J・マーク・ラムザイヤー

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ジョン・マーク・ラムザイヤー
人物情報
全名 John Mark Ramseyer
生誕 1954年[1]
アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国シカゴ[1]
学問
研究分野 会社法法と経済学日本法[1]
研究機関 カリフォルニア大学ロサンゼルス校[1]
シカゴ大学[1]
ハーバード・ロー・スクール[1]
学位 1976年ゴーシェン大学英語版学士歴史学[1]
1978年ミシガン大学修士日本研究[1]
1982年ハーバード大学法務博士法学[1]
主な受賞歴 1990年サントリー学芸賞
2007年、第23回大平正芳記念賞[1]
2018年旭日中綬章
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ジョン・マーク・ラムザイヤー(John Mark Ramseyer、1954年 - )は、アメリカ合衆国法学者ハーバード・ロー・スクール教授。専門は日本法及び法と経済学シカゴ生まれの宮崎県育ち。

経歴[編集]

シカゴで生まれ、0歳時に来日、18歳までは宮崎県に居住した(日本語にも堪能である)。ミシガン大学修士号を取得後、ハーバード・ロー・スクールに進学。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)ロースクール教授、シカゴ大学・ロー・スクール 教授を経て、ハーバード・ロー・スクール教授。

法学者の中里実東京大学名誉教授)や経済学者三輪芳朗(東京大学名誉教授)との共同研究も多い。

受賞歴[編集]

論争のある論文[編集]

沖縄基地の論文[編集]

沖縄タイムスは、沖縄の基地に関するラムザイヤーの論文について、内容で事実と異なっている、根拠が不十分である、問題のある表現があると報道している[2]。また、社説で論文は大勢が定まった専門的な書籍ではなく一方的な一般書の引用であり恣意的であると非難している[3]。ラムザイヤーは沖縄タイムスの取材に対しこの論文を出版しないと回答した[2]

第二次大戦時における慰安婦に関する論文[編集]

2020年12月、ラムザイヤーは学術誌「インターナショナル・レビュー・オブ・ロー・アンド・エコノミクス」(International Review of Law and Economics)のオンライン版に「太平洋戦争における性契約」("Contracting for sex in the Pacific War")と題する論文を発表した。当該論文は、慰安婦は自発的に売春婦としての契約をした労働者であると指摘する内容であったため、韓国では猛批判が沸き起こった[4]

当該論文の撤回を求めるオンライン署名には5日間で2,464人の学者が賛同した。賛同者の中にはノーベル経済学賞を受賞したエリック・マスキンもいた[5][6]

韓国の中央日報によるとハーバード大学東アジア言語文化学科教授のカーター・エッカート朝鮮史専攻)と歴史学科教授のアンドルー・ゴードン(日本近現代史・労働史専攻)は、論文の根拠となる韓国人慰安婦の募集契約書をラムザイヤーが直接探したという証拠はなく[7]、「自分で見たことのないのにどうして強い表現まで使って論文を書いたのか理解不能である。『証拠未確認』『主張を裏付ける第三者の証言不足』『選択的文書の活用』などで、学問的真実性を深刻に違反している」と批判した[7]。韓国のハンギョレ新聞はこの点について、ラムザイヤーは論文の根拠となる契約書を見つけられなかったことを同僚に対して認めたと報じた[8]

契約に関する論文は1991年[9]、及び2019年[10]の長論をベースとした要約の形にまとめられている。

出版元のIRLE[11]は電子版は2020年に既に登録されている。印刷版はラムザイヤー教授の論文と反論の論文、教授のその反論の反論を併記する形となるとしている。

韓国メディアのハンギョレ社説において、ラムザイヤーの論文は慰安婦や戦時性暴力英語版に反対する人々への嘲笑であり、歴史の歪曲であるとし、ラムザイヤーの肩書であるハーバード大学ロースクールの「三菱日本法学教授」が三菱グループの寄付によって作られたことに触れ、ラムザイヤーは戦犯企業の支援を受けて、慰安婦と強制動員の歴史に関し、日本の右翼の主張に沿った内容を発表してきたと非難した[12]

経済学者は5つの部分に指摘する声明を出した[13][5]

  • 裏付ける資料がないのに慰安婦の状況を考慮せず雇用契約としたこと、論文には売春婦の相場を記載しているが戦地における収入であるとは言えない。
  • 売春婦として売られた少女の話があるが責任能力の観点から問題がある。
  • 慰安婦が自由に仕事場から移動でき給与を貰っていたとする仮定について。
  • 軍隊政府の関与を認めていないこと。
  • 経済学ゲーム理論法と経済学を使用したこと。

北朝鮮メディア朝鮮の今日は日本の反動勢力妄動であり被害者を冒涜する厚かましい徹底的な親日分子であると掲載した[14]

産経新聞は、高名な会社法学者かつ日本研究者であるラムザイヤーが、査読を経た学術論文で「慰安婦=性奴隷」説を否定していることを肯定的に評価した[15]

麗澤大学准教授でモラロジー研究所客員研究員のジェイソン・マイケル・モーガンは、ラムザイヤーの論文を攻撃する人々の多くは、慰安婦を絶対的な犠牲者と見なす過激なフェミニストであり、人種差別や研究の問題の専門家でもあり、韓国の資金源から資金提供を受けている研究所であると主張した[16]

韓国の民間インターネット団体VANKは、関連するアメリカの雑誌に論文の撤回を要請した[16]

李栄薫ら11人の韓国の学者と弁護士のグループは2月9日、ラムザイヤーを攻撃しているグループが、学術的な議論を無視している点を批判した[16]

慰安婦問題の専門家である西岡力を含む委員6名が、日本の研究者の観点からラムザイヤーの論文への支持を表明した[16]

経済学者の竹内幹は法と経済学の学術書に掲載されたのにも関わらず、ラムザイヤーが使用したゲーム理論に経済学に必要な数式が使用されていない、と批判した[13]

元・時事通信記者でジャーナリスト室谷克実は、内容のほとんどは日本の研究者が既に掘り起こしたもので、新たな視点は見られなかったとしつつ、韓国側から論文の撤回を要求する動きが起こっているのは、内容(「慰安婦=性奴隷」説の否定)が韓国にとって不都合だからであろうと主張した[17]

著書[編集]

単著[編集]

  • 『法と経済学――日本法の経済分析』(弘文堂、1990年)
  • Indentured Prostitution in Imperial Japan: Credible Commitments in the Commercial Sex Industry[18], 01 March 1991(The Journal of Law, Economics, and Organization, Volume 7, Issue 1, Spring 1991, Pages 89-116)
  • 曽野裕夫訳 Ramseyer J.Mark(マーク・ラムザイヤー)「芸娼妓契約 -性産業における「信じられるコミットメント(credible commitments)」」『北大法学論集』第44巻第3号、北海道大学法学部、1993年10月、 642-596頁、 ISSN 03855953NAID 120000953537
  • Odd Markets in Japanese History: Law and Economic Growth, (Cambridge University Press, 1996).
  • Comfort Women and the Professors, Discussion Paper No.995 (慰安婦と教授 ディスカッションペーパー995号)[19] 2019年3月
  • On the Invention of Identity Politics: The Buraku Outcastes in Japan Review of Law & Economics, De Gruyter, November 6 2019[20](「でっちあげられたアイデンティティ・ポリティクス:日本の部落アウトカースト」[21]『レビュー・オブ・ロー・アンド・エコノミクス』デ・グロイター、2019年11月6日)
  • A Monitoring Theory of the Underclass: with Examples from Outcastes, Koreans, and Okinawans in Japan Society for Institutional & Organizational Economics, January 24, 2020[22](「底辺層における相互監視の理論:日本のアウトカースト, 在日コリアン, 沖縄の人々を例に」[23]制度と組織の経済学会、2020年1月24日)

共著[編集]

  • Cases and Materials on Business Associations: Agency, Partnerships, and Corporations, with William A. Klein, (Foundation Press, 1991, 2nd ed., 1994, 3rd ed., 1997, 4th ed., 2000, 5th ed., 2003, 6th ed., 2005).
  • Japan's Political Marketplace, with Frances McCall Rosenbluth, (Harvard University Press, 1993).
川野辺裕幸細野助博訳『日本政治の経済学――政権政党の合理的選択』(弘文堂、1995年)
  • The Politics of Oligarchy: Institutional Choice in Imperial Japan, with Frances M. Rosenbluth, (Cambridge University Press, 1995).
青木一益永山博之斉藤淳訳『日本政治と合理的選択――寡頭政治の制度的ダイナミクス 1868-1932』(勁草書房、2006年)
  • Japanese Law: An Economic Approach, with Minoru Nakazato, (University of Chicago Press, 1998).
  • Agency, Partnerships, and Limited Liability Entities: Unincorporated Business Associations, with William A. Klein and Stephen M. Bainbridge, (Foundation Press, 2001, 2nd ed., 2007).
  • 三輪芳朗)『日本経済論の誤解――「系列」の呪縛からの解放』(東洋経済新報社、2001年)
  • (三輪芳朗)『産業政策論の誤解――高度成長の真実』(東洋経済新報社、2002年)
  • Measuring Judicial Independence: the Political Economy of Judging in Japan, with Eric B. Rasmusen, (University of Chicago Press, 2003).
  • The Japanese Legal System: Cases, Codes, and Commentary, with Curtis J. Milhaupt and Mark D. West, (Foundation Press, 2006).
  • The Fable of the Keiretsu: Urban Legends of the Japanese Economy, with Yoshiro Miwa, (University of Chicago Press, 2006).
  • (三輪芳朗)『経済学の使い方――実証的日本経済論入門』(日本評論社、2007年)
  • J. Mark Ramseyer, Eric B. Rasmusen Outcaste Politics and Organized Crime in Japan: The Effect of Terminating Ethnic Subsidies Journal of Empirical Legal Studies, Cornell Law School and Wiley Periodicals, LLC., 13 February 2018[24](「日本の被差別民政策と組織犯罪:同和対策事業終結の影響」[25]『ジャーナル・オブ・エンピリカル・リーガル・スタディーズ』コーネル大学ロースクール・ワイリーブラックウェル、2018年2月13日)
  • 長谷部恭男宇賀克也・中里実・川出敏裕大村敦志松下淳一神田秀樹荒木尚志白石忠志)『アメリカから見た日本法』(有斐閣、2019年)

編著[編集]

  • Japanese Law: Readings in the Political Economy of Japanese Law, (Ashgate, 2001).

共編著[編集]

  • Japanese Law in Context: Readings in Society, the Economy, and Politics, co-edited with Curtis J. Milhaupt and Michael K. Young, (Harvard University Asia Center, 2001).
  • Distribution in Japan,co-edited with Yoshiro Miwa and Kiyohiko G. Nishimura, (Oxford University Press, 2002).
  • 金子宏・中里実)『租税法と市場 = Taxation and the Market Economy』(有斐閣、2014年7月)
  • 岩倉正和)『ケースブックM&A――ハーバード・ロースクールでの講義を基に』(商事法務、2015年)

脚注[編集]

  1. ^ a b c d e f g h i j 大平正芳記念賞 第23回 受賞作及び受賞者名”. 公益財団法人大平正芳記念財団. 2021年11月13日閲覧。
  2. ^ a b 米ハーバード大教授「基地反対は私欲」「普天間は軍が購入」 大学ウェブに論文、懸念の声”. 沖縄タイムス. 2021年3月2日閲覧。
  3. ^ 社説[米教授沖縄批判論文]差別意識と決め付けと”. 沖縄タイムス. 2021年3月2日閲覧。
  4. ^ 「『慰安婦問題で韓国が公的議論を受け入れるとき」”. ニューズウィーク日本語版. 2021年3月8日閲覧。
  5. ^ a b Letter by Concerned Economists Regarding “Contracting for Sex in the Pacific War” in the International Review of Law and Economics”. 2021年3月6日閲覧。
  6. ^ 「ノーベル賞受賞者など学者2400人が 「ラムザイヤー『慰安婦』論文撤回」署名参加」”. ハンギョレ新聞. 2021年3月9日閲覧。
  7. ^ a b 「ラムザイヤー氏、慰安婦契約書を探しさえしなかった」…ハーバード教授公開批判”. 中央日報. 2021年3月2日閲覧。
  8. ^ 「『慰安婦論文』書いたハーバード大教授、根拠の朝鮮人契約書を見ていないと認めた」”. ハンギョレ新聞. 2021年3月2日閲覧。
  9. ^ Mark&曽野.1993.
  10. ^ J.マークラムザイヤー、#慰安婦 と教授”. Harvard ジョンM.オリンセンター. 2021年3月8日閲覧。
  11. ^ International Review of Law and Economics”. エルゼビア. 2021年3月8日閲覧。
  12. ^ [社説]戦犯企業の支援を受ける米国学者による「慰安婦」歪曲”. ハンギョレ. 2021年3月2日閲覧。
  13. ^ a b 「慰安婦は自発的契約」とゲーム理論っぽく主張したハーバード大学教授の論文。ゲーム理論家たちが猛抗議。”. 竹内幹. 令和3年3月6日閲覧。
  14. ^ 北朝鮮メディア 慰安婦問題で米大学教授を非難”. 聯合ニュース. 2021年3月2日閲覧。
  15. ^ 世界に広まる「慰安婦=性奴隷」説を否定 米ハーバード大J・マーク・ラムザイヤー教授が学術論文発表”. 産経新聞. 2021年3月2日閲覧。
  16. ^ a b c d Ruriko Kubota(久保田るり子) (2021年2月24日). “Rabble-Rousers Go on Witch Hunt vs Harvard Professor Who Challenges ‘Sex Slaves’ Theory”. Japan Forward(産経新聞. 一般社団法人ジャパンフォワード推進機構. 2021年3月6日閲覧。
  17. ^ 韓国半狂乱! 「慰安婦=性奴隷」完全否定の米ハーバード大教授論文に「カネで論文書いた」と妄言 掲載予定の出版社に圧力も (1/3ページ)”. 産経新聞. 2021年3月2日閲覧。
  18. ^ https://academic.oup.com/jleo/article-abstract/7/1/89/907648
  19. ^ http://www.law.harvard.edu/programs/olin_center/papers/995_Ramseyer.php
  20. ^ doi:10.1515/rle-2019-0021
  21. ^ ラムザイヤー論文 部落研究者から掲載誌編集長への書簡”. 反差別国際運動 (2021年3月10日). 2021年11月14日閲覧。
  22. ^ A Monitoring Theory of the Underclass: with Examples from Outcastes, Koreans, and Okinawans in Japan” (英語). Society for Institutional & Organizational Economics. 2021年11月14日閲覧。
  23. ^ ハーバード大学 ラムザイヤー教授問題に関するリンク集”. 女たちの戦争と平和資料館 (2021年5月6日). 2021年11月14日閲覧。
  24. ^ doi:10.1111/jels.12177
  25. ^ J・マーク・ラムザイヤー教授 『日本の 被差別民政策と 組織犯罪:同和対策事業 終結の影響』①”. 示現舎 (2021年10月16日). 2021年11月14日閲覧。

外部リンク[編集]