サトシ・ナカモト

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サトシ・ナカモトラテン文字表記: Satoshi Nakamoto)は、ビットコインプロトコルと、そのリファレンス実装であるビットコインコア (Bitcoin Core/Bitcoin-Qt) を作ったことで知られる人物の称する氏名。本名であるか、そもそも個人であるかどうかを含め、正体は不明。

2008年、metzdowd.com内の暗号理論に関するメーリングリスト[1]に電子通貨ビットコインに関する論文を発表し始めた[2][3]。2009年にはビットコインのソフトウェアをネット上に発表し、ビットコインの最初の採掘を行い[4]、運用が開始された[5][6]

ナカモトは他の開発者とともにビットコインのソフトウェアのリリースに寄与し続け、それは彼のチームやコミュニティとの接触を次第に控えるようになる2010年半ばまで続いた。この頃、彼は次第にソフトウェアのソースコードリポジトリの管理などをギャヴィン・アンドレセン英語版に任せるようになり、やがてプロジェクト管理までをも引き渡した[7]。また同じ時期、 Bitcoin.orgなどといったいくつかのドメインの管理をビットコインのコミュニティ内のメンバーに引き渡した。

2013年、ナカモトが保有するビットコインの量は約100万BTCだという推測がビットコイン開発者Sergio Demian Lernerによってなされた[8]これは2017年12月時点の相場で約1兆9000億円に相当する額である[要出典]。ただし、実際には、このような大量のビットコインの売却をするとビットコインの価値が低下すると考えられるため、相場通りの資産価値が実質的にあるとは限らない[8]

公式には漢字表記は存在しないが、一部において中本哲史という表記で言及されることがある[9][10][11][12]

正体をめぐる推測[編集]

名前から推測して日本人ともされるが、ナカモトの使う英語は流暢なものであり彼のビットコインに関する論文には日本語が使われていないことから懐疑的な見方もある[4]

彼のビットコインに関する最初のソフトウェアは共同作業によるものと推測されており、このためにサトシ・ナカモトとはあるグループが共有して使っている偽名であるという主張もある[13]

ソースコード中のコメントやフォーラムへの投稿に時おり使用されるイギリス英語の綴りやイディオム(例えば"bloody hard"といった表現)の使い方がナカモト、もしくは少なくともナカモトであると主張するグループの一個人を推測させるヒントになるという見方もされ、その場合、イギリス英語を使う人という意見もある[2][14][13]

スイスのプログラマーでコミュニティにおける活発なメンバーでもあるステファン・トーマスは、ナカモトがビットコインのフォーラムに投稿した時間帯をグラフ化した(その数は500件以上にものぼる)。その結果、グリニッジ標準時で午前5時から11時(日本時間で14時から20時)のあいだ、ほぼ投稿がないことが明らかとなった。土曜日や日曜日でもこのパターンは当てはまっており、つまりこの時間帯はナカモトの睡眠時間なのではないかと推測された[4]。もしナカモトが個人であり普通の睡眠習慣の持ち主であるなら、彼が住んでいるのはUTC−05:00もしくはUTC−06:00の地域と推測される。これは北米の東部標準時中部標準時、中央アメリカの西インド諸島や南米が当てはまる。

ナカモトの正体については様々な説が浮上した。ここでは有名なものを挙げる。

  • 2011年、ジョシュア・デービス英語版は雑誌ザ・ニューヨーカーの記事の中で、ナカモトの正体について多くの可能性から、フィンランドの経済社会学者Vili Lehdonvirtaと、ダブリンのトリニティ・カレッジにて暗号理論を研究したアイルランドの学生Michael Clearに絞り込んだと主張した[15]。両者ともにナカモトではないと強く主張している[16][17]
  • 2011年10月、調査ジャーナリストのアダム・ペネンバーグ英語版はナカモトとはニール・キング、ウラジミール・オクスマン、そしてチャールズ・ブライのことであるとする間接証拠について言及[18]。それには、2008年に彼らが出願した特許の出願書類が含まれていた[19]。ペネンバーグが3人に接触した時、彼らは全員ナカモトであることを否定した[18]
  • 2013年5月、テッド・ネルソンはナカモトが日本の数学者望月新一であるとした[20][21]。後に、ジ・エイジ紙に望月がこれを否定したという記事が掲載された[22]
  • ジェド・マケーレブがナカモトの正体ではないかと言われたことがある[23]。マケーレブはファイル共有サービスOvernet英語版eDonkey2000英語版の創始者であり、ビットコインの取引所マウントゴックス (Mt. Gox) の設立者でもある。かつてはビットコインを強力に支え、後に他のデジタル通貨・リップル (Ripple) を発展させるための会社リップル・ラボを共同設立した[24]
  • テキサスのセキュリティー研究者であるダスティン・D・トランメルはナカモトであると推測されたが、公的に否定している[25]
  • 2013年12月、ニック・サボー英語版は逆テキスト分析で関係があるとされた[26]。サボは非集中的な通貨システムに熱心で、「ビットゴールド」についての論文を出したこともある[27]。これはビットコインの前身と考えられた[21]
  • 2014年3月、ジャーナリストのリア・マグラース・グッドマン英語版は雑誌ニューズウィークの記事において、アメリカ合衆国カリフォルニア州テンプルシティ英語版に住み、出生名がサトシ・ナカモトであった、現在64歳のドリアン・プレンティス・サトシ・ナカモトこそが話題のサトシ・ナカモトであると述べた[28][29][30]。しかし、ドリアン・ナカモトはこれを否定[31]。ニューズウィーク誌は間違って引用したとし[32]、彼がかつて関わっていた国家機密の技術系の仕事について「私はもはや関係ないので議論できない」と語った部分を誤用しているとした。また同日、ナカモトがP2P財団に自身のアカウントで3年ぶりのメッセージを投稿したが、「私はドリアン・ナカモトではない」と述べている[33][34][35]
  • 2016年5月2日に、オーストラリアの起業家クレイグ・スティーブン・ライト英語版が自らがサトシ・ナカモトであると報道機関に対し名乗り出た。その証拠として、本物のサトシ・ナカモトしか知り得ないはずの暗号キーを使って電子署名をしてみせたが、まだ本物とするには疑問も残っていると報じられている[36][37]

出典[編集]

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  1. ^ Satoshi's posts to Cryptography mailing list”. Mail-archive.com. 2014年3月7日閲覧。
  2. ^ a b Nakamoto, Satoshi (2009年5月24日). “Bitcoin: A Peer-to-Peer Electronic Cash System (PDF)”. 2014年3月7日閲覧。
  3. ^ Nakamoto, Satoshi (2010年10月31日). “Bitcoin P2P e-cash paper”. 2014年3月7日閲覧。
  4. ^ a b c Wallace, Benjamin (2011年11月23日). “The Rise and Fall of Bitcoin”. Wired. 2014年3月7日閲覧。 “ナカモトが日本人なのかということさえ疑わしく思える。彼の英語は完璧で、ネイティブスピーカーのように慣用句を使っている。”
  5. ^ Davis, Joshua (2011年10月10日). “The Crypto-Currency: Bitcoin and its mysterious inventor.”. The New Yorker. 2014年3月7日閲覧。
  6. ^ Penenberg, Adam (2011年10月11日). “The Bitcoin Crypto-Currency Mystery Reopened”. Fast Company. 2014年3月7日閲覧。 “A New Yorker writer implies he found Bitcoin's mysterious creator. We think he got the wrong man, and offer far more compelling evidence that points to someone else entirely.”
  7. ^ Bosker, Bianca (2013年4月16日). “Gavin Andresen, Bitcoin Architect: Meet The Man Bringing You Bitcoin (And Getting Paid In It)”. HuffPostTech. 2014年3月7日閲覧。
  8. ^ a b Rob Price (2016年6月14日). “The mysterious creator of bitcoin is sitting on a $700 million fortune”. Business Insider. 2018年6月2日閲覧。
  9. ^ Nick Statt; 朝日インタラクティブ編集部 (2014年3月7日). “「中本哲史」氏、Bitcoinへの関与を否定--AP報道”. CNET News. 2018年6月2日閲覧。
  10. ^ 三淵啓自 (2013年6月14日). “広がる「仮想通貨」経済圏 利用者目線で新たな価値創造へ”. 日経MJ. 日本経済新聞社. 2018年6月2日閲覧。
  11. ^ 森下寛繁 (2013年12月29日). “ビットコイン、ギークが育てた無国籍通貨”. マネー研究所. NIKKEI STYLE. 2018年6月2日閲覧。
  12. ^ 土屋雅一 (2014年5月). “ビットコインと税務 (PDF)”. 税大ジャーナル. 国税庁. 2018年6月2日閲覧。
  13. ^ a b Jeffries, Adrianne (2011年4月10日). “The New Yorker’s Joshua Davis Attempts to Identify Bitcoin Creator Satoshi Nakamoto”. Betabeat. 2014年3月8日閲覧。
  14. ^ Benjamin Wallace (2011年11月23日). “The Rise and Fall of Bitcoin”. Wired. http://www.wired.com/magazine/2011/11/mf_bitcoin/all/ 
  15. ^ Davis, Joshua (2011年11月10日). “The Crypto-Currency”. The New Yorker. 2013年3月7日閲覧。
  16. ^ Clear, Michael (2013年4月4日). “Clarifications on Joshua Davis' Article on Bitcoin in the New Yorker”. 2014年3月7日閲覧。
  17. ^ Who is Satoshi Nakamoto?”. coindesk.com (2013年11月26日). 2014年3月7日閲覧。
  18. ^ a b Penenberg, Adam (2011年10月11日). “The Bitcoin Crypto-currency Mystery Reopened”. The Fast Company. 2014年3月8日閲覧。
  19. ^ Updating and Distributing Encryption Keys US 20100042841 A1
  20. ^ I Think I Know Who Satoshi Is - YouTube
  21. ^ a b “ビットコイン提唱者「サトシ・ナカモト」は誰か? 京大有名教授、米大学教授、欧州の金融機関関係者…”. JCastニュース. http://www.j-cast.com/2013/12/27193222.html?p=all 2014年3月13日閲覧。 
  22. ^ Eileen Ormsby (2013年7月10日). “The outlaw cult”. Theage.com.au. 2014年3月8日閲覧。
  23. ^ Liu, Alec (2013年5月22日). “Who Is Satoshi Nakamoto, the Creator of Bitcoin?”. vice.com. 2014年3月8日閲覧。
  24. ^ McMillan, Robert (2013年9月30日). “Bitcoin Maverick Returns for New Crack at Digital Currency”. Wired. 2014年3月8日閲覧。
  25. ^ I am not Satoshi (blog)”. 2014年3月8日閲覧。
  26. ^ John Biggs (2013年12月5日). “Who is the real Satoshi Nakamoto? One researcher may have found the answer”. TechCrunch. http://techcrunch.com/2013/12/05/who-is-the-real-satoshi-nakamoto-one-researcher-may-have-found-the-answer/ 2014年3月8日閲覧。 
  27. ^ Satoshi Nakamoto is (probably) Nick Szabo” (2013年12月1日). 2014年3月8日閲覧。
  28. ^ リア・マグラース・グッドマン英語版 (2014年3月6日). “The Face Behind Bitcoin”. Newsweek. 2014年3月8日閲覧。
  29. ^ Andy Greenberg (2014年3月6日). “Bitcoin Community Responds To Satoshi Nakamoto's Outing With Disbelief, Anger, Fascination”. Forbes. http://www.forbes.com/sites/andygreenberg/2014/03/06/bitcoin-community-responds-to-satoshi-nakamotos-outing-with-disbelief-anger-fascination/ 2014年3月8日閲覧。 
  30. ^ Oremus, Will (2014年3月6日). “The real Satoshi Nakamoto: Newsweek finds mysterious bitcoin creator in Los Angeles”. Slate.com. http://www.slate.com/blogs/future_tense/2014/03/06/the_real_satoshi_nakamoto_newsweek_finds_mysterious_bitcoin_creator_in_los.html 2014年3月8日閲覧。 
  31. ^ Rodriguez, Salvador (2014年3月6日). “Dorian Satoshi Nakamoto chased by reporters, denies founding Bitcoin”. ロサンゼルス・タイムズ. http://www.latimes.com/business/technology/la-fi-tn-bitcoin-founder-la-chased-20140306,0,3692933.story 2014年3月6日閲覧。 
  32. ^ Ryan Nakashima (2014年3月7日). “Man said to create Bitcoin denies it”. Associated Press. http://hosted.ap.org/dynamic/stories/U/US_BITCOIN_FOUNDER_DENIAL?SITE=AP&SECTION=HOME&TEMPLATE=DEFAULT&CTIME=2014-03-06-19-35-06 
  33. ^ Bitcoin open source implementation of P2P currency” (2014年3月7日). 2014年3月7日閲覧。
  34. ^ 'Real' bitcoin creator: 'I am not Dorian Nakamoto'”. CNBC (2014年3月7日). 2014年3月8日閲覧。
  35. ^ Bitcoin Creator Returns To Internet To Say, 'I Am Not Dorian Nakamoto'”. Forbes (2014年3月6日). 2014年3月8日閲覧。
  36. ^ “豪起業家、仮想通貨「ビットコイン」の発明者と名乗り出る”. AFPBB News (フランス通信社). (2016年5月2日). http://www.afpbb.com/articles/-/3085944 2016年5月2日閲覧。 
  37. ^ “豪起業家ライト氏、ビットコイン考案者と名乗り出る=BBC”. ロイター. (2016年5月2日). http://jp.reuters.com/article/australia-bitcoin-idJPKCN0XT0N4 2016年5月2日閲覧。 

関連項目[編集]