長がアベンジャーからエグゼキューターに移乗する際に使用された。

また、『フォースの覚醒』におけるファーストオーダー仕様の機種TIE/fo宇宙特化型戦闘機においては更なる改良が成されており、シールド発生装置が搭載されているほか、スペースおよび気密性が確保されフライトスーツなしでの搭乗が可能となっている。また、TIE/fo宇宙特化型戦闘機の設計から更に発展させた特殊部隊専用の高性能機、TIE/sf宇宙特化型戦闘機も開発されており、こちらはハイパードライブが搭載されているほか、パイロット1名に加えて後方への砲撃を担当する砲手1名を搭乗させる事のできる2人乗りになっている。

ローグ・ワン』には、バリエーションとして、TIEストライカーが登場した。2枚の大型の水平翼を持ち、コクピットは中央部に吊り下げられている。TIEシリーズの中では、「H」字型ではない機体であり、「高翼単葉機」というべきフォルムをしている。

スピンオフ小説やアニメ、ゲームにも、バリエーションが登場している。そのひとつが、ティモシー・ザーン作の『スローン大提督三部作』に登場した、シミター戦略爆撃機(アサルト・ボマー)である。機体は円筒形の単胴で、折れ曲がった翼を持ち、前方にコクピット、後方に爆弾槽を備えている。本機の特徴としては、コクピットが翼より前に出ており、視界が確保されていることと、コクピット自体が脱出カプセルになっていることである[16]

撮影に使用されたプロップにはコクピットのスクリーンが張られていない。まさに「シールドなしの剥き出し」だった[17]

また、TIEボマーは、ILMのスタッフに、二つ並んだチリドッグを連想させたことから「ダブル・チリ・TIE」と呼ばれていた[18][19]

関連記事[編集]

脚注[編集]

  1. ^ 勘違いされやすい点だが、特徴的な2枚の大型パネルはイオンエンジンにエネルギーを供給する「ソーラーパネル」であり、TIEの名称の由来となった2基のイオンエンジンは球形のコクピット後部に2基搭載されている。
  2. ^ ゲーム『Star Wars: TIE Fighter 』内の設定では、帝国の医療技術は大変優れており、撃墜された瀕死のパイロットすらも回復させるほどである。ただしあくまでもこのゲームのみでの設定であり、公式の世界設定においてそこまでの技術があるのか(そしてパイロット一人一人をそこまで大切にするのか)は不明である。
  3. ^ しかし、『エピソード4/新たなる希望』劇中のラストシーンにおいて、後方からファルコン号の奇襲攻撃を受け、パニックに陥ったベイダーの僚機が操縦を誤り、護衛対象のベイダー機に接触して弾き飛ばしてしまい、自らはデス・スターの外壁に墜落するというシーンがある。
  4. ^ ゲーム『スターウォーズ レベルアサルトII』(英語版)より。
  5. ^ ちなみに反乱同盟軍のパイロットにも帝国アカデミー出身の者が多かったため、彼らも「元・バケツ頭」であった。
  6. ^ イオン・エンジンは燃料としてプラズマ性のガスを用いる、スター・ウォーズ世界では一般的な内燃機関であるため、ソーラー翼とはいえ光の無い所で飛べなくなるわけではない。
  7. ^ TIEが搭載しているレーザー・キャノンは、本来ならYT-1300クラスの中型艇を撃破する威力は十分にあるのだが、ファルコン号はハン・ソロによって軍用規格の強力な(そして違法な)装甲板とシールドで武装していた為に有効打を与えることは出来なかった。
  8. ^ 敵の濃密な防御砲火を受ける(つまり、多少の被弾を受ける)ことが前提となる対地・対艦攻撃においては、TIEファイターのようにシールドや装甲を持たない軽戦闘機では明らかに不適であるためで、TIEファイターは軽量高機動の本質を殺すことなく制空権の確保にのみ集中し、雷爆撃では強力なシールドを備えたTIEボマーが威力を発揮する。
  9. ^ 前述したとおり、TIEファイターにはシールドが搭載されていないが、ゲーム『スター・ウォーズ 出撃! ローグ中隊』では非常に弱い、エネルギーの再充填ができないシールドがある、という設定になっている。
  10. ^ 帝国軍の軍事作戦は基本的に艦隊(スター・デストロイヤー)による「殴り込み」であり、敵機が迎撃に出てきた時にのみ、味方艦の護衛の為に戦闘機を発進させるものである。
  11. ^ 扶桑社「スター・ウォーズ完全基礎講座」による。
  12. ^ 前後方向から見た時に「H」状をなす巨大なソーラーパネルは障害物との衝突のしやすさにもつながった。視界の悪さもあいまって、主力戦闘機としては他に類を見ない小さな機体の割に密集編隊は組みづらい機体であったとされ、後継機の翼端のパネルが折り曲げられたのは、少しでもぶつかりにくくするため、とまで言われたほどである。
  13. ^ 反乱軍側は地上攻撃用の部隊であり、空中戦に集中できなかったという事情もあった。ただし、帝国軍の初期判断ミスにより反乱軍と同程度がそれ以下の機数しか出撃させなかった上に、迎撃出動の判断も大きく遅れる。そのため戦闘機隊の善戦にもかかわらず、30機前後の反乱軍にデス・スターを破壊されるという大敗を喫する。
  14. ^ ダース・ベイダー率いる機動艦隊の「死の小艦隊」でさえ、エンドアの戦い時点においてもTIE/LnファイターとTIEインターセプターを混用していた。
  15. ^ ルーカスフィルム公認、秦新二編著「ジョージ・ルーカスの大博物館」文藝春秋。81頁にマット・ペインティングが掲載されている。解説によると寸法は191×84㎝。
  16. ^ デアゴスティーニ「スター・ウォーズファクト・ファイル」による。
  17. ^ ただしこの「窓ガラスなし」は『スター・ウォーズ』旧3部作のほぼ全てのプロップに共通する仕様である。ブルーバック撮影において、窓の部分を反射させずにきちんと「抜く」ために窓ガラスにあたる部品を全て抜いていた。
  18. ^ スティーブン・J・サンスイート著、日本版プロデュース=株式会社イオン、武田英明訳「スター・ウォーズ 偉大なるマーチャンダイジングへの歩み」バンダイ。24頁。
  19. ^ ルーカスフィルム公認、秦新二編著「ジョージ・ルーカスの大博物館」文藝春秋。45頁にストーリー・ボードが掲載されている。「Chili Tie」と記載あり。