Hadou

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
稲葉浩志 > Hadou
Hadou
稲葉浩志スタジオ・アルバム
リリース
録音 2005年 - 2010年
ジャンル J-POP
ロック
ハードロック
フォークロック
時間
レーベル VERMILLION RECORDS
プロデュース 稲葉浩志
チャート最高順位
稲葉浩志 アルバム 年表
Peace Of Mind
(2004年)
Hadou
(2010年)
Singing Bird
(2014年)
『Hadou』収録のシングル
  1. Okay
    リリース: 2010年6月23日
テンプレートを表示

Hadou』(ハドウ)は、日本音楽ユニットB'zボーカリスト稲葉浩志の4作目のオリジナル・アルバム。2010年8月18日にVERMILLION RECORDSから発売された。

概要[編集]

前作『Peace Of Mind』から約6年ぶりとなるオリジナル・アルバム。

本作には先行シングル「Okay」の他、TBS系『NEWS23クロス』のエンディングテーマに起用された「この手をとって走り出して」や、2006年に放送された読売テレビ日本テレビ系アニメ『結界師』エンディングテーマとして発表されたままCD化されていなかった「赤い糸」など、全15曲を収録[2]。初回限定盤には、これまで発表されたソロ作品のミュージック・ビデオ全11曲を収録したDVDが付属されている[1][4]

アルバムタイトルの『Hadou』は「波動」を意味し、「目の前にいる人じゃなくて、遠くにいる人、自分の思っている人と波動でつながっている」が本作のテーマ。元々「Hadou」というタイトルは、3曲目収録「The Morning Call」の仮タイトルだった(歌詞に「波動」というフレーズも入っている)[5]。アルバムタイトルがなかなか決まらなかったことと、3曲目を「Hadou」というタイトルに決めかねていたこととが合わさり、現在に至った。また、漢字ではなくローマ字表記になったのは、漢字にすると最初に「波動」というイメージが固まることを嫌ったから、とのこと。

稲葉はリリースの5年前からB'zの活動の合間を縫って自宅のスタジオにアレンジャーの寺地秀行を度々招き、リリースなども考えずに思いついたままに少しずつ曲作りを行っていた。稲葉曰く、この期間に作成した楽曲は、未編曲の楽曲やデモ楽曲を含めると、32曲に及んだとのこと。また未発表ではあるがカバー曲も制作したという(ゾンビーズなど)。ほとんどの楽曲に歌詞は付けられていなかったが、稲葉は2009年の正月辺りからリリースを意識し、歌詞を書き始めた。2004年に開催された初のソロ・ツアー『Inaba Koshi LIVE 2004 〜en〜』の経験を経て、無意識ではあるがライブでの絵も想像しながら制作をしたという[6]

発売初週で12.7万枚の売上を記録し、8月30日のオリコン週間アルバムランキングにて1stアルバム『マグマ』から4作連続での初登場首位を獲得[7]。これにより、稲葉は1990年代2000年代2010年代の「3年代連続オリジナル・アルバム1位」の記録を達成した。これは、サザンオールスターズ徳永英明SMAPに続き4組目の達成である[注 1]

収録曲[編集]

CD
  1. LOST (1:27)
    本作のイントロダクション的な曲で、演奏時間は稲葉ソロ曲の中で最短の1分25秒。
    2009年に、B'zとして博多にレコーディングに行った際にホテルで作られた楽曲で、本作では最後に完成した。メロディ自体は早いうちから存在しており、アルバムの最終調整に入った際に、稲葉が「アルバムとして足りない気がするからもう1曲足したい」と思い、制作に至った。歌い出しから始まる楽曲で、元々はその前に長いイントロが存在したが、インパクトに欠けるので端折ったという。
  2. 絶対(的) (4:17)
    イントロが、打ち込みによるエレクトリック・シタールとなっている。この部分は、元々エレクトリックピアノであったが、音が丸過ぎたので変更したのだと言う。エンディング部分は、レコーディングメンバーの演奏が止まらず長く続けた感じになったという。
    当初は「的」についている“()”を外すつもりだったが、最終的に“()”を生かした。
  3. The Morning Call (4:02)
    全編ピアノを中心に構成された、アルバム『Hadou』のタイトル曲になる予定だった曲。
    曲にはハードなギターも入っているが、出来るだけピアノの音を大きくして、ハードな中にクールなピアノをバランス的に混ぜ込んでいる、とコメントしている。
    稲葉がシカゴを訪れた際、そこでピアノで始まる感じの良い曲があり、それに影響を受けてピアノが歯切れよく動いて始まる楽曲をやりたくなったことで制作を始めた。その為、ピアノのフレーズをデモの段階で全部作ったのだと言う。
    曲終了後、曲間なしで次の曲に移る。
  4. Okay (5:16)
    アルバムの先行シングル。デモの段階からシングル候補であった。
  5. Lone Pine (4:39)
    3連リズムで構成される楽曲で、「アコースティック・ギター刻みの雰囲気の楽曲を制作したい」というテーマのもと制作された。
    タイトルのLone Pine(ローン・パイン)とは、アメリカ合衆国カリフォルニア州に実在する田舎町の名称である。
    この曲の製作経緯として、稲葉が15年以上も前にドライブの途中にローン・パインのモーテルに宿泊した際のイメージが強く残っており、数年後にローン・パインのイメージを膨らませ歌詞を書いた。そのため、かなり古くから歌詞が存在していた曲である。
  6. エデン (4:21)
    8ビートで構成される楽曲。稲葉曰く、「『絶対(的)』にも通じる、とても好きな楽曲。特にサビのコードが好きである」とのこと。
  7. CAGE FIGHT (3:52)
    宇浦冴香に提供した楽曲「友達以上恋人未満」のセルフカバー。なお原曲は稲葉の作詞ではないため、自身で詞を書き直した[8]
    タイトルのCAGE FIGHT(ケージ・ファイト)とは、金網に囲われた舞台の中で行われる格闘技の事。街が檻の中に見えてしまうような、かなり参っている精神状態の人を歌詞のテーマにしている。この事について、稲葉は「自分でもそういう事があるし、現代にはそういう人がものすごく多いと思う。それを前向きにというか。タイトルのCAGE FIGHTという言葉は僕の中ではとても明るい言葉なんです。ファイトしている感じ。格闘技とか見ていると前向きじゃないですか?それで解決するとは言わないけれども、そういう姿勢もアリなのではないかと思う。」と語っている。
    この曲のスライドギターは大賀でロサンゼルスでレコーディングする前に、東京で録ったという。
  8. 今宵キミト (4:31)
    歌詞が先にありそれに曲を付けるという、詞先で制作された楽曲。近年のB'z関連作品ではほとんど見られないサックスソロがあり、これはギターより狂った感じが出るためだという。
    タイトルの「今宵キミト」という言葉について稲葉は、「この言葉は少し明るい感じもあるが、内容としては、自分の気持ちが届かない歯がゆさ、それでも好きだと言う健気な男性と、女性の方にも理由があるという感じを表している」と語っている。
  9. この手をとって走り出して (5:34)
    曲作りの初期の頃には完成しており、2005年頃に制作された。また、宇浦冴香に試しに歌ってもらったこともあり、そのため歌詞は女性目線で書かれている。
    TBS系『NEWS23クロス』の初代エンディングテーマ[注 2]。新番組の告知で流されていたCMにもこの曲が使われており、CMに稲葉の名前とこの曲名のクレジットはなく、公式サイトで稲葉のソロ活動のことが公表されるまで不明のままだった。
  10. 去りゆく人へ (4:24)
    宇浦冴香に提供した楽曲「君を想い眠る夜は」のセルフカバー。こちらも「CAGE FIGHT」同様稲葉の作詞ではないため、自身で書き直した[8]
    歌詞の内容は「それなりに思い入れのある人と離れてしまうとき、その人に対して見送る時の言葉というか、愛情があっての別れの言葉」として書かれている。
    デモは全然違っており、生音でレコーディングしてから大きく変わったという。
    エンディング部分はバンドのセッションによる演奏が止まらず延々と続いたものがそのまま収録された。
  11. 不死鳥 (3:58)
    稲葉曰く、この楽曲のピアノ(打ち込み)とアコースティックギターのマッチングがお気に入りとのこと。
    2010年に行われたライブツアー『Koshi Inaba LIVE 2010 〜enII〜』では、この曲以外の全ての楽曲が演奏され、本曲のみ未演奏だったが『Koshi Inaba LIVE 2016 〜enIII〜』 で演奏され、本アルバムの収録曲は全てライブで演奏された。
  12. 主人公 (3:53)
    稲葉自身が、「稲葉ソロっぽい」と評する曲。
  13. リトルボーイ (3:27)
    「少年」の持つ純粋でひたむきな心と、その機微が併せ持つ幼稚で残酷な一面を描写した楽曲。歌詞には核兵器そのものや使用国に対する皮肉も含まれており、タイトルの由来も第二次世界大戦においてアメリカ軍広島市に投下した原子爆弾コードネームリトルボーイ」による。
    2010年に行われたツアーでは広島公演のみ演奏された。
  14. 赤い糸 (2:42)
    日本テレビ系アニメ『結界師』の初代エンディングテーマ[9]。2006年に発表されてから長い間CD化されていなかった。
    アニメで使用されたものとは異なり、シンプルなアコースティックアレンジになっている。稲葉曰く、「元々はこういう感じ(アコースティック)だった」とのこと。アニメで使用されたバージョンは未音源化のままである。
  15. イタイケな太陽 (7:17)
    2005年辺りに制作された、本作では最も古い楽曲だが、間奏やエンディングの部分はレコーディングの最後の最後に変えていったという。稲葉自身も認める、ソロ作品の中ではかなりハツラツ系の楽曲。2010年のライブではアンコールラストナンバーとなった。
    曲の終了後、長い無音の後に隠しトラックが収録され、ライブ終了後にSEとして流された。アコースティックとハンドクラップのみの伴奏という非常にシンプルかつ2コーラスのみの短い楽曲で、タイトルは不明。トラックが分かれておらず「イタイケな太陽」に含まれているため、JASRACなどへのタイトルの届出などもされていない。なお、CDのみ収録されており配信音源には収録されていない。
DVD (初回限定盤のみ)

以下の楽曲のミュージック・ビデオを収録。

  1. 遠くまで
  2. O.NO.RE
  3. Touch
  4. ファミレス午前3時
  5. AKATSUKI
  6. 静かな雨
  7. I'm on fire
  8. Wonderland
  9. 正面衝突
  10. ハズムセカイ

タイアップ[編集]

参加ミュージシャン[編集]

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 当時B'zとしての2010年のCDリリースがなかったため、この時点では未達成だった。
  2. ^ 2代目はB'zの「Homebound」が使用された。ちなみに『NEWS23クロス』の初代タイアップ候補で「Lone Pine」も挙がっていた。

出典[編集]

  1. ^ a b “稲葉浩志、アルバム『Hadou』は8月18日発売”. BARKS (ジャパンミュージックネットワーク株式会社). (2010年7月1日). https://www.barks.jp/news/?id=1000062344 2020年1月2日閲覧。 
  2. ^ a b “B’z稲葉浩志、ソロアルバム4作連続首位”. ORICON NEWS (オリコン). (2010年8月24日). https://www.oricon.co.jp/news/79339/full/ 2020年1月2日閲覧。 
  3. ^ オリコン年間 アルバムランキング 2010年度 31〜40位”. インプレス (2010年). 2019年11月12日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年7月12日閲覧。
  4. ^ “稲葉浩志、ソロアルバム初回盤は過去のPV満載DVD付き”. 音楽ナタリー (株式会社ナターシャ). (2010年7月1日). https://natalie.mu/music/news/34108 2020年1月2日閲覧。 
  5. ^ 稲葉浩志『稲葉浩志 伝えつながる波動のように』(インタビュアー:能地祐子)、ヤフー株式会社、2010年8月17日。 オリジナルの2021年11月8日時点におけるアーカイブhttps://web.archive.org/web/20120719043051/http://smash.music.yahoo.co.jp/pow_dtl/itv/powyjm00389/2021年11月8日閲覧 
  6. ^ 稲葉浩志『稲葉浩志 伝えつながる波動のように』(インタビュアー:能地祐子)、ヤフー株式会社、2010年8月17日。 オリジナルの2021年11月8日時点におけるアーカイブhttps://web.archive.org/web/20120719042511/http://smash.music.yahoo.co.jp/pow_dtl/itv/powyjm00389/2/2021年11月8日閲覧 
  7. ^ “B'z稲葉浩志、ソロアルバム4作連続首位”. ORICON NEWS (オリコン). (2010年8月24日). https://www.oricon.co.jp/news/79339/full/ 2020年2月8日閲覧。 
  8. ^ a b 『music freak magazine & Es Flash Back B'z XXV Memories II』エムアールエム、2013年、201頁。 
  9. ^ “B'z稲葉浩志、作品提供と新曲リリースを発表!”. ORICON NEWS (オリコン株式会社). (2006年10月2日). https://www.oricon.co.jp/news/36481/full/ 2023年4月7日閲覧。