GRACE (人工衛星)

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GRACE
Artist's concept of the twin GRACE satellites
2機のGRACE衛星
所属 NASADLR
主製造業者 スペースシステムズ/ロラールEADS アストリアム
任務 地球周回
打上げ日時

2002

年3月17日
打上げ機 3段ロケット、プレセツク宇宙基地
任務期間 5年間
COSPAR ID 2002-012A
公式サイト GRACE
質量 各487kg
消費電力 太陽

GRACE(Gravity Recovery and Climate Experiment)は、アメリカ航空宇宙局(NASA)とドイツ航空宇宙センター(DLR)の共同ミッションである。2002年3月の打上げ以来、地球の重力場を詳細に観測している。

重力は、質量によって決定される。重力を測定することで、GRACEは地球上にどのように質量が分布しているか、またそれが時間とともにどのように変化しているかを示している。GRACEからのデータは、地球の海洋、地質、気候を研究するツールとして重要である。

GRACEは、テキサス大学の宇宙研究センター、NASAのジェット推進研究所、ドイツ航空宇宙センター、ドイツ地球科学研究センターが共同で開発した[1]。ジェット推進研究所は、全体のミッションのマネージメントを担当した。

開発の責任者はテキサス大学宇宙研究センターのバイロン・タプリー、副責任者はドイツ地球科学研究センターのクリストフ・ライバーであった[2]

GRACEは、2002年3月17日にプレセツク宇宙基地からロコットで打ち上げられた。

2012年11月時点で、2015年か2016年に向けて、ゆっくりと軌道を縮小している段階にある[3]

発見[編集]

GRACEで測定した海洋底の圧力の変化

GRACEによって作成された月ごとの重力マップは、以前のマップよりも1000倍も正確である。気候に影響を与える現象を研究するための多くの技術の正確性を大幅に改善している[4]

氷床の薄化から帯水層の水の流れ、地球内部のマグマのゆっくりした流動に至るまで、GRACEによる質量の測定は、これらの重要な自然過程の理解をより深めた。

GRACEで測定した重力異常マップ

GRACEのデータの最初の重要な成果の1つは、地球規模の海流の理解がより深まったことである。海面の山や谷は、地球の重力場の流動や変動に起因する。GRACEは、これら2つの作用を分離することを可能とし、海流やそれが気候に及ぼす影響をより正確に測定した。GRACEのデータは、海面上昇について、氷河が溶けたことにより海の質量が増えたことに起因するのか、それとも例えば水の加熱による熱膨張塩分濃度の変化によるものなのか、その原因を研究するのに重要な役割を果たしている[5]

GRACEで測定した地上の重力異常
GRACEで測定した海洋上の重力異常

2012年2月の時点で、GRACEによって得られたデータは、これまで得られた中で最も正確な重力測定のデータである。これまでは、「慣性系の引きずり」効果を測定するのに、LAGEOS実験で得られたデータを再解析したデータが用いられていた。2006年、ラルフ・フォン・フレゼとララミー・ポッツのチームがGRACEのデータを用い、南極に約2億5000万年前にできたと考えられる幅480kmのウィルクスランドクレーターを発見した[6]アマゾン盆地の水循環や後氷期隆起現象の位置や大きさのマップ化にもGRACEのデータが用いられた。また、2004年のインド洋津波を引き起こしたスマトラ島沖地震による地殻の変位の分析にも用いられた[7]。また、GRACEのデータを用いた海底の圧力の新しい計算法が開発された[8]

GRACEの作動[編集]

GRACEは、地球の表面で反射、放出、または地球や大気の内部を通過する電磁波以外のものを測定する、史上初めての地球観測衛星である。その代わりに、このミッションでは、約220kmと500kmの高さの極軌道を飛行する2機の間の速度と距離の変化を測定するため、マイクロ波測距システムを用いている。測距システムは、220kmの距離で10μmの距離の変化を検出できるほどの精度を持っている[9]

2機ずつのGRACE衛星は、地球を1日に15周し、地球の重力の変化を1分毎に測定している。1機の衛星が重力の若干強い重力異常の領域にさしかかると、重力に引かれて後ろの衛星との距離がわずかに長くなる。前方の衛星が重力異常の領域を通過し終わると、再び速度が遅くなり、それと同時に後ろの衛星の速度が速くなり、その後同じ地点で再び遅くなる。

2機の間の距離の変化を常に測定し続け、そのデータをグローバル・ポジショニング・システムからの高精度の位置データ と結びつけることによって、地球の重力の詳細なマップを描くことができる。

「トム」と「ジェリー」と渾名された2機の衛星は、お互いの間に常に2本のマイクロ波を維持している。それらの周波数の変化を比較することで、精密な測定が可能となる。衛星自身の動きは、加速度計で測定している。これら全ての情報は地上局に送られる。基線位置の確定と衛星自身の維持管理のため、衛星は恒星カメラ、磁気計、GPS受信機も搭載している。また、地上局うからのレーザー測距のため、コーナーキューブも積んでいる。

衛星[編集]

衛星は、ドイツのEADS アストリアムが"Flexbus"プラットフォームを用いて製造した。マイクロ波システムと高度計、制御システムのアルゴリズムはスペースシステムズ/ロラール、衛星の高度を測定するための恒星カメラはデンマーク工科大学、高精度のBlackJack GPS 受信機やデジタル信号処理システムはジェット推進研究所、重力のデータから大気と太陽風の影響を除去するのに必要な高精度の加速度計はフランス国立航空宇宙研究所でそれぞれ製造された。

関連項目[編集]

  • ジオイド
  • GOCE(2009年3月に打上げ)
  • GRAIL(月のマップを作るための同様のプローブ)

出典[編集]

  1. ^ Grace Space Twins Set to Team Up to Track Earth's Water and Gravity”. NASA/JPL. 2013年5月10日閲覧。
  2. ^ Mission Overview”. University of Texas (2008年11月19日). 2009年7月30日閲覧。
  3. ^ GRACE Orbit Lifetime Prediction”. 2013年5月10日閲覧。
  4. ^ New Gravity Mission on Track to Map Earth's Shifty Mass”. NASA/JPL. 2013年5月10日閲覧。
  5. ^ What's Up with Sea Level”. NASA/JPL. 2013年5月10日閲覧。
  6. ^ Big Bang in Antarctica--Killer Crater found Under Ice”. Ohio State University. 2013年5月10日閲覧。
  7. ^ Chang, Kenneth (2006年8月8日). “Before the ’04 Tsunami, an Earthquake So Violent It Even Shook Gravity”. The New York Times. http://www.nytimes.com/2006/08/08/science/08find.html 2010年5月4日閲覧。 
  8. ^ Gravity data sheds new light on ocean, climate”. NASA/JPL. 2013年5月10日閲覧。
  9. ^ GRACE Launch Press Kit”. NASA/JPL. 2013年5月10日閲覧。

外部リンク[編集]