フタロシアニン

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Pigment Blue 15:3から転送)
フタロシアニン[1]
Skeletal formula
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識別情報
CAS登録番号 574-93-6 チェック
PubChem 5282330
特性
化学式 C32H18N8
モル質量 514.54 g mol−1
危険性
Sフレーズ S22 S24/25
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

フタロシアニン (Phthalocyanine) は、4つのフタル酸イミドが窒素原子で架橋された構造をもつ環状化合物ポルフィリンに類似した構造を持つ。略語Pc。

特徴[編集]

中心部分は遷移金属をはじめとした様々な元素と錯形成し、安定な錯体を形成する。分子全体にπ電子共役系が広がっているため、平面構造をとり、また強い色を呈する。特に錯体ではから色を呈するものが多い。

用途[編集]

色合いに優れ鮮明で、耐光性が高く(褪色が少なく)、堅牢な(耐久性にすぐれる)ことから顔料として使用される。特に銅フタロシアニンはフタロシアニンブルー、フタロシアニン青、高塩素化銅フタロシアニンはフタロシアニングリーン、フタロシアニン緑と呼ばれ、それぞれ青と緑の有機顔料の代表的なものとして知られる。無金属フタロシアニン (Pigment Blue 16) も顔料として使用される。銅フタロシアニンブルーよりも緑味の顔料であるが、可視領域の長波長側の反射が大きく、不鮮明である。

青色の銅フタロシアニンのColour Index Generic NameはPigment Blue 15、より緑味の青色を呈する無金属フタロシアニンのColour Index Generic NameはPigment Blue 16、緑色の高塩素化フタロシアニン(高塩素化銅フタロシアニン)のColour Index Generic NameはPigment Green 7、より黄味の緑色を呈する低塩素化フタロシアニン(臭素化塩素化銅フタロシアニン)のColour Index Generic NameはPigment Green 36である。

プロセスカラーに最もよく使われるのは銅フタロシアニンのβ結晶であるPigment Blue 15:3で、これの分散性能を高めたものが、Pigment Blue 15:4である。カラーフィルターに良く使用されるのは、銅フタロシアニンのε結晶であるPigment Blue 15:6で、紫色のジオキサジンとの併用で採用される。カラーフィルターのに良く使用されるのは、臭素化塩素化銅フタロシアニンのPigment Green 36で黄色のアゾ顔料などと併用される。

道路標識新幹線の車体の青などはフタロシアニンの色である。またCD-Rの記録媒体としても応用されている。有機半導体材料として有機EL有機電界効果トランジスタ等にも使用される。光導電性を持つものは複写機レーザープリンターの感光ドラム等に使用される。

歴史[編集]

1928年イギリスの染料会社 Scottish Dyes, Ltd., Grangemouth, Scotland(後にICIに合併)の、フタル酸アンモニアからフタルイミドを製造するプラントで、が化合して偶然できているのを発見されたのが最初である。フタロニトリルo-シアノベンザミドフタルアニヒドライドフタルイミドあるいはジイミノイソインドールなどのフタル酸派生物質を、などの金属塩と加熱することによっても得られる。

おもな関連化合物[編集]

フタロシアニンの銅錯体
銅フタロシアニンブルー
Pigment Blue 15
フタロシアニンの銅錯体
高塩素化銅フタロシアニングリーン
Pigment Green 7

関連項目[編集]

出典[編集]

参考文献[編集]

  • 『顔料の事典』 伊藤 征司郎(編集) 朝倉書店 2000/10 ISBN 4254252439 ISBN 978-4254252439
  • 橋本勲, カラーオフィス『有機顔料ハンドブック』カラーオフィス、2006年。 NCID BA82257636https://id.ndl.go.jp/bib/000009278878 
  • 小川昭二郎「フタロシアニンの化学と応用」『生活工学研究』第1巻第1号、お茶の水女子大学生活科学部生活工学研究会、1999年、78-85頁、hdl:10083/2552CRID 1050001202947746432