GPS気象学

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GPS気象学(GPSきしょうがく、GPS meteorology)は、GPS/GNSS誤差成分の一つである大気遅延量に影響を与える水蒸気量を逆にシグナルとして取り出し、大気円柱中の水蒸気量を推定する技術およびその応用の総称である。

湿潤で、気象の数値予報が発達し、また多数のGPS/GNSS観測点[要説明]を擁する日本は,地上型GPS気象学の絶好のテストフィールドである.ここでは,1997~2001年に,気象庁,国土地理院,大学等が行ったGPS気象学プロジェクトについて紹介する(なお、この中には宇宙型GPS気象学も含まれるが、これは次節で述べる。)。

地震国日本では、1990年代半ばから地殻変動監視のためGEONET等のGPS観測網が整備され、地震の長期予測に不可欠なセンサーとなった。しかし、観測点座標の時系列には1cmを超える振幅を持つ季節変動が存在していた。状況証拠から時系列の異常の大半は水蒸気に由来すると思われた。もし数値予報の洗練されたモデルやデータにより水蒸気ノイズが除ければ、○○○mm精度の測位も夢ではない。

一方、気象学では水蒸気はメソ・ローカル(数km~1000km)領域の降雨・集中豪雨の予測に重要なシグナルである。気象庁のラジオゾンデ観測(全国18か所,1日2回)は時空間分解能がやや不十分で、地上に置く水蒸気ラジオメーターは時間分解能は高いが雨の日に使えない。もしアメダスとほぼ同じ密度を持つGEONETが可降水量のセンサーとして使えれば集中豪雨の予報等に役立つ。

以上の期待から、日本でのGPS気象学は

  1. GEONETからの可降水量の算出と数値予報への応用
  2. 気象学的知見を用いたGPS/GNSS測位精度の向上

という二兎を追った。(1)が狭義の地上型GPS気象学だが、当時欧米に(2)の視点は余りなく、関係者は日本型GPS気象学だと自負した。

5年間の研究により、気象学側では、GEONETによる可降水量(分解能:3時間、約25km)はラジオゾンデの精度に匹敵し、台風・前線や局地循環・雷雨等の100~1000kmスケールの気象現象を捉えうること等が確認された。また、GPS可降水量をメソ領域数値予報モデルについての実験が行われ、降水予測に役立つケースが見出された。さらに衛星視線方向の遅延量から水蒸気の3次元構造を推定する水蒸気トモグラフィ法も試みられた。

一方の測地学側では対流圏遅延と相関を持つ誤差要因が洗い出されアンテナ位相パターンや海洋潮汐荷重変形のモデルも解析に組み込まれた。また、仰角だけでなく方位角依存性も入れたマッピング関数で大気遅延の勾配が推定できるようになり、測位精度が向上した。このように、GPS気象学をきっかけにGPS/GNSS解析技術の高度化が進んだのである。

今後は可降水量の精度向上やリアルタイム解析の実用化等を進め、最終的にはGPS/GNSSによる可降水量を数値予報に入力して予報精度を上げることが課題である。また、数値予報データをGPS/GNSSの解析に還元して測位精度を向上させるためマッピング関数の改良等の研究を継続する必要がある。

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