SS-520ロケット

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SS-520宇宙航空研究開発機構(JAXA)傘下の宇宙科学研究所(ISAS)が開発し運用する固体燃料ロケット。基本形の2段式の観測ロケットはJAXA最大の観測ロケットで、派生型の3段式の超小型衛星打上げ機は世界最小のローンチ・ヴィークルとなる。

SS-520
SS-520

観測ロケットとして[ソースを編集]

高度1,000kmに観測機器を打ち上げ、高高度での科学観測を行うことを目的として開発された。S-520ロケットを第1段ロケットとして使用し、それに新規開発された第2段ロケットSS-520B2を加えた2段式で構成される。この第2段はCFRP製でありスピン安定をとり、軽量化と高圧燃焼によって性能が向上されている。追加された第2段は軽量化されているとはいえS-520ロケット頭胴部よりも重量があり、そのために空気力学的マージンが多くとられている。第1段はS-520ロケットと同様に空気力学的に安定を保ち、尾翼によってスピンを発生させる。第2段はそのスピンをスピン安定に用いる。姿勢変更が必要である際にはラムライン姿勢制御装置を別途搭載することになっている。1998年以降2機が打ち上げられている。

機体諸元
  • 全長:9.65m
  • 直径:520mm
  • 全備重量:2.6t
  • 到達高度:1000km
  • ペイロード:140kg

超小型衛星打上げ機として[ソースを編集]

SS-520ロケットは観測ロケットとしてはその能力が大きいことからSS-520改ロケットと仮称されたこともある超小型衛星打上げ機への転用が過去に何パターンか検討されてきた。3段式のうちの上段を追加したタイプが2017年1月に4号機として初飛行した。

3段式[ソースを編集]

本機開発当初の1990年代から、第3段あるいは「第0段」[1]を付加し、衛星軌道に15kg程度の人工衛星打上が可能ではないかとする構想があった[2]。S-520とSS-520からの連想で、宇宙開発ウォッチャー等の間からSSS-520と呼称されてきた。

4号機の実証実験[ソースを編集]

2016年5月、JAXAは文科省・宇宙開発利用部会 調査・安全小委員会で、2/3段継手・第3段・衛星継手などの新規開発と一部改修を行って、SS-520の4号機により超小型衛星の打ち上げを行うことを報告し[3]、2016年6月にこの計画を発表した[4]。フェアリング内に入る3段目を追加し、打ち上げ能力はLEOに4kg以上としている。軽量化のため1/2段間部を短くし、全長が短くなっている。1段目で上昇、2段分離後方向転換、状況判断後に2段点火し、2段と3段目は水平加速を行う。なるべく既存部分に手を加えない設計になっているため、投入できる軌道は近地点が低く実用的でない。超小型衛星(TRICOM-1)のLEOへの投入を予定していた[5]

当初は2017年1月11日打上げ予定であったが[5]、天候の影響で15日に延期となった。8時33分に打上げられたが、発射20秒後にロケットからのテレメトリが途切れ、安全を確保できないことから2段の点火を中止、衛星の軌道投入行わなれず実験に失敗した[6]。 ただし弾道飛行中の機体からタイマーにより衛星が分離、衛星のテレメトリが受信された。[7]

JAXAは2月13日の会見で推定される失敗原因を発表するに至った。それによれば通信途絶までに得られたデータに見られる歪みセンサの異常と通信途絶のタイミングから、電源を喪失した可能性が高いと推定された。実際に飛行中と同じ環境を模した実験でも、機体上部にある飛行中のデータを送信する機器の電源ケーブルの皮膜が熱で溶け、ショートした様子が再現できたという。問題の第2段は既存のものと比べて軽量化のために多数の変更が加えられており、機体に熱や電気を伝えやすいアルミニウムが使われていたほか、ケーブルの皮膜も薄いものが使われていた。その際に個々の変更については問題ないことを確認していたものの、全体としての複合要因の確認が不十分だったと見られている。[8]

その数日後、17日の記者会見で、JAXAの奥村直樹理事長は、時期は未定としながらも、再打ち上げの方向で予算を調整する意向を明らかにした[9][10]。翌4月の定例会見では年度内(2018年3月以前)という打ち上げ時期が示された[11]

空中発射型[ソースを編集]

C-130 ハーキュリーズ輸送機を用いて空中から発射するという計画であり、17kgの人工衛星を打ち上げることが可能であるとしている。この計画はAL-520と呼ばれる。この構想は1991年の第35回宇宙科学技術連合講演会において発表された。

類似する計画として2007年頃から9t級や50t級のロケットを用いた空中発射システムの検討が開始されており[12]経済産業省[13]2009年度から研究に着手すると報道されている[14]

打ち上げ[ソースを編集]

飛翔実績[ソースを編集]

機体番号 打ち上げ日時(JST) 打ち上げ場所 到達高度 実験内容
1号機 1998年2月5日17:30 内之浦 750km 小型衛星打上げ用姿勢制御装置の技術試験、高速中性粒子の観測
2号機 2000年12月4日18:16 ニーオーレスン 1,000km M-Vロケット用ノズル材料改良の為の設計手法検証、磁気圏カスプ領域の観測
4号機 2017年1月15日8:33 内之浦 近地点180km×遠地点1,500km(予定)[5] 第3段を追加しての衛星軌道投入実験、1月11日の打ち上げ予定が天候不良のため延期、2段の点火を中止し衛星の軌道投入行わなかった

飛翔予定[ソースを編集]

3号機
  • 電離大気流出に関する観測。飛翔時期未定[15]
5号機
  • 4号機の同型機。民生品を使った超小型衛星打ち上げ機の開発。2018年3月以前(平成29年度中)に打ち上げ予定[16]。。

脚注[ソースを編集]

  1. ^ 4号機の際の記者とのやりとりによれば、「第0段」を付加した場合はすぐに切離しとなって、近海に落下することになることから、第3段方式が採用されたという。
  2. ^ ISASニュース 1997.11 No.200 特集:第101号からの宇宙研の8年観測ロケット
  3. ^ 宇宙開発利用部会 調査・安全小委員会(第18回) 配付資料
  4. ^ 世界最小!超小型衛星打ち上げロケット、JAXAが突然発表 sorae.jp 2016年6月10日
  5. ^ a b c “SS-520 4号機実験の実施について” (プレスリリース), JAXA, (2016年12月8日), http://www.jaxa.jp/press/2016/12/20161208_ss-520-4_j.html 2016年12月8日閲覧。 
  6. ^ “SS-520 4号機実験結果について” (プレスリリース), JAXA, (2017年1月15日), http://www.jaxa.jp/press/2017/01/20170115_ss-520-4_j.html 2017年1月15日閲覧。 
  7. ^ SS-520ロケット4号機TRICOM-1 打上げ後会見 / SS-520 Rocket F4 After launch press conference
  8. ^ 大貫剛 (2017年2月14日). “小型ロケットSS-520失敗、原因は「徹底した軽量化」”. sorae.jp. http://sorae.jp/030201/2017_02_14_ss-520.html 2017年2月16日閲覧。 
  9. ^ 小型ロケット「SS520」再挑戦へ”. 読売新聞 (YOMIURI ONLINE) (2017年2月18日). 2017年2月18日閲覧。
  10. ^ ミニロケット再打ち上げ、JAXA理事長が意欲”. 日本経済新聞 (2017年2月17日). 2017年2月18日閲覧。
  11. ^ 超小型ロケット、年度内に再挑戦=小型衛星打ち上げ-JAXA”. 時事通信 (2017年4月7日). 2017年4月8日閲覧。
  12. ^ マイクロ衛星打ち上げ用空中発射システムに関する調査報告書 (機械システム振興協会)
  13. ^ 世界最小宇宙ロケット、経産省とJAXAの協力で開発中”. sorae.jp (2016年8月18日). 2016年9月10日閲覧。
  14. ^ ロケットの空中発射、実用研究に着手 経産省が来年度 (朝日新聞 2008.9.13)
  15. ^ 3号機は電離大気流出の観測を目的として2014年ごろから2016年現在も製作等についての公募などが見られるが打上予定等は詳らかではない。SS-520-3号機の計画と期待される成果
  16. ^ ISASニュース 2017年6月号”. 宇宙科学研究所 (2017年6月). 2017年7月28日閲覧。

関連項目[ソースを編集]

外部リンク[ソースを編集]