PING (ゴルフ)

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ピン
PING
種類
非公開会社
業種 スポーツ器具
設立 1959年 (65年前) (1959)
創業者 カーステン・ソルハイム英語版
本社
主要人物
ジョン・A・ソルハイム(会長兼CEO)
製品 ゴルフクラブゴルフバッグ
ウェブサイト ping.com

ピンPING)はアメリカ合衆国のゴルフ用品メーカー。主にゴルフクラブゴルフバッグに注力している。所在地はアリゾナ州フェニックス

歴史[編集]

創業[編集]

ゼネラル・エレクトリック(GE)のエンジニアだったカーステン・ソルハイム英語版1959年、趣味のゴルフとりわけパッティング時の不満を解消するため、自宅のガレージでオリジナルパターの製作を始めた[1]。ソルハイムが完成させたパター「PING 1-A」は、ヘッドのヒール(プレイヤー側)にシャフトを取り付けた構造の既存パターと異なり、内部をくり貫いたヘッドの中央にシャフトを差し込んだ特異なデザインだった。これは単なる思い付きではなく、科学的根拠に基づきヘッドの重量分散を狙ったものであった。名称の「PINGピン)」は1-Aの澄んだベルのような打球音に由来する[2]。ゴルファーでありミュージシャンでもあるマレー・アーノルドは1960年当時、PINGのパターが放つ打球音の周波数はピアノの調律で使う440Hzだと語っている[3]。1960年代終わり、マレットタイプやソール形状のバリエーションなどラインナップが6種類に増え、ガレージに並べられたクラブが2,000本を超える頃には、大きな打球音を好まないプレイヤーからの要望もあって音は大分控えめになっていた[4]

1961年、拠点がレッドウッドシティから現在のフェニックスに移った。パターの受注が増加しGEを退社した後も、ソルハイムはガレージで一人パターを作り続けた。同じ年PINGが初めて手掛けたアイアンセットは、素晴らしいスコアでラウンドしたイメージの数字から「69」と名付けられた。その後もソルハイムはアイアンにおける理想のトゥ・ヒール・バランスを追求し、ショットミスに寛容なクラブを目指してヘッド背面のキャビティ(窪み)構造の改良を続けた。

1962年、ジョン・バーナム英語版ケイジャン・クラシック・オープン・インヴィテーショナル英語版で、PINGクラブユーザーとして初めてPGAツアーにおける優勝を遂げた。セールスは伸び続け、特に1966年東京で行われたカナダカップ争奪ゴルフ世界選手権では、テレビ中継でジャック・ニクラスアーノルド・パーマーといったスーパースターたちが手にするPINGが度々映し出され多大な宣伝効果をもたらした。

発展[編集]

1966年、ソルハイムは新型パターのアイデアを思い付いたが、SPレコードのカバーに走り書きしたアイデアスケッチをなかなか見つけられずにいた。どうにかアイデアをまとめたソルハイムが次に名称を考えあぐねていると、妻のルイーズが「パッティングの問題を解決する“答え”という意味を込めて『アンサー』はどうか」と助け舟を出してくれた。綴りの「Answer」がヘッドに彫るには長いと感じたソルハイムは、1字抜いた「Anser」を正式名称とし商標登録した[5][6]

1966年の終わり、PINGは突然の危機に直面した。全米ゴルフ協会によりAnser以外のPING製パターがルール違反と裁定されたため、トーナメントからは締め出されハンディキャップでも不適合となってしまったのだ。グリップ基部のシャフトがプレイヤー側に傾斜した構造が原因で、ソルハイムはシャフトを直線にした対策品に切り替えざるを得なくなった。

1967年、Anserパターを使用したジュリアス・ボロス英語版がPGAツアーのフェニックス・オープンで優勝した[7]。Anserは直後の3月特許を取得した。同年ソルハイムはPINGクラブを製造する会社カーステン・マニュファクチャリング・コーポレーションを設立しガレージビジネスから脱却した[8]

PINGパターを使用したメジャー初制覇は1969年のマスターズ・トーナメントで、ジョージ・アーチャー英語版によってもたらされた。同年これまでの技術を応用したステンレス製のアイアン、「K1(Karsten 1、カーステン1)」をリリースし成功を収めた。この頃になると他のメーカーも追従を始め、PINGの革新的な技術は今やゴルフ界のデファクトスタンダードとなりつつあった[9]

1970年、PINGのパターで優勝した選手に感謝を示したいと考えたソルハイムは、フェニックスの本社内に「PINGゴールドパター保管庫英語版」と呼ばれる特別室を設置した。以後PINGのパターを使用した選手が優勝するたびに、優勝時と同型の黄金のメモリアルパターが2本製作され、1本を選手に贈呈し、残り1本を保管庫に収蔵する決まりとなった。2015年の時点で既に3,000本近くのゴールドパターが保管庫に陳列されている[10]。日本人選手のゴールドパター第1号は、2011年マスターズGCレディースに優勝した大山志保だった[11]

栄誉[編集]

2018年、ノルウェー首相エルナ・ソルベルグアメリカ合衆国大統領ドナルド・トランプホワイトハウスで会談した際、両国友好の印としてソルベルグからトランプにPINGの「Bergen」(ベルゲン)パターが贈呈された。これはカーステン・ソルハイムがノルウェーのベルゲン近郊のオストライム英語版出身のアメリカ移民であることに因んだものだった[12]

革新性[編集]

PINGは世界で初めてインベストメント鋳造を本格的に取り入れ、生産工程の革新によりクラブの高品質化と低コスト化を推し進めた[13]。1980年代に入ると他社に先駆け、今日では当たり前となったフィッティングシステムを導入した。これはクラブヘッドに複数のライ角やオフセットのバリエーションを用意し、チェックリストに基づいてプレイヤーの体格や技術、プレイスタイルに合わせたクラブを選択できる画期的なものであった[14]。2011年現在、PINGのサイトにあるチェックリストは5段階100項目と多岐に渡り、ドライバーからパターまでを網羅するに至った。フィッターが一層容易にカスタムできるよう、一部のクラブはヘッドに小さな切り欠きが設けられている。これは以前のモデルで発生した破損を防ぎつつ、ヘッドを最適な角度に曲げるのを手伝う目的があった[15]

契約選手[編集]

海外ツアー[編集]

PING契約ツアープロ[16]

PGAツアー[編集]

PGAツアー・チャンピオンズ[編集]

ヨーロピアンツアー[編集]

LPGAツアー[編集]

国内ツアー[編集]

PING契約ツアープロ[17]

JGTOツアー[編集]

JLPGAツアー[編集]

脚注[編集]

  1. ^ Puttering Pays”. Arizona Republic (1968年6月30日). 2019年2月1日閲覧。
  2. ^ Engineer Puts Ping in Putter”. Arizona Republic (1959年4月24日). 2019年2月2日閲覧。
  3. ^ Golfing with Alex Morrison”. The Terre Haute Tribune (1960年2月14日). 2019年2月2日閲覧。
  4. ^ Attitude Helped by Thrashing”. Arizona Republic (1960年12月2日). 2019年2月2日閲覧。
  5. ^ Solheim's answer to dilemma came in a surprising manner”. Arizona Republic (1990年12月27日). 2019年2月3日閲覧。
  6. ^ Anser Trademark” (1970年5月5日). 2019年2月3日閲覧。
  7. ^ “Ping In Julius' Putter Music To Veteran's Ears”. Fort Lauderdale News. (1967年2月14日). https://www.newspapers.com/clip/28542257/julius_boros_1st_ever_to_win_a/ 2019年2月17日閲覧。 
  8. ^ Puttering to Putter”. Arizona Republic (1968年6月30日). 2019年2月2日閲覧。
  9. ^ Explore Our History: The PING Timeline
  10. ^ Golf's Fort Knox”. www.pgatour.com (2015年7月21日). 2020年8月22日閲覧。
  11. ^ トップ3とゴールドパター|JLPGA|日本女子プロゴルフ協会”. www.lpga.or.jp (2020年6月18日). 2020年8月22日閲覧。
  12. ^ https://www.nrk.no/hordaland/statsministeren-gir-golfkolla-_bergen_-til-donald-trump-1.13860237
  13. ^ World Golf Hall of Fame Karsten Solheim”. 2019年2月2日閲覧。
  14. ^ Karsten Solheim changed golf equipment forever and he changed me too” (2011年2月6日). 2019年2月3日閲覧。
  15. ^ PING.com. “Our Fitting Process”. 2019年2月3日閲覧。
  16. ^ PING - Pros”. ping.com. 2020年8月22日閲覧。
  17. ^ PING - Pros”. jp.ping.com. 2020年8月22日閲覧。

外部リンク[編集]