Prusa i3

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Prusa i3
Prusa i3 MK2.jpg
Prusa i3 MK2
新しいプリンターの部品を制作中の Prusa i3 MK2 プリントファームの様子
分類 熱溶解積層法 3Dプリンター
発案者 Josef Průša
関連リンク https://www.prusaprinters.org/prusa-i3/

Prusa i3チェコ共和国 の会社 Prusa Research によって開発されている、オープンソース熱溶解積層法 を用いた 3Dプリンター である。RepRap プロジェクトの一部であり、世界で最も使われている3Dプリンターである。[1] オリジナル Prusa i3 は Josef Průša によって 2012年 に設計された。

2016年 には Prusa i3 MK2がリリースされ、さらに 2017年には、MK2S がリリースされた[2]。2017年9月、旧モデルに比べて大きな改良が施された Prusa i3 MK3 がリリースされた。2019年2月には、洗練されたエクストルーダーボディと、新しいフィラメントセンサーを用いた Prusa i3 MK3S がリリースされた。

Prusa i3 は比較的低コストである上、組み立てや改造が簡単なことから、教育だけでなく、趣味、プロフェッショナル用途として、広く世界に広まった[3]。オープンソースとして公開されたことによって、有志の会社や個人によって、たくさんの亜種モデルが制作されている。また、他のRepRapプリンターと同様、Prusa i3 では自分自身の部品の一部をプリントすることができる[4]

略歴[編集]

Prusa i3 は RepRapプロジェクトのCore開発者であり、PCBヒートベッドを開発した[5]、Josef Průša によって設計された、3番目のプリンターである。このプリンターのベースとなったモデルは、2010年に開発された Prusa Mendel[6] 及び、2011年に開発された Prusa Mendel (iteration 2)[7]である。Prusa Mendel という名前は、Průša 自身ではなく、RepRapコミュニティによって名づけられている。

Prusa Mendel[編集]

最初の Prusa Mendel は 2010年9月、当時既に存在していたMendelモデル簡略化に重点を置いてリリースされた。また、以前は20時間かかっていたプリント部品の製作時間は10時間へと減らされ、3Dプリントで制作されていたベアリングは、標準のベアリングへと変更された[6]

Prusa Mendel (iteration 2)[編集]

2代目の Prusa Mendel は 2011年12月 にリリースされた。このバージョンでは、一部の部品がスナップフィットパーツに置き換えられたことで、製作やプリンターのメンテナンス時に必要とされる道具がより少なくなった。また、ステッピングモーターに取り付けられているベルトが改良されたり、LM8UUリニアベアリングが使われるなど、品質に関わる改善も行われた[7]

Prusa i3[編集]

2012年5月[8]、Prusa i3 のパーツ (OpenSCAD英語版) やデザインがリリースされた。このリリースは、以前のバージョンや他のRepRapプリンターからの大きなデザイン変更となった。寸切りボルトによって構成されていた三角形のフレームは、ウォータージェットカッター によって作られる アルミニウム フレームへと変更された。また、"Prusa Nozzle" と呼ばれるフードセーフなホットエンドが採用され、M8ネジがM5ネジへと変更された[9][10][11][12]。このデザインは、自己複製可能な部品を増やすことよりも、より制作が簡単になるように設計されている[13]。2015年、Průša は Original Prusa i3 と呼ばれるバージョンをリリースした。これは彼の立ち上げた会社である Prusa Research から販売されている[1]

Prusa i3 MK2[編集]

2016年5月には、Prusa i3 MK2 がリリースされた。このプリンターは、三つある方向軸全てにおいて、自動でジオメトリ修正を行うことができるようになった最初のプリンターである。新しく書き換えられた Marlin ファームウェア と 非接触近接インダクタンスセンサーにより、メッシュベッドレベリングが可能になっている。また、プリント容積はより大きく設定され、一体化されたオリジナルのステッピングモーターが用いられるようになった。 [2][14][15] その他の新しい特徴としては、ポリエーテルイミド (PEI) 製のビルドプレート、Rambo コントロールボード、そして E3D V6 ホットエンドが挙げられる[16][17]。また、Prusa MK2 は、Windows による プラグアンドプレイ USB ID が提供された、初のRepRapプリンターである[18]

Prusa i3 MK2S[編集]

2017年5月、Josef Prusa は彼のブログ[19]上で、Prusa i3 MK2S を発表し、既に注文を受けていた Prusa i3 MK2 は Prusa i3 MK2S として発送することを公表した。このバージョン強化された点は、LM8UUベアリングを固定するのにUボルトが用いられたこと、改善されたLM8UUベアリング、よりスムーズになった各ロッド、インダクタンスセンサーの固定マウントの改良、配線方法の改良、新しいコントロールボードカバーなどである。MK2が"S"にアップグレードされて発送されると同時に、MK2所有者に向けて、これらの改善点を利用できるようにするアップグレードキットの販売が開始された。

Prusa i3 MK3 と MK2.5[編集]

2017年9月には、Prusa i3 MK3 がリリースされた[20]。キャッチコピーは"bloody smart (超賢い)"。アップグレードされた機能は数多く、より強固なY軸フレーム、Bondtechドライブギアを用いた、フィラメントを両側から掴み送り込む新しい エクストルーダー、回転数モニタリング機能を持つより静かなファン、更新された レベリング センサー、"Einsy"と名付けられた新しいコントロールボード、128マイクロステップ機能を持ったより静かな ステッピングモーター ドライバー、PEI コートが施された交換可能なスチールシートとそれを保持するマグネット付きヒートベッドなどである[21]。また、いくつかの温度センサーが追加された上、フィラメント検知センサー、電源断検知センサーなどの新しいセンサーも追加されている。MK3から、動作電圧が 12V ボルト から 24V へと変更されている。従って、全ての電子部品は 24V 対応部品へと変更されている。さらに、このプリンターでは オープンソースOctoprint(英) が動作している Raspberry Pi Zero W へ接続可能な、専用ソケットが提供されている。これを利用すること、ワイヤレスプリントや Prusa i3 専用の Octoprint が提供される。

MK3アップデートの主な目的は、一般人にも、3Dプリンターをより簡単にし、プリントの失敗を減らすことにある。フィラメント検知センサーによって、差し込むだけでフィラメントの充填が済むようになり、プリント中に、フィラメントが詰まってしまったり、切れてしまった際には、プリントを自動的にポーズすることが可能になった。それぞれのケースにおいても、問題点が解決されるとプリントを再開することができる。また、新しいステッピングモータードライバーには、脱調によるレイヤーのずれを自動的に検知し、プリントの失敗からユーザーを保護する機能が追加されている。電源断センサーの追加されたことによって、停電 からの復活が可能になった。停電時には、電源コンデンサー にたまった電力を使用し、プリントヘッドを上昇させるよう設計されているため、プリントが余熱によって溶けてしまうことが防がれる。また、環境温度センサーが追加されたことによって、接触不良などによるメインボードのオーバーヒートが検知可能となった。

さらに、アップグレードされたフレームと電子部品により、最高 200 mm/s の、より速いプリントスピードが実現された。

既に MK2 や MK2S を購入済みのユーザーに向けて、MK2.5 と名付けられた、アップデートキットが販売されている。一部のアップグレードに制限されているため、これらは200ドルで提供される。しかし、多くのネガティブフィードバックを受け、Prusa は MK2S から MK3 への完全アップグレードを可能にする、500ドルのキットの販売を開始した。

Prusa i3 MK3S[編集]

2019年2月、Prusa i3 MK3S がリリースされた。同時に、マルチマテリアルアップグレード2S (MMU2S) がリリースされた。このアップグレードキットを導入すると、5つの異なる材料を同時にプリントすることが可能になる。MK3は 3D Printing Industry社による 2019年 FFF 3Dプリンターオブザイヤー に選ばれた。[22]

クローン[編集]

Prusa i3 のオープンソースデザインとしての成功は、完成品とキットの両方が提供されていることだけでなく、様々な i3 デザインの派生マシンが存在することによって得られたものである。Prusa Research は、これらの派生マシンと競争することをよしとせず、協力し、より洗練されたデザインを継続して追求したい、と発表している[23]

表彰[編集]

2012年、Josef は彼の技術による成功に対し、チェコヴィソチナ州名誉学士 を受賞した[24]。2014年2月、彼は チェコ の『フォーブズ』のカバーとして掲載された。同誌では、"チェコにおける30人の30歳未満の知っておくべき人物の一人"として、彼をリストに入れている[25]。3D Printing Industry社による表彰式にて、MK3がFFF方式のデスクトッププリンターオブザイヤーに選ばれた。[22]

Prusa Research は、デロイト によって、中央ヨーロッパで最も急成長している会社として 2018年 中央ヨーロッパ デロイト テクノロジー Fast 50 の1位に選定された。[26][27]

2019年、Josef は 数億チェコ・コルナ企業のトップとしてのリーダーシップを認められ、チェコのフォーブスのカバーに再度掲載された。[28]

機能[編集]

チェコ共和国 プラハ に所在する、3Dプリント部品を製造する Prusa Research の Prusa i3 MK2 プリントファームと Josef Průša

自己複製機能[編集]

他のRepRapプリンターと同様に、Prusa i3 は自分自身のほとんどの部品を作り出すことができる。これらの部品はABSプラスチックによってプリントされていたが、MK3以降は PETG が使用されるようになった。[29] 標準の Prusa i3 では 26個 のプリント部品が使われている。

プリント可能な材質[編集]

ヒートベッドと高性能なホットエンドが用いられているため、Prusa i3 では ABS樹脂ポリ乳酸(PLA)、耐衝撃性 ポリスチレン (HIPS)、PETG、様々なフレキシブルフィラメント(FLEX, TPU, TPE)、ポリプロピレン (PP)、ナイロン などの多くの材料を使ってプリントすることができる[30]。それぞれの材料は、それぞれ異なる温度域と、ビルドプレートに正しく食いつかせるための異なるテクニックが要求される。

部品[編集]

Prusa i3は、他のRepRapプリンターと同様に自己複製された 3Dプリントパーツと、"vitamins (ビタミン)" と称される、自己複製のできない既製部品によって構成されている[31]

Prusa i3 に使われている "vitamins" は、寸切りボルトまたはリードスクリュー(台形送りねじ)、スムースロッド、ネジやナット、5つのNEMA 17 ステッピングモーター などの一般的な部品に加え、コントロールボード、ヒートベッド、ホットエンドなどの特殊部品等が挙げられる。

亜種[編集]

その人気の高さから、Prusa i3 にはたくさんの亜種モデルが存在する。これらは世界中の様々な企業や個人によって作られており、それぞれ異なるフレームやエクストルーダーが用いられていたりする[32]

フレーム[編集]

Prusa i3 の亜種モデルで最も違いが見られるのはフレームである。鉄やアクリルから、レーザーカッターやCNCマシンなどを用いて切り出された単板型フレームや、MDFボード を用いてつくられたボックス型フレーム、中には レゴ ブロックを用いて作られたフレームまである[33][34][35][36]

エクストルーダー[編集]

Prusa i3 の亜種では、1.75 mm や 3 mm 径のフィラメント向けのものや、マルチカラー対応なものなど、さまざまなエクストルーダーが用いられている。エクストルーダーだけではなく、MIG溶接機 やレーザーカッターなどのヘッドが取り付けられることもある[37][38][39]

脚注[編集]

[脚注の使い方]
  1. ^ a b What's up with Original Prusa i3? – Prusa Printers” (英語). Prusa Printers (2016年3月2日). 2016年6月13日閲覧。
  2. ^ a b Gerrit Coetzee (2016年6月15日). “Prusa Shows Us the New i3 MK2 3D Printer and Where the Community is Headed”. Hackaday. 2019年12月24日閲覧。
  3. ^ Ertischek, David (2016年2月3日). “Prusa I3 is a DIY 3D printer you can actually afford”. Boy Genius Report. 2016年6月12日閲覧。
  4. ^ 3D Hubs
  5. ^ Thingiverse.com. “PCB heated print bed by josefprusa”. www.thingiverse.com. 2016年6月19日閲覧。
  6. ^ a b first commit · josefprusa/PrusaMendel@6ed4480”. GitHub. 2016年6月13日閲覧。
  7. ^ a b Hobbyist Weekend – With Prusa Mendel 3D Printer”. 3D Printing Industry. 2016年6月15日閲覧。
  8. ^ initial commit · josefprusa/Prusa3@d3618a6”. GitHub. 2016年6月13日閲覧。
  9. ^ By. “ImplicitCAD: Programmatic CAD Built with 3D Printing in Mind”. Hackaday. 2016年6月15日閲覧。
  10. ^ By. “Interview With A Printer”. Hackaday. 2016年6月17日閲覧。
  11. ^ Prusa Nozzle: All metal food safe RepRap hot-end” (英語). 3ders.org. 2016年6月19日閲覧。
  12. ^ By. “Fail Of The Week: My 3D Printer Upgrade”. Hackaday. 2016年6月15日閲覧。
  13. ^ Open Source 3D printing: an Interview with Josef Prusa” (英語). Open Electronics. 2016年6月16日閲覧。
  14. ^ Josef Prusa unveils $699 Original Prusa i3 MK2 3D printer” (英語). 3ders.org. 2019年12月24日閲覧。
  15. ^ The first printer to correct its geometry in all axes - Prusa Printers” (英語) (2016年8月11日). 2016年8月13日閲覧。
  16. ^ The All New Original Prusa i3 MK2 Kit Has a Ton of New Features” (英語). 3DPrint.com (2016年5月18日). 2016年6月19日閲覧。
  17. ^ Interview with Josef Prusa, CEO and Founder of Prusa Research”. 3D Printing Industry. 2016年6月12日閲覧。
  18. ^ Microsoft adds network 3D printing support with Windows 10 IoT Core app for Raspberry Pi 3” (英語). 3ders.org. 2016年6月12日閲覧。
  19. ^ Original Prusa I3 MK2S Release” (英語). Official Prusa 3D printers community. 2017年4月13日閲覧。
  20. ^ Original Prusa i3 MK3 is out! And it's bloody smart! - Prusa Printers”. Prusa Printers (2017年9月22日). 2017年10月24日閲覧。
  21. ^ New Original Prusa i3 MK3: Review the Facts Here! | All3DP”. All3DP (2017年9月25日). 2017年10月24日閲覧。
  22. ^ a b 2019 3D Printing Industry Awards winners announced” (英語). 3D Printing Industry (2019年6月11日). 2019年7月8日閲覧。
  23. ^ [1]
  24. ^ Jihlavské listy | Aktuality | Noviny Kraje Vysočina”. www.jihlavske-listy.cz. 2016年6月13日閲覧。
  25. ^ Forbes Česko”. www.facebook.com. 2016年6月13日閲覧。
  26. ^ Deloitte Technology Fast 50 | Deloitte Central Europe” (英語). Deloitte Macedonia. 2020年5月23日閲覧。
  27. ^ Deloitte Fast 500 EMEA: Two Czech companies in Top 5” (英語). Deloitte Czech Republic. 2020年5月23日閲覧。
  28. ^ 3D punk” (チェコ語). Forbes. 2020年5月23日閲覧。
  29. ^ Original Prusa i3 Mk3 after 2 months”. prusaprinters.org. 2018年3月14日閲覧。
  30. ^ Material guides – Prusa3D – 3D Printers from Josef Průša” (英語). Prusa3D – 3D Printers from Josef Průša. 2016年6月19日閲覧。
  31. ^ Distributing 3DP Parts — and Vitamins — With Passion”. 3D Printing Industry. 2016年6月15日閲覧。
  32. ^ By. “[Prusa interviews a whole bunch of RepRappers]”. Hackaday. 2016年6月17日閲覧。
  33. ^ Portugal's Reprapalgarve Team Shows Us How to Make a Steel Framed Color 3D Printer for Around $600” (英語). 3DPrint.com (2016年6月6日). 2016年6月15日閲覧。
  34. ^ RepRap iTopie Emerges as Improvement on Prusa i3” (英語). 3DPrint.com (2014年12月18日). 2016年6月15日閲覧。
  35. ^ By. “Lego Printer Prints Lego”. Hackaday. 2016年6月19日閲覧。
  36. ^ Build your very own Prusa l3 LEGO 3D printer using (almost) nothing but LEGO bricks” (英語). 3ders.org. 2016年6月19日閲覧。
  37. ^ Dutch students build DIY metal 3D printer using Prusa i3 printer and a MIG welder” (英語). 3ders.org. 2016年6月19日閲覧。
  38. ^ Students Combine Prusa i3 Printer with a MIG Welder to Create an Affordable Metal 3D Printer” (英語). 3DPrint.com (2014年11月17日). 2016年6月19日閲覧。
  39. ^ DIY 3D Printing: Laser cutting with Prusa Mendel i2”. diy3dprinting.blogspot.co.uk. 2016年6月19日閲覧。

外部リンク[編集]