P-38缶切り

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ベトナム戦争期に製造されたP-38缶切り

P-38は、アメリカ軍野戦糧食の付属品として支給していた缶切りである。第二次世界大戦中の1942年に開発され[1]1980年代まで使用されていた。当初はKレーションとともに支給されていたが、後にはCレーションにも付属した。なお、2013年時点でも製造は続いており、世界中で販売されている。

概要[編集]

P-51缶切りとP-38缶切り

P-38缶切りは非常に小型かつ安価な缶切りで、全長は38mm程度である。刃は折畳式になっていて、起こした時の角度は95度である[2]蝶番の部分には、缶の縁に引っ掛けるための切欠きがある。ハンドル部にはキーチェーンや認識票チェーンなどに通すための穴が開けられている。のちにP-38缶切りよりも少し大きめのハンドル部を備えるP-51缶切りも開発された。

1980年代Cレーションが袋詰のMREに更新された際、P-38缶切りは現役を退いた。しかし、P-51缶切りはトレイ・レーション(Tray Ration)として知られる缶詰式の野戦糧食の付属品として現在でも支給され、アメリカの公機関による災害救助および復旧支援などの折、缶詰とともに配布されることもある。

P-38缶切りはJ.W.スピーカー社(J.W. Speaker Corporation, 製造スタンプは「US Speaker」)、ウォッシュバーン社(Washburn Corporation, 製造スタンプは「US Androck」)などが官給生産を担当しており、後にはマーリン・ハードウェア社(Mallin Hardware, 製造スタンプは「US Mallin Shelby O.」または「U.S. Shelby Co.」)も加わった。

名称について[編集]

アメリカ軍における制式名称はUS ARMY POCKET CAN OPENERまたはOPENER, CAN, HAND, FOLDING, TYPE Iであり、P-38という通称の由来は不明である。改良型のP-51缶切りと共にP-38 ライトニング戦闘機およびP-51 マスタング戦闘機に由来するという説がある。あるいは全長が38mm(P-51は51mm)である事から取られたという説もあるが、アメリカではメートル法が使用されていないために疑わしいともされている。アメリカ陸軍の資料では、P-38缶切りを使用してCレーションの缶を開封しようとした場合、38回だけ穴を開ける(Punctures)必要があったことに由来するとも説明されている[1]。また、アメリカ海兵隊では「ジョン・ウェイン」の愛称で呼ばれた。この愛称の由来も定かではなく、P-38缶切りの頑丈さと信頼性に基づくという説[3]、訓練用映画でウェインがこの缶切りを使ってKレーションを開くシーンがあったという説など諸説ある。 大きさによって区別されており、小さな方を「P-38」大きな方を「ジョン・ウェイン」と呼び、ウェインは上記の訓練用映画でナレーションをしていると紹介する書籍もある。[4]

類似製品[編集]

オーストラリア国防軍のFRED缶切り

P-38缶切りにスプーン栓抜きの機能を追加したFRED缶切り英語版が、オーストラリア国防軍およびニュージーランド陸軍英語版で現在でも使用されている。FREDとは本来、「野戦糧食用食器」(Field Ration Eating Device)を意味する略語だが、俗語として「クソ馬鹿げた食器」(Fucking Ridiculous Eating Device)の略語とも語られる[5][6]

イギリス陸軍の24時間分糧食セットである汎用作戦レーションパック(Operational Ration Pack, General Purpose)や、コンポ(Compo)と通称される14人分混成糧食セットにも類似の缶切りが付属する。これは、W.P.ウォーレン・エンジニアリング社(W.P. Warren Engineering Co. Ltd)が製造を担当している。

スウェーデン陸軍でも類似の缶切りが採用された。これは「M7481-021000小型缶切り」(M7481-021000 Konservbrytare Mini)という名称で、「黄金缶」と通称される糧食セットに付属する。

1924年の『ポピュラー・メカニック英語版』誌では、用とは言及されていないものの類似の形状の製品が既に紹介されている[7]

ポーランドでは、古くから類似の形状で固定刃の缶切りが使われていた。現在ではP-38と同じ折畳刃のものも流通している。

脚注[編集]

  1. ^ a b The best Army invention ever, Renita Foster, U.S. Army News, 8-11-2009.
  2. ^ http://www.georgia-outfitters.com/p3851milspecs.htm
  3. ^ http://www.olive-drab.com/od_rations_p38.php
  4. ^ 原書房「ミリメシ・ハンドブック」J・Gリューイン&P・Jハフ(著)、武藤崇恵(訳)、p124
  5. ^ Hardiman, Graeme. “The Malayan Emergency. 2RAR 1956/57”. 2RAR. Digger History: an unofficial history of the Australian & New Zealand Armed Forces. 2007年11月5日閲覧。
  6. ^ Australian Ration pack Contents”. Ration Pack. Australian Defence News & Opinion - MilitaryPeople.com.au (2007年). 2007年10月12日時点のオリジナルよりアーカイブ。2007年11月5日閲覧。
  7. ^ “Womens Workshop”. Popular Mechanics (image of article at www.blog.modernmechanix.com). (1924年4月). http://blog.modernmechanix.com/2007/05/16/time-and-money-saving-tools-for-womans-workshop-in-home-3/?Qwd=./PopularMechanics/4-1924/womens_workshop&Qif=womens_workshop_1.jpg&Qiv=thumbs&Qis=XL#qdig 2007年5月16日閲覧。 

外部リンク[編集]