Ryzen

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AMD Ryzen
AMD ryzen stylized.svg
生産時期 2017年2月から現在まで
販売者 AMD
設計者 AMD
生産者
CPU周波数 2.0 GHz から 4.7 GHz
プロセスルール 14 nm から 7 nm
マイクロアーキテクチャ Zen
命令セット AMD64/x86-64
拡張命令 MMX(+), SSE1, SSE2, SSE3, SSSE3, SSE4a, SSE4.1, SSE4.2, AES, CLMUL, AVX, AVX2, FMA3, CVT16/F16C, ABM, BMI1, BMI2, SHA
コア数
  • 2コア/4スレッド
  • 4コア/4スレッド
  • 4コア/8スレッド
  • 6コア/6スレッド
  • 6コア/12スレッド
  • 8コア/8スレッド
  • 8コア/16スレッド
  • 12コア/24スレッド
  • 16コア/32スレッド
  • 24コア/48スレッド
  • 32コア/64スレッド
  • 64コア/128スレッド
ソケット
コードネーム
  • Summit Ridge
  • Raven Ridge
  • Pinnacle Ridge
  • Picasso
  • Matisse
  • Renoir
前世代プロセッサ AMD FX
テンプレートを表示
AMD Ryzen 5 2600
Zen

Ryzen(ライゼン[1][2])はアドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)が開発したZenアーキテクチャーを採用するAMD64マイクロプロセッサのシリーズに用いられるブランド名である。最初のRyzenは2016年12月13日のAMD New Horizon サミットで公式に発表された[3]。Intel Xeon, Core i, Pentium, Celeronシリーズの対抗製品といえ、製品にもよるが同程度の性能のIntel製よりも安価であることが多い。


製品ラインナップ[編集]

マルチGPU

Zen アーキテクチャー[編集]

デスクトップ向けラインナップ[編集]

Summit Ridge および Whitehaven[編集]

2017年2月22日、AMDはコードネーム "Summit Ridge"(サミットリッジ) Ryzen CPUを公式に発表した[4]。統合GPUは搭載していない。Ryzenの最初の製品は2017年3月2日(日本では日本時間2017年3月3日)に発売された[5][6]

2017年6月29日(アメリカ時間)に法人向けのRyzen PROが発表された。法人向けのサポート(18ヶ月間のプラットフォーム安定性、24ヶ月のプロセッサ提供保証、システム製造元向けの36ヶ月間限定保証など)に加え、通常のRyzenでは無効化しているセキュリティ関連機能を有効にして差異化を図っている[7]

2017年7月13日(アメリカ時間)、コードネーム "Whitehaven" ハイエンド・デスクトップ向けCPUである Ryzen Threadripper 1000シリーズを公式に発表した[8]

  • 対応ソケット - Socket AM4[9]、ただし Threadripper 1000シリーズはSocket TR4
  • 対応メモリ - DDR4-2666×2、DDR4-2400×2、DDR4-2133×4、DDR4-1866×4などの組み合わせ[注 1][9][10]、Non-ECC/ECC対応[注 2][11]
  • GPU - 非搭載
  • 対応マザーボード - AMD 300シリーズ、AMD 400シリーズ
  • 命令セット拡張 - MMX, SSE, SSE2, SSE3, SSSE3, SSE4.1, SSE4.2, AES, CLMUL, AVX, AVX2, FMA, CVT16/F16C, ABM, BMI1, BMI2, SHA.
  • トランジスタ数:48億[12]
  • ダイサイズ:212.97 mm2[13]
  • 「AMD SenseMIテクノロジー」として総称される次の機能をサポートする[9]
    • Pure Power - 軽負荷時のCPU電圧とクロックを調整する。
    • Precision Boost - 負荷がかかっているCPUコアが2個以下の場合にCPU電圧やクロック周波数を増加させる[10]
    • Extended Frequency Range (XFR) - CPU温度に応じて、Precision BoostからさらにCPU電圧とクロック周波数を増加させる。XモデルはPrecision Boostからさらに100 MHz、Xなしモデルは50 MHzまで引き上げられる[14]
    • Neural Net Prediction / Smart Prefetch - ワークフローやキャッシュ管理を最適化する内蔵AI
  • Ryzen PROのみ「AMD GuardMIテクノロジー」として総称される次の機能をサポートする。
    • 内蔵AES 128ビット暗号化エンジン
    • Windows 10エンタープライズ・セキュリティー・サポート
    • fTPM/TPM 2.0機能サポート
  • Ryzen PROを除いたモデルで、オーバークロック対応チップセットと組み合わせてクロック倍率を変更可能[9]
  • 一部のモデルはWraith 標準クーラーのアップグレード版にあたる Wraith Spire、Wraith Stealth、Wraith Max が付属する。オリジナルのWraith Coolerは2016年中頃にリリースされた[15]。Wraith Stealth以外の新しいクーラーはRGB LEDで光る[注 3]。Wraith MaxクーラーはXモデルにオプションで用意される。
ブランド・モデル コア数
(スレッド数)
クロック周波数 (GHz) キャッシュ GPU 同梱クーラー TDP 発売日 価格 出典
ベース ブースト XFR L2 L3 USD JPY
Threadripper 1950X 16 (32) 3.4 4.0 4.20 512 KB
×コア数
32 MB なし なし 180 W 2017年8月10日 $999 128000円[注 4][16] [17][18][19][20]
1920X 12 (24) 3.5 $799 102800円[注 5][16]
1900X 8 (16) 3.8 16 MB 2017年8月31日 $549 75060円
Ryzen 7 1800X 3.6 4.10 95 W 2017年3月2日 $499 59800円 [9][14]
PRO 1700X 3.4 3.8 なし 2017年6月29日 不明 不明
1700X 3.90 2017年3月2日 $399 46800円 [9][14]
PRO 1700 3.0 3.7 なし Wraith Spire 65 W 2017年6月29日 不明 不明
1700 3.75 2017年3月2日 $329 38800円 [9][14]
Ryzen 5 1600X 6 (12) 3.6 4.0 4.10 なし 95 W 2017年4月11日 $249 30800円 [21][22]
PRO 1600 3.2 3.6 なし Wraith Spire 65 W 2017年6月29日 不明 不明
1600 3.70 2017年4月11日 $219 27800円 [21][22]
1500X 4 (8) 3.5 3.7 3.90 2017年4月15日 $189 23800円 [21][22]
PRO 1500 なし 2017年6月29日 不明 不明
1400 3.2 3.4 3.45 8 MB Wraith Stealth 2017年4月15日 $169 21000円 [21][22]
Ryzen 3 1300X 4 (4) 3.5 3.7 3.90 2017年7月27日 $129 16500円 [23][24]
PRO 1300 なし 2017年6月29日 不明 不明
PRO 1200 3.1 3.4 なし
1200 3.45 2017年7月27日 $109 13800円 [23][24]
Raven Ridge[編集]

Zenベースのコードネーム "Raven Ridge" (レイヴンリッジ) APUは2018年2月12日に発表された。Summit Ridgeと異なり、Radeon GPUを統合している。[25]モデル名は2000番台で、発売時期もZen+アーキテクチャのPinnacle Ridgeの直前であり、Ryzen 2000シリーズとして紹介される場合が多いが、CPUのアーキテクチャ自体は一世代古い。

  • 対応ソケット - Socket AM4
  • 対応メモリ - DDR4-2933(最大)
  • GPU - Radeon Vega
  • 対応マザーボード - AMD 300シリーズ、AMD 400シリーズ
ブランド・モデル コア数
(スレッド数)
クロック周波数 (GHz) キャッシュ GPU 同梱クーラー TDP 発売日 価格 出典
ベース ブースト L2 L3 CU数 SP数 周波数 USD JPY
Ryzen 5 2400G 4 (8) 3.6 3.9 512 KB
×コア数
4 MB 11 704 1250 MHz Wraith Stealth 65 W 2018年2月13日[26] $169 19800円 [27]
Ryzen 3 2200G 4 (4) 3.5 3.7 8 512 1150 MHz $99 12800円

モバイル向けラインナップ[編集]

Raven Ridge[編集]

Zenベースのコードネーム "Raven Ridge"(レイヴンリッジ)のモバイル版「Ryzen Mobile APU」はデスクトップ版より早く2017年10月26日に発表された。これもSummit Ridgeと異なり、Radeon GPUを統合している。[28] また、法人向けモデルのRyzen PRO Mobileも2018年第二四半期に投入された。

  • 対応ソケット - Socket FP5
  • 対応メモリ - DDR4-2400(最大)
  • GPU - Radeon Vega
ブランド・モデル コア数
(スレッド数)
クロック周波数 (GHz) キャッシュ GPU TDP cTDP 発売日 価格 出典
ベース ブースト L2 L3 CU数 SP数 周波数 USD JPY
Ryzen 7 2700U 4 (8) 2.2 3.8 512 KB
×コア数
4 MB 10 640 1300 MHz 15 W 12 - 25 W 2017年10月26日 不明 不明 [29]
PRO 2700U 不明 不明 不明
Ryzen 5 2500U 2.0 3.6 8 512 1100 MHz 2017年10月26日 不明 不明
PRO 2500U 不明 不明 不明
Ryzen 3 2300U 4 (4) 3.4 6 384 2018年1月8日 不明 不明
PRO 2300U 不明 不明 不明
2200U 2 (4) 2.5 3 192 2018年1月8日 不明 不明

Zen+ アーキテクチャー[編集]

デスクトップ向けラインナップ[編集]

Pinnacle Ridge および Colfax[編集]

"Pinnacle Ridge"(ピナクルリッジ)は、北米東部時間2018年4月19日9:00に発表されたSummit Ridgeの後継CPU。

下位クラスはGPU搭載のRaven Ridgeが代替する格好となったため、Summit RidgeではあったRyzen 3等の下位クラスは一般販売では用意されない。

先代からの主な変更点は、プロセスルールを12nmに変更し最大動作クロック・動作電圧低減等の性能向上を果たした事と、GPU搭載版に先行して採用されていた自動オーバークロック機能"Precision Boost 2"と対応メモリのDDR4-2933サポートが挙げられ、Precision Boost 2等による性能向上により最上位クラスのTDPがこれまでの95 Wから105 Wに上昇している。なお、Pinnacle Ridgeと同時に投入されたSocket AM4チップセットであるX470の他、従来の300シリーズチップセットもメーカーがBIOSアップデートを提供すれば対応可能であり、実際に自作PC市場向けとして発売されたマザーボードは全てのメーカー・機種で対応している。

2018年8月6日、コードネーム "Colfax" ハイエンド・デスクトップ向けCPUである Ryzen Threadripper 2000シリーズを公式に発表した[30]

2020年5月ごろ、Ryzen 5 1600AFが日本市場にて発売された(米では2019年10月中旬より発売開始)。モデル名は旧世代の1000番台ではあるが、コアは12nmのZen+であり、わずかに低いクロックを除けばRyzen 5 2600とほぼ同等のスペックとなる。正式なモデル名はRyzen 5 1600のママであり、パッケージのシール及びCPUの刻印に記載されたOPNの末尾が従来の"AE"から"AF"に変更されているため便宜的に1600AFと呼ばれる。

  • 対応ソケット - Socket AM4、ただし Threadripper 2000シリーズはSocket TR4
  • 対応メモリ - DDR4-2933(最大)
  • GPU - 非搭載
  • 対応マザーボード - AMD 300シリーズ[注 6]、AMD 400シリーズ、AMD 500シリーズ
ブランド・モデル コア数
(スレッド数)
クロック周波数 (GHz) キャッシュ GPU 同梱クーラー TDP 発売日 価格 出典
ベース ブースト L2 L3 USD JPY
Ryzen Threadripper 2990WX 32 (64) 3.0 4.2 512 KB
×コア数
64 MB なし なし 250 W 2018年8月13日 $1799 214800円 [31]
2970WX 24 (48) 2018年10月30日 $1299 159800円 [32]
2950X 16 (32) 3.5 4.4 32 MB 180 W 2018年9月1日 $899 107800円 [33]
2920X 12 (24) 4.3 2018年10月30日 $649 79800円 [32]
Ryzen 7 PRO 2700X 8 (16) 3.6 4.1 16 MB 105 W 2018年9月6日 不明 不明 [34]
2700X 3.7 4.3 Wraith Prism 2018年4月19日 $329 37980円 [35]
PRO 2700 3.2 4.1 なし 95 W 2018年9月6日 不明 不明 [34]
2700 Wraith Spire With RGB LED 65 W 2018年4月19日 $299 35980円 [35]
Ryzen 5 2600X 6 (12) 3.6 4.2 Wraith Spire 95 W $229 25980円 [35]
PRO 2600 3.4 3.9 なし 65 W 2018年9月6日 不明 不明 [34]
2600 Wraith Stealth 2018年4月19日 $199 22980円 [35]
1600AF 3.2 3.6 2020年5月16日 $85 9980円 [36]
2500X 4 (8) 3.6 4.0 8 MB なし 2018年9月11日 不明 不明 [37]
Ryzen 3 2300X 4 (4) 3.5 [37]
Picasso[編集]

"Picasso"(ピカソ)[38]は、AMD Next Horizon Gaming E3 2019にて、現地時間2019年6月10日(日本時間 2019年6月11日)に発表されたRaven Ridgeの後継APU。Zen+をベースに12nmプロセスルールで製造されている。GPUはVega Graphicsを内蔵している。[39]Raven Ridgeと同じく、モデル名と発売時期からRyzen 3000シリーズとして紹介されているが、CPUアーキテクチャはZen+世代のため1世代古い。

  • 対応ソケット - Socket AM4
  • 対応メモリ - DDR4-2933(最大)
  • GPU - Radeon Vega
  • 対応マザーボード - AMD 300シリーズ[注 6]、AMD 400シリーズ[注 6]、AMD 500シリーズ
ブランド・モデル コア数
(スレッド数)
クロック周波数 (GHz) キャッシュ GPU 同梱クーラー TDP cTDP 発売日 価格 出典
ベース ブースト L2 L3 CU数 SP数 周波数 USD JPY
Ryzen 5 3400G 4 (8) 3.7 4.2 512 KB
×コア数
4 MB 11 704 1400 MHz Wraith Spire 65 W 45 - 65 W 2019年7月7日 $149 18800円 [40][41][42]
Ryzen 3 3200G 4 (4) 3.6 4.0 8 512 1250 MHz Wraith Stealth $99 11800円 [43][41][42]

モバイル向けラインナップ[編集]

Picasso[編集]

Zen+ベースのコードネーム "Picasso"(ピカソ)のモバイル版「Ryzen Mobile APU」はデスクトップ版より早く2019年1月7日に発表された。これもPinnacle Ridgeと異なり、Radeon GPUを統合している[44]。第2世代からゲーミングノートPC向けにTDP 35 W版の「Ryzen 7 3750H/Ryzen 5 3550H」が追加された。2019年10月に発表された、Microsoft Surface Laptop 3 15インチの一般モデルにカスタマイズ版第2世代Ryzen Mobile APUプロセッサーが搭載されている[45]

また、法人向けモデルのRyzen PRO 3000シリーズも2019年4月に発表された[46]

  • 対応ソケット - Socket FP5
  • 対応メモリ - DDR4-2400(最大)、Surface Edition(Ryzen 7 3780U / Ryzen 5 3580U)のみDDR4-3733
  • プロセスルール - 14nm(Ryzen 3 3200Uのみ)または12nm
  • GPU - Radeon Vega
ブランド・モデル コア数
(スレッド数)
クロック周波数 (GHz) キャッシュ GPU TDP cTDP 発売日 価格 出典
ベース ブースト L2 L3 CU数 SP数 周波数 USD JPY
Ryzen 7 3780U 4 (8) 2.3 4.0 512 KB
×コア数
4 MB 11 704 1400 MHz 15 W 12 - 35 W 2019年10月 不明 不明 [45][47]
3750H 10 640 35 W 2019年1月7日 不明 不明 [44][46]
3700U 15 W 不明 不明
PRO 3700U 2019年4月8日 不明 不明
Ryzen 5 3580U 2.1 3.7 9 576 1300 MHz 2019年10月 不明 不明 [45][48]
3550H 8 512 1200 MHz 35 W 2019年1月7日 不明 不明 [44][46]
3500U 15 W 不明 不明
PRO 3500U 2019年4月8日 不明 不明
Ryzen 3 3300U 4 (4) 3.5 6 384 2019年1月7日 不明 不明
PRO 3300U 2019年4月8日 不明 不明
3250U 2 (4) 2.6 3 192 2020年1月7日 不明 不明 [49]
3200U 不明 不明 [44][46]

Zen2 アーキテクチャー[編集]

デスクトップ向けラインナップ[編集]

Matisse および Castle Peak[編集]
AMD Ryzen 7 3700Xの、表面(上)と裏面(下)

"Matisse"(マティス)は、COMPUTEX TAIPEI 2019開幕前日の2019年5月26日にComputex 2019 Keynoteにて、2019年7月7日出荷開始をAMDのCEOリサ・スー英語: Lisa Su氏により発表された[50]Pinnacle Ridgeの後継CPU。

Pinnacle Ridgeからの最大の変更点は、CPUとI/Oの2種類のChipletを組み合わせる設計になったことである。CPU Chiplet「CCD(CPU Complex Die)」は最大8コア16スレッドのプロセッサを搭載しTSMC 7nm FinFETで製造されており[51]、最大2つのCCDがパッケージングされる[52]。プロセッサはクロック周波数の向上に加え、L3キャッシュを2倍以上に増量し、浮動小数点の実行パイプラインを2倍に増やすなどしてIPC(1クロックあたりの実行可能な命令数)を改善することで、AMDはシングルスレッドで15%の性能向上を果たしたと発表している[50]。I/O Chiplet「cIOD(Client I/O Die)」はDDR4-3200をサポートしたメモリコントローラ[51]、PCI Express4.0コントローラなどが集積されGLOBAL FOUNDRIESの12nmプロセスルールで製造されている[53][54][55][56][57]。これによって世界初のPCI Express4.0対応プロセッサになった[58]

新たなブランドとしてRyzen 9シリーズが新設され、Ryzen Threadripperや競合のIntel Core Xなどソケット及びチップセットの変わるハイエンドデスクトップ(HEDT)向けではないメインストリーム向けデスクトップCPUでは初めてとなる12コア24スレッドを搭載するRyzen 9 3900Xが2019年7月7日に、[50][59]。さらに2019年6月に開催されたAMD Next Horizon Gaming E3 2019では上位モデルとなる16コア32スレッドのRyzen 9 3950Xが発表された。このうち3950Xは9月に発売予定であったが[60]、11月に発売延期された[61]

対応マザーボードは、Matisseと同時投入のSocket AM4対応 X570搭載マザーボードの他、従来のSocket AM4対応マザーボードでもメーカーからのBIOSアップデートが提供されれば対応可能であるが、A320搭載マザーボードは対応しない[58]。また、2020年5月現在も未対応、あるいはβ版のみの提供となっているマザーボードも存在するため、よく確認する必要がある。マザーボード単体でBIOS更新できる機能が有るマザーボードを除き、更新には従来のBIOSに対応した旧世代のCPUが必要になる。対応CPUがない場合は、BIOS更新を小売店で有償[62]や無償[63]サービスを行ってる場合や、Raven Ridge発売時には、対応BIOS書き換え済のマザーボードを販売しているショップ[64]もあったため、Matisse対応マザーボードかどうかは店舗に問い合わせをしたほうが良い。

2019年11月7日(アメリカ時間)、コードネーム "Castle Peak" ハイエンド・デスクトップ向けCPUである Ryzen Threadripper 3000シリーズを公式に発表した[65]。CPUダイ毎に独立したメモリーコントローラーを搭載するという仕様からダイを跨いだメモリーへのアクセスの際に速度とレイテンシにハンデを抱えていた第2世代ThreadripperのWXシリーズと比べ、メモリーコントローラーが独立したチップになった事ですべてのダイから均等にアクセスできるようになり処理速度が改善された。プラットフォームとしてはチップセットとCPUとの接続がPCI Express 3.0の4レーンからPCI Express 4.0 x8レーンと強化されたため4倍の速度となった。一方でメインストリーム向けと異なりソケットが変更になったため前世代までのマザーボードとの互換性は無い。前述の通りメインストリーム向けのデスクトップCPUに新設されたRyzen 9が12コア及び16コアを搭載しているため、第2世代WXシリーズに相当する24コア以上の製品しか存在しない。[注 7]

2020年4月21日(アメリカ時間)、下位モデルであるRyzen 3シリーズが発表された[66]。前世代ではAPUがその役割を担うとして登場しなかったため、約3年ぶりの復活となる。

2020年6月16日(アメリカ時間)、クロックを向上させた3000XTシリーズが発表された[67]。ブースト時のクロックを除きCPU本体のスペックに差はないものの、3600XTを除きクーラーが同梱されていない。米国では7月7日より販売され、国内での販売は7月18日開始の予定だったが[68]、7月23日に変更された[69]

2020年7月14日(アメリカ時間)、Threadripper初の法人向けCPUである Ryzen Threadripper PROシリーズを発表した[70]。既存のRyzen Threadripper 3000シリーズをベースに、企業向けの「AMD PRO」技術を搭載しており、メモリはECC UDIMMに加えてRDIMMとLRDIMMをサポートし、容量の上限は2TBまでとなっている。

  • 対応ソケット - Socket AM4。Threadripper 3000シリーズはSocket sTRX4
  • 対応メモリ - DDR4-3200[51]
  • GPU - 非搭載
  • 対応マザーボード - AMD 300シリーズ[注 6][注 8]、AMD 400シリーズ[注 6]、AMD 500シリーズ。Threadripper 3000シリーズはTRX40シリーズのみ。
  • トランジスタ数
    • CCD:約39億[71]
    • cIOD:約20億9000万[71]
  • ダイサイズ
ブランド・モデル コア数
(スレッド数)
クロック周波数 (GHz) キャッシュ GPU 同梱クーラー TDP 発売日 価格 出典
ベース ブースト L2 L3 USD JPY
Ryzen Threadripper 3990X 64 (128) 2.9 4.3 512 KB
×コア数
256 MB なし なし 280 W 2020年2月7日 $3990 449800円 [72][73]
3970X 32 (64) 3.7 4.5 128 MB 2019年11月25日 $1999 233800円 [74]
3960X 24 (48) 3.8 $1399 164800円 [75]
Ryzen 9 3950X 16 (32) 3.5 4.7 64 MB 105 W $749 89800円 [76][60]
3900XT 12 (24) 3.8 2020年7月23日 $499 59800円 [77]
3900X 4.6 Wraith Prism 2019年7月7日 $499 59800円 [51][50][42]
Ryzen 7 3800XT 8 (16) 3.9 4.7 32 MB なし 2020年7月23日 $399 46800円 [77]
3800X 4.5 Wraith Prism 2019年7月12日 $399 46980円 [51][50][42][78]
3700X 3.6 4.4 65 W 2019年7月7日 $329 39800円 [51][50][42]
Ryzen 5 3600XT 6 (12) 3.8 4.5 Wraith Spire 95 W 2020年7月23日 $249 29200円 [77]
3600X 4.4 2019年7月7日 $249 29800円 [51][50][42]
3600 3.6 4.2 Wraith Stealth 65 W $199 23980円 [51][50][42]
3500X 6 (6) 4.1 Wraith Spire 2019年9月24日[注 9] N/A N/A [79]
3500 16 MB Wraith Stealth 2020年2月22日 N/A 14680円 [80]
Ryzen 3 3300X 4 (8) 3.8 4.3 65 W 2020年5月21日 $122 13980円 [81][82]
3100 3.6 3.9 $99 8980円
Renoir[編集]

"Renoir"(ルノワール)[83]は、日本時間2020年7月21日22:00に発表されたPicassoの後継APU。Zen 2をベースに7nmプロセスルールで製造されており、GPUはPicassoと同様にVegaアーキテクチャのRadeon Graphicsを内蔵している[84]。CU数が減ったものの、下位モデルを除きクロックが大幅に向上しており結果的にグラフィック性能が向上している。Mattiseで特徴的であったチップレット構成は採用されておらず、先行して投入されたモバイル向けのRenoirと同じくモノリシックダイである。そのためMattiseの同一コア数の製品と比較するとL3キャッシュが減少している。 OEM向けの出荷が中心で単品販売は想定されていないが、国内ではPROシリーズのみバルク品として販売されることになった[85]。モデル名はRyzen 4000シリーズとして紹介されることがあるが、CPUアーキテクチャはZen 2世代のため1世代古い。Mattiseとは異なりPCI ExpressはGen3までの対応となっているが、これまでのAPUの8レーンから16+4レーンに拡張されており、グラフィックカードやNVMe SSDをレーン数の制限無く追加可能。

対応マザーボードは公式には500シリーズチップセット搭載のマザーボードのみ。300及び400シリーズはBIOSのアップデートが提供されていれば動作可能であるが、公式には対応していないためどの機種に提供されるかは不明。

  • 対応ソケット - Socket AM4
  • 対応メモリ - DDR4-3200(最大)
  • GPU - Radeon Graphics
  • 対応マザーボード - AMD 500シリーズ
ブランド・モデル コア数
(スレッド数)
クロック周波数 (GHz) キャッシュ GPU 同梱クーラー TDP cTDP 発売日 価格 出典
ベース ブースト L2 L3 CU数 SP数 周波数 USD JPY
Ryzen 7 PRO 4750G 8 (16) 3.6 4.4 512 KB
×コア数
8 MB 8 512 2100 MHz Wraith Stealth 65 W 45 - 65 W 2020年7月21日
2020年8月8日(日本)
N/A 43978円 [86]
Ryzen 5 PRO 4650G 6 (12) 3.7 4.2 7 448 1900 MHz 29678円 [87]
Ryzen 3 PRO 4350G 4 (8) 3.8 4.0 4 MB 6 384 1700 MHz 21978円 [88]

モバイル向けラインナップ[編集]

Renoir[編集]

Zen2ベースのコードネーム "Renoir"(ルノワール)のモバイル版「Ryzen Mobile APU」は2020年1月7日に発表された。Matisseと異なり、Radeon GPUを統合している[89]。 Matisseと同じく7nmプロセスで製造され、前世代のPicassoから倍となる最大8コア16スレッドのCPU、改良版Vegaグラフィックスを搭載。デスクトップ向けCPUで大きな特徴であったチップレット構成は特に低消費電力が要求されるAPUでは実現することが困難なため採用されておらず、シングルダイのプロセッサとなっている[90]。プロセッサーナンバー末尾のHシリーズのTDPは前世代のPicassoでは35 Wだったが、Renoirからは45 Wに変更された。

新しい熱設計制御としてCPUとGPUの熱設計枠を共有し、CPUのパワーが必要なときにはGPUのほうに必要な熱設計の枠をCPUに共有、その逆にゲームなどでGPUが重要なときは、CPUの熱設計の枠をGPUに共有する「AMD SmartShift」をRyzen 4000シリーズとRadeon RX 5000Mシリーズに導入された。

  • 対応ソケット - Socket FP6
  • 対応メモリ - DDR4-3200、LPDDR4-4266(最大)
  • プロセスルール - 7nm
  • トランジスタ数 - 98億[91]
  • ダイサイズ - 156 mm2[91]
  • GPU - Radeon Graphics
ブランド・モデル コア数
(スレッド数)
クロック周波数 (GHz) キャッシュ GPU TDP cTDP 発売日 価格 出典
ベース ブースト L2 L3 CU数 SP数 周波数 USD JPY
Ryzen 9 4900H 8 (16) 3.3 4.4 512 KB
×コア数
8 MB 8 512 1750 MHz 45 W 35 - 54 W 2020年3月16日 不明 不明 [92]
4900HS 3.0 4.3 35 W 不明 2020年3月16日 不明 不明
Ryzen 7 4800H 2.9 4.2 7 448 1600 MHz 45 W 35 - 54 W 2020年1月7日 不明 不明 [89]
4800HS 35 W 不明 2020年1月7日 不明 不明 [93]
4800U 1.8 8 512 1750 MHz 15 W 10 - 25 W 2020年1月7日 不明 不明 [89]
4700U 8 (8) 2.0 4.1 7 448 1600 MHz 2020年1月7日 不明 不明
Ryzen 5 4600H 6 (12) 3.0 4.0 6 384 1500 MHz 45 W 35 - 54 W 2020年1月7日 不明 不明 [89]
4600HS 35 W 不明 2020年3月16日 不明 不明
4600U 2.1 15 W 10 - 25 W 2020年1月7日 不明 不明
4500U 6 (6) 2.3 2020年1月7日 不明 不明
Ryzen 3 4300U 4 (4) 2.7 3.7 4 MB 5 320 1400 MHz 2020年1月7日 不明 不明 [89]

互換性[編集]

Ryzenはx86/x86-64プロセッサとしてはAMD FXと多くの互換性があるが、その一方でサポートするOSが異なる[94]。2016年1月15日にマイクロソフトは「RyzenをサポートするWindowsWindows 10のみである」と発表した[95][96]。また、今後のプロセッサについても「その時点でリリースされている最新バージョンのWindowsにおいてのみサポートする」と発表した[95]。このサポートはプロセッサに起因する不具合を修正するか否かの意味ではなく、非サポートOS(例としてWindows 7)に当該プロセッサが搭載されている場合、Windows Updateによるアップデート配信の一切をマイクロソフト側がブロックする措置となるため注意が必要である。

ただし、ハードウェアデベロッパー向けのドキュメントである「Windows ハードウェア互換性プログラム」においては、Windows Server 2012R2、Windows Server 2016、Windows Server 2019についてRyzenファミリのCPUがサポートされる旨の記述がある[97]

既知の問題[編集]

Spectre[編集]

Ryzenを含む今日のほぼ全ての高性能マイクロプロセッサで、新種の投機的実行に関する脆弱性「Spectre」の影響を受けることが判明している。この脆弱性はマイクロコードのアップデートやオペレーティングシステムの問題回避策により軽減することができるが、この方法ではパフォーマンスが低下する代償を負うことになる[98]。AMDのプロセッサはMeltdown脆弱性に関連する回避策が不要なため[99]、AMD RyzenやEpycはSpectre軽減策をとることによって負荷次第で0%から9%のパフォーマンスが低下するが、Intel CoreXeonプロセッサでは50%を超える場合があることに比べれば優位である[100][101]

AMDは、2019年に発売するZen 2でハードウェアの修正を含んでいることを発表した[102]

セグメンテーション違反[編集]

Ryzen 1000シリーズプロセッサの初期出荷分には、特にGCCでコードをコンパイルしている最中に、Linux上で特定の負荷においてセグメンテーション違反を引き起こすものがある[103]。AMDは該当のプロセッサを問題のない新しいプロセッサに交換するサービスを開始した[104]

CTS Labsによって発見された問題[編集]

2018年初め、イスラエルのサイバーセキュリティコンサルタント会社 CTS Labs は、Ryzenにいくつかの重大な欠陥を発見したと主張した[105]。それらは後に2つの別々のセキュリティ会社によって事実と確認されたものの[106]、CTS LabsはAMDに主張の正当性に関する懸念や質問、リアクションに24時間だけ猶予を与えた後、情報を公開した[107][108][109]。AMDは欠陥を事実と認め、ファームウェアのアップデートによって修正される予定であることを発表した[109][110]。攻撃者がそれらを悪用するには物理的なアクセスと管理者権限を必要とする[108][109][110]

脚注[編集]

[脚注の使い方]

注釈[編集]

  1. ^ システムやメモリモジュールの設計によってはこれらと異なる。
  2. ^ AMDはコンシューマ向け製品でECCの動作を検証していないが、CPUでの機能自体は有効であり、マザーボードとBIOS次第で対応可能。
  3. ^ Ryzen 5 1600など、LEDが搭載されていないリテールクーラーが付属する場合もある。
  4. ^ 2017年8月23日に価格改定。2017年8月22日までは145800円だった。
  5. ^ 2017年8月23日に価格改定。2017年8月22日までは115800円だった。
  6. ^ a b c d e BIOSの更新が必要な場合がある。
  7. ^ 流用元のサーバー向けEPYCの7002シリーズには16コア以下のモデルも存在する。
  8. ^ A320は非対応
  9. ^ 中国専売

出典[編集]

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  107. ^ Mott, Nathaniel (2018年3月14日). “CTS Labs Speaks: Why It Blindsided AMD With Ryzenfall And Other Vulnerabilities”. https://www.tomshardware.com/news/cts-labs-amd-ryzenfall-ryzen-epyc,36660.html 2019年8月3日閲覧。 
  108. ^ a b Cutress, Ian (2018年3月13日). “Security Researchers Publish Ryzen Flaws, Gave AMD 24 hours Prior Notice”. https://www.anandtech.com/show/12525/security-researchers-publish-ryzen-flaws-gave-amd-24-hours-to-respond 2019年8月3日閲覧。 
  109. ^ a b c “AMD、CTS Labsが開示したRyzen/EPYC向け脆弱性対応ファームを近く提供”. PC Watch. (2018年3月21日). https://pc.watch.impress.co.jp/docs/news/1112850.html 2018年3月22日閲覧。 
  110. ^ a b AMD is working on fixes for the reported Ryzenfall, MasterKey vulnerabilities - Yahoo! Finance”. 2018年6月26日閲覧。

外部リンク[編集]