Jリーグ秋春制

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Jリーグ秋春制(ジェイリーグあきはるせい)は、日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)が、秋に開幕し、春に終幕する制度のことである。春秋制の問題点に対する改善案として、時おり提案されるものであるが、より問題が大きいという意見が強く、移行には至っていない。

概要[編集]

世界中のスタープレーヤーが集まる、大きなサッカーリーグが豊富な西ヨーロッパのカレンダーである秋春制を基本に、FIFAワールドカップなどの国際スケジュールも組まれている。また冬期は、日本のプロスポーツでは最大の経営規模である日本プロ野球のオフシーズンでもある。それらに合わせる形で、Jリーグの前身であるJSL(日本サッカーリーグ)は、最後の7年間である1985年度9月6日から1986年3月26日)-1991年度9月7日(1部は9月14日)から1992年3月29日)までを、秋春制で行っていた。

アンケート結果 (2007年)[1]
賛成 5クラブ 浦和、柏、湘南、清水、名古屋
反対 6クラブ 仙台、山形、G大阪、愛媛、福岡、匿名希望1
判断できない
どちらでもない
9クラブ 鹿島、草津(群馬)、千葉、FC東京、
川崎、横浜FM、甲府、神戸、徳島
回答なし
非公表

しかし、日本は日本海側の北部を中心に豪雪地帯も多いこともあり、全国的なスポーツクラブ創設を目指して1993年に創設されたJリーグでは、春秋制が採用されている。その後も秋春制についての議論が俎上にあがり、2005年ジェフユナイテッド市原監督からサッカー日本代表監督に就任したイビチャ・オシム、2008年に日本サッカー協会(JFA)会長に就任した元浦和レッドダイヤモンズ取締役社長犬飼基昭、スポーツライターの金子達仁などが、秋春制を提言してきたが、北海道コンサドーレ札幌モンテディオ山形アルビレックス新潟カターレ富山ガイナーレ鳥取などの雪国のクラブ関係者やファンを中心に秋春制反対の意見が大勢を占めており、移行には至っていない。鬼武健二元チェアマンは、検討に時間をかけて出した、「Jリーグで秋春制は不可能」という結論は揺るがないとしていた。

Jリーグの実行委員会は2013年6月、シーズン移行を前提に積雪地クラブの環境整備などの準備を進めることで合意した。但し、具体的な移行時期は定めていない[2]

2016年1月に行われたJFA会長選挙では田嶋幸三が僅差で勝利したが、対立候補の原博実が大幅に票を伸ばした要因として田嶋が秋春制推進派であったことが挙げられた[3]

2017年になって、Jリーグの秋春制の移行時期を、「(1)2019年から移行、(2)2022年から移行、(3)現状維持で当面移行しない。この場合向こう10年間はこの議論を凍結する」[4]の3つの案を掲げ議論を重ねるとした。Jリーグチェアマン・村井満は、2017年5月の理事会で、「実行委員会の議論を理事会に報告して(2017年)年度内に一つの方向性を出していきたい」とする見解を述べた。[5]しかし、同6月の実行委で「降雪地にあるクラブのスタジアムや練習場の確保、観戦環境の確保などを含めてJリーグにとってメリットが少ない」として、事実上秋春制移行を断念する方針を固めたと朝日新聞が報じた[6]

2017年12月12日に行われたJリーグ理事会で、シーズン秋春制の移行を正式に見送ることが決定した。現行方式の方がリーグ戦の実施可能期間が1か月以上長く、学校の年度などとほぼそろっていることなどが理由である[7]

メリットとデメリット[編集]

賛成者側の主張[編集]

  • 西ヨーロッパの主要なリーグに日程を合わせることで、海外へ移籍しやすくなるのではないか。
  • 西ヨーロッパの主要なリーグの日程に合わせることを主眼に組まれた国際カレンダーに対応しやすく、日本代表の強化にも繋げられるのではないか。
  • 日本の高温多湿の夏季を避けやすくなり、選手や審判の体力消耗を減らすことができるのではないか。
  • 天候による試合の中止は、積雪が原因の中止は多いが、夏季の集中豪雨などでも極少数ではあるが起こらないとは言い切れないのではないか。
  • 雪国のクラブも、冬季に長期に渡ってアウェーが連続する日程にしてしまえば、試合を行えるのではないか。
  • 秋春制に移行した、寒冷だが積雪の少ないデンマークデンマーク・スーペルリーガ)の関係者からは、リーグの質の向上に繋がったとの意見が多い。一方、雪国であるロシアロシアサッカー・プレミアリーグ)も2012年から秋春制に移行したが、日程は以前と変わらず3か月以上にも及ぶ長期の中断期間が存在している。

反対者側の主張[編集]

  • 南米の主要なリーグに日程を合わせる事で、選手獲得を行いやすくなる。
  • 日本海側は雪が降る地域であり冬季には夏季には起こり得ない、積雪による開催中断が頻繁に予期される。
  • 北海道東北北陸など積雪地域では冬季に半分以上の期間ホームゲームが行えない。行うには高額なドーム球場の建設が必要となる上、ドーム球場があっても札幌ドーム(冬季は天然芝を植えたホバリングステージの使用が事実上不可能)のように冬季のサッカーの試合の開催が困難なケースがある。
  • 日本と同じく春秋制である南米の選手も、西ヨーロッパで多く活躍しており、海外移籍は大きな問題にはならない。
  • 秋春制では、新卒の選手にとって開幕までの半年間が無駄になる。
  • Jリーグクラブの多くは屋根の設備が貧弱な専用スタジアムまたは陸上スタジアムで観客が冬の風雨にさらされやすく、欧州式の全座席を全てカバーした専用スタジアムは一般的ではないうえにJリーグクラブに速やかに設備投資をする力も資金もない。
  • ヒーターの設置はスタジアムだけではなく練習場にも必要であり、多額の出費が必要になる。
  • 選手や観客のスタジアムへの車での交通が不便、更には危険でもあり、雪の影響の少ない西ヨーロッパでもそれが原因で試合が中止となる事態が発生している。
  • 酷寒の冬季を避ける事は、選手の怪我を減らす事に繋がり、暑さに強く寒さに弱い日本人観客(一般的にアジア人は西洋人より汗腺が多く寒さに敏感である)の利便性にとっても有益である。
  • ドイツは関東より寒いが札幌などより暖かい上に、日本の積雪地帯はドイツの3倍から7倍の降雪がある。降雪や積雪が一番の問題である。
  • Jリーグは、理念や百年構想・リーグの公正性を保つためアウェー3連戦を禁止しており、雪が降る地域はアウェー連戦をすればよいという主張は、「雪が降る地域はハンデを負いなさい」「不公正なリーグにしなさい」「Jリーグの理念を捨てます」と言う主張である。アウェー連戦が成績悪化に直結した例はJリーグ創設以前の日本プロ野球でも枚挙にいとまがなく(死のロードも参照)、プロ野球では敵地でのゲームについて配慮の上、日程を編成することが慣習化されている。
  • ロシアの秋春制は春秋制でリーグ戦をしていた期間を変えず、3か月以上のウインターブレークを取る形で行われる。デンマークも長期のウインターブレークを取った日程な上、札幌・山形の1/4以下、新潟の1/10以下の降雪量である。
  • FIFAの規定にてシーズンオフの移籍期間は最低8週間、最長12週間と決められており、アウェー3連戦をしないようにウインターブレークを取ると1週間で2試合以上の超過密日程となる。
  • 冬季には、平日の夜間試合開催が集客的にも難しく、試合数の減少または過密日程は避けられない。
  • イタリアセリエA)などでも、夜間試合の寒さにより、ゴールキーパーや観客が低体温症で入院するという事態も起きており、健康への悪影響は軽視できない。
  • 積雪地域の冬季を長期的なアウェーにすることは、積雪地域以外のクラブが、集客力が見込める季節の試合数を減少させることになる。
  • 国際サッカー連盟(FIFA)のジョセフ・ゼップ・ブラッター会長による、秋春制への統合の呼び掛けにも関わらず、デンマークを除く北欧、東アジア、北アメリカなど、日本と同じく北半球で春秋制を採用している国は多い。
  • ドイツ代表監督ヨアヒム・レーヴは、秋春制より春秋制の方がFIFAワールドカップでのパフォーマンスが上がるとしてブンデスリーガを春秋制にしてほしいと要望を出した(「他のリーグが足並みを揃えるなら」という条件付き)[8]
  • カタールでの開催が決定した2022 FIFAワールドカップでは夏の酷暑を避けるために11月〜12月にかけての開催が決定しており、欧州のサッカーリーグがこれに対応すべく春秋制に移行する可能性も出てきている。
  • リーグ戦終了後にワールドカップを行うことは、むしろほぼすべての選手が体力的に非常に厳しい。秋春制で過密日程を戦うことで知られるプレミアリーグでプレーしているイングランド代表は毎大会優勝候補の一角でありながら低調な成績に終始している。

脚注[編集]

外部リンク[編集]